11 / 76
幸せな出逢い
しおりを挟む
リンの機転とモモの天性のギャンブルの才能によって資産を増やしたラン・ヤスミカ家は次男ユーリとリンが暮らすための別邸を増築した。
リニューアルされた本邸にはユーリの両親と兄夫婦と甥っ子と姪っ子が変わらず住んでいて執事のトーマスが付き従う。
新しい別邸…ユーリとリンの新居には当然だがラン・ヤスミカ家の若夫婦ユーリとリンが主として暮らし、領地の学校の先生に転職したリンの異母兄ミシェルとその愛人というか内縁の妻のような存在の少年モモも居室を持っている。
そして、別邸の執事はモモがスカウトしてきた賭場のならず者だったシオン。
シオンの手下だった者たちは本邸と別邸それぞれに配属されて働いている。
ラン・ヤスミカ家の人々は他人を差別をしないというより素晴らしくおおらかで大雑把な性格なのでミシェルが美少年大好きでもOKであり、モモが前科少なくとも14犯くらいあっても気にせず、シオンたちが元裏賭場のならず者でも受け入れる。
寛大を軽く越しているが、そもそも、神経質な一族だったら次男坊に美少年でも男子の嫁がきた時点で嫌がるはずだ。
面倒な事態を見抜く能力は高いのだが、最終的には「まあ、なんとかなる!」で済ます家系である。
軽く触れたが、数百年前のラン・ヤスミカ家当主は漆黒のドラゴンとか右腕に秘めている自称黒天使の申し子だったようなので戦争ボロ負けしても「俺ら黒天使の申し子だし。なんとかなる!」とか考えていた可能性もある。
楽天的な一族なのでユーリに嫁いだリンも居心地が良かった。
今日もユーリが留守中にリンは兄嫁フィンナと縫い物をしながら楽しく喋っていた。
ちなみにミシェルが学校で仕事中はモモも基本はリンの傍にいる。
フィンナは領内のご婦人たちと親しく、世間話のネタは尽きない。
「リン様。モモ様。牧場の奥さんのお話なんだけどスゴいのよ!ご主人が奥さんに告げたの。奥さんの貧乳に惚れてたって!ご主人。毎日牛の乳搾り過ぎて嫁は貧乳が良いって決めてたみたい!愛よね!?」
「フィンナ義姉上。なんで牧場のご主人は唐突に奥さんの貧乳が良いなんて告白したのですか?タイミングが理解できません」
「牛の乳搾りし過ぎて貧乳好きになるは完全な職業病だな」
こんなほのぼの系の会話をしながらリンもモモはフィンナに家事を教わり、少年なのに花嫁修業している。
モモは生来器用なので手縫いでミシェルの着るものなども問題なく作れるが、リンは教わってもユーリにピッタリの衣装が作れない。
聡明なリンでも実家のシルバー家で裁縫は教わっていないからだ。
「縫い目が揃わない。刺繍って難しい」
リンがため息を吐くとフィンナが微笑みながら言った。
「リン様。焦ることないわ。心を込めて縫えば上達するものよ」
フィンナに励まされるリンのとなりでモモは黙々と刺繍を仕上げていく。
その腕前は玄人裸足なのでリンとフィンナが驚いているとモモが針をとめずに語った。
「俺の母親はお針子でした。途中から売春婦に転職したけど。結局は売春婦も辞めて男と逃げた」
それだけ言うとモモは縫い物の続きをした。
リンがなにか声をかけようとした瞬間にフィンナが笑顔でモモに囁いた。
「私も少し似てるわ。母に捨てられたの」
唐突な過去暴露にリンとモモが顔をあげるとフィンナが穏やかに言葉を紡いだ。
「私の実家…もう実家とは呼べないけど…ラン・ヤスミカ家と親しい貴族でね。お父様と結婚した母は屋敷の従者と逃げちゃったわ。私を産んですぐ」
母親の不倫でフィンナは不義の子と認定され、実家で冷遇されてしまった。
「見かねたラン・ヤスミカ家の先代当主様…エセルとユーリのお祖父様が私を引き取ってくれた。エセルの許嫁として」
つらい思い出を笑顔で語るフィンナを見て、リンは少し立場は異なるが自分も似たような境遇だと思った。
リンは実母ではないがシルバー家当主夫人のローズに大切に育てられ、異母兄姉も優しくしてくれた。
他家が心配するレベルなのだからフィンナは相当に実家で苦しい思いをしていたのだ。
静かになった部屋でフィンナはクスクス笑うと朗らかに言ったのだ。
