46 / 67
第一部 王立宮廷大学を目指そう!
45. 攻撃の型の実技試験
しおりを挟む
カテリーナは、魔法の実技試験場へやってきた。
騎士コースの受験者は、魔法の実技試験を一つだけ選択して受けることになっている。
受験票を提示すると、担当者は記録された魔力量と加護の色を見て、怪訝そうな顔をした。
「私の体内魔力量では魔法は使えませんので、魔法の実技試験は辞退いたします!」
カテリーナは堂々と、はっきり告げた。
魔力がほぼないにも関わらず、予想外の毅然とした態度に、逆に担当者のほうが少し戸惑ってしまった。
「あ、ああ、そうかね。ただ、辞退すると魔法の実技試験は0点になってしまうが、それでも構わないかね?」
カテリーナの胸には、兄から言われた言葉が強く残っていた。
――辞退するだけでいい。総合得点で合格を目指すのだから、割り切ることも受験では大事なことなんだ。
「はい、構いません!」
「そうか……。では記録するから、この水晶に受験票をかざして」
水晶が青白く光り、結果が記録される。
「ありがとうございます。それでは失礼いたします」
カテリーナは、最後まで堂々と貴族らしく振る舞い、非常に短い魔導師実技試験を終えた。
続けて騎士コースの会場へと向かった。
――ここからが本番ね。お兄さまの助言通り、まずは攻撃の基本の型の試験を受ける!
騎士の実技試験は三つ。
攻撃の基本の型、防御の基本の型、そして現役の騎士である教官三名との対戦実技。
受験の順序は自由だった。
対戦実技に関しては、回復魔法を受けた万全の状態の教官と対戦するため、後で戦う者が有利にならないように工夫されていた。
「最初は攻撃の型の試験を受けるといい。この試験が一番体力を使わないし、修練の成果を見せる意味でも疲労のない状態が最適だ。カテリーナは魔法の試験を受けないから、最高の状態で挑めるはずだ」
カテリーナは、兄から言われた言葉を思い出し、気力をみなぎらせた。
そして、過去に血を吐くような思いで繰り返してきた攻撃の型の訓練を思い出していた。
「ほら、カテリーナ、背中にも気を配って! 姿勢が崩れている。剣先で切れるように、正しく力を伝えるんだ!」
兄との訓練は、疲労やケガを回復魔法で強制的に治療され、休む間もなく続けられる苛酷な訓練だった。
だがそれを乗り越えた彼女には、いつでも披露できる美しい型と、それを支える筋力が備わっていた。
カテリーナは受験票を水晶にかざし、攻撃の基本の型の試験の列に並んだ。
試験は十人一組で行われ、大学が用意した同じ大きさの剣と盾を使う。
公平を期す仕組みだが、女性や小柄な受験生には不利となる試験だった。
しかし、戦場で同じ装備で、同じ動作をするためには、不可欠の条件でもあった。
試験で出題される型は、騎士教育を受けていれば自然と身につく基本動作ばかりだった。
しかし、そのために平民出身者は不利であり、受験生の格差が如実に現れてしまう試験でもあった。
やがて順番が回り、カテリーナたちに剣と盾が配られた。
「装備に不具合がないか確認しなさい。問題がなければ、白線の前に整列して待機するように」
担当者の言葉に従い、受験生たちは装備を確認し、整列を始めた。
全員が揃い、開始の合図とともに攻撃の基本の型の試験が始まった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「……おい、誰だあれは」
剣の騎士団・団長マルキアノス・ファレグスが部下に問いかけた。
今回の騎士の実技試験は、剣の騎士団が担当していた。
「あの女性の受験生ですか?」
「そうだ。あの身体のキレ……只者ではないぞ!」
「確かにそうですね。凡庸な模倣ではなく、剣先で切れるように正しく剣が振れてますね」
「所作まで美しいな……」
剣の騎士団は、魔法の力を伴わない純粋な剣の実力に関しては、王国随一と評判の団だった。
完全に実力主義の集団であるため、宮廷大学でも教官として兼任し、実技指導に当たっている騎士も多く存在していた。
そのため、大貴族であろうとも忖度がなく平等に扱うため、試験官にも最も相応しいという事で、ここ数年は毎年、宮廷大学の騎士コースの試験を担当していた。
団長のマルキアノス自身も平民の出身であり、妻も娶らず剣一筋に生き、数々の武功により昇爵し、子爵にまで昇りつめた立志伝中の人物でもあった。
「……えー、彼女はカテリーナ・ルクサリス。ルクサリス侯爵家の令嬢です」
「ああ、あのアレクシオス殿の妹君か! 仕事中毒で名高かった男が、妹の受験のために長期休暇を取ったと聞いていたが……このためだったのか!」
「……団長、優れているのは型だけではないかもしれません」
「……うむ、お前も気付いたか。命のやり取りを経験した者特有のオーラを纏っているな。型を超え、本物へと昇華している……これは相当な使い手だぞ」
「これでは他の受験生が気の毒ですね」
「誰が見てもその差が明らかになってしまう。他の者が見劣りしているように見えてしまうな」
「他の受験生に誤った採点をしないように、後で注意しておきます」
「頼む。……しかし、あれほどの出来でも、満点の百点しか与えられないのが惜しいな。百二十点、いや百五十点は与えたいくらいだ」
カテリーナは試験に集中していたため、彼女の型の美しさに騎士たちが感嘆の声を漏らし、他の受験生がその差を痛感していることに、全く気づいていなかった。
騎士コースの受験者は、魔法の実技試験を一つだけ選択して受けることになっている。
受験票を提示すると、担当者は記録された魔力量と加護の色を見て、怪訝そうな顔をした。
「私の体内魔力量では魔法は使えませんので、魔法の実技試験は辞退いたします!」
カテリーナは堂々と、はっきり告げた。
