43 / 67
第一部 王立宮廷大学を目指そう!
42. 試験開始
しおりを挟む
ついに、カリスティア王立宮廷大学の入学試験初日を迎えた。
数日前から兄アレクシオスは再び休暇を取り、カテリーナのために学科と実技、両方の試験対策の総仕上げを手伝ってくれていた。
初日は学科試験のみ。選択科目の記述試験を終えた後、一人五分ほどの口頭試問が行われた。
実はこの口頭試問は面接も兼ねており、順番を待つ間の立ち居振る舞いまでも観察され、試験の対象となっていた。
アレクシオスに太鼓判を押されていたこともあり、カテリーナは自信を持って筆記試験に臨み、全問解き切れたという手応えを感じていた。
口頭試問でも、淀みなく完答することができ、さらに義母カリスタの厳しい教育が功を奏したため、完璧な貴族令嬢としての立ち居振る舞いを見せることもできていた。
試験を終え、会場を出るとアレクシオスが待っていた。
「どうだった?」
かけるべき言葉を何度も考えていたアレクシオスだったが、カテリーナの自信に満ちた表情を見て、自然にそう尋ねてしまった。
「上手くいったと思います」
カテリーナははっきりと答えた。
「ああ、良かった! カテリーナなら学科は心配ないと思っていたけど、僕も緊張してしまったよ」
「私も最初は少し緊張しましたが、知っている問題が多くて、落ち着いて答えられました」
「最後の問題も?」
「はい!」
その言葉にアレクシオスは安堵し、また、感心もした。
宮廷大学の学科試験は、最初の三分の一が易しい問題、次が標準的な問題、最後の三分の一が難しい問題で構成される。特に最後の数問は、ほとんどの受験生が解けない程の難問であることが知られていた。
「口頭試問も問題なかったんだね」
「はい。褒めていただいたんですよ!」
カテリーナの笑顔を見て、アレクシオスは全て順調だと確信し、すぐさま、明日の実技試験と、明後日の受験者トーナメントの方へと頭を切り替えた。
「よし、実技試験に向けて、最後の確認と軽い反復練習だけを行おう。それが終わったら僕が回復魔法をかけるから、今日は早めに休むんだ」
「はい! ありがとうございます、お兄さま!」
カテリーナは、ここまで尽くしてくれて頼れる兄に、改めて感謝を覚えた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
二日目の朝になった。
カテリーナはぐっすりと眠れたことから、兄の回復魔法の効果をあらためて感じていた。
騎士コース実技試験では、魔法が一切禁止されている。
仮に支援魔法をかけたとしても、受験票に刻まれた魔法印が無効化し、魔法の使用を検知・記録までするようになっている。
そのため、自らに支援魔法をかけても意味はないし、妨害のために他人に何らかの魔法をかけても、すぐに判明してしまう仕組みになっていた。
「僕は家族だから今日は大学に入れないけど、練習通りやれば絶対に大丈夫。今まで苦しい練習を積み重ねて、やり遂げてきた自分自身を信じて!」
「はい! 絶対に合格して、お父さまやお母さま、お兄さまと同じく宮廷大学に絶対に入ります!」
「その意気だ!」
アレクシオスはカテリーナの元気な返事を聞き、安心して送り出せると確信した。
――しかし、パスする予定の魔法の実技試験についてまでは、言い忘れていたことに気づくことができなかった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
カテリーナは所定の手続きを済ませ、まず最初の魔法の実技試験会場へと向かった。
――魔力測定後に、実技試験は辞退したいと伝えるだけよね。よし、行こう!
受験票を係員に見せ、複数ある列の一つに並んだそのとき――
「おっと、これはルクサリス家のご令嬢じゃありませんか!」
背後から声をかけてきたのは、ニヤついた顔の男の受験生だった。
「オドなしのくせに俺たちと同じ大学を受験だって? 裏口入学でも狙ってるのか? 傑作だなこれは! うわはっは!」
――テオフラストス・アヴァリオス!