「変なことを話してごめんなさい。私は母というよりは実家に捨てられたけど幸せよ。ラン・ヤスミカ家の皆様は私を本当の家族のように接してくれた。実家で育つより幸運だったと思うわ」
フィンナのこの言葉にモモはポツリと「俺も似たようなもんだ」と答えた。
縫い物のあと、リンはシルバー家のローズ夫人や異母兄姉に手紙を書くことにした。
思えばリンがシルバー家で形見の狭い暮らしをしないで済んだのはローズ夫人の優しさが大きい。
そしてミシェルをはじめエドガー、シンシア、ジャンヌという異母兄姉4人が庶子のリンを疎まず、憐れまず、本当の弟として愛してくれたからだ。
リンは自分はシルバー家の慈悲と憐れみで生かされていると信じて成長した。
父であるシルバー家当主はリンの賢さは認めたが、父親としての愛情を示してくれることはなかった。
その代わりに嘘偽りなくリンを慈しんでくれたのはローズ夫人であり、ミシェルたち異母兄姉だ。
なんで庶子の自分を疎まず大切にしてくれるのかリンはローズ夫人やミシェルたちには訊けない。
優しい育ての母や異母兄姉たちが何を思ってリンに優しくしてくれたとしても同じだ。
リンは生涯その愛情に報いるために生きていく。
「親愛なるお義母様…お元気ですか?ラン・ヤスミカ領は少し肌寒くなりました…」
リンが手紙を書いているとユーリが別邸に戻った。
手紙を中断して出迎えに行くとユーリは籠に詰まった木の実を見せた。
「畑の手伝いでもらった!」
「ユーリ!私はあなたと結婚できて心から幸せです!ユーリのことが大好きなんです!」
木の実に無反応で抱きついてくるリンにユーリは困惑しつつ照れたが、木の実の籠を執事のシオンに渡すとぎゅっとリンを抱きしめた。
「俺も同じだ。リンと結婚できて嬉しい」
抱き合うユーリとリンを見守っていたシオンは木の実をジャムにしようと一礼して厨房に下がった。
「リン様は素直だな。モモ。お前も少しは見習え」
シオンの軽口に厨房で野菜の皮を剥いていたモモは拗ねたように口をとがらせた。
「リン様みたく素直に言えたら苦労しねーよ。ミシェルにお前に拾われて幸せなんて」
「十分幸せそうに見えるがな!」
シオンにからかわれてモモはムキになり叫んだ。
「ああ!幸せだよ!ミシェルに出逢って初めて人を好きになった!変態でもアホでも美少年好きエロ男色でも!物心ついてから犯罪歴=年齢な俺を1番好きだって言ってくれたのはミシェルだけだ!!」
「モモって14歳だろ?前科14犯か。パネエな!俺ですら前科3犯なのに」
執事が前科3犯なあたりでラン・ヤスミカ家別邸は相当にヤバい。
しかし、ここで重要なのはモモとシオンの前科対決でなく、さりげなくミシェルが仕事から戻っていたことだ。
厨房にいるモモに会いに行ったミシェルは当然だがモモの本心を聞いている。
そして、嬉しすぎて厨房に飛び込んでモモを抱きしめ、シオンが見ている前でキスしまくっている。
「モモ!!金貨はあとで払うからキスを存分にさせてくれ!!」
「ミシェル!?聞いてたのか!?やめろ!ここ厨房だぞ!」
「厨房と閨房なんてほぼ同じではないか!?」
「全然ちげーよ!お前それでも先生か!シルバー家での英才教育は脳から消えたのか!?」
嫌がりながらも厨房でミシェルとイチャイチャするモモにシオンは笑いながら茶々を入れた。
「悪いがイチャつくならお部屋へどうぞ。ミシェル様。シルバー家よりお手紙が届いてます」
「ありがとう!いまはモモと部屋に行きたいからあとで読むことにする!」
「至急って書いてますよ?」
「私にとってはいまが至急だ!では、またあとで!!」
「おい!ミシェル!シルバー家から火急の知らせなら速く確認しろ!」
モモにげんこつを食らった発情ミシェルはしぶしぶ至急の手紙の封を切った。
「なになに……母上とエドガーからだ。ステフとマックスとヒナリザが近くラン・ヤスミカ家に来る。面倒みることか…」
ステフとマックス、ヒナリザはモモと同じく孤児でミシェルに引き取られていた美少年トリオだ。
色々ありミシェルやモモと離れて暮らしていたが、ようやくラン・ヤスミカ領に向かう許可がおりたのである。
