蔑ろにされましたが実は聖女でした ー できない、やめておけ、あなたには無理という言葉は全て覆させていただきます! ー

みーしゃ

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第一部 王立宮廷大学を目指そう!

5. 火水害屋敷破壊事件

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 私は小さな頃、ある事件を起こしている。

 カリスティア王国では、貴族の家に生まれた子供は、体内の魔力が安定する3歳頃までに、ほぼ全員が魔力の測定を受ける。
 私にその頃の記憶はあまりないのだが、両親が私に魔法を使わせないようにしている事だけは、すぐに分かった。
 それは、他の貴族の子供たちとの会話からも明らかだった。

「……カテリーナは、何で魔法を使おうとしないの?」

「カテリーナちゃん、そのカップにお水の魔法を使っ……。いや、カテリーナちゃんは何もしなくていいのよ」

「マクリナ、カテリーナさんの前では魔法を使ったり、魔法の話をしてはダメよ」

「……俺は知ってるぞ。お前には魔力がほとんどないことを。やーい、やーい、オド無しー!!」

 私が傷つく度に、母は私を抱きしめ、優しい口調で話してくれた。
「カテリーナ、あなたは今は魔法を使わなくても良いの。あなたには、あなたにしかできない、大切な役目がきっとあるはずだから」

 母はいつも私に優しかった。
 その美しく優しい眼差しは、私の記憶にも鮮明に残り続けている。
 皆と違って魔法が使えなくても、母がいるだけで、私は満足だった。

 しかし、私が3歳の頃、母がいなくなった。
 私は成長するにつれ、今度は魔法というものに、強い関心を抱くようになった。

「危ないから」
「身体に良くないから」
「あなたには向いていないから」

 持っている魔力オドを使い過ぎれば、極度の疲労状態になるし、さらにそれを過ぎて使えば、気を失ったり、生命力そのものを削ってしまうといわれている。
 そのため、魔法を禁じられていた私だったが、それでも魔法を使ってみたいという思いだけは、日に日に強くなっていった。

 そして、私は8歳の誕生日を迎えた日、誰にも気付かれないように皆が寝静まったあと、気を失っても良いように、自分の部屋で着火の魔法を試みた。
 その結果、やはり気を失ってしまったのだが、目が覚めると、そこには衝撃の光景が広がっていた。

「えっ?」

 兄が私を抱きかかえながら、屋敷の半分がごうごうと燃え盛っているのが見えたのだ。
 周りを見渡すと、義妹は義弟を抱きかかえている義母のもとで泣きじゃくり、使用人たちは、火事での対応で、疲れきった顔をしていた。
 私の目覚めに気づくと、兄はすぐさま声を上げた。

「おお、カテリーナが目を覚ましたっ! みんな、聞いてくれ。カテリーナの部屋から火が出たにも関わらず、やけど一つしていない。これはまさに、カテリーナが神々の寵愛と加護に溢れている証だぞ!」

 そのときの使用人たちの唖然あぜんとした表情は、今でもはっきりと目に焼き付いている。

 そして火事から3ヶ月後、大失敗から学んだ私は、もう同じ失敗を繰り返してはならないと、新たな決意をしたのだった。

――火がいけなかったんだ! 水なら屋敷が燃える事は無いから、水の魔法を試せば良かったんだ!

 館は火事により修復中だったため、残った反対側の3階に、私の新しい部屋があった。
 その部屋で同じく皆が寝静まったあと、今度は水を出す魔法を試したのだった。
 その結果、やはり気を失ってしまったのだが、目を覚ますと、以前と同じような景色がそこにはあった。

「はっ?」

「カテリーナが目を覚ましたぞっ! 皆、聞いてくれ。カテリーナの部屋からは止まることの無い水が溢れ続けていた! これは、神の加護を得た神聖魔法に他ならない! やはりカテリーナは、神々の寵愛を受けているんだ!」

 恐らく当時の使用人たちは、「いったいこの人は何を言っているんだ?」と思った事だろう。
 完全に問題点がズレているし、何よりも、私を叱るのではなく、誉めたのだから。

「ああそうだ! これは屋敷を建て替えよ、という神々の啓示かも知れないなっ!」

 再度、皆が唖然あぜんとした顔をしていたのを覚えている。
 こうして、火災と水害という、一見両立し得ないような災害に遇った私たちの屋敷は、新たな屋敷へと建て替えられることになった。


   ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


 新しい屋敷が完成し、自分の部屋に入居する際、メイド長が鬼のような形相で発した言葉が、今でも私の心に突き刺さっている。

「お嬢さま。平民の私ですら魔力オドが4程度はございます。お嬢さまには残念ながら魔力オドがほとんど無く、魔法の才能は全くございません。この新しい屋敷では、絶対に絶対に絶対に、魔法だけは使わないようにしてくださいねっ!」

――ショックだった。
 私の興味があること、やってみたいことが全て否定されてしまったのだ。

 それからの私は、何をやってもダメなんだ。才能が無いから、何をやっても無駄なんだと、思うようになった。
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