カテリーナが驚いていると、テオフラストスとその友人たちの嘲笑が伝わり、周囲の視線が一斉に集まった。
「ああ、ルクサリス家の……」
「母親や兄と違って、できそこないの……」
「たしか体内魔力がほとんどなかったはずだけど……」
宮廷大学は同年代の貴族の子息令嬢が多く受験するため、ちょっとした社交界のような雰囲気が漂っていた。
聖女アナスタシアの娘であり、神聖騎士団副団長アレクシオスの妹――カテリーナは否応なく注目を集める存在だった。
カテリーナは幼いころの苦い記憶がよみがえっていた。
「やーい、やーい、オドなし!」
小さなころから、彼にいじめられ続けてきた。
つい先ほどまで自信に満ちていたカテリーナだったが、周囲の見下されたような視線と、過去の嫌な記憶から、自信が一気にしぼんでいった。
数日前から兄アレクシオスは再び休暇を取り、カテリーナのために学科と実技、両方の試験対策の総仕上げを手伝ってくれていた。
初日は学科試験のみ。選択科目の記述試験を終えた後、一人五分ほどの口頭試問が行われた。
実はこの口頭試問は面接も兼ねており、順番を待つ間の立ち居振る舞いまでも観察され、試験の対象となっていた。
アレクシオスに太鼓判を押されていたこともあり、カテリーナは自信を持って筆記試験に臨み、全問解き切れたという手応えを感じていた。
口頭試問でも、淀みなく完答することができ、さらに義母カリスタの厳しい教育が功を奏したため、完璧な貴族令嬢としての立ち居振る舞いを見せることもできていた。
試験を終え、会場を出るとアレクシオスが待っていた。
「どうだった?」
かけるべき言葉を何度も考えていたアレクシオスだったが、カテリーナの自信に満ちた表情を見て、自然にそう尋ねてしまった。
「上手くいったと思います」
カテリーナははっきりと答えた。
「ああ、良かった! カテリーナなら学科は心配ないと思っていたけど、僕も緊張してしまったよ」
「私も最初は少し緊張しましたが、知っている問題が多くて、落ち着いて答えられました」
「最後の問題も?」
「はい!」
その言葉にアレクシオスは安堵し、また、感心もした。
宮廷大学の学科試験は、最初の三分の一が易しい問題、次が標準的な問題、最後の三分の一が難しい問題で構成される。特に最後の数問は、ほとんどの受験生が解けない程の難問であることが知られていた。
「口頭試問も問題なかったんだね」
「はい。褒めていただいたんですよ!」
カテリーナの笑顔を見て、アレクシオスは全て順調だと確信し、すぐさま、明日の実技試験と、明後日の受験者トーナメントの方へと頭を切り替えた。
「よし、実技試験に向けて、最後の確認と軽い反復練習だけを行おう。それが終わったら僕が回復魔法をかけるから、今日は早めに休むんだ」
「はい! ありがとうございます、お兄さま!」
カテリーナは、ここまで尽くしてくれて頼れる兄に、改めて感謝を覚えた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
二日目の朝になった。
カテリーナはぐっすりと眠れたことから、兄の回復魔法の効果をあらためて感じていた。
騎士コース実技試験では、魔法が一切禁止されている。
仮に支援魔法をかけたとしても、受験票に刻まれた魔法印が無効化し、魔法の使用を検知・記録までするようになっている。
そのため、自らに支援魔法をかけても意味はないし、妨害のために他人に何らかの魔法をかけても、すぐに判明してしまう仕組みになっていた。
「僕は家族だから今日は大学に入れないけど、練習通りやれば絶対に大丈夫。今まで苦しい練習を積み重ねて、やり遂げてきた自分自身を信じて!」
「はい! 絶対に合格して、お父さまやお母さま、お兄さまと同じく宮廷大学に絶対に入ります!」
「その意気だ!」
アレクシオスはカテリーナの元気な返事を聞き、安心して送り出せると確信した。
――しかし、パスする予定の魔法の実技試験についてまでは、言い忘れていたことに気づくことができなかった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
カテリーナは所定の手続きを済ませ、まず最初の魔法の実技試験会場へと向かった。
――魔力測定後に、実技試験は辞退したいと伝えるだけよね。よし、行こう!
受験票を係員に見せ、複数ある列の一つに並んだそのとき――
「おっと、これはルクサリス家のご令嬢じゃありませんか!」
背後から声をかけてきたのは、ニヤついた顔の男の受験生だった。
「オドなしのくせに俺たちと同じ大学を受験だって? 裏口入学でも狙ってるのか? 傑作だなこれは! うわはっは!」
――テオフラストス・アヴァリオス!