リンはあらかじめ3人が来ると読んでいたので別邸に部屋をもうけている。
モモは3人が滞在すると別邸はますます忙しく賑やかになると笑った。
「久しぶりにステフたちに会える!俺だけじゃミシェルのバカの相手は疲れたからタイミングがいい」
「モモ!そんなこと言わないで少しは嫉妬してるような言葉を言ってくれ」
仲良く出ていく2人を見送るシオンはシルバー家からの手紙でスルーしたがかなり重要な箇所を突っ込んだ。
「さっきの手紙。至急が子宮になってたが誰も指摘しねーな」
ミシェルとモモとは別にユーリとリンも部屋で仲睦まじく寄り添っている。
「ユーリ。さっきシルバー家の家族に手紙を書いてました」
「そうか!リンは家族想いだな」
「家族にはユーリのことが大好きと書きました。どんな理由でもここに嫁げて幸せだと」
そう言ってリンが微笑むとユーリも笑顔でリンを抱き寄せた。
一方でミシェルに抱きしめられながらモモは何気なく言った。
「あの手紙。シオンはスルーしたが至急を子宮って書いてたぞ。エドガー様。何があった?」
エドガーとはミシェルのすぐ下の実弟でシルバー家次期当主である。
今現在わかっているエドガー情報はNTRものが好きな貴公子。
ちなみにシルバー家の当主の子供は上から年齢順に長兄ミシェル27歳、次男エドガー25歳、長女シンシア22歳、次女ジャンヌ21歳、そして三男リン15歳となる。
ミシェルはモモの言葉に何事もないように答えた。
「おそらくエドガーは至急を子宮と書いてしまうくらい頭でエロ妄想をしてるのだ。エドガーは私が言うのもだが、澄ましたド変態だから」
至急が子宮になるハプニングはあったが遠からずミシェルの美少年愛人トリオがラン・ヤスミカ領にやってくる。
最後に兄嫁フィンナの実家がないのは帰る家がないの意味でなく物理的にない。
冷遇された報復でフィンナが自作の手榴弾を投げて爆破させたからだ。
この爆破事件は雪合戦中の不慮の事故として処理されている。
フィンナ14歳、夫となるエセル15歳、ユーリ8歳の冬に遊んでるふりしてフィンナの実家に手榴弾投げて逃げた。
これはリンも知らないがモモやシオンに少しばかり前科があってもみんな気にしないのは自分らも立派な前科があるからである。
end
リニューアルされた本邸にはユーリの両親と兄夫婦と甥っ子と姪っ子が変わらず住んでいて執事のトーマスが付き従う。
新しい別邸…ユーリとリンの新居には当然だがラン・ヤスミカ家の若夫婦ユーリとリンが主として暮らし、領地の学校の先生に転職したリンの異母兄ミシェルとその愛人というか内縁の妻のような存在の少年モモも居室を持っている。
そして、別邸の執事はモモがスカウトしてきた賭場のならず者だったシオン。
シオンの手下だった者たちは本邸と別邸それぞれに配属されて働いている。
ラン・ヤスミカ家の人々は他人を差別をしないというより素晴らしくおおらかで大雑把な性格なのでミシェルが美少年大好きでもOKであり、モモが前科少なくとも14犯くらいあっても気にせず、シオンたちが元裏賭場のならず者でも受け入れる。
寛大を軽く越しているが、そもそも、神経質な一族だったら次男坊に美少年でも男子の嫁がきた時点で嫌がるはずだ。
面倒な事態を見抜く能力は高いのだが、最終的には「まあ、なんとかなる!」で済ます家系である。
軽く触れたが、数百年前のラン・ヤスミカ家当主は漆黒のドラゴンとか右腕に秘めている自称黒天使の申し子だったようなので戦争ボロ負けしても「俺ら黒天使の申し子だし。なんとかなる!」とか考えていた可能性もある。
楽天的な一族なのでユーリに嫁いだリンも居心地が良かった。
今日もユーリが留守中にリンは兄嫁フィンナと縫い物をしながら楽しく喋っていた。
ちなみにミシェルが学校で仕事中はモモも基本はリンの傍にいる。
フィンナは領内のご婦人たちと親しく、世間話のネタは尽きない。
「リン様。モモ様。牧場の奥さんのお話なんだけどスゴいのよ!ご主人が奥さんに告げたの。奥さんの貧乳に惚れてたって!ご主人。毎日牛の乳搾り過ぎて嫁は貧乳が良いって決めてたみたい!愛よね!?」
