蔑ろにされましたが実は聖女でした ー できない、やめておけ、あなたには無理という言葉は全て覆させていただきます! ー

みーしゃ

文字の大きさ
7 / 67
第一部 王立宮廷大学を目指そう!

6. 母と父と義母

しおりを挟む
 兄や父が不在のときのルクサリス家では、私は肩身の狭い思いを強いられている。

 現在、ルクサリス侯爵家の継承権第一位を持つ私が、なぜないがしろにされるかといえば、その主たる原因は、義母カリスタによるものだ。


   ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


 私の母がいなくなったとき、ルクサリス侯爵家の名跡は、兄のアレクシオスが継ぐ事になった。
 なぜ、父、ネフィリオスが継なかったかといえば、正確に言えば、父はルクサリス家の継承権を持っていなかったため、継なかったからだ。

 父はグリュファス伯爵家の五男として生まれた。
 当時のグリュファス家には、父、ネフィリオスに継がせられるような領地や財産の余裕は、全くなかった。
 そこで、余裕の無い貴族の子弟ではよくある話だが、特に三男以下の男性は、女性の子供しかいない貴族の家へ、婿養子入りを目指すことが多い。

 一定の魔力を有する貴族出身の者は、高貴なる血統の責務というプライドや、先祖に対する責任感などから、庶民の身分にまでは落ちたくないと思うものがほとんどだった。
 所領がなければ、次の代からは貴族の身分が保証されない。
 優れた魔法の才能でもない限り、騎士として専業軍人になるか、王家や大きな貴族の家臣入りを目指すしかない。

 父はとても内向的で、騎士としての力量は正直乏しく、文官向きの人間だった。
また父は、自らの将来に対する野心も無かったため、王家の直臣として、地味な行政官僚としての職に就いていた。
 平時は行政官僚として働き、有事の際は騎士団の補給関連の仕事を行う。
毎日が裏方の仕事で、自分の人生は平穏なまま一生を終えるのだろうと、父は考えていたそうだ。

 しかしある日、父の運命を変えてしまう、大変な出来事が起こった。

 母、アナスタシア・ルクサリスは、ルクサリス侯爵家の女性当主で、神聖騎士団の団長を務めており、また、神聖魔法で人々を救った聖女として、国内ではその名を知らぬ者がいないほど、有名な存在になっていた。

 さらに、かなりの美人でもあったため、「カリスティアの聖女」の名は、数々のうわさや尾ひれが付いた状態で、自国のみにとどまらず、近隣諸国にまで広がっていった。

 実際、母の元には、国内外の有力貴族から、縁談が引っ切り無しに届いていたそうだ。
 また、当時評判の悪かった第三王子からも、求婚のアプローチがしつこく行われており、周囲の認識はすでに嫌がらせの域にまで達していたそうだが、そのことにも母はうんざりしていたようだった。

 しかし、母は貴族社会の有力者でありながら、当時は国家の宝ともいわれる聖女も兼ねており、その聖女様が結婚適齢期に来ていたため、将来の婚姻自体が、政治問題化、および、外交問題化し始めていた。
 当時の国王もこの問題を憂慮したため、ついには王命が下される事態となった。

――聖女アナスタシアへ。私はそなたの意志を最大限尊重したい。
 しかし、そなたの婚姻を巡って、国内外で様々な問題が起き始めてしまっている。
 この問題を解消するためにも、必ず6か月以内に、国内の貴族の中から婚姻相手を選ぶようにして欲しい

 王命を受けた以上、侯爵家の当主として、全うしなければならない。
 母としては、ルクサリス侯爵家の名跡を残さなければならないという義務感と、同時に、他の有力貴族が権勢のために、自らの名を利用することだけは、避けたいと思っていた。

 そこで、母の目に止まったのが、父、ネフィリオスだった。
 父は当時、各騎士団の補給業務も担当をしており、地味だが堅実な仕事ぶりが評価されていた。
 母も幾度となく、共に仕事をしたことがあったため、母はその人柄や、出自なども含めて、ネフィリオスの事をよく知っていた。

 父は、素顔こそ美男子の部類に入る顔つきではあったものの、雰囲気は暗く、声も小さく、引っ込み思案な性格も相俟(あいま)って、頼りなさそうで、全く目立たない存在だった。
 さらには、出自は小さな伯爵家の五男で、継ぐべく財産もなく、騎士としての強さも全く無かったため、女性たちからの人気は皆無だった。

ある日、父は母から、唐突に声をかけられた。

「やあネフィリオス殿。私と結婚しよう!」
「???」

 当時父は、地位や財産や才能を何一つ持たない自分に、かの有名な聖女様が、どのような意図を持って、そのような冗談を言っているのだろうと思ったそうだ。

「はい、か、いいえ。どちらだ?」
「はぁ」
「よし、決まりだな。あとはこちらで進めておく」

 父曰く、一瞬の出来事だったらしい。

 そして、母主導のもと、あれよあれよと物事が進み、父ネフィリオスは、ルクサリス家の権利を一切持たないまま、聖女の元へ婿入りすることになった。
 母にとっては、野心もなく誠実で、外戚としての影響もほとんどなく、自らの足りないところを補填してくれるような、理想の存在だったらしい。