魔力がほぼないにも関わらず、予想外の毅然とした態度に、逆に担当者のほうが少し戸惑ってしまった。
「あ、ああ、そうかね。ただ、辞退すると魔法の実技試験は0点になってしまうが、それでも構わないかね?」
カテリーナの胸には、兄から言われた言葉が強く残っていた。
――辞退するだけでいい。総合得点で合格を目指すのだから、割り切ることも受験では大事なことなんだ。
「はい、構いません!」
「そうか……。では記録するから、この水晶に受験票をかざして」
水晶が青白く光り、結果が記録される。
「ありがとうございます。それでは失礼いたします」
カテリーナは、最後まで堂々と貴族らしく振る舞い、非常に短い魔導師実技試験を終えた。
続けて騎士コースの会場へと向かった。
――ここからが本番ね。お兄さまの助言通り、まずは攻撃の基本の型の試験を受ける!
騎士の実技試験は三つ。
攻撃の基本の型、防御の基本の型、そして現役の騎士である教官三名との対戦実技。
受験の順序は自由だった。
対戦実技に関しては、回復魔法を受けた万全の状態の教官と対戦するため、後で戦う者が有利にならないように工夫されていた。
「最初は攻撃の型の試験を受けるといい。この試験が一番体力を使わないし、修練の成果を見せる意味でも疲労のない状態が最適だ。カテリーナは魔法の試験を受けないから、最高の状態で挑めるはずだ」
カテリーナは、兄から言われた言葉を思い出し、気力をみなぎらせた。
そして、過去に血を吐くような思いで繰り返してきた攻撃の型の訓練を思い出していた。
「ほら、カテリーナ、背中にも気を配って! 姿勢が崩れている。剣先で切れるように、正しく力を伝えるんだ!」
兄との訓練は、疲労やケガを回復魔法で強制的に治療され、休む間もなく続けられる苛酷な訓練だった。
だがそれを乗り越えた彼女には、いつでも披露できる美しい型と、それを支える筋力が備わっていた。
カテリーナは受験票を水晶にかざし、攻撃の基本の型の試験の列に並んだ。
試験は十人一組で行われ、大学が用意した同じ大きさの剣と盾を使う。
公平を期す仕組みだが、女性や小柄な受験生には不利となる試験だった。
しかし、戦場で同じ装備で、同じ動作をするためには、不可欠の条件でもあった。
試験で出題される型は、騎士教育を受けていれば自然と身につく基本動作ばかりだった。
しかし、そのために平民出身者は不利であり、受験生の格差が如実に現れてしまう試験でもあった。
やがて順番が回り、カテリーナたちに剣と盾が配られた。
「装備に不具合がないか確認しなさい。問題がなければ、白線の前に整列して待機するように」
担当者の言葉に従い、受験生たちは装備を確認し、整列を始めた。
全員が揃い、開始の合図とともに攻撃の基本の型の試験が始まった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「……おい、誰だあれは」
剣の騎士団・団長マルキアノス・ファレグスが部下に問いかけた。
今回の騎士の実技試験は、剣の騎士団が担当していた。
「あの女性の受験生ですか?」
「そうだ。あの身体のキレ……只者ではないぞ!」
「確かにそうですね。凡庸な模倣ではなく、剣先で切れるように正しく剣が振れてますね」
「所作まで美しいな……」
剣の騎士団は、魔法の力を伴わない純粋な剣の実力に関しては、王国随一と評判の団だった。
完全に実力主義の集団であるため、宮廷大学でも教官として兼任し、実技指導に当たっている騎士も多く存在していた。
そのため、大貴族であろうとも忖度がなく平等に扱うため、試験官にも最も相応しいという事で、ここ数年は毎年、宮廷大学の騎士コースの試験を担当していた。
団長のマルキアノス自身も平民の出身であり、妻も娶らず剣一筋に生き、数々の武功により昇爵し、子爵にまで昇りつめた立志伝中の人物でもあった。
「……えー、彼女はカテリーナ・ルクサリス。ルクサリス侯爵家の令嬢です」
「ああ、あのアレクシオス殿の妹君か! 仕事中毒で名高かった男が、妹の受験のために長期休暇を取ったと聞いていたが……このためだったのか!」
「……団長、優れているのは型だけではないかもしれません」
「……うむ、お前も気付いたか。命のやり取りを経験した者特有のオーラを纏っているな。型を超え、本物へと昇華している……これは相当な使い手だぞ」
「これでは他の受験生が気の毒ですね」
「誰が見てもその差が明らかになってしまう。他の者が見劣りしているように見えてしまうな」
「他の受験生に誤った採点をしないように、後で注意しておきます」
「頼む。……しかし、あれほどの出来でも、満点の百点しか与えられないのが惜しいな。百二十点、いや百五十点は与えたいくらいだ」
カテリーナは試験に集中していたため、彼女の型の美しさに騎士たちが感嘆の声を漏らし、他の受験生がその差を痛感していることに、全く気づいていなかった。
2
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。
はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?
追放された聖女は旅をする
織人文
ファンタジー
聖女によって国の豊かさが守られる西方世界。
その中の一国、エーリカの聖女が「役立たず」として追放された。
国を出た聖女は、出身地である東方世界の国イーリスに向けて旅を始める――。
『王都の神童』と呼ばれた俺、職業選定でまさかの【遊び人】三連発で追放される。……が、実は「全職業のスキル」を合算して重ねがけできる唯一のバグ
よっしぃ
ファンタジー
王都で「神童」の名をほしいままにしていた少年、ディラン・アークライト(17歳)。