「フィンナ義姉上。なんで牧場のご主人は唐突に奥さんの貧乳が良いなんて告白したのですか?タイミングが理解できません」
「牛の乳搾りし過ぎて貧乳好きになるは完全な職業病だな」
こんなほのぼの系の会話をしながらリンもモモはフィンナに家事を教わり、少年なのに花嫁修業している。
モモは生来器用なので手縫いでミシェルの着るものなども問題なく作れるが、リンは教わってもユーリにピッタリの衣装が作れない。
聡明なリンでも実家のシルバー家で裁縫は教わっていないからだ。
「縫い目が揃わない。刺繍って難しい」
リンがため息を吐くとフィンナが微笑みながら言った。
「リン様。焦ることないわ。心を込めて縫えば上達するものよ」
フィンナに励まされるリンのとなりでモモは黙々と刺繍を仕上げていく。
その腕前は玄人裸足なのでリンとフィンナが驚いているとモモが針をとめずに語った。
「俺の母親はお針子でした。途中から売春婦に転職したけど。結局は売春婦も辞めて男と逃げた」
それだけ言うとモモは縫い物の続きをした。
リンがなにか声をかけようとした瞬間にフィンナが笑顔でモモに囁いた。
「私も少し似てるわ。母に捨てられたの」
唐突な過去暴露にリンとモモが顔をあげるとフィンナが穏やかに言葉を紡いだ。
「私の実家…もう実家とは呼べないけど…ラン・ヤスミカ家と親しい貴族でね。お父様と結婚した母は屋敷の従者と逃げちゃったわ。私を産んですぐ」
母親の不倫でフィンナは不義の子と認定され、実家で冷遇されてしまった。
「見かねたラン・ヤスミカ家の先代当主様…エセルとユーリのお祖父様が私を引き取ってくれた。エセルの許嫁として」
つらい思い出を笑顔で語るフィンナを見て、リンは少し立場は異なるが自分も似たような境遇だと思った。
リンは実母ではないがシルバー家当主夫人のローズに大切に育てられ、異母兄姉も優しくしてくれた。
他家が心配するレベルなのだからフィンナは相当に実家で苦しい思いをしていたのだ。
静かになった部屋でフィンナはクスクス笑うと朗らかに言ったのだ。
「変なことを話してごめんなさい。私は母というよりは実家に捨てられたけど幸せよ。ラン・ヤスミカ家の皆様は私を本当の家族のように接してくれた。実家で育つより幸運だったと思うわ」
フィンナのこの言葉にモモはポツリと「俺も似たようなもんだ」と答えた。
縫い物のあと、リンはシルバー家のローズ夫人や異母兄姉に手紙を書くことにした。
思えばリンがシルバー家で形見の狭い暮らしをしないで済んだのはローズ夫人の優しさが大きい。
そしてミシェルをはじめエドガー、シンシア、ジャンヌという異母兄姉4人が庶子のリンを疎まず、憐れまず、本当の弟として愛してくれたからだ。
リンは自分はシルバー家の慈悲と憐れみで生かされていると信じて成長した。
父であるシルバー家当主はリンの賢さは認めたが、父親としての愛情を示してくれることはなかった。
その代わりに嘘偽りなくリンを慈しんでくれたのはローズ夫人であり、ミシェルたち異母兄姉だ。
なんで庶子の自分を疎まず大切にしてくれるのかリンはローズ夫人やミシェルたちには訊けない。
優しい育ての母や異母兄姉たちが何を思ってリンに優しくしてくれたとしても同じだ。
リンは生涯その愛情に報いるために生きていく。
「親愛なるお義母様…お元気ですか?ラン・ヤスミカ領は少し肌寒くなりました…」
リンが手紙を書いているとユーリが別邸に戻った。
手紙を中断して出迎えに行くとユーリは籠に詰まった木の実を見せた。
「畑の手伝いでもらった!」
「ユーリ!私はあなたと結婚できて心から幸せです!ユーリのことが大好きなんです!」
木の実に無反応で抱きついてくるリンにユーリは困惑しつつ照れたが、木の実の籠を執事のシオンに渡すとぎゅっとリンを抱きしめた。
「俺も同じだ。リンと結婚できて嬉しい」
抱き合うユーリとリンを見守っていたシオンは木の実をジャムにしようと一礼して厨房に下がった。
「リン様は素直だな。モモ。お前も少しは見習え」
シオンの軽口に厨房で野菜の皮を剥いていたモモは拗ねたように口をとがらせた。
「リン様みたく素直に言えたら苦労しねーよ。ミシェルにお前に拾われて幸せなんて」