 やがて兄が生まれ、私が生まれた。
 今にして思えば、家族四人が揃っていた頃が、一番幸せな時期だったかも知れない。

 しかし、私が3歳の頃、母がいなくなると生活が一変した。
 父は領地経営において、主に補佐や事務管理的な仕事を受け持っていたが、母が行っていた、決済や方針を決める仕事までも、行わなければならなくなったからだ。
 当時、母の名声はルクサリス領内における人の出入りを多くし、それに附随して領内の経済が発展していく過渡期であった。
 ルクサリス家にも家宰や家臣たちはいたが、急激な発展に対して人手が足りておらず、すでに対応しきれていない状態だった。

 そのような中、父ネフィリオスの実家であるグリュファス家が、強く干渉してくるようになった。
 グリュファス家としては、母がいなくなった今こそが好機とばかりに、発展著しいルクサリス家との取引を増やし、また、内部から利益を誘導できる人物を、ルクサリス家に置きたかったのである。

 そして送り込まれた人間が、義母カリスタだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

【完結】人々に魔女と呼ばれていた私が実は聖女でした。聖女様治療して下さい?誰がんな事すっかバーカ!

隣のカキ
ファンタジー
私は魔法が使える。そのせいで故郷の村では魔女と迫害され、悲しい思いをたくさんした。でも、村を出てからは聖女となり活躍しています。私の唯一の味方であったお母さん。またすぐに会いに行きますからね。あと村人、テメぇらはブッ叩く。 ※三章からバトル多めです。

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

『王都の神童』と呼ばれた俺、職業選定でまさかの【遊び人】三連発で追放される。……が、実は「全職業のスキル」を合算して重ねがけできる唯一のバグ

よっしぃ
ファンタジー
王都で「神童」の名をほしいままにしていた少年、ディラン・アークライト(17歳)。   剣を握れば騎士団長を唸らせ、魔法を学べば賢者を凌駕する。誰もが彼を「次代の勇者」と信じて疑わなかった。  しかし、運命の職業選定で彼が得たのは――【遊び人】。   それも、三つの職業スロットすべてが【遊び人】で埋まるという、前代未聞の怪現象だった。 「期待外れだ」 「国の恥晒しめ」   掌を返した周囲によって、ディランは着の身着のままで街を追放される。  だが、かつて神童と呼ばれた彼の「分析力」は死んでいなかった。 『……Lv1なのに、ステータスが異常に高い? それに経験値が分散せず、すべて加算されている……?』  彼だけが気づいた真実。  それは【遊び人】という名に偽装された、この世界の管理者権限(Free-Hander)であり、全職業のスキルを制限なく使用・強化できるバグ技(デバッグモード)への入り口だったのだ。  これは、理不尽に捨てられた元・神童が、その頭脳とバグ能力で世界を「攻略」し、同じく不遇な扱いを受けていた美少女騎士(中身は脳筋)と共に、誰よりも自由に成り上がる物語。 【著者プロフィール】アルファポリスより『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』を出版、オリコンライトノベル部門18位を記録。本作は2月に2巻刊行予定。

追放された聖女は旅をする

織人文
ファンタジー
聖女によって国の豊かさが守られる西方世界。 その中の一国、エーリカの聖女が「役立たず」として追放された。 国を出た聖女は、出身地である東方世界の国イーリスに向けて旅を始める――。

慈愛と復讐の間

レクフル
ファンタジー
 とある国に二人の赤子が生まれた。  一人は慈愛の女神の生まれ変わりとされ、一人は復讐の女神の生まれ変わりとされた。  慈愛の女神の生まれ変わりがこの世に生を得た時、必ず復讐の女神の生まれ変わりは生を得る。この二人は対となっているが、決して相容れるものではない。  これは古より語り継がれている伝承であり、慈愛の女神の加護を得た者は絶大なる力を手にするのだと言う。  だが慈愛の女神の生まれ変わりとして生を亨けた娘が、別の赤子と取り換えられてしまった。 大切に育てられる筈の慈愛の女神の生まれ変わりの娘は、母親から虐げられながらも懸命に生きようとしていた。  そんな中、森で出会った迷い人の王子と娘は、互いにそれと知らずに想い合い、数奇な運命を歩んで行くこととなる。  そして、変わりに育てられた赤子は大切に育てられていたが、その暴虐ぶりは日をまして酷くなっていく。  慈愛に満ちた娘と復讐に駆られた娘に翻弄されながら、王子はあの日出会った想い人を探し続ける。  想い合う二人の運命は絡み合うことができるのか。その存在に気づくことができるのか……

身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」 魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。 鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。 (な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?) 実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。 レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。 「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」 冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。 一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。 「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」 これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

処理中です...