やさしい異世界転移

みなと

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第7章 ゴルディン

【263話】 ゴルディン外での戦闘

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「俺を倒して先に進むんだな」

 男は挑戦的な言葉をした後ユウト相手に戦闘体制を取る。
 そしてそれを見たユウトも戦闘体制を取り、場は膠着状態になった。

「なんで俺の前に現れた?あのまま遠距離から攻撃してるだけで勝てただろ」

 ユウトは尋ねる、ブラッドハンドは遠距離からでも俺に攻撃を何度も与えていた。
 あのままなら、多分やばかった。
 それなのになぜこの十戒士は俺の前に姿を現した?

「別に、ただこの眼でちょっと見てみたかっただけだ」

 と軽くあしらわれブラッドハンドが腕についてるクロスボウに手を伸ばして戦闘が始まろうとする。

 奴が来た理由、そんな疑問を浮かべていても奴との戦闘を避けられるわけはない、すぐさま俺も戦闘体制をしっかりと取る。

 一瞬の沈黙の後、戦いは始まりを告げる。

 ブラッドハンドによる矢の射出、すぐさま体を傾けて回避を行う。
 しかし矢の射出は一度だけではない。

 絶え間なく、矢が放たれる。
 目の前を埋め尽くすような圧倒的な物量、しかし冷静に攻撃を防ぐことに専念し、攻撃のタイミングを見計らう。

 自身の前方に風の魔法を展開し、竜巻を巻き起こす。
 自身へ飛んでくる矢が竜巻に巻き込まれ、そのまま無力化されていく。
 奴の矢の攻撃と俺の風の魔法は相性がいい、次はこちらから攻め……

「ッッ!!」

 攻めに転じようとしたその瞬間だった、前方の竜巻から一本の矢が突き抜け、そのまま左肩へと直撃し貫通する。
 この矢はさっき迫ってきていた無数の矢よりも格段と速く、そのため竜巻に巻き込まれることなく俺に向かって突き抜けてきたのだ。

 さっきの弾幕でこの速度を出されていたらまず間違いなく、俺は死んでいた……
 でもそうしない……いや、出来ないのか?

 少しづつではあるが、奴の魔法についてわかり始めてきた。
 もっと情報を得るために、ここは矢を受けてでも攻撃へと走る。

 さらにもう一本、ブラッドハンドは矢を真っ直ぐ放つ。
 矢は速いが、対処できないほど速いわけではない、なら打ち落として進むまでだ。
 
 そう思い、短剣で矢を斬り落とすためにドンピシャのタイミングで振り下ろした瞬間だった。

「なっ……」

 なんと矢が空中で静止し、短剣が空振りに終わったのだ。
 いったいこれは……一瞬の思考の最中、矢の時間が進んだ。

 それは先ほどよりも速く空を駆け抜け、俺へと迫る。
 なんとか身を捩って躱そうとしたが、唐突なスピードに対処しきれずに腹部へと直撃してしまう。

「ぐぅッッ!!」

 腹部を抑え、その場に静止してしまう。
 内臓は……問題はなさそうだ、しかし今の矢……止まったと思ったら加速した?
 つまりコイツの魔法は……

「矢の操作……もしくは速度の操作、それがお前の魔法か?」

 腹部を抑えながら、ブラッドハンドに問いかける。

「……御名答、俺の魔法は物体の速度を自由に操れる魔法だ。止まったように遅くすることも、目に見えぬほどの速さにする事も可能だ」

「……随分と、詳しく解説してくれるんだな」

「これから死ぬやつなら、他人に情報が漏れることなんてないからな」

 ブラッドハンドはこちらにクロスボウを向ける、あそこまで打ってまだ矢切れとかしないのか?

「残念だが、矢が無くなるだなんてお前が望む展開にはならない。俺の人器は発射した次の瞬間には、矢を生成し装填してくれる代物だ」

 こちらの考えを見透かしたようにブラッドハンドは矢の装填されたクロスボウを見せつける。
 絶体絶命、だけど……

 勝負はまだ着いてない。

 右足に魔力を込め、地面を強く踏みつけた。
 このまま跳び、ブラッドハンドの攻撃を回避するために。

 しかしブラッドハンドはそれを許さない、すぐさま俺の跳ぶであろう前方にクロスボウを構え、矢を放つ。
 このまま前方に跳べば確実に頭部に直撃する。

 だからこそ俺は右足で地面を強く踏みつけ、矢とは反対の後ろへと跳ぶ。

「くっ──」

 一発外したブラッドハンドは、次の矢を装填したクロスボウを俺へ向ける、だけど遅い。

 少しでも攻撃の隙を与えられた俺はそのままブラッドハンドへと駆け抜ける。
 ブラッドハンドに攻撃の隙を与えない、そして奴の目前まで迫り、魔力を込めた拳を構え振りかざす。

 拳がブラッドハンドを捉え、直前まで迫る。
 しかしその拳はすぐに振り払われる。

 俺に直前で迫られたブラッドハンドは、クロスボウによる攻撃から近距離での格闘戦へ移っていた。
 軽く左手で俺の拳を弾いた後、右拳が幾度となく俺の顔面へ炸裂する。

「近距離での戦闘に慣れてないと思ったか?格闘の心得は会得している。お前の攻撃は当たらない」

 転移ボーナスで力が増してる俺に対してブラッドハンドは技術で抵抗し、攻撃を防いでは反撃として拳を叩きつけてくる。

 拳の動きが速くて何度も打撃をくらう……だけど。

「──軽いっ!」

 ブラッドハンドの拳は速いが、しかし威力はそこまででもない。
 今度は左拳でブラッドハンドを殴りにいく。
 想定通り、ブラッドハンドは攻撃を防ぐために動く。
 本来の速度なら、受け切れられたであろう。

 しかし俺の拳は途中で加速し、ブラッドハンドの顔面へ直撃する。

「ぐっ──」

 風の魔法を拳に乗せて、加速させた。
 それによりブラッドハンドは攻撃を受けるタイミングを見誤り、そのまま直撃を許してしまい少し後方へと下がる。

 しかし、殴った感触からして直撃はしていない……おそらく咄嗟に魔力で顔面をガードしていたのであろう。
 だけど一撃入れた。

「攻撃、くらわせたぞ。勝負はまだまだこれからだろ」

 勝負はこれからだ、勝ってフレリアの元へ行かせてもらう!
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