「十分幸せそうに見えるがな!」
シオンにからかわれてモモはムキになり叫んだ。
「ああ!幸せだよ!ミシェルに出逢って初めて人を好きになった!変態でもアホでも美少年好きエロ男色でも!物心ついてから犯罪歴=年齢な俺を1番好きだって言ってくれたのはミシェルだけだ!!」
「モモって14歳だろ?前科14犯か。パネエな!俺ですら前科3犯なのに」
執事が前科3犯なあたりでラン・ヤスミカ家別邸は相当にヤバい。
しかし、ここで重要なのはモモとシオンの前科対決でなく、さりげなくミシェルが仕事から戻っていたことだ。
厨房にいるモモに会いに行ったミシェルは当然だがモモの本心を聞いている。
そして、嬉しすぎて厨房に飛び込んでモモを抱きしめ、シオンが見ている前でキスしまくっている。
「モモ!!金貨はあとで払うからキスを存分にさせてくれ!!」
「ミシェル!?聞いてたのか!?やめろ!ここ厨房だぞ!」
「厨房と閨房なんてほぼ同じではないか!?」
「全然ちげーよ!お前それでも先生か!シルバー家での英才教育は脳から消えたのか!?」
嫌がりながらも厨房でミシェルとイチャイチャするモモにシオンは笑いながら茶々を入れた。
「悪いがイチャつくならお部屋へどうぞ。ミシェル様。シルバー家よりお手紙が届いてます」
「ありがとう!いまはモモと部屋に行きたいからあとで読むことにする!」
「至急って書いてますよ?」
「私にとってはいまが至急だ!では、またあとで!!」
「おい!ミシェル!シルバー家から火急の知らせなら速く確認しろ!」
モモにげんこつを食らった発情ミシェルはしぶしぶ至急の手紙の封を切った。
「なになに……母上とエドガーからだ。ステフとマックスとヒナリザが近くラン・ヤスミカ家に来る。面倒みることか…」
ステフとマックス、ヒナリザはモモと同じく孤児でミシェルに引き取られていた美少年トリオだ。
色々ありミシェルやモモと離れて暮らしていたが、ようやくラン・ヤスミカ領に向かう許可がおりたのである。
リンはあらかじめ3人が来ると読んでいたので別邸に部屋をもうけている。
モモは3人が滞在すると別邸はますます忙しく賑やかになると笑った。
「久しぶりにステフたちに会える!俺だけじゃミシェルのバカの相手は疲れたからタイミングがいい」
「モモ!そんなこと言わないで少しは嫉妬してるような言葉を言ってくれ」
仲良く出ていく2人を見送るシオンはシルバー家からの手紙でスルーしたがかなり重要な箇所を突っ込んだ。
「さっきの手紙。至急が子宮になってたが誰も指摘しねーな」
ミシェルとモモとは別にユーリとリンも部屋で仲睦まじく寄り添っている。
「ユーリ。さっきシルバー家の家族に手紙を書いてました」
「そうか!リンは家族想いだな」
「家族にはユーリのことが大好きと書きました。どんな理由でもここに嫁げて幸せだと」
そう言ってリンが微笑むとユーリも笑顔でリンを抱き寄せた。
一方でミシェルに抱きしめられながらモモは何気なく言った。
「あの手紙。シオンはスルーしたが至急を子宮って書いてたぞ。エドガー様。何があった?」
エドガーとはミシェルのすぐ下の実弟でシルバー家次期当主である。
今現在わかっているエドガー情報はNTRものが好きな貴公子。
ちなみにシルバー家の当主の子供は上から年齢順に長兄ミシェル27歳、次男エドガー25歳、長女シンシア22歳、次女ジャンヌ21歳、そして三男リン15歳となる。
ミシェルはモモの言葉に何事もないように答えた。
「おそらくエドガーは至急を子宮と書いてしまうくらい頭でエロ妄想をしてるのだ。エドガーは私が言うのもだが、澄ましたド変態だから」
至急が子宮になるハプニングはあったが遠からずミシェルの美少年愛人トリオがラン・ヤスミカ領にやってくる。
最後に兄嫁フィンナの実家がないのは帰る家がないの意味でなく物理的にない。
冷遇された報復でフィンナが自作の手榴弾を投げて爆破させたからだ。
この爆破事件は雪合戦中の不慮の事故として処理されている。
フィンナ14歳、夫となるエセル15歳、ユーリ8歳の冬に遊んでるふりしてフィンナの実家に手榴弾投げて逃げた。
