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第一部 王立宮廷大学を目指そう!
34. 砕け散った宝石
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アレクシオスは、倒れていたキリロスの身体を抱き起こし、呼吸と脈を確かめた。
意識こそ失っていたが、命に別状はなさそうだった。
彼はそっと手をかざし、神聖魔法を唱える。
「……この者の身体と精神を癒し、回復させたまえ」
「キ、キリロスは大丈夫ですか?」
震える声でカテリーナが尋ねる。
「ああ。命に関わるようなケガもないようだし、しばらく安静にしておけば大丈夫だよ」
アレクシオスはそう言って頷き、そっとカテリーナの肩に手を置いた。
その仕草には、キリロスを傷つけずに救ってくれた彼女への感謝の想いが込められていた。
一呼吸おいてからアレクシオスは立ち上がり、一歩前に進み出た。
「一本! 本決闘は三本先取により、カテリーナの勝利で終結とする! 両者、これにて遺恨なく、争いはここで終わりとする!」
キリロスはまだ気を失っていたが、カリスタや使用人たちに向けて、アレクシオスは高らかに宣言した。
――ワーーーッ!
その後、安堵した使用人たちから大きな歓声が湧き起こった。
「……むっ!」
ふと、アレクシオスの視線が足元に落ちた。
砕けた宝石の欠片に残る魔力の痕跡が、ただの強化魔法だけでなく、支配魔法のものであることに気づいたのだ。
彼が慌てて欠片を拾おうとすると、それは塵と煙となって消えていった。
「これは……ただの身体強化魔法じゃない。強化に加えて……支配魔法の術式まで仕込まれている……」
アレクシオスの表情が険しくなる。
カテリーナも、キリロスが操られていたことには既に気づいていた。
「キリロスは……誰かに操られて戦っていたのですか?」
「……少し違う。誰かが戦いの最中に操っていたわけじゃない。一定の条件が揃うと、自動的に行動を起こすような……そんな感じだね」
「どんな魔法なんですか?」
「宝石への付与魔法だよ。ある条件下で身体強化と支配魔法が発動して、戦闘後には痕跡ごと消し去る。極めて巧妙な術式だね」
「そんな高度な魔法を使える人がいるのですか?」
「強力な魔力を持ち、付与魔法と……地下ギルドなどで扱われる支配魔法にも精通している者。普通の魔導師では無理だね。国内でも、ごく限られた人物にしかできないはずだよ」
「……一体、誰が?」
アレクシオスには心当たりがあったが、答えは口に出さなかった。
そのころ、使用人たちの歓声の中、ゼノビアが母カリスタに詰め寄っていた。
「お母さまっ! キリロスのあの強化魔法……お母さまが仕掛けたんですね?」
「……」
「あの護符の力があるって言ってたネックレス……あれを渡したのはお母さまでしょう!」
「…………」
「なぜ、キリロスをあんな危険に晒したんですかっ!」
「…………落ち着きなさい、ゼノビア」
「落ち着いてなんか……!」
「その件、私からも詳しくお話を伺いたいですね」
興奮気味のゼノビアとの会話に、アレクシオスが割って入った。
ゼノビアは「あ、しまった」といった表情を見せ、すぐに口を閉ざした。
カリスタは静かに、無表情のままアレクシオスに視線を向ける。
「……何でしょうか?」
「キリロスに施されていた身体強化と支配魔法について、何か心当たりはありますか?」
その問いに、カリスタはわずかに眉を動かしたが、すぐに平静を取り戻し、静かに首を振った。
「あれは、我が家に来た行商人から、身を守るための魔法が付与されていると聞いて購入したものです。キリロスのお守りとして。まさか、そんな術式が組み込まれていたとは……私も驚いているところです」
その声はどこまでも優雅で、隙がなかった。
だが、アレクシオスの眼差しは鋭かった。
言葉は返さず、ただじっと彼女の瞳を見つめる。
その沈黙のなか、カリスタから底知れぬ違和感、寒気にも似た感覚を覚えていた。
「……もしお疑いでしたら、あなたの神聖魔法で、私が嘘をついているかどうか、確かめて頂いても構いませんよ」
思わぬ提案にアレクシオスは内心驚いていた。
ちょうど、神聖魔法の同意をどう得るか、考えていた矢先だったからだ。
彼の思考が素早く巡る。
――母上は、とても頭が良く慎重な性格だ。ブラフや賭けるような真似は絶対にしない。
おそらく、魔法での記憶改ざんなど、何らかの対策を講じているということだ。
下手に潔白を証明されたら、こちらが不利になる……!
アレクシオスはにっこりと微笑んだ。
しかしその笑みには、ほんのわずかに皮肉が混じっていた。
「いえいえ、母上に自白魔法など、とんでもない。私はただ、キリロスがなぜあのような状態になったのか、知りたかっただけです」
「ああ、そうですか」
「はい。あのまま暴走が続いていたら、私もやむを得ず、攻撃魔法を使わざるを得なかったかもしれませんから」
カリスタは平然としたままだったが、僅かに片方の眉が動いたようにも見えた。
「……私のほうでも調査を進めましょう。愛する息子を危険にさらした商人を、放置するわけにはいきませんから」
その声は冷静で理知的だった。
しかし、その奥に潜む何か――敵意にも似たようなものを、アレクシオスは感じ取っていた。
意識こそ失っていたが、命に別状はなさそうだった。
彼はそっと手をかざし、神聖魔法を唱える。
「……この者の身体と精神を癒し、回復させたまえ」
「キ、キリロスは大丈夫ですか?」
震える声でカテリーナが尋ねる。
「ああ。命に関わるようなケガもないようだし、しばらく安静にしておけば大丈夫だよ」
アレクシオスはそう言って頷き、そっとカテリーナの肩に手を置いた。
その仕草には、キリロスを傷つけずに救ってくれた彼女への感謝の想いが込められていた。
一呼吸おいてからアレクシオスは立ち上がり、一歩前に進み出た。
「一本! 本決闘は三本先取により、カテリーナの勝利で終結とする! 両者、これにて遺恨なく、争いはここで終わりとする!」
キリロスはまだ気を失っていたが、カリスタや使用人たちに向けて、アレクシオスは高らかに宣言した。
――ワーーーッ!
その後、安堵した使用人たちから大きな歓声が湧き起こった。
「……むっ!」
ふと、アレクシオスの視線が足元に落ちた。
砕けた宝石の欠片に残る魔力の痕跡が、ただの強化魔法だけでなく、支配魔法のものであることに気づいたのだ。
彼が慌てて欠片を拾おうとすると、それは塵と煙となって消えていった。
「これは……ただの身体強化魔法じゃない。強化に加えて……支配魔法の術式まで仕込まれている……」
アレクシオスの表情が険しくなる。
カテリーナも、キリロスが操られていたことには既に気づいていた。
「キリロスは……誰かに操られて戦っていたのですか?」
「……少し違う。誰かが戦いの最中に操っていたわけじゃない。一定の条件が揃うと、自動的に行動を起こすような……そんな感じだね」
「どんな魔法なんですか?」
「宝石への付与魔法だよ。ある条件下で身体強化と支配魔法が発動して、戦闘後には痕跡ごと消し去る。極めて巧妙な術式だね」
「そんな高度な魔法を使える人がいるのですか?」
「強力な魔力を持ち、付与魔法と……地下ギルドなどで扱われる支配魔法にも精通している者。普通の魔導師では無理だね。国内でも、ごく限られた人物にしかできないはずだよ」
「……一体、誰が?」
アレクシオスには心当たりがあったが、答えは口に出さなかった。
そのころ、使用人たちの歓声の中、ゼノビアが母カリスタに詰め寄っていた。
「お母さまっ! キリロスのあの強化魔法……お母さまが仕掛けたんですね?」
「……」
「あの護符の力があるって言ってたネックレス……あれを渡したのはお母さまでしょう!」
「…………」
「なぜ、キリロスをあんな危険に晒したんですかっ!」
「…………落ち着きなさい、ゼノビア」
「落ち着いてなんか……!」
「その件、私からも詳しくお話を伺いたいですね」
興奮気味のゼノビアとの会話に、アレクシオスが割って入った。
ゼノビアは「あ、しまった」といった表情を見せ、すぐに口を閉ざした。
カリスタは静かに、無表情のままアレクシオスに視線を向ける。
「……何でしょうか?」
「キリロスに施されていた身体強化と支配魔法について、何か心当たりはありますか?」
その問いに、カリスタはわずかに眉を動かしたが、すぐに平静を取り戻し、静かに首を振った。
「あれは、我が家に来た行商人から、身を守るための魔法が付与されていると聞いて購入したものです。キリロスのお守りとして。まさか、そんな術式が組み込まれていたとは……私も驚いているところです」
その声はどこまでも優雅で、隙がなかった。
だが、アレクシオスの眼差しは鋭かった。
言葉は返さず、ただじっと彼女の瞳を見つめる。
その沈黙のなか、カリスタから底知れぬ違和感、寒気にも似た感覚を覚えていた。
「……もしお疑いでしたら、あなたの神聖魔法で、私が嘘をついているかどうか、確かめて頂いても構いませんよ」
思わぬ提案にアレクシオスは内心驚いていた。
ちょうど、神聖魔法の同意をどう得るか、考えていた矢先だったからだ。
彼の思考が素早く巡る。
――母上は、とても頭が良く慎重な性格だ。ブラフや賭けるような真似は絶対にしない。
おそらく、魔法での記憶改ざんなど、何らかの対策を講じているということだ。
下手に潔白を証明されたら、こちらが不利になる……!
アレクシオスはにっこりと微笑んだ。
しかしその笑みには、ほんのわずかに皮肉が混じっていた。
「いえいえ、母上に自白魔法など、とんでもない。私はただ、キリロスがなぜあのような状態になったのか、知りたかっただけです」
「ああ、そうですか」
「はい。あのまま暴走が続いていたら、私もやむを得ず、攻撃魔法を使わざるを得なかったかもしれませんから」
カリスタは平然としたままだったが、僅かに片方の眉が動いたようにも見えた。
「……私のほうでも調査を進めましょう。愛する息子を危険にさらした商人を、放置するわけにはいきませんから」
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しかし、その奥に潜む何か――敵意にも似たようなものを、アレクシオスは感じ取っていた。
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