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第一部 王立宮廷大学を目指そう!
57. それぞれの朝
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実技試験後の祝宴から一夜が明け、アレクシオスもカテリーナも、翌朝にはすでに次のトーナメントへと気持ちを向けていた。
「カテリーナ、君は三人の対戦実技試験で全勝し、攻撃と防御の型の試験も恐らく高得点だろう。実技試験は、ほぼ間違いなくトップのはずだ」
カテリーナは頷きながら、ごくりと唾を飲み込んだ。
「今日から三日後、魔法と騎士の実技試験の上位十六名がそれぞれ発表される。そして一週間後に、その十六名による対戦トーナメントが行われる」
「では、私はその十六名に選ばれる可能性が高いということですね」
「うん、確実だろうね。例年通りであれば、騎士コースで教官から一本でも取れた受験生は、ほぼ全員選出されている。ましてや君は三本も取ったからね」
「ありがとうございます。では、トーナメントについて、詳しく教えてください」
「まず、このトーナメントは受験の点数には加算されない。ただ、印象には大きく影響する」
「……印象、ですか?」
「そう。点数は変わらないが、印象は変わる。正直な話、君は魔力量が極端に少ないから、不合格にされてしまう可能性がない訳ではないんだ。だから、トーナメントでよい印象を残しておきたいんだ」
「実技試験で三勝しても、確実ではないのですね」
「あのマルキアノス団長にまで勝っているから、さすがに大丈夫とは思いたいんだけれど、試験は大学内で行われたものだから、教授たちの判断でどうとでもなってしまうんだ」
「魔力重視ですか……」
「ただ、トーナメントで優勝してしまえば、彼らも不合格にはできないよ」
「トーナメントの優勝って、それほど大きいのですか?」
「魔術と騎士のトーナメントは、一般客も観戦する年に一回のお祭りでもあるんだ。それに、国王陛下も親臨されるからね」
「……つまり、陛下や多くの人々の目に触れるから、優勝者を不合格にはできない……そういうことですね」
「その通り! 念には念を入れて、完璧な形で受験を終えようというわけだよ」
「なるほど」
「午前中に魔術師コースの試合が行われ、午後から騎士コースの試合が行われる。騎士コースでは魔法は一切禁止。会場にも魔法無効の結界魔法が張られているから、純粋な剣の技量だけで大丈夫だよ」
「それなら安心です!」
「正直、実技試験で騎士に三勝するより楽だと思うけど、注意するべき点もあるんだ」
「なんでしょう?」
「ケガをせず、体力の配分に気を付けること。半日で四試合も戦うから、焦らずに冷静に戦っていくことだね」
「わかりました!」
「……と、一般論を言ってみたけど、カテリーナは恐らく一瞬で勝負を決めちゃうから、たぶん大丈夫」
「……えっ?」
「あまり心配はいらないってことだよ。ただ、相手を舐めたり油断だけはしないようにね」
「はい、肝に銘じます!」
「トーナメントの日が楽しみでならないよ。きっと観客の度肝を抜くよ。あ、当日は僕も観客席から応援するからね」
「お兄さまも、いらっしゃるのですか?」
「もちろん。もうチケットも購入済みだよ」
「……少し、恥ずかしいです」
「ふふっ、肩の力を抜いて臨めば大丈夫だよ」
「はい」
昨日の試験の結果に満足していた二人は、落ち着いた心のまま、朝を過ごせたのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
一方、パナギオティスは、また違った朝を迎えていた。
「お客さん、もう朝ですよ。起きてください」
「……うぅ、飲みすぎたな」
「しっかりしてくださいよ」
「ん……ここは?」
「下が酒場で、上が宿屋。お客さんは重いから、運ぶのが大変だったんですよ」
「……悪かったな。えっと、代金は?」
「お代は全部、お連れ様が払ってくれましたよ」
「そうか……あいつはどうした?」
「昨夜のうちにお帰りになりました。……はい、お預かり物です」
「……剣?」
「昨夜のお話では、騎士さまに持っていただくのがふさわしい剣だとか」
「あぁ、何かお礼とか言って、剣を受け取ったな……」
「それと、こちらも」
「これは……入場券?」
「ええ。大学の受験者選抜トーナメントの入場券だそうです。最後まで見届けることが役目だとか何とか……」
「……思い出してきた。最後に受験生の試合を見届けると言ったんだ」
「そうでしたか。では下でお茶を用意しておりますので、どうぞ」
――どうせ、クビになった身だ。最後に受験生の試合でも見て、田舎に帰るか。