これはリンも知らないがモモやシオンに少しばかり前科があってもみんな気にしないのは自分らも立派な前科があるからである。
end
0
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
閉ざされた森の秘宝
はちのす
BL
街外れにある<閉ざされた森>に住むアルベールが拾ったのは、今にも息絶えそうな瘦せこけた子供だった。
保護することになった子供に、残酷な世を生きる手立てを教え込むうちに「師匠」として慕われることになるが、その慕情の形は次第に執着に変わっていく──
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
前世が教師だった少年は辺境で愛される
結衣可
BL
雪深い帝国北端の地で、傷つき行き倒れていた少年ミカを拾ったのは、寡黙な辺境伯ダリウスだった。妻を亡くし、幼い息子リアムと静かに暮らしていた彼は、ミカの知識と優しさに驚きつつも、次第にその穏やかな笑顔に心を癒されていく。
ミカは実は異世界からの転生者。前世の記憶を抱え、この世界でどう生きるべきか迷っていたが、リアムの教育係として過ごすうちに、“誰かに必要とされる”温もりを思い出していく。
雪の館で共に過ごす日々は、やがてお互いにとってかけがえのない時間となり、新しい日々へと続いていく――。
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
過労死転生した悪役令息Ωは、冷徹な隣国皇帝陛下の運命の番でした~婚約破棄と断罪からのざまぁ、そして始まる激甘な溺愛生活~
水凪しおん
BL
過労死した平凡な会社員が目を覚ますと、そこは愛読していたBL小説の世界。よりにもよって、義理の家族に虐げられ、最後は婚約者に断罪される「悪役令息」リオンに転生してしまった!
「出来損ないのΩ」と罵られ、食事もろくに与えられない絶望的な日々。破滅フラグしかない運命に抗うため、前世の知識を頼りに生き延びる決意をするリオン。
そんな彼の前に現れたのは、隣国から訪れた「冷徹皇帝」カイゼル。誰もが恐れる圧倒的カリスマを持つ彼に、なぜかリオンは助けられてしまう。カイゼルに触れられた瞬間、走る甘い痺れ。それは、αとΩを引き合わせる「運命の番」の兆しだった。
「お前がいいんだ、リオン」――まっすぐな求婚、惜しみない溺愛。
孤独だった悪役令息が、運命の番である皇帝に見出され、破滅の運命を覆していく。巧妙な罠、仕組まれた断罪劇、そして華麗なるざまぁ。絶望の淵から始まる、極上の逆転シンデレラストーリー!
植物チートを持つ俺は王子に捨てられたけど、実は食いしん坊な氷の公爵様に拾われ、胃袋を掴んでとことん溺愛されています
水凪しおん
BL
日本の社畜だった俺、ミナトは過労死した末に異世界の貧乏男爵家の三男に転生した。しかも、なぜか傲慢な第二王子エリアスの婚約者にされてしまう。
「地味で男のくせに可愛らしいだけの役立たず」
王子からそう蔑まれ、冷遇される日々にうんざりした俺は、前世の知識とチート能力【植物育成】を使い、実家の領地を豊かにすることだけを生きがいにしていた。
そんなある日、王宮の夜会で王子から公衆の面前で婚約破棄を叩きつけられる。
絶望する俺の前に現れたのは、この国で最も恐れられる『氷の公爵』アレクシス・フォン・ヴァインベルク。
「王子がご不要というのなら、その方を私が貰い受けよう」
冷たく、しかし力強い声。気づけば俺は、彼の腕の中にいた。
連れてこられた公爵邸での生活は、噂とは大違いの甘すぎる日々の始まりだった。
俺の作る料理を「世界一美味い」と幸せそうに食べ、俺の能力を「素晴らしい」と褒めてくれ、「可愛い、愛らしい」と頭を撫でてくれる公爵様。
彼の不器用だけど真っ直ぐな愛情に、俺の心は次第に絆されていく。
これは、婚約破棄から始まった、不遇な俺が世界一の幸せを手に入れるまでの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる