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第一部 王立宮廷大学を目指そう!
44. やめておけ、お前なんかでは無理という言葉は、全て覆させていただきます!
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皆の視線が、一斉に声のした方へと向けられた。
その声の主は、同じ受験生からのものだった。
「セバスティアノス……!」
テオフラストスは、彼の姿を見てたじろいだ。
セバスティアノス・レオニダス。
王家に非常に近いレオニダス公爵家の長男。
若年層の騎士の大会では常に優勝をさらい、雷撃魔法の使い手としても名高い人物だった。
加えて、長身で容姿端麗な貴公子ともあって、男女を問わず、同年代の貴族の間ではその名を知らぬ者はいなかった。
その彼の言葉により、その場の空気は一変してしまった。
皆が沈黙する中、セバスティアノスはカテリーナの方へと歩いてきた。
引き攣った顔で見ているテオフラストスを一瞥しながら通り過ぎると、カテリーナの目の前に立った。
「君も騎士を目指す者だろう? 人を守り、人を助けるべき道を志す者が、自分にばかり目を向けてどうする!」
――自分には資格がない。
――自分の領地に帰ろう。
先ほどまでカテリーナの頭の中には、「自分」のことだけが思い浮かんでいた。
セバスティアノスの言葉により、彼女ははっと我に返るのだった
――そうだわ。今まで支えてくれたアレクシオスお兄さまや、宿まで準備してくれたお父さま、そして、一緒に勉強や訓練もしてくれた人たち……。
私は皆の思いも背負ってここにいるのに、何、情けないことを考えていたの!
大学受験は本人の力だけで臨むものではない。
自らの努力はもちろん必要だが、多くの人の支えがあってこそ、今この場所にいることができるのだ。
ふと、兄アレクシオスの言葉が脳裏に蘇った。
「できないことではなく、できることを伸ばしていけばいいんじゃないか?」
「並大抵の騎士では、相手にならない程の実力が身についていると思うよ」
「カテリーナ、何があろうと何を言われようと、絶対に気にしちゃダメだ!」
――自分に負けてはダメ。相手ではなく、自分自身の弱い心に勝たなきゃ!
そう言い聞かせ、カテリーナは気持ちを切り替えた。
「はしたない姿をお見せしてしまい、申し訳ございません」
カテリーナはまずは担当者に、貴族らしい振る舞いで謝罪の言葉を述べた。
続いてセバスティアノスに向き直り、深く一礼した。
「セバスティアノスさま、ご助言に感謝いたします。おかげで、騎士としての志を取り戻すことができました」
「礼には及ばない。気持ちを立て直したようで何よりだ。こんなつまらないことで、今までの努力を無駄にしたらもったいないからな」
セバスティアノスも高位の貴族らしい堂々とした佇まいで応じた。
カテリーナは会釈を返すと、今度はテオフラストスの前に立った。
「な、何だよ」
「あなたは皆の前で私に恥をかかせました。それが私個人のみに止まらず、我が家名にまで及ぶとなれば、これを看過することはできません」
「何だぁ? 実家に泣きつくのか? それとも有名なお兄さまにでも頼るのか?」
「いいえ。もし受験者選抜騎士トーナメントで対戦した場合には、あなたに恥を欠かせないように手心を加えたりはしないということです」
「はぁ? お前は一体何を言っているんだ?」
「もし戦う機会が訪れたら、容赦はしないということです!」
テオフラストスは一瞬、カテリーナの言葉の意味が分からなかった。
優れた魔力を持ち、剣の実力も兼ね備えた自分が、魔力も持たない格下の女から、手心を加えたりしないという格上の物言いに対して、思考が追いつかなかったのだ。
周囲から「おおっ」と小さなどよめきが起きた。
少し遅れて、言葉の意味を理解したテオフラストスが激高した。
「お、お前みたいな雑魚が、この俺に勝てるわけないだろう!」
「騎士トーナメントは魔法禁止です。実力は剣のみで決まりますよ」
カテリーナの冷静な返しに、テオフラストスはさらに逆上した。
「はぁっ!? 剣の実力だけでも俺の方がはるかに上だ! 転んで頭でも打って、おかしくなったのか?」
「見ていればわかります。あなたでは私の相手にはなりません」
「言ったな! 女だからといって容赦はしねぇからな!」
「口先ではなく、実力をでそれを証明してくださいね」
熱くなり続ける二人に、取り巻きは少し慌て、カテリーナに小声で口を挟んできた。
「おい、やめとけって。お前なんかでは無理だよ ケガをする前に謝っておけって!」
「――やめておけ、――お前なんかでは無理という言葉は、ルクサリス家の名誉に懸けて、全て覆させていただきます!」
カテリーナの高らかな宣言は、家名を出した以上、もはや後戻りができなくなった。
「それでは、トーナメントで必ず対戦できるように、そして、あなたが棄権したりすることがないように、心から願っておりますわ。失礼いたします」
カテリーナは優雅に一礼し、次の場所へと向かった。
「棄権……? 何でおれが棄権? はぁ???」
またしても状況を飲み込めていないテオフラストスに、取り巻きが小声で告げた。
「……テオフラストスさまに、逃げるなと言ったんですよ」
その瞬間、テオフラストスの顔がさらに赤く染まった。
「おーい、カテリーナ! 俺は絶対に許さねぇからな!!!」
しかし彼女との距離が開いていたため、その姿はまるで負け犬の遠吠えのように映っていた。
「ふふ……まるで別人のように変わってしまった。それにしても、相当の自信があるようだが……。これは楽しみだな」
一部始終を見届けたセバスティアノスは、これから試験が始まる立場にも関わらず、楽しそうにつぶやいた。
その声の主は、同じ受験生からのものだった。
「セバスティアノス……!」
テオフラストスは、彼の姿を見てたじろいだ。
セバスティアノス・レオニダス。
王家に非常に近いレオニダス公爵家の長男。
若年層の騎士の大会では常に優勝をさらい、雷撃魔法の使い手としても名高い人物だった。
加えて、長身で容姿端麗な貴公子ともあって、男女を問わず、同年代の貴族の間ではその名を知らぬ者はいなかった。
その彼の言葉により、その場の空気は一変してしまった。
皆が沈黙する中、セバスティアノスはカテリーナの方へと歩いてきた。
引き攣った顔で見ているテオフラストスを一瞥しながら通り過ぎると、カテリーナの目の前に立った。
「君も騎士を目指す者だろう? 人を守り、人を助けるべき道を志す者が、自分にばかり目を向けてどうする!」
――自分には資格がない。
――自分の領地に帰ろう。
先ほどまでカテリーナの頭の中には、「自分」のことだけが思い浮かんでいた。
セバスティアノスの言葉により、彼女ははっと我に返るのだった
――そうだわ。今まで支えてくれたアレクシオスお兄さまや、宿まで準備してくれたお父さま、そして、一緒に勉強や訓練もしてくれた人たち……。
私は皆の思いも背負ってここにいるのに、何、情けないことを考えていたの!
