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第八章 盗品探しのスタンプラリー
74.犯人を特定せよ
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大体の方針が決まったころには、お昼ごろになっていた。
颯馬くんとアキくんはタクシーでホテルへ向かうことにしたらしく、その前にみんなで近くのコンビニで簡単にお昼を買う。タクシーと共にホテルに向かう二人を見送って、私と桜二くんは近くにあったベンチに座ってご飯を食べた。
と言っても、作業ができるように片手で食べられる程度の軽食だけど。
『人の子は大変だのう。そなたら、まだ童じゃろうに……』
お腹をポンポコと叩きながら、私の隣で笠の狸が心配そうに眉を下げた。ラジオも暇だということで、しばらく二体に付き合ってもらうことができたのだ。
桜二くんが隣でハッキングをしている間に、私は邪魔にならない程度に話かける。
(『そなたら』というより、桜二くんが、なんだけどね)
林間学校の話が出て以来、ずっと忙しそうにしている桜二くん。
その顔には隠し切れない疲労が残っており、颯馬くんの話も合って心配になってしまう。
「仕事してるオレ、そんなにかっこいい?」
集中していたはずの桜二くんに突然声をかけられて、私は手に持っていたお茶をこぼしそうになった。
慌ててふたを閉めて顔を上げれば、楽しげに目を三日月にした桜二くんが私を見ていた。思っていた以上にじっと見ていたことに気づき、恥ずかしさで頬が熱くなる。
「ち、違くて! 付喪神たちが桜二くんを心配していたから」
「から?」
「……大丈夫かなって、ちょっと見てただけ」
「なぁんだ、見惚れてたワケじゃないの。残念」
またそうやって人をからかうんだから。
こっちは心配しているのに。
「視線を気にしている暇があったら、ハッキングに集中した方がいいと思うけど」
前を向いてむくれる私に、桜二くんが小さく噴出した。
「心配しないで、ちゃんと終わったから」
「えっ、もう?」
「ん。オレって天才だから」
思わず視線を戻す。
桜二くんは得意げに片目をつむって見せると、パソコンの画面を私に向けた。
そこに並ぶ顔写真と履歴の一覧に、私は目を凝らした。
「付喪神たちに、顔写真の確認をお願いできるかな。オレには見えないから、画面のスクロールはユキに任せてもいい?」
「うん!」
桜二くんからパソコンを受け取って、付喪神たちが見えやすいように膝の上に乗せる。二体は私の横ではなくキーボードの上に立つが、実体がないからまあ問題ない。
(うーん、そこにいると私はほとんど画面が見えないけど……後でいっか)
付喪神たちの違う! 次! という声を頼りにどんどんスクロールしていけば、ふと右肩に温もりを感じた。横を見れば、パソコンを見ようとこちらに体を傾けている桜二くんの姿が。
物語に出てくる王子様のような綺麗な横顔が、すぐ近くにある。
(ち、近くない……!?)
呼吸音すら聞こえそうな距離に、緊張で肩が強張る。
ベンチに座った時には確かに、人一人分の距離が空いていたはずだが、いつの間に詰められたんだろう。
そうぐるぐると考えている間にも、付喪神たちはどんどんとスクロールを促してくる。
『次! その人じゃない! もうちょっと髪が茶色かった気がするのじゃ!』
『ウーン、モウ少シ神経質ソウナ顔ヲ、シテイタハズ』
幸いにも、桜二くんは画面の方に集中しているのでこちらの不審な動きには気づいていない。
ただそれがより私だけが気にしている、という感じがして悔しい。私は付喪神たちの声に全力で耳を傾けながら、心を無にして作業を続けた。
そんな永遠にも思えるような数分間。ついに付喪神たちがハッとしたように声を上げた。
『コノ人ダ!』
「本当!?」
「見つけた?」
コクリとうなずき、付喪神たちが示した写真を指さした。
スクリーンに映るのは、ホテルの客室清掃を担当している青年の写真。二十代前半で、神経質そうな人物だった。
「大学卒業後、二年ほど空白期間……今年の四月にこのホテルに就職。こいつが——」
そのとき、ちょうど颯馬くんからの連絡が入る。
グループに送られたメッセージには、白いワゴン車の写真とともに、こう書かれていた。
『颯馬:白い軽ワゴンの持ち主、清掃員の斉藤清っていうらしい』
『秋兎:他にワゴン車はなし。この人だけだったよ』
私はすぐに付喪神たちが示した人物の名前を確認する。当然、同じ人だった。
