【完結】真面目系眼鏡女子は、軽薄騎士の求愛から逃げ出したい。

たまこ

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 早く家に帰ろうと、慌てて身嗜みを整え、出発しようとすると、何故だかウィリアムが着いてきた。玄関を出て、人通りの少ない路地を進むが、一向に離れる気配が無い。




「なんで着いてくるのよ!」



「カレンのご両親にご挨拶しようと思って。」



「はぁ?!」



「昨日の事、ちゃんと責任取るよ。結婚したいってお願いしに行くんだ。」



 どこかにピクニックにでも行くかのように楽しそうにウィリアムは言った。



「貴方、何を言って…………。」



「俺と結婚する方が色々ダメージは少ないと思うけどなぁ。カレン?」



「うっ…………!」



 悔しさの余り唇を噛むカレンの手を、ウィリアムは愉快そうに取った。





◇◇◇



 ウィリアムと辻馬車に乗ったカレンは、悶々としていた。



 ウィリアムの言う事は当たっている。純潔を良しとする風習でも、婚約者相手の性交渉であればそれほど悪くは言われない。


 逆に、ウィリアムとこんなことになってしまった後に、他の婚約者を見つけるのは困難を極める。

 カレンは、昨夜の事を殆ど覚えていないが、二人で遅くまで彷徨いていた事を誰に見られているか分からない。万が一、昨夜の事をバレずに誰かと婚約を結べたとしても、真面目なカレンは隠し通して一生を過ごす事は嫌だった。


 そして、少なくともカレンの両親は昨夜の外泊の事を知っている。娘と同様に、真面目が取り柄な両親だ。婚約どころか付き合ってもいない相手と娘が外泊したなんて知ったら、卒倒するだろう。カレンは、両親への適切な言い訳が思い浮かばない。



 だから、ウィリアムの提案は、カレンにとって本当は魅力的なものだ。近衛騎士で王太子付き、爵位も伯爵家であるウィリアムは、かなりの優良物件だ。しかし。



(こんなチャラチャラした男と結婚なんてイヤ!!)



 そんな数々のメリットを覆すデメリットがこの男にはある、そんな思いを込めて、カレンは幸せそうに隣に座る男を睨みつけた。


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