未来スコープ・コンセプト絵本 ―リスのリッカと ことばの森のちず―

著者紹介

米田 悠由（よねだ ゆうゆ）

―経歴―

神奈川県西湘地区出身。

物書きの原点は、小学校時代に綴っていた日記にある。日々の出来事を言葉にする楽しさを知り、文章に対する感覚を育んだ。現在もその一部が残っており、当時の教師による赤ペンコメントに対する違和感をユーモラスに綴った「先生のツッコミが違うと思う」シリーズとしてSNSに投稿し、読者の共感を集めている。

中学では生物部に所属し、高校では化学を得意としたことから帝京大学薬学部へ進学するも、進路変更により中退。

その後、幼少期から憧れていた映像の世界へと進み、映像系専門学校で撮影・編集・脚本などを学ぶ。授業の合間には、趣味としてSFのショートショートを執筆し、物語の構造やアイデアの練磨に没頭した。

在学中には中国・南京大学へ短期留学し、現地で撮影した記録映像が評価され、国会議員の訪中に同行する撮影スタッフとして抜擢される。

卒業後は日立製作所に入社。横浜の映像関連事業所にて、プロジェクターの取扱説明書制作などに携わりながら、文章に関わる業務を継続。業務の中でも、伝えること・構成することへのこだわりを持ち続け、物書きとしての感覚を磨き続けた。

在職中は、趣味として週末に地元劇団に所属し、サラリーマン俳優として10年以上にわたり舞台に出演。
シリアスからコメディまで幅広く演じ、落語家を演じる舞台にも参加。笑いを“狙う”のではなく、リアリティの中から自然に生まれるユーモアを追求する劇団の理念は、現在の執筆にも深く影響している。

その後、日立の映像事業撤退に伴い、20年以上勤めた職場を早期退職。
退職後は、妻の希望もあり夫婦でカフェを開業。ミニライブやボードゲームイベントを開催し、音楽家や愛好家に親しまれるも、日常営業の難しさから3年で閉店。そして離婚。
当時の様子は、YouTubeで「Cafeひみつきち」と検索すれば、常連の音楽家が制作した店のミュージックビデオを視聴できるほか、当時のX（旧Twitter）にも記録が残されており、店の雰囲気や日々の営みを垣間見ることができる。

離婚と失業を経て、長く、死ぬことしか考えられないほど心を病むが、ある日突然に回復するという不思議な体験を経て、現在は介護施設の施設管理職員として働きながら、執筆活動に取り組んでいる。

人生の節々で、形は違えど常に「言葉」と向き合い続けてきた。
物語を紡ぐことは、日々の営みの延長線上にある。


―作品について―

物語を書くことは、日々の営みの延長線上にある──そう語る著者が、一貫して描き続けているのが「未来スコープ」シリーズである。

本シリーズは、未来が見える不思議な道具「未来スコープ」を手にした平凡な女子高生たちが、運命の分岐点に立ち、選択と葛藤を繰り返しながら、自分自身の軸を見つけていくSFラブストーリーである。
恋愛を主軸に据えながらも、描かれるのは甘さだけではない。社会構造や巨大組織との対峙、制度への疑念、倫理と感情の揺らぎ──そうした現代的なテーマが物語の根底に流れている。
登場人物たちは、未来スコープによって提示される“選ばされた未来”に抗いながら、自らの意思で“選び取る未来”を模索する。
恋愛要素は控えめながらも、キスシーンなどではリアリティを重視し、感情の深度を丁寧に描いている。

物語構成においては、伏線回収とどんでん返しを重視し、詳細なプロット設計をもとに、複雑に絡み合う要素を自然に回収していく。
セリフ劇を中心に展開される文体は、登場人物の感情を直接的に伝え、読者の想像力を刺激する。

また、各作品には必ず「いったいどうゆこと？」「そうゆうことか」というセリフが登場し、物語の転換点を象徴する演出として機能している。

シリーズはオムニバス形式で構成されており、物語同士に直接的な繋がりはないため、どの作品からでも楽しむことができる。
それぞれの作品が独立したテーマと構造を持ちながらも、「未来」「選択」「自己」という思想的な連続性によって、シリーズ全体が緩やかに繋がっている。

また、本編には必ず「ユカ」という名前の親友が登場する（漢字表記は作品ごとに異なる）。
彼女たちは、主人公の選択や葛藤に寄り添う存在として描かれるが、作品によってはそのユカ自身が主人公となり、彼女の活躍や成長を描く番外編が展開されることもある。
本編では語られなかった内面や使命との向き合いが、番外編で深く掘り下げられ、シリーズの世界観にさらなる奥行きを与えている。

舞台設定には、著者の地元である神奈川県西湘地区が登場することもあり、実在の地名や施設を連想させる描写を通して、読後に聖地巡礼的な楽しみを提供している。
これらはすべて物語演出の一部であり、現実の事物や方針とは関係がないが、地域への愛と訪問への願いが込められている。

さらに、シリーズの思想を拡張する形で、「未来スコープ・コンセプト絵本シリーズ」も展開されている。
「言葉」「多様性」「自己肯定」などをテーマに、未来スコープの思想を絵本という表現形式で描いており、本編とは異なり未来スコープ自体は登場しない。
それでも、「未来は与えられるものではなく、自ら築くもの」というメッセージは、絵本の中にも確かに息づいている。

絵本という表現への親しみは、著者の小学校時代にまで遡る。
図工の授業で、大きな画用紙を折って切れ目を入れ、冊子状に仕立てた工作に、絵と文を添えて物語を綴る──その工程すべてに夢中になり、家でも何冊も絵本を作ったという。
やがて自作絵本に没頭したことをきっかけに、読む側としての関心も深まり、冒頭で述べた日記には、時折絵本の感想が綴られている。
一時期は絵本から離れていたものの、子どもが生まれてからは読み聞かせのために数多くの絵本を集め、親子で物語の世界を楽しんだ。
さらにカフェ経営時代には、演劇経験を活かして朗読会を何度も開催。
BGMやプロジェクターを用いた演出に加え、演劇仲間と協力して舞台さながらの本格的な朗読会を行うなど、絵本を「読む」「演じる」「共有する」場として広げてきた。
こうして人生の節々で絵本と関わり続けてきた体験が、現在の絵本シリーズへとつながり、物語を考える楽しさ、そしてそれを「本」という形にできることへの憧れと喜びを育んできた。
それらが、現在の絵本シリーズの根底に流れる創作衝動となっている。

未来スコープシリーズは、読者に「自分ならどの未来を選ぶか」という問いを静かに投げかける。
選択の先にある感情、倫理、そして自己の再構築──そのすべてを、少女たちの視点から丁寧に描き出すことで、読者の内面に深く届く物語を目指している。