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しおりを挟む神様。どうしてこんな試練を与えるのですか。
神様。品行方正、謹厳実直に生きてきたのに。
神様。どうして、目が覚めたら大嫌いな男が隣で眠っているのですか?
◇◇◇
アンダーソン子爵家の長女カレンが目覚めると、知らない部屋のベッドの中にいた。一応、服は身につけているようだ。隣にはよく知っている大嫌いな男、ウィルソン伯爵家の次男ウィリアムがすやすやと幸せそうに眠っている。
(まつ毛、長いなぁ。)
人はパニックになり過ぎると、逆に冷静になるらしい。カレンはキョロキョロと眼鏡を探すと、サイドテーブルに丁寧に折り畳まれている。手を伸ばし、眼鏡を掛けてから、ウィリアムをじっくり観察した。
幼い頃から腐れ縁で、会いたくないのに何故だかしょっちゅう会うこの男は、それはそれは美しい容姿で、社交界で流れた浮名は数知れず。
どの令嬢と付き合っている、とか、どの未亡人と一夜を共にした、とかカレンは耳にタコが出来そうなほど聞かされた。
カレンは王宮職員として資料課に勤めており、ウィリアムは近衛騎士として王太子に付いている。王宮内では、美しすぎる近衛騎士、ウィリアムは噂の的だ。
カレンは小さく息を吐き、昨夜の記憶を辿る。昨日は仕事が終わり帰る途中に、いつものように、ばったりウィリアムに会った。
「明日、休みでしょ。付き合ってよ。」
「いえ。早く帰りたいので。」
軽薄に誘うウィリアムを、カレンはつっけんどんに突き放し、早歩きで足を進めるが、ウィリアムは後ろを着いてくる。
「ああ。カレン、お酒弱いからなぁ。俺より飲めないもんな。」
憎たらしくニヤニヤと笑うウィリアムに、思わずカッとなり、居酒屋に駆け込み、競うように呑んだ所までは覚えている。その後は………。
「いたた………。」
重たくズキズキと痛む頭が、二日酔いを物語っている。明らかに飲み過ぎだ。自分の頭を摩っていると、隣の美しい男はもぞもぞと動き始め、そして。
「カレン、おはよう。昨日は可愛かったね。」
寝ぼけ眼でも美しすぎる顔が至近距離に来たかと思ったら、ウィリアムはカレンの額に勝手に口づけを落とす。
「………………!!!!」
カレンが声にならない叫びを上げるのを、ウィリアムは嬉しそうにニコニコと笑いながら見つめている。
神様………本当に、私、この男と一夜を共にしてしまったのでしょうか。
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