剣を握れば騎士団長を唸らせ、魔法を学べば賢者を凌駕する。誰もが彼を「次代の勇者」と信じて疑わなかった。
しかし、運命の職業選定で彼が得たのは――【遊び人】。
それも、三つの職業スロットすべてが【遊び人】で埋まるという、前代未聞の怪現象だった。
「期待外れだ」
「国の恥晒しめ」
掌を返した周囲によって、ディランは着の身着のままで街を追放される。 だが、かつて神童と呼ばれた彼の「分析力」は死んでいなかった。
『……Lv1なのに、ステータスが異常に高い? それに経験値が分散せず、すべて加算されている……?』
彼だけが気づいた真実。
それは【遊び人】という名に偽装された、この世界の管理者権限(Free-Hander)であり、全職業のスキルを制限なく使用・強化できるバグ技(デバッグモード)への入り口だったのだ。
これは、理不尽に捨てられた元・神童が、その頭脳とバグ能力で世界を「攻略」し、同じく不遇な扱いを受けていた美少女騎士(中身は脳筋)と共に、誰よりも自由に成り上がる物語。
【著者プロフィール】アルファポリスより『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』を出版、オリコンライトノベル部門18位を記録。本作は2月に2巻刊行予定。
孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下
akechi
ファンタジー
ルル8歳
赤子の時にはもう孤児院にいた。
孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。
それに貴方…国王陛下ですよね?
*コメディ寄りです。
不定期更新です!
【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~
月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』
恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。
戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。
だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】
導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。
「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」
「誰も本当の私なんて見てくれない」
「私の力は……人を傷つけるだけ」
「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」
傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。
しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。
――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。
「君たちを、大陸最強にプロデュースする」
「「「「……はぁ!?」」」」
落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。
俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。
◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!
邪神降臨~言い伝えの最凶の邪神が現れたので世界は終わり。え、その邪神俺なの…?~
きょろ
ファンタジー
村が魔物に襲われ、戦闘力“1”の主人公は最下級のゴブリンに殴られ死亡した。
しかし、地獄で最強の「氣」をマスターした彼は、地獄より現世へと復活。
地獄での十万年の修行は現世での僅か十秒程度。
晴れて伝説の“最凶の邪神”として復活した主人公は、唯一無二の「氣」の力で世界を収める――。
身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」
魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。
鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。
(な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?)
実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。
レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。
「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」
冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。
一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。
「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」
これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる