32 / 76
ラン・ヤスミカ領立学校の実態
しおりを挟む
ラン・ヤスミカ領立学校は6歳くらいから15歳までの領地の子供が通ういわゆる小中一貫校だ。
リンの異母兄ミシェルが一時期だけ先生をしていた学校である。
ユーリとその兄エセルと兄嫁フィンナも卒業生であり、領地の子供の大半はここで学んでいる。
更に学びたい場合はラン・ヤスミカ家の推薦で大学進学もできるが滅多にそんなお勉強大好きさんはいない。
15歳を過ぎればだいたいの領民は本格的に働いている。
領地の子供の過半数は家が農家など家業があるので進学する必要性がない。
領地で進学をするのは医者の家系に生まれた子供くらいだ。
あと、学校の先生になる者である。
彼らは義務教育を修了するとラン・ヤスミカ家の推薦で適当な大学に入り、医学や教育を学んで卒業したら領地に戻り家業の医者になる。
教職の勉強した者は学校で教鞭をとる。
ユーリの兄エセルは領主の嫡男なので進学しそうだが、領主としての心得などは現当主である父親の執務を手伝いながら学ぶのだ。
なので、ユーリは15歳で領地の学校を卒業後は実家の手伝いをしている。
ラン・ヤスミカ領は治安もよく食べ物も美味しいので領地の人々もわざわざ別の土地の大学に行こうとか転居する発想がない。
医術を学びに大学に進学した医者の子供も「やっぱ、ラン・ヤスミカ領には勝たん!」と言って帰ってくる。
田舎のクセに過疎とは無縁な領地である。
そんなラン・ヤスミカ領立学校で授業参観が行われた。
ユーリの甥っ子ジャンと姪っ子クレールは授業参観の科目を教えてくれた。
「今度の授業参観は自習です!」
「先生が保健体育と自習の2択ならどちらがいいか多数決をお取りになったの。圧倒的に自習だったわ」
この報告には学校通学経験がないリンでも耳を疑った。
授業参観は生徒、保護者、先生参加型のイベントではないか?
自習にしたら先生は不在であり、保護者である親はひたすらプリント解いてる我が子を見守るだけである。
先生は楽かもだが授業参観にする意味がそもそもないのでは?
あと、もうひとつの候補が保健体育なあたりが先生ガチでやる気ないのバレバレである。
リンも詳しいことはわからないが普通は音楽とか体育とか算術とかアクションが必要な科目を選ぶべきではないのか?
「あの……自習は学校の授業参観としてどうなのですか?」
遠慮がちにリンが問いかけるとユーリがキョトンとした。
「そんな珍しいか?俺がいたときも大抵は自習か保健体育か避難訓練だったぞ?俺らが避難してる姿を親は教室の後方で見てた」
「それ!親も避難訓練させないと何の意味もないです!」
「避難訓練で火災が発生する場所が100%の確率で音楽室なんだ。子供の頃から謎だった。どんな状況だと音楽室が火災になるんだって?」
ユーリが懐かしそうに笑うと聞いていたクレールが言った。
「ユーリ叔父様。今は避難訓練で火災になる場所は職員室よ。先生が職員室でウォッカを飲んでたら暖炉の炎に引火して火災が発生しましたって流れになるわ」
「マジ?何年かで変わったな!?そんなことする先生はちょっと問題だけど。それなら火災が何で発生したか腑に落ちる!」
腑には落ちるが先生が職員室でウォッカ飲んでるあたりでだいぶん学校が荒んでいる。
どこからそんなストーリーが浮かぶのかリンには疑問だが過去にウォッカ飲んでた先生がいたのかもしれない。
「自習にしてる授業参観で先生はなにをしてるのですか?」
それがやはり最大の謎でリンが質問するとジャンが笑顔で返答した。
「職員室でワインを飲んでます!授業参観後の保護者会の段階で泥酔してるみたいです」
授業参観を放棄して、生徒に自習させ、保護者を放置して先生は飲酒している!
学校そのものが腐ってないかとリンは仰天した。
兄のミシェルはなにも言わなかったが、そんな学舎で6歳から15歳まで学んでも子供がダメ人間になる。
「ユーリ。学校の方針って教育ですよね?大丈夫でしょうか?」
「大丈夫じゃね?授業参観以外の授業は厳しいから!テストで平均点以下だと先生が大説教する。こんなんじゃダメな大人になるぞって!」
「そんなこと!授業参観をサボってワイン飲んでる先生に言われたら屈辱です!」
しかし、そんなダメダメな学校を卒業しているラン・ヤスミカ領の人たちは普通に働いて生活している。
先生も基本はやる気ないが肝心なときの指導は優秀なのか?
先生が残念すぎて子供たちは自習的に勉強しているのか?
そこでリンは授業参観が自習の意味を突如理解したのだ。
「自主的に子供が勉強しているのを親御さんに見せる目的ですね!?」
「そうだ!親が見守るなか自習サボれる勇者ってそうそういないから!」
たしかに遊んでたら後で親に叱られるの確実である。
イキイキした授業風景を演出せず、あえて生徒放置して勉強させるのは合理的ともとれる。
「ちなみに授業参観の自習をサボると先生に酒瓶で頭殴られる。他の生徒や親御さんも見てる前で。エセル兄上の友達がそうだった。いまは領立学校で先生してるぞ!」
ちなみにそのエセルのヤンチャな友達がジャンとクレールの担任の先生だったりする。
1番先生を目指してはダメな奴が先生を目指してるからラン・ヤスミカ領立学校のヤバい伝統と校風は保たれている。
そして、授業参観は予定通り自習が行われた、ジャン&クレールは両親であるエセルとフィンナが見守るなか課題を解いていた。
「課題プリントが1枚なあたりで先生のやる気のなさを肌で感じるわ」
双子を見守るフィンナが笑顔で呟くとエセルが朗らかに告げた。
「でも、あのプリント1枚に難問があるかもよ?まだ授業で教えてない範囲とか?」
「それは教えてから課題プリントにすべきだけど。まあ、今さらね」
後日、ジャンとクレールから授業参観の自習プリントを見せてもらったリンは絶句した。
「ラン・ヤスミカ領立学校の今の校長先生のお名前!?これ1問!?自習プリントそのものがやる気ゼロ!」
しかし、ジャンとクレールは問題なく正解だったが過半数の生徒が「そういや?校長の名前なんだっけ?」であった。
保護者であるエセルとフィンナも「そういえば?お名前は?」となりすでに卒業してるユーリさえも「えっと~?頭皮が薄かったしか憶えてない」というありさまである。
リンには分からないが学校の校長先生の名前が咄嗟に出てこないは結構学校あるあるな気がする。
end
リンの異母兄ミシェルが一時期だけ先生をしていた学校である。
ユーリとその兄エセルと兄嫁フィンナも卒業生であり、領地の子供の大半はここで学んでいる。
更に学びたい場合はラン・ヤスミカ家の推薦で大学進学もできるが滅多にそんなお勉強大好きさんはいない。
15歳を過ぎればだいたいの領民は本格的に働いている。
領地の子供の過半数は家が農家など家業があるので進学する必要性がない。
領地で進学をするのは医者の家系に生まれた子供くらいだ。
あと、学校の先生になる者である。
彼らは義務教育を修了するとラン・ヤスミカ家の推薦で適当な大学に入り、医学や教育を学んで卒業したら領地に戻り家業の医者になる。
教職の勉強した者は学校で教鞭をとる。
ユーリの兄エセルは領主の嫡男なので進学しそうだが、領主としての心得などは現当主である父親の執務を手伝いながら学ぶのだ。
なので、ユーリは15歳で領地の学校を卒業後は実家の手伝いをしている。
ラン・ヤスミカ領は治安もよく食べ物も美味しいので領地の人々もわざわざ別の土地の大学に行こうとか転居する発想がない。
医術を学びに大学に進学した医者の子供も「やっぱ、ラン・ヤスミカ領には勝たん!」と言って帰ってくる。
田舎のクセに過疎とは無縁な領地である。
そんなラン・ヤスミカ領立学校で授業参観が行われた。
ユーリの甥っ子ジャンと姪っ子クレールは授業参観の科目を教えてくれた。
「今度の授業参観は自習です!」
「先生が保健体育と自習の2択ならどちらがいいか多数決をお取りになったの。圧倒的に自習だったわ」
この報告には学校通学経験がないリンでも耳を疑った。
授業参観は生徒、保護者、先生参加型のイベントではないか?
自習にしたら先生は不在であり、保護者である親はひたすらプリント解いてる我が子を見守るだけである。
先生は楽かもだが授業参観にする意味がそもそもないのでは?
あと、もうひとつの候補が保健体育なあたりが先生ガチでやる気ないのバレバレである。
リンも詳しいことはわからないが普通は音楽とか体育とか算術とかアクションが必要な科目を選ぶべきではないのか?