大学受験は本人の力だけで臨むものではない。
自らの努力はもちろん必要だが、多くの人の支えがあってこそ、今この場所にいることができるのだ。
ふと、兄アレクシオスの言葉が脳裏に蘇った。
「できないことではなく、できることを伸ばしていけばいいんじゃないか?」
「並大抵の騎士では、相手にならない程の実力が身についていると思うよ」
「カテリーナ、何があろうと何を言われようと、絶対に気にしちゃダメだ!」
――自分に負けてはダメ。相手ではなく、自分自身の弱い心に勝たなきゃ!
そう言い聞かせ、カテリーナは気持ちを切り替えた。
「はしたない姿をお見せしてしまい、申し訳ございません」
カテリーナはまずは担当者に、貴族らしい振る舞いで謝罪の言葉を述べた。
続いてセバスティアノスに向き直り、深く一礼した。
「セバスティアノスさま、ご助言に感謝いたします。おかげで、騎士としての志を取り戻すことができました」
「礼には及ばない。気持ちを立て直したようで何よりだ。こんなつまらないことで、今までの努力を無駄にしたらもったいないからな」
セバスティアノスも高位の貴族らしい堂々とした佇まいで応じた。
カテリーナは会釈を返すと、今度はテオフラストスの前に立った。
「な、何だよ」
「あなたは皆の前で私に恥をかかせました。それが私個人のみに止まらず、我が家名にまで及ぶとなれば、これを看過することはできません」
「何だぁ? 実家に泣きつくのか? それとも有名なお兄さまにでも頼るのか?」
「いいえ。もし受験者選抜騎士トーナメントで対戦した場合には、あなたに恥を欠かせないように手心を加えたりはしないということです」
「はぁ? お前は一体何を言っているんだ?」
「もし戦う機会が訪れたら、容赦はしないということです!」
テオフラストスは一瞬、カテリーナの言葉の意味が分からなかった。
優れた魔力を持ち、剣の実力も兼ね備えた自分が、魔力も持たない格下の女から、手心を加えたりしないという格上の物言いに対して、思考が追いつかなかったのだ。
周囲から「おおっ」と小さなどよめきが起きた。
少し遅れて、言葉の意味を理解したテオフラストスが激高した。
「お、お前みたいな雑魚が、この俺に勝てるわけないだろう!」
「騎士トーナメントは魔法禁止です。実力は剣のみで決まりますよ」
カテリーナの冷静な返しに、テオフラストスはさらに逆上した。
「はぁっ!? 剣の実力だけでも俺の方がはるかに上だ! 転んで頭でも打って、おかしくなったのか?」
「見ていればわかります。あなたでは私の相手にはなりません」
「言ったな! 女だからといって容赦はしねぇからな!」
「口先ではなく、実力をでそれを証明してくださいね」
熱くなり続ける二人に、取り巻きは少し慌て、カテリーナに小声で口を挟んできた。
「おい、やめとけって。お前なんかでは無理だよ ケガをする前に謝っておけって!」
「――やめておけ、――お前なんかでは無理という言葉は、ルクサリス家の名誉に懸けて、全て覆させていただきます!」
カテリーナの高らかな宣言は、家名を出した以上、もはや後戻りができなくなった。
「それでは、トーナメントで必ず対戦できるように、そして、あなたが棄権したりすることがないように、心から願っておりますわ。失礼いたします」
カテリーナは優雅に一礼し、次の場所へと向かった。
「棄権……? 何でおれが棄権? はぁ???」
またしても状況を飲み込めていないテオフラストスに、取り巻きが小声で告げた。
「……テオフラストスさまに、逃げるなと言ったんですよ」
その瞬間、テオフラストスの顔がさらに赤く染まった。
「おーい、カテリーナ! 俺は絶対に許さねぇからな!!!」
しかし彼女との距離が開いていたため、その姿はまるで負け犬の遠吠えのように映っていた。
「ふふ……まるで別人のように変わってしまった。それにしても、相当の自信があるようだが……。これは楽しみだな」
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