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しおりを挟むドロシーに会いに行く当日。ソフィアとハロルドは馬車に乗り、ドロシーと彼女の夫が経営するワイナリーに向かっていた。ソフィアは、ハロルドとこんな密室に二人きりになることに警戒していたが、ハロルドは紳士らしく適切な距離感でいてくれた。
「ドロシーとは、学生時代から仲が良かったのです。」
ドロシーは、勉強熱心でソフィアにとって良きライバルで、良き友人だった。また、取っつきにくいソフィアに臆せず関わってくれた学友はドロシーくらいだった。
「ソフィアの学生時代の話が聞けるのが楽しみだなぁ。」
「なっ……!止めてください。」
嬉しそうににこにこと微笑むハロルドに、鋭い目線を向けるが効いた試しがない。
「ソフィアは、マシュー家のワインをよく飲むの?」
「お酒はあまり飲みませんが……ドロシーが選んで贈ってくれたものはたまに飲みます。」
「じゃあ、次に飲む時は俺と飲もう。」
「え、ええ。」
ソフィアが戸惑いながらも頷くと、ハロルドはまた笑みを深めた。ソフィアは、ハロルドに何か返せているのだろうか。最近そう考えることが多くなっていた。
◇◇◇◇
「ソフィア!」
暫く馬車に揺られた後、ワイナリーに到着するとドロシーが待ち構えていた。久しぶりの再会に、二人は抱き合い、喜んだ。
「ドロシー。こちらが、その……私のこ、婚約者のハロルドよ。」
婚約者、と口にしたのは初めてだった。拙い紹介を、ドロシーは聞かなかったことにしてくれた。
「ハロルド様。ソフィアの友人のドロシーと申します。」
「ああ。今日は招待ありがとう。」
「こちらこそ遠くまでありがとうございます。どうぞこちらへ。」
ドロシーがワイナリーの案内を始める。ドロシーの夫も合流し、互いに紹介を終えると、ハロルドはドロシーの夫と会話を始める。その瞬間、ドロシーがソフィアの耳元で囁いた。
「ちょっとソフィア!聞いてないわよ!」
「聞いてないって、何のこと?」
「貴女の婚約者、とんでもない美形じゃない!」
「え、ええ、そうね。」
「……ねぇ、貴女、騙されていないわよね?」
ドロシーの顔は至極真剣であり、ソフィアを心底心配していることが伝わってくる。友人の優しさに、ソフィアは思わず、頬を緩める。
「ええ。大丈夫よ。」
ドロシーの夫と話している間も、時折ソフィアを気にして視線を送ってくるハロルドへ、ソフィアは笑顔を向けていた。
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