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第八章 盗品探しのスタンプラリー
75.証拠を見つける方法
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付喪神たちにお礼を言ってから、私たちはタクシーを拾ってホテルに向かう。
どうやらホテルと連携しているタクシーらしく、宿泊客なら無料で利用できた。
桜二くんと並んで後部座席に座り、十分ほどでホテルの駐車場に着く。私たちは急いで降りて、先生たちに見つからないように裏口に回る。
「ユキちゃん、白鳥! こっちだよ!」
聞き覚えのある声に顔を上げれば、先に待ってくれていたアキくんが裏口の傍で手を振っているのが目に入る。
私と桜二くんが気づいたのを確認すると、アキくんはコンコンと裏口の扉を軽く叩いた。間をおかず、ギイと音を立てて扉が内側から開けられる。
「今なら誰もいない。早く入れ」
中で待機していた颯馬くんに促されて、私たちはささっと裏口を通る。
スタンプラリー中にホテルに居るのがバレると、サボりとみなされて評価が下がるのだ。林間学校は学校行事だから、成績に反映されるのである。
調査に関わっている桜二くんならともかく、私たち三人は間違いなくバレたら反省文ルートだ。しかも私とアキくんは迷子という設定だから、絶対に先生に見つかってはいけない。
「よくこんな裏口を見つけたね。鍵かかってそうだけど」
「ピッキングで開けたよ。急を要するから仕方ない」
まっすぐな目でにっこり笑うアキくん。
大して悪いことをしている自覚がある颯馬くんは気まずそうに目を泳がせた。
「一応通るたびに施錠し直しているから、誰かが侵入しないようにしているよ。この辺り防犯カメラないし、セーフセーフ」
私たちが侵入しているので、厳密に言わなくてもアウトなのだが……窃盗犯を捕まえるためには必要な犠牲だと思おう。
思わず遠い目をしつつ、私たちは落ち着いて話し合いができる場所を求めて急ぎ足で颯馬くんたちの部屋に向かった。
男子は全員三階に部屋があるため、私はハラハラしながら廊下を進んでいく。ようやく辿り着いた部屋に入ってからやっと、ほっと息をついた。
私の部屋とほぼ変わらない間取りだが、よく分からない電子機器やビジネス書がたくさん置いてあったりと一目で颯馬くんと桜二くんの部屋だと分かる。
「ひとまず、犯人の目星はついたわけだけど」
私たちは広縁のテーブルを囲むように座り、桜二くんはみんなが見えるような位置にパソコンを置く。
その画面には、犯人である斎藤清の情報が映っていた。
「でも、まだ証拠はないんだよね……」
私は画面を見ながら、ふと漏らす。
付喪神たちはたしかに断言したけど、それを証拠として扱うのは難しい。離したところで誰一人として信じてくれないのは、この場に居る全員が理解していた。
「今ごろ盗んだ景品は家にあるだろうから、自宅捜査すれば一発だろうが……これもまず斎藤が犯人って証明しないとな」
腕を組んでうなる颯馬くんに、アキくんが小さくうなずく。
「車の出入り、盗んだ景品の運搬……どこかで記録が残ってれば、それをつき出せばいいけど」
「何も見つからなかったら、自白させるしかないか?」
「自白って、こっちには手札が何もないんだよ? 旅行先で道具とかも限られてくるし」
手詰まりになったところで、みんなの視線が桜二くんに向けられた。静かに何か考え込んでいる様子だったが、その視線を受けて顔を上げる。
「まずは予定通り、車のナンバーで斎藤の動きを追ってみるつもり。案外自宅じゃなくて、別のところに隠しているかもしれないし」
「付喪神たちはいつもと違うルートを通っていたって言ってたもんね」
「そ。もし中古とかで売ってたら、オレたちでも店に連絡できる。どこかに隠したなら、近くの監視カメラを調べればいい」
今はまだお昼過ぎだから、スタンプラリーが終わるまでにはあと二、三時間の余裕がある。
斎藤清のルートを早めに割り出せたら、実際に私たちが行って確認することもできるはず。
「でも車の追跡って、そう簡単じゃないよね」
「警察じゃなきゃ割り出しは難しいね。できないことはないし証拠も残さない自信あるけど、今回は警察も関わってるから聞かれたらめんどくさいかも」
「わざわざ腕前を強調する必要なくない?」
アキくんの冷たい眼差しを華麗にスルーして、桜二くんは話を続けた。
「だからま、逆に警察を利用して正攻法で情報を手に入れるよ」
「正攻法……? 桜二、お前ストレスで思考がおかしくなったのか……?」
信じられないといった様子の颯馬くんに、桜二くんは鋭い視線を向ける。
「人を犯罪者みたいに言わないでくれる!? オレだって出来たら正々堂々とやるけど?」
「白鳥の辞書に正々堂々って言葉があったんだね……」
「ソウが正面突破しか知らないから、オレが柔軟に対応してるだけ! いつもちゃんと悪い人を捕まえて最終的には専門の人に任せてるじゃん」
普通は自分で悪い人を捕まえないし、最終的な状態になる前に専門の人を頼るが……わざわざ言わなかった。後が怖いからだ。