パナギオティスは焼き印が施された入場札を懐にしまい、剣を手に取り階段を降りていった。
その剣の柄に埋め込まれた装飾用の宝石からは、不気味な光が放たれていた。
「カテリーナ、君は三人の対戦実技試験で全勝し、攻撃と防御の型の試験も恐らく高得点だろう。実技試験は、ほぼ間違いなくトップのはずだ」
カテリーナは頷きながら、ごくりと唾を飲み込んだ。
「今日から三日後、魔法と騎士の実技試験の上位十六名がそれぞれ発表される。そして一週間後に、その十六名による対戦トーナメントが行われる」
「では、私はその十六名に選ばれる可能性が高いということですね」
「うん、確実だろうね。例年通りであれば、騎士コースで教官から一本でも取れた受験生は、ほぼ全員選出されている。ましてや君は三本も取ったからね」
「ありがとうございます。では、トーナメントについて、詳しく教えてください」
「まず、このトーナメントは受験の点数には加算されない。ただ、印象には大きく影響する」
「……印象、ですか?」
「そう。点数は変わらないが、印象は変わる。正直な話、君は魔力量が極端に少ないから、不合格にされてしまう可能性がない訳ではないんだ。だから、トーナメントでよい印象を残しておきたいんだ」
「実技試験で三勝しても、確実ではないのですね」
「あのマルキアノス団長にまで勝っているから、さすがに大丈夫とは思いたいんだけれど、試験は大学内で行われたものだから、教授たちの判断でどうとでもなってしまうんだ」
「魔力重視ですか……」
「ただ、トーナメントで優勝してしまえば、彼らも不合格にはできないよ」
「トーナメントの優勝って、それほど大きいのですか?」
「魔術と騎士のトーナメントは、一般客も観戦する年に一回のお祭りでもあるんだ。それに、国王陛下も親臨されるからね」
「……つまり、陛下や多くの人々の目に触れるから、優勝者を不合格にはできない……そういうことですね」
「その通り! 念には念を入れて、完璧な形で受験を終えようというわけだよ」
「なるほど」
「午前中に魔術師コースの試合が行われ、午後から騎士コースの試合が行われる。騎士コースでは魔法は一切禁止。会場にも魔法無効の結界魔法が張られているから、純粋な剣の技量だけで大丈夫だよ」
「それなら安心です!」
「正直、実技試験で騎士に三勝するより楽だと思うけど、注意するべき点もあるんだ」
「なんでしょう?」
「ケガをせず、体力の配分に気を付けること。半日で四試合も戦うから、焦らずに冷静に戦っていくことだね」
「わかりました!」
「……と、一般論を言ってみたけど、カテリーナは恐らく一瞬で勝負を決めちゃうから、たぶん大丈夫」
「……えっ?」
「あまり心配はいらないってことだよ。ただ、相手を舐めたり油断だけはしないようにね」
「はい、肝に銘じます!」
「トーナメントの日が楽しみでならないよ。きっと観客の度肝を抜くよ。あ、当日は僕も観客席から応援するからね」
「お兄さまも、いらっしゃるのですか?」
「もちろん。もうチケットも購入済みだよ」
「……少し、恥ずかしいです」
「ふふっ、肩の力を抜いて臨めば大丈夫だよ」
「はい」
昨日の試験の結果に満足していた二人は、落ち着いた心のまま、朝を過ごせたのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
一方、パナギオティスは、また違った朝を迎えていた。
「お客さん、もう朝ですよ。起きてください」
「……うぅ、飲みすぎたな」
「しっかりしてくださいよ」
「ん……ここは?」
「下が酒場で、上が宿屋。お客さんは重いから、運ぶのが大変だったんですよ」
「……悪かったな。えっと、代金は?」
「お代は全部、お連れ様が払ってくれましたよ」
「そうか……あいつはどうした?」
「昨夜のうちにお帰りになりました。……はい、お預かり物です」
「……剣?」
「昨夜のお話では、騎士さまに持っていただくのがふさわしい剣だとか」
「あぁ、何かお礼とか言って、剣を受け取ったな……」
「それと、こちらも」
「これは……入場券?」
「ええ。大学の受験者選抜トーナメントの入場券だそうです。最後まで見届けることが役目だとか何とか……」
「……思い出してきた。最後に受験生の試合を見届けると言ったんだ」
「そうでしたか。では下でお茶を用意しておりますので、どうぞ」
――どうせ、クビになった身だ。最後に受験生の試合でも見て、田舎に帰るか。
パナギオティスは焼き印が施された入場札を懐にしまい、剣を手に取り階段を降りていった。
その剣の柄に埋め込まれた装飾用の宝石からは、不気味な光が放たれていた。
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