蔑ろにされましたが実は聖女でした ー できない、やめておけ、あなたには無理という言葉は全て覆させていただきます! ー

みーしゃ

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第一部 王立宮廷大学を目指そう!

43. 動揺

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 カテリーナは胸の奥で、暗い影がじわじわと広がっていくのを感じていた。
 それは義母の厳しい言葉に押しつぶされ、何をやってもダメだと信じ込んでいた頃の自分、叱られることを恐れ、びくびくしていた自分の記憶だった。

――周囲のざわめきが、すべて自分への悪口のように感じる。
 やっぱり、私なんか受験するべきじゃなかったのでは……

 悪い考えばかりが、次々と頭の中に思い浮かんでいた。

「次の受験者、前へ!」

 担当者の鋭い声が、さらにカテリーナを動揺させる。

「この測定用の水晶に手を当てて、深呼吸をして」

 言われた通りに手を当てたが、心臓の高鳴りは止まらなかった。

「……あれ?」

 担当者の顔に困惑の色が浮かんだ。

「一度手を離して、もう一度最初からやってみようか」

 再び測定するが、担当者の眉間のしわは深まるばかりだった。

「すまない。ちょっとここで待っていてくれ。次の受験者、先に」

 代わりに呼ばれたのは、テオフラストスだった。
 水晶に手を当てて、深呼吸をする。

魔力オドは1000超。加護の色は赤だ」

「おおっ!」
「さすが!」

 取り巻きたちが声をあげ、テオフラストスは自信満々に受験票を水晶にかざした。

「うむ、測定器に異常はないようだ。では、君、もう一度」

 担当者に促され、カテリーナは周囲の人間の視線が集中する中、再び手を当てた。

「……うーん、数値化は難しいが、魔力オドはせいぜい1あるかないかだな。ただ、加護の色がまったくない人間は、見たことも聞いたこともない。そこが気になる……。別の水晶で再測定することも、異議申し立てをすることもできるが、どうする?」

 カテリーナは震える声で答えた。

「そ、そのままで大丈夫です」

 カテリーナは一刻も早くこの場を離れたかった。
 急いで測定用の水晶に受験票をかざし、結果を記録する。

「ま、魔力が1だけでなく、女神さまの加護すらないのかよwwwww」

 テオフラストスの大きな笑い声が響き渡った。
 その言葉を聞き、少し遅れて周囲からもクスクスと笑いが広がる。

――早く……早くここから逃げたい!

 カテリーナの心は、義母や使用人たちから蔑ろにされ、完全に自信を無くしていた頃の自分に戻っていた。
 慌てて次の会場へ向かおうとした瞬間、足がもつれて盛大に転んでしまった。

「ちょ、お前、何やってんだよw」

 テオフラストスが腹を抱えて笑う。
 それにつられ、周囲のクスクスという笑い声が、一気に大きな嘲笑へと変わってしまった。

「あっはっは」
「何もできないって噂は本当だったのね」
「さすがはルクサリス家の落ちこぼれ」
「加護が無い人間なんて、聞いたことがないわ」
「あいつが受験するくらいなら、俺は絶対に受かるわ」

 受験生にとって、魔力オド量の測定は緊張の瞬間だった。
 体内の魔力オド量が合否に直結する訳では無かったが、他の受験生の魔力オド量と自分の魔力オド量を比べずにはいられなかった。
 そのため、自分より低い数値の者を目にすると安堵し、張り詰めた神経の反動もあり、このようなきっかけから嘲笑が起きてしまった。

 これらの笑い声により、カテリーナの心は深く傷つけられていた。
 集団の中で、嘲笑の的にされること程、苦しくて辛いものはない。
 カテリーナは、転んだまま涙があふれ、起き上がる気力すら無くしていた。

――もうやめよう……魔力1の私が宮廷大学を受験しようとしたこと自体が間違いだったの。領地に帰って、目立たぬように静かに暮らそう……。

 人間は視野が狭まると、悪い考えばかりが頭に浮かんでしまうようになる。
 カテリーナは、今まさにそのような状態になっていた。

 うつむきながらゆっくりと立ち上がり、この場で受験辞退を申し出ようと思い、口を開いた瞬間だった。

「あの……」
「何を笑っているんだ、君たち! これが騎士や魔導師を目指す者の態度か!」

 受験会場に、突如雷鳴のような声が響き渡った。
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