【完結】真面目系眼鏡女子は、軽薄騎士の求愛から逃げ出したい。

たまこ

文字の大きさ
2 / 15

しおりを挟む

 シーツの中で抱き締められ、初めは身体を固くしていたカレンは、時間が経つうちにどこか他人事のように冷静になっていた。


 初めてそういう行為をした時は、身体の痛みがあると聞く。しかし、今のカレンは二日酔い以外は、特に不調は感じない。


 そして冷静になると別の問題に気付く。カレンは、徐々に血の気が引いてくるのを感じた。



「カレン?どうしたの?」



 カレンの顔色の変化に気が付いたウィリアムが心配そうに尋ねた。



「お、お父様とお母様、きっと心配しているわ。」



 辺りを見渡せば、ウィリアムの私物が多くあるので、恐らくここはウィリアムが一人暮らしをしている部屋だろう。そして、窓の外はすっかり明るくなっている。


 カレンは実家暮らしだ。そして、この国では女性は婚姻時、純潔でなければならないと言うしきたりが根強く残っている。


 カレンもウィリアムも、もう二十七歳。最近ではカレンの両親は、カレンの婚約者探しに奔走している。そんな中、カレンが一晩帰らなかったとなれば、両親はどれほど心配していることか。


 それに加えて、このフラフラした男と一夜を共にしたと分かれば、婚約者探しに大きなダメージを与える。




「ああ。大丈夫だよ。連絡しておいたから。」



 ウィリアムは、顔を青くしているカレンへにっこり笑ってウインクを贈る。このウインクにどれ程の令嬢達が騙されたのかと、カレンは腹立たしくなる。



「れ、連絡って……?」




「お嬢さんはこちらに泊まるので心配しないでください、って。」



「…………!!!!」



 カレンは本日二度目の声にならない叫びを上げた。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

伯爵令嬢の苦悩

夕鈴
恋愛
伯爵令嬢ライラの婚約者の趣味は婚約破棄だった。 婚約破棄してほしいと願う婚約者を宥めることが面倒になった。10回目の申し出のときに了承することにした。ただ二人の中で婚約破棄の認識の違いがあった・・・。

ドレスが似合わないと言われて婚約解消したら、いつの間にか殿下に囲われていた件

ぽぽよ
恋愛
似合わないドレスばかりを送りつけてくる婚約者に嫌気がさした令嬢シンシアは、婚約を解消し、ドレスを捨てて男装の道を選んだ。 スラックス姿で生きる彼女は、以前よりも自然体で、王宮でも次第に評価を上げていく。 しかしその裏で、爽やかな笑顔を張り付けた王太子が、密かにシンシアへの執着を深めていた。 一方のシンシアは極度の鈍感で、王太子の好意をすべて「親切」「仕事」と受け取ってしまう。 「一生お仕えします」という言葉の意味を、まったく違う方向で受け取った二人。 これは、男装令嬢と爽やか策士王太子による、勘違いから始まる婚約(包囲)物語。

婚約破棄ブームに乗ってみた結果、婚約者様が本性を現しました

ラム猫
恋愛
『最新のトレンドは、婚約破棄!  フィアンセに婚約破棄を提示して、相手の反応で本心を知ってみましょう。これにより、仲が深まったと答えたカップルは大勢います!  ※結果がどうなろうと、我々は責任を負いません』  ……という特設ページを親友から見せられたエレアノールは、なかなか距離の縮まらない婚約者が自分のことをどう思っているのかを知るためにも、この流行に乗ってみることにした。  彼が他の女性と仲良くしているところを目撃した今、彼と婚約破棄して身を引くのが正しいのかもしれないと、そう思いながら。  しかし実際に婚約破棄を提示してみると、彼は豹変して……!? ※『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも投稿しています

【完結】オネェ伯爵令息に狙われています

ふじの
恋愛
うまくいかない。 なんでこんなにうまくいかないのだろうか。 セレスティアは考えた。 ルノアール子爵家の第一子である私、御歳21歳。 自分で言うのもなんだけど、金色の柔らかな髪に黒色のつぶらな目。結構可愛いはずなのに、残念ながら行き遅れ。 せっかく婚約にこぎつけそうな恋人を妹に奪われ、幼馴染でオネェ口調のフランにやけ酒と愚痴に付き合わせていたら、目が覚めたのは、なぜか彼の部屋。 しかも彼は昔から私を想い続けていたらしく、あれよあれよという間に…!? うまくいかないはずの人生が、彼と一緒ならもしかして変わるのかもしれない― 【全四話完結】

イケメンなら間に合ってます(改稿版)〜 平民令嬢は公爵様に溺愛される 〜

コロ星人
恋愛
私は貴族とか、堅苦しい世界なんて大嫌いなんです だから、ちょっと羽を伸ばしにここに来たのに なんで、ここって自分ん家より面倒くさいの? ああ、私のパラダイスはどこ? 私のパラダイスが消えていく へ?イケメン?お金持ち? 私、貴方みたいなチャラ男は大嫌いなんです それにお金なら不自由しませんもの もう結構ですから他を当たってください シッシッ 舞台は現代に近い並行世界になります 以前連載していたものを、書き直しました 設定はほぼ同じですが、内容が違うものになってます

私と彼の恋愛攻防戦

真麻一花
恋愛
大好きな彼に告白し続けて一ヶ月。 「好きです」「だが断る」相変わらず彼は素っ気ない。 でもめげない。嫌われてはいないと思っていたから。 だから鬱陶しいと邪険にされても気にせずアタックし続けた。 彼がほんとに私の事が嫌いだったと知るまでは……。嫌われていないなんて言うのは私の思い込みでしかなかった。

婚約解消を宣言したい忠犬令息の攻防戦

夕鈴
恋愛
薔薇が咲き誇る美しい庭園で椅子に座って悲しそうな顔で地面に向かって何度も同じ言葉を呟く少年がいた。 「僕は、姫様に相応しくないので、婚約を解消しましょう」 膝の上で固く握った拳は震えている。 少年の拳の上に真っ赤な花びらが落ちてきた。 少年が顔を上げると、美しい真っ赤な薔薇が目に映る。 少年は婚約者を連想させる真っ赤な薔薇を見ていられず、目を閉じた。 目を閉じた少年を見つめる存在には気付かなかった。 鈍感な少年と少年に振り回される恋するお姫様の物語です。

不愛想な婚約者のメガネをこっそりかけたら

柳葉うら
恋愛
男爵令嬢のアダリーシアは、婚約者で伯爵家の令息のエディングと上手くいっていない。ある日、エディングに会いに行ったアダリーシアは、エディングが置いていったメガネを出来心でかけてみることに。そんなアダリーシアの姿を見たエディングは――。 「か・わ・い・い~っ!!」 これまでの態度から一変して、アダリーシアのギャップにメロメロになるのだった。 出来心でメガネをかけたヒロインのギャップに、本当は溺愛しているのに不器用であるがゆえにぶっきらぼうに接してしまったヒーローがノックアウトされるお話。

処理中です...