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プロローグ
07.付喪神を知った日
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久しぶりに力を使ったからか、採寸式の夜はとても嫌な夢をみた。
小学五年生のとき、初めて私の目が普通じゃないって気づいたときのことだ。
小学生のころ、夏休みの間はいつもおばあちゃんの家に預けられていた。
おばあちゃんは骨董品を集めるのが趣味の不思議な人で、どうどうと霊感があると宣言するような人だ。そんなおばあちゃんの家には大きな蔵があり、一生をかけて集めてきたという骨董品が大切に保管されていた。
おばあちゃんの家の近くに同い年の子供なんていなくて、物珍しさもあって私はほとんどの時間をその蔵で過ごしていた。……ざっくり言うと、私はその蔵で空を飛ぶ女の子と友達になった。
記憶があるころから変な生き物はたくさん見えていたし、その時はまだ付喪神の存在をちゃんと分かっていなかったから何も疑問に思わなかったのだ。
でもある時、結構大きな地震があったんだ。
蔵の方で大きな音がして、私とおばあちゃんは慌てて確認しに行ったの。やっぱり何個か箱が床に散乱していて、その中には箱から飛び出して割れてしまった物もあった。
おばあちゃんは悲しそうに破片を片付けていたけど、私は女の子がいないか必死に探した。もし箱に当たっていたら、きっと怪我をしているだろうと思ったから。
「いた!もう、こんな隅っこに居るからなかなか見つからなかったよ!」
『……ごめんね、雪乃ちゃん。わたしたち、もう遊べないや』
「…………え?」
私は、この時の事をずっと忘れないと思う。
昨日も一緒に遊んでいた子が、まるで幻のように、煙のように消えたことを。
「……あれ?なんで、そんなに透けてるの!?」
何が起きたか分かっていない私は、突然消えた女の子を何度も呼んだ。最初は小さく、だけどいつまでも返事が返ってこないから、だんだんと大きな声に。
それは、様子がおかしいと気付いたおばあちゃんが探しに来るまでずっと続いた。
「その子は、付喪神だったんじゃないのかい?物がたくさん割れてしまったから、その中のどれかだったんだろうね。どれだけ凄い付喪神でも、本体が壊れてしまったら消えてしまうから」
「つくもがみ?」
「物はね、百年大切に使われると命が宿るんだよ。雪乃ちゃんは、そういう存在の姿が見えるんだね」
私から話を聞いたおばあちゃんは、驚き、悩みに悩みを抱えた顔をしていた。でも私がずっと泣き止まないから、最終的には付喪神について教えてくれたんだ。
例えば、彼らは神様だったり、妖怪だったりするんだよとか。……どんなに長い歴史を持つものでも、宿った物が壊れてしまったらいなくなってしまうんだよとか。
ぼんやりと、でももう二度と友達と会えないことだけはしっかり理解した私は、迎えに来た両親が気遣うほど落ち込んだ。
どうしても誰かとこの寂しさを分かってほしくて、私はついぽろっとクラスの子に付喪神の話をしてしまった。
でも、それが良くなかった。
「ナニソレ。お化けが見えるとか痛すぎる嘘やめてくれない?あ、もしかして今もミエテマスー?」
たまたま近くにいたアリサちゃんが、そうからかうように言ったんだ。
アリサちゃんは一番目立つ女子のグループのリーダーで、みんな逆らえなかった。しかもアリサちゃんのグループの子たちはそれに同調するように私をからかったから、私が何を言っても本気にしてもらえなかったんだ。
(やっぱり、私がおかしいんだ……付喪神なんて、普通なら見えないんだ……っ!)