カテリーナが驚いていると、テオフラストスとその友人たちの嘲笑が伝わり、周囲の視線が一斉に集まった。
「ああ、ルクサリス家の……」
「母親や兄と違って、できそこないの……」
「たしか体内魔力がほとんどなかったはずだけど……」
宮廷大学は同年代の貴族の子息令嬢が多く受験するため、ちょっとした社交界のような雰囲気が漂っていた。
聖女アナスタシアの娘であり、神聖騎士団副団長アレクシオスの妹――カテリーナは否応なく注目を集める存在だった。
カテリーナは幼いころの苦い記憶がよみがえっていた。
「やーい、やーい、オドなし!」
小さなころから、彼にいじめられ続けてきた。
つい先ほどまで自信に満ちていたカテリーナだったが、周囲の見下されたような視線と、過去の嫌な記憶から、自信が一気にしぼんでいった。
1
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。
はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?
慈愛と復讐の間
レクフル
ファンタジー
とある国に二人の赤子が生まれた。
一人は慈愛の女神の生まれ変わりとされ、一人は復讐の女神の生まれ変わりとされた。
慈愛の女神の生まれ変わりがこの世に生を得た時、必ず復讐の女神の生まれ変わりは生を得る。この二人は対となっているが、決して相容れるものではない。
これは古より語り継がれている伝承であり、慈愛の女神の加護を得た者は絶大なる力を手にするのだと言う。
だが慈愛の女神の生まれ変わりとして生を亨けた娘が、別の赤子と取り換えられてしまった。
大切に育てられる筈の慈愛の女神の生まれ変わりの娘は、母親から虐げられながらも懸命に生きようとしていた。
そんな中、森で出会った迷い人の王子と娘は、互いにそれと知らずに想い合い、数奇な運命を歩んで行くこととなる。
そして、変わりに育てられた赤子は大切に育てられていたが、その暴虐ぶりは日をまして酷くなっていく。
慈愛に満ちた娘と復讐に駆られた娘に翻弄されながら、王子はあの日出会った想い人を探し続ける。
想い合う二人の運命は絡み合うことができるのか。その存在に気づくことができるのか……
追放された聖女は旅をする
織人文
ファンタジー
聖女によって国の豊かさが守られる西方世界。
その中の一国、エーリカの聖女が「役立たず」として追放された。
国を出た聖女は、出身地である東方世界の国イーリスに向けて旅を始める――。
『王都の神童』と呼ばれた俺、職業選定でまさかの【遊び人】三連発で追放される。……が、実は「全職業のスキル」を合算して重ねがけできる唯一のバグ
よっしぃ
ファンタジー
王都で「神童」の名をほしいままにしていた少年、ディラン・アークライト(17歳)。
剣を握れば騎士団長を唸らせ、魔法を学べば賢者を凌駕する。誰もが彼を「次代の勇者」と信じて疑わなかった。
しかし、運命の職業選定で彼が得たのは――【遊び人】。
それも、三つの職業スロットすべてが【遊び人】で埋まるという、前代未聞の怪現象だった。
「期待外れだ」
「国の恥晒しめ」
掌を返した周囲によって、ディランは着の身着のままで街を追放される。 だが、かつて神童と呼ばれた彼の「分析力」は死んでいなかった。
『……Lv1なのに、ステータスが異常に高い? それに経験値が分散せず、すべて加算されている……?』
彼だけが気づいた真実。
それは【遊び人】という名に偽装された、この世界の管理者権限(Free-Hander)であり、全職業のスキルを制限なく使用・強化できるバグ技(デバッグモード)への入り口だったのだ。
これは、理不尽に捨てられた元・神童が、その頭脳とバグ能力で世界を「攻略」し、同じく不遇な扱いを受けていた美少女騎士(中身は脳筋)と共に、誰よりも自由に成り上がる物語。
【著者プロフィール】アルファポリスより『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』を出版、オリコンライトノベル部門18位を記録。本作は2月に2巻刊行予定。
孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下
akechi
ファンタジー
ルル8歳
赤子の時にはもう孤児院にいた。
孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。
それに貴方…国王陛下ですよね?
*コメディ寄りです。
不定期更新です!
邪神降臨~言い伝えの最凶の邪神が現れたので世界は終わり。え、その邪神俺なの…?~
きょろ
ファンタジー
村が魔物に襲われ、戦闘力“1”の主人公は最下級のゴブリンに殴られ死亡した。
しかし、地獄で最強の「氣」をマスターした彼は、地獄より現世へと復活。
地獄での十万年の修行は現世での僅か十秒程度。
晴れて伝説の“最凶の邪神”として復活した主人公は、唯一無二の「氣」の力で世界を収める――。
身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」
魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。
鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。
(な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?)
実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。
レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。
「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」
冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。
一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。
「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」
これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる