その付喪神、鑑定します!

陽炎氷柱

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第一章 初めての依頼

12.約束の放課後

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 とうとう放課後になってしまった。
 ずっとクラス中……どころか、話を聞きつけた他のクラスの女子からの視線にもさらされて、私はすでに帰りたいという気持ちでいっぱいだった。

でも、ここで颯馬くんから逃げたところで明日改めて襲撃されるだけだろう。まだ数度しか話したことはないが、簡単に諦めるような性格には見えない。


(一方的に取り付けられたんだけど、約束は破りたくないしね)


 この世の終わりのようなため息をついて、私は自分の席から立ちあがった。綾小路さんがちらりとこちらをみたけど、アキくんが近づいてきて視線を遮ってくれた。


「行こっか」


 お昼休みに採寸式の日のことを簡単に説明したところ、ありがたいことにアキくんが一緒に話を聞いてくれることになったのだ。アキくんは祖母以外で唯一私の力を知っているから、とても心強い。
 できるだけ背中に刺さる視線たちを気にしないように、私たちはA組に向かった。


「あいつらも終わったみたいだね」


 前を見れば、前から颯馬くんが鞄を片手に手を振りながらこちらに来ているのが見える。その隣にオウジサマもいた。うーん、ものすごく目立っている。
 しかも話がもう回っているのか、誰も帰ろうとしていない。特に女子は、みんな席に座ったままこちらに聞き耳を立てているのが分かる。お願いだから、もう勘違いさせるようなことを言わないで……!
 そう必死に祈る私をよそに、最初に口を開いたのはオウジサマだった。


「今日は逃げなかったんだね」
「あの日は急いでいたから……あはは」


 事件の後、私が逃げたことを根に持っているのか、オウジサマはそういうとニヒルに笑った。それが妙に様になっているのだから、顔立ちがいいというのは羨ましい。


「秋兎も来たんだな」


 私の隣にいるアキくんを見て、颯馬くんが目を丸くした。


「一条を困らせる問題に興味が出ちゃった。ぼくも入れてよ」
「……まあ、秋兎なら問題ないか。お前もそのほうが安心できるだろうし」


 そう言って、颯馬くんはまっすぐ私を見つめた。素直に頷こうとして、綾小路さんに言われたことを思い出す。アキくんに迷惑をかけるかもしれないと悩んで、結局あいまいに笑ってやり過ごしてしまった。


「それで、何の話?」


 アキくんに問われて、周りを見回した一条くんが困ったように眉をひそめた。


「……人が多いな」


 そしてそう小さくつぶやいたかと思えば、突然私の手をガシリと掴んだ。


「へっ」


 驚く暇もなく、颯馬くんは早足で階段を下りて行った。私も引っ張られるような形で足を動かしてしまう。あんまり力を入れているような感じじゃないのに、ぜんぜん振りほどけないんだけど!?


「おい、一条!?」


 一拍遅れて、アキくんも慌てて追いかけてくる。その後ろをオウジサマがゆったりとした足取りでついてきた。最初からこうなると分かっていたような余裕だ。


「わっ、い、一条くん!?どこに行くの?」
「俺の名前、覚えててくれたんだな!」


 それはどうでもいいよ!
 でも颯馬くんは表情を緩めると、さらに歩くスピードを上げた。私はほとんど小走りになってしまったけど、その横顔があんまりにも嬉しそうだったので、つい言葉に詰まってしまった。


「ちょっと、教室で話すんじゃなかったの?」


 少しイラ立った様子のアキくんがもう一度聞いてくれた。


「そんなこと、ひと言も言ってないけど」
「白鳥に聞いたぼくがバカだったよ!じゃあ、どこに向かってるの」
「そんなの、蘭の館に決まってんじゃん」

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