「これで決まりだね」
彼はノートパソコンをパタンと閉じると、ベンチの背にもたれて小さく息をついた。
「ここじゃさすがに車の追跡は難しい。犯人が分かったし、オレたちもホテルに戻ろっか」
颯馬くんとアキくんはタクシーでホテルへ向かうことにしたらしく、その前にみんなで近くのコンビニで簡単にお昼を買う。タクシーと共にホテルに向かう二人を見送って、私と桜二くんは近くにあったベンチに座ってご飯を食べた。
と言っても、作業ができるように片手で食べられる程度の軽食だけど。
『人の子は大変だのう。そなたら、まだ童じゃろうに……』
お腹をポンポコと叩きながら、私の隣で笠の狸が心配そうに眉を下げた。ラジオも暇だということで、しばらく二体に付き合ってもらうことができたのだ。
桜二くんが隣でハッキングをしている間に、私は邪魔にならない程度に話かける。
(『そなたら』というより、桜二くんが、なんだけどね)
林間学校の話が出て以来、ずっと忙しそうにしている桜二くん。
その顔には隠し切れない疲労が残っており、颯馬くんの話も合って心配になってしまう。
「仕事してるオレ、そんなにかっこいい?」
集中していたはずの桜二くんに突然声をかけられて、私は手に持っていたお茶をこぼしそうになった。
慌ててふたを閉めて顔を上げれば、楽しげに目を三日月にした桜二くんが私を見ていた。思っていた以上にじっと見ていたことに気づき、恥ずかしさで頬が熱くなる。
「ち、違くて! 付喪神たちが桜二くんを心配していたから」
「から?」
「……大丈夫かなって、ちょっと見てただけ」
「なぁんだ、見惚れてたワケじゃないの。残念」
またそうやって人をからかうんだから。
こっちは心配しているのに。
「視線を気にしている暇があったら、ハッキングに集中した方がいいと思うけど」
前を向いてむくれる私に、桜二くんが小さく噴出した。
「心配しないで、ちゃんと終わったから」
「えっ、もう?」
「ん。オレって天才だから」
思わず視線を戻す。
桜二くんは得意げに片目をつむって見せると、パソコンの画面を私に向けた。
そこに並ぶ顔写真と履歴の一覧に、私は目を凝らした。
「付喪神たちに、顔写真の確認をお願いできるかな。オレには見えないから、画面のスクロールはユキに任せてもいい?」
「うん!」
桜二くんからパソコンを受け取って、付喪神たちが見えやすいように膝の上に乗せる。二体は私の横ではなくキーボードの上に立つが、実体がないからまあ問題ない。
(うーん、そこにいると私はほとんど画面が見えないけど……後でいっか)
付喪神たちの違う! 次! という声を頼りにどんどんスクロールしていけば、ふと右肩に温もりを感じた。横を見れば、パソコンを見ようとこちらに体を傾けている桜二くんの姿が。
物語に出てくる王子様のような綺麗な横顔が、すぐ近くにある。
(ち、近くない……!?)
呼吸音すら聞こえそうな距離に、緊張で肩が強張る。
ベンチに座った時には確かに、人一人分の距離が空いていたはずだが、いつの間に詰められたんだろう。
そうぐるぐると考えている間にも、付喪神たちはどんどんとスクロールを促してくる。
『次! その人じゃない! もうちょっと髪が茶色かった気がするのじゃ!』
『ウーン、モウ少シ神経質ソウナ顔ヲ、シテイタハズ』
幸いにも、桜二くんは画面の方に集中しているのでこちらの不審な動きには気づいていない。
ただそれがより私だけが気にしている、という感じがして悔しい。私は付喪神たちの声に全力で耳を傾けながら、心を無にして作業を続けた。
そんな永遠にも思えるような数分間。ついに付喪神たちがハッとしたように声を上げた。
『コノ人ダ!』
「本当!?」
「見つけた?」
コクリとうなずき、付喪神たちが示した写真を指さした。
スクリーンに映るのは、ホテルの客室清掃を担当している青年の写真。二十代前半で、神経質そうな人物だった。
「大学卒業後、二年ほど空白期間……今年の四月にこのホテルに就職。こいつが——」
そのとき、ちょうど颯馬くんからの連絡が入る。
グループに送られたメッセージには、白いワゴン車の写真とともに、こう書かれていた。
『颯馬:白い軽ワゴンの持ち主、清掃員の斉藤清っていうらしい』
『秋兎:他にワゴン車はなし。この人だけだったよ』
私はすぐに付喪神たちが示した人物の名前を確認する。当然、同じ人だった。
「これで決まりだね」
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