元々クラスに馴染めなかったけど、これがきっかけになって私はみんなにからかわれるようになった。
……結局小学校の間、私には友達が一人もできなかった。
それから私は誰にも付喪神のことを話さなかったし、力のことも隠している。
心配したおばあちゃんがこっそりくれた眼鏡のおかげで、かけている間なら何も見えないし聞こえない。普通の子と同じだ。
詐欺未遂事件で同じ学校の子の前で力を使ったけど、付喪神と話しているところは見られてない。眼鏡だって外していたし、きっと大丈夫。
眼鏡をかけて髪をおろせば、きっと顔を合わせても私だって分からないはず。
(あの男の子たちは目立つし、力がバレたらまたあの生活に戻ってしまうのに)
それはとても恐ろしいことなのに。
不思議と私の胸には後悔どころか、少し誇らしさすらあった。
小学五年生のとき、初めて私の目が普通じゃないって気づいたときのことだ。
小学生のころ、夏休みの間はいつもおばあちゃんの家に預けられていた。
おばあちゃんは骨董品を集めるのが趣味の不思議な人で、どうどうと霊感があると宣言するような人だ。そんなおばあちゃんの家には大きな蔵があり、一生をかけて集めてきたという骨董品が大切に保管されていた。
おばあちゃんの家の近くに同い年の子供なんていなくて、物珍しさもあって私はほとんどの時間をその蔵で過ごしていた。……ざっくり言うと、私はその蔵で空を飛ぶ女の子と友達になった。
記憶があるころから変な生き物はたくさん見えていたし、その時はまだ付喪神の存在をちゃんと分かっていなかったから何も疑問に思わなかったのだ。
でもある時、結構大きな地震があったんだ。
蔵の方で大きな音がして、私とおばあちゃんは慌てて確認しに行ったの。やっぱり何個か箱が床に散乱していて、その中には箱から飛び出して割れてしまった物もあった。
おばあちゃんは悲しそうに破片を片付けていたけど、私は女の子がいないか必死に探した。もし箱に当たっていたら、きっと怪我をしているだろうと思ったから。
「いた!もう、こんな隅っこに居るからなかなか見つからなかったよ!」
『……ごめんね、雪乃ちゃん。わたしたち、もう遊べないや』
「…………え?」
私は、この時の事をずっと忘れないと思う。
昨日も一緒に遊んでいた子が、まるで幻のように、煙のように消えたことを。
「……あれ?なんで、そんなに透けてるの!?」
何が起きたか分かっていない私は、突然消えた女の子を何度も呼んだ。最初は小さく、だけどいつまでも返事が返ってこないから、だんだんと大きな声に。
それは、様子がおかしいと気付いたおばあちゃんが探しに来るまでずっと続いた。
「その子は、付喪神だったんじゃないのかい?物がたくさん割れてしまったから、その中のどれかだったんだろうね。どれだけ凄い付喪神でも、本体が壊れてしまったら消えてしまうから」
「つくもがみ?」
「物はね、百年大切に使われると命が宿るんだよ。雪乃ちゃんは、そういう存在の姿が見えるんだね」
私から話を聞いたおばあちゃんは、驚き、悩みに悩みを抱えた顔をしていた。でも私がずっと泣き止まないから、最終的には付喪神について教えてくれたんだ。
例えば、彼らは神様だったり、妖怪だったりするんだよとか。……どんなに長い歴史を持つものでも、宿った物が壊れてしまったらいなくなってしまうんだよとか。
ぼんやりと、でももう二度と友達と会えないことだけはしっかり理解した私は、迎えに来た両親が気遣うほど落ち込んだ。
どうしても誰かとこの寂しさを分かってほしくて、私はついぽろっとクラスの子に付喪神の話をしてしまった。
でも、それが良くなかった。
「ナニソレ。お化けが見えるとか痛すぎる嘘やめてくれない?あ、もしかして今もミエテマスー?」
たまたま近くにいたアリサちゃんが、そうからかうように言ったんだ。
アリサちゃんは一番目立つ女子のグループのリーダーで、みんな逆らえなかった。しかもアリサちゃんのグループの子たちはそれに同調するように私をからかったから、私が何を言っても本気にしてもらえなかったんだ。
(やっぱり、私がおかしいんだ……付喪神なんて、普通なら見えないんだ……っ!)
元々クラスに馴染めなかったけど、これがきっかけになって私はみんなにからかわれるようになった。
……結局小学校の間、私には友達が一人もできなかった。
それから私は誰にも付喪神のことを話さなかったし、力のことも隠している。
心配したおばあちゃんがこっそりくれた眼鏡のおかげで、かけている間なら何も見えないし聞こえない。普通の子と同じだ。
詐欺未遂事件で同じ学校の子の前で力を使ったけど、付喪神と話しているところは見られてない。眼鏡だって外していたし、きっと大丈夫。
眼鏡をかけて髪をおろせば、きっと顔を合わせても私だって分からないはず。
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