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しおりを挟むハロルドが、なぜこんなにもソフィアに執着しているのか。それは、ハロルドとソフィアが公爵家に来てすぐの頃にあった、ある出来事がきっかけだ。
ソフィアが付いているシャーロットが、五年前王子妃候補となった。シャーロットは十歳になったばかりのことだ。邸内はしばらく落ち着かなかった。
ハロルドとソフィアは新人研修に向かう途中に、たまたまベテランの先輩使用人達がシャーロットを悪く言っているところを通りかかってしまった。使用人の一部が、シャーロットのことを「王子妃には向いていない」と考えている風潮があったのだ。王子妃候補は、シャーロットも合わせて三名おり、使用人の家同士の派閥が原因だった。
また、シャーロットは三名の中でも、当初から優秀であり王子妃になる可能性が極めて高かった。それで余計に別の候補の派閥の者は、不満を募らせていた。
ハロルドは(後から上司へ相談しよう)とその場を離れようとしたが、ソフィアはその場ではっきりと断言した。
「あれほど努力されているお嬢様こそが、誰よりも王子妃に向いております。」
新人ソフィアの剣幕に、先輩達も怯んだほどだった。ソフィアは一度も怯むことなく、先輩使用人達を見据えていた。
この真っ直ぐなソフィアを見て、ハロルドは恋に落ち、五年間口説き続けている。
・・・それから、なかなか研修に来ない二人を上司が探しに来た為、ハロルドが状況を伝え、シャーロットを悪く言う使用人はあっという間に一掃された。
後から分かったことだが、元々別の候補者の派閥の者は、退職させる方向で進めていたようだ。だが、シャーロットが王子妃候補となり、護衛の増員や、王子妃教育に関する準備などで使用人達もてんやわんやだった。すぐに対応できなかったことを、上司はソフィアとハロルドに謝っていた。そして、人が少なくなったためにソフィアとハロルドには急ピッチで一人前になることが求められ、スパルタに鍛えられた二人は、程無くして優秀な人材となった。
◇◇◇
コンコン。
シャーロットの部屋のドアがノックされ、ソフィアが扉を開けると、ハロルドが立っていた。ソフィアは、業務時間中は常に冷静沈着な侍女だが、この時ばかりは眉間に皺を寄せた。
「ハロルド。」
昨日、ルール違反の話をしたばかりだ、と非難の気持ちを込めて、名前を呼ぶ。ハロルドは美しく笑い掛けた。
「ソフィア。旦那様が呼んでいる。一緒に行こう。」
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