【完結】先に求めたのは、

たまこ

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 お茶の時間が終わった頃、執事トニーがやって来てレティの部屋の準備ができたと告げた。部屋まで案内されると言われ、レティがトニーの後ろを歩くと何故だかミゲルまで付いてくる。

「こちらになります」

「ええっと……トニーさん……」

 案内された部屋を見てレティは戸惑いの声を上げた。レティは使用人宿舎で過ごすのだろうと思っていたし、それが別に嫌では無かった。だが案内されたその部屋は本棟にある広く豪華な日当たりの良い部屋だった。

「お隣はミゲル様のお部屋となっておりますので、お気軽に足をお運びくださいませ」

「へっ?!」

 ミゲルの隣の部屋というだけでも畏れ多いのに、レティ自ら足を運ぶなんて有り得ない。だがトニーは穏やかに笑ったままだった。

「あ、あの、私は使用人宿舎の方で良いのですが……」

「まさか!伯爵令嬢のレティ様に使用人宿舎で生活させる訳にはいきません」

「ですが……」

 伯爵令嬢とはいえ、レティは雇われている身だ。父と共に数々の貴族の屋敷で料理をしてきたレティは雇われるということがどういうことか弁えていた。それに公爵家の使用人の中には貴族の者もいる筈だ。レティだけ特別扱いは可笑しいだろう。

「レティ様はお食事の準備のお仕事だけでなく、家庭教師による講義を受ける時間もあります。使用人宿舎ではそれらの対応が難しいのです」

「そういうものですか……?」

「はい」

 トニーに大きく頷かれたレティはほとほと困ってしまった。確かにレティは行儀見習いという形で公爵家にいるが実際は料理人という少々ややこしい立ち位置である。

「……気に入らなかったか?」

 今まで黙ったままだったミゲルから不機嫌そうに問われ、レティはハッとして周りを見渡した。

 本棚にはまだ読んだことの無いレシピ本や栄養学に関する書籍がぎっしりと並んでおり、それらを読みやすいように広い机が近くには置かれていた。衣装室の扉を開けると、レティの背丈に合ったエプロンと上質な調理服が何枚も用意されていた。ここはレティを想って用意された部屋であることはすぐに感じ取れた。

「……っ、こんな素敵なお部屋、とても嬉しいです!」

 レティが必死でそう伝えるとミゲルはそっぽを向いてしまった。彼の怒ったような横顔を見ているとじわじわと胸が温かくなっていった。

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