「その、正攻法ってなに?」
話を戻すべくそう尋ねる。
桜二くんは気を取り直すようにコホン、と咳ばらいを一つして説明を続けた。
どうやらホテルと連携しているタクシーらしく、宿泊客なら無料で利用できた。
桜二くんと並んで後部座席に座り、十分ほどでホテルの駐車場に着く。私たちは急いで降りて、先生たちに見つからないように裏口に回る。
「ユキちゃん、白鳥! こっちだよ!」
聞き覚えのある声に顔を上げれば、先に待ってくれていたアキくんが裏口の傍で手を振っているのが目に入る。
私と桜二くんが気づいたのを確認すると、アキくんはコンコンと裏口の扉を軽く叩いた。間をおかず、ギイと音を立てて扉が内側から開けられる。
「今なら誰もいない。早く入れ」
中で待機していた颯馬くんに促されて、私たちはささっと裏口を通る。
スタンプラリー中にホテルに居るのがバレると、サボりとみなされて評価が下がるのだ。林間学校は学校行事だから、成績に反映されるのである。
調査に関わっている桜二くんならともかく、私たち三人は間違いなくバレたら反省文ルートだ。しかも私とアキくんは迷子という設定だから、絶対に先生に見つかってはいけない。
「よくこんな裏口を見つけたね。鍵かかってそうだけど」
「ピッキングで開けたよ。急を要するから仕方ない」
まっすぐな目でにっこり笑うアキくん。
大して悪いことをしている自覚がある颯馬くんは気まずそうに目を泳がせた。
「一応通るたびに施錠し直しているから、誰かが侵入しないようにしているよ。この辺り防犯カメラないし、セーフセーフ」
私たちが侵入しているので、厳密に言わなくてもアウトなのだが……窃盗犯を捕まえるためには必要な犠牲だと思おう。
思わず遠い目をしつつ、私たちは落ち着いて話し合いができる場所を求めて急ぎ足で颯馬くんたちの部屋に向かった。
男子は全員三階に部屋があるため、私はハラハラしながら廊下を進んでいく。ようやく辿り着いた部屋に入ってからやっと、ほっと息をついた。
私の部屋とほぼ変わらない間取りだが、よく分からない電子機器やビジネス書がたくさん置いてあったりと一目で颯馬くんと桜二くんの部屋だと分かる。
「ひとまず、犯人の目星はついたわけだけど」
私たちは広縁のテーブルを囲むように座り、桜二くんはみんなが見えるような位置にパソコンを置く。
その画面には、犯人である斎藤清の情報が映っていた。
「でも、まだ証拠はないんだよね……」
私は画面を見ながら、ふと漏らす。
付喪神たちはたしかに断言したけど、それを証拠として扱うのは難しい。離したところで誰一人として信じてくれないのは、この場に居る全員が理解していた。
「今ごろ盗んだ景品は家にあるだろうから、自宅捜査すれば一発だろうが……これもまず斎藤が犯人って証明しないとな」
腕を組んでうなる颯馬くんに、アキくんが小さくうなずく。
「車の出入り、盗んだ景品の運搬……どこかで記録が残ってれば、それをつき出せばいいけど」
「何も見つからなかったら、自白させるしかないか?」
「自白って、こっちには手札が何もないんだよ? 旅行先で道具とかも限られてくるし」
手詰まりになったところで、みんなの視線が桜二くんに向けられた。静かに何か考え込んでいる様子だったが、その視線を受けて顔を上げる。
「まずは予定通り、車のナンバーで斎藤の動きを追ってみるつもり。案外自宅じゃなくて、別のところに隠しているかもしれないし」
「付喪神たちはいつもと違うルートを通っていたって言ってたもんね」
「そ。もし中古とかで売ってたら、オレたちでも店に連絡できる。どこかに隠したなら、近くの監視カメラを調べればいい」
今はまだお昼過ぎだから、スタンプラリーが終わるまでにはあと二、三時間の余裕がある。
斎藤清のルートを早めに割り出せたら、実際に私たちが行って確認することもできるはず。
「でも車の追跡って、そう簡単じゃないよね」
「警察じゃなきゃ割り出しは難しいね。できないことはないし証拠も残さない自信あるけど、今回は警察も関わってるから聞かれたらめんどくさいかも」
「わざわざ腕前を強調する必要なくない?」
アキくんの冷たい眼差しを華麗にスルーして、桜二くんは話を続けた。
「だからま、逆に警察を利用して正攻法で情報を手に入れるよ」
「正攻法……? 桜二、お前ストレスで思考がおかしくなったのか……?」
信じられないといった様子の颯馬くんに、桜二くんは鋭い視線を向ける。
「人を犯罪者みたいに言わないでくれる!? オレだって出来たら正々堂々とやるけど?」
「白鳥の辞書に正々堂々って言葉があったんだね……」
「ソウが正面突破しか知らないから、オレが柔軟に対応してるだけ! いつもちゃんと悪い人を捕まえて最終的には専門の人に任せてるじゃん」
普通は自分で悪い人を捕まえないし、最終的な状態になる前に専門の人を頼るが……わざわざ言わなかった。後が怖いからだ。
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