「あの……自習は学校の授業参観としてどうなのですか?」
遠慮がちにリンが問いかけるとユーリがキョトンとした。
「そんな珍しいか?俺がいたときも大抵は自習か保健体育か避難訓練だったぞ?俺らが避難してる姿を親は教室の後方で見てた」
「それ!親も避難訓練させないと何の意味もないです!」
「避難訓練で火災が発生する場所が100%の確率で音楽室なんだ。子供の頃から謎だった。どんな状況だと音楽室が火災になるんだって?」
ユーリが懐かしそうに笑うと聞いていたクレールが言った。
「ユーリ叔父様。今は避難訓練で火災になる場所は職員室よ。先生が職員室でウォッカを飲んでたら暖炉の炎に引火して火災が発生しましたって流れになるわ」
「マジ?何年かで変わったな!?そんなことする先生はちょっと問題だけど。それなら火災が何で発生したか腑に落ちる!」
腑には落ちるが先生が職員室でウォッカ飲んでるあたりでだいぶん学校が荒んでいる。
どこからそんなストーリーが浮かぶのかリンには疑問だが過去にウォッカ飲んでた先生がいたのかもしれない。
「自習にしてる授業参観で先生はなにをしてるのですか?」
それがやはり最大の謎でリンが質問するとジャンが笑顔で返答した。
「職員室でワインを飲んでます!授業参観後の保護者会の段階で泥酔してるみたいです」
授業参観を放棄して、生徒に自習させ、保護者を放置して先生は飲酒している!
学校そのものが腐ってないかとリンは仰天した。
兄のミシェルはなにも言わなかったが、そんな学舎で6歳から15歳まで学んでも子供がダメ人間になる。
「ユーリ。学校の方針って教育ですよね?大丈夫でしょうか?」
「大丈夫じゃね?授業参観以外の授業は厳しいから!テストで平均点以下だと先生が大説教する。こんなんじゃダメな大人になるぞって!」
「そんなこと!授業参観をサボってワイン飲んでる先生に言われたら屈辱です!」
しかし、そんなダメダメな学校を卒業しているラン・ヤスミカ領の人たちは普通に働いて生活している。
先生も基本はやる気ないが肝心なときの指導は優秀なのか?
先生が残念すぎて子供たちは自習的に勉強しているのか?
そこでリンは授業参観が自習の意味を突如理解したのだ。
「自主的に子供が勉強しているのを親御さんに見せる目的ですね!?」
「そうだ!親が見守るなか自習サボれる勇者ってそうそういないから!」
たしかに遊んでたら後で親に叱られるの確実である。
イキイキした授業風景を演出せず、あえて生徒放置して勉強させるのは合理的ともとれる。
「ちなみに授業参観の自習をサボると先生に酒瓶で頭殴られる。他の生徒や親御さんも見てる前で。エセル兄上の友達がそうだった。いまは領立学校で先生してるぞ!」
ちなみにそのエセルのヤンチャな友達がジャンとクレールの担任の先生だったりする。
1番先生を目指してはダメな奴が先生を目指してるからラン・ヤスミカ領立学校のヤバい伝統と校風は保たれている。
そして、授業参観は予定通り自習が行われた、ジャン&クレールは両親であるエセルとフィンナが見守るなか課題を解いていた。
「課題プリントが1枚なあたりで先生のやる気のなさを肌で感じるわ」
双子を見守るフィンナが笑顔で呟くとエセルが朗らかに告げた。
「でも、あのプリント1枚に難問があるかもよ?まだ授業で教えてない範囲とか?」
「それは教えてから課題プリントにすべきだけど。まあ、今さらね」
後日、ジャンとクレールから授業参観の自習プリントを見せてもらったリンは絶句した。
「ラン・ヤスミカ領立学校の今の校長先生のお名前!?これ1問!?自習プリントそのものがやる気ゼロ!」
しかし、ジャンとクレールは問題なく正解だったが過半数の生徒が「そういや?校長の名前なんだっけ?」であった。
保護者であるエセルとフィンナも「そういえば?お名前は?」となりすでに卒業してるユーリさえも「えっと~?頭皮が薄かったしか憶えてない」というありさまである。
リンには分からないが学校の校長先生の名前が咄嗟に出てこないは結構学校あるあるな気がする。
end
0
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
閉ざされた森の秘宝
はちのす
BL
街外れにある<閉ざされた森>に住むアルベールが拾ったのは、今にも息絶えそうな瘦せこけた子供だった。
保護することになった子供に、残酷な世を生きる手立てを教え込むうちに「師匠」として慕われることになるが、その慕情の形は次第に執着に変わっていく──
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
前世が教師だった少年は辺境で愛される
結衣可
BL
雪深い帝国北端の地で、傷つき行き倒れていた少年ミカを拾ったのは、寡黙な辺境伯ダリウスだった。妻を亡くし、幼い息子リアムと静かに暮らしていた彼は、ミカの知識と優しさに驚きつつも、次第にその穏やかな笑顔に心を癒されていく。
ミカは実は異世界からの転生者。前世の記憶を抱え、この世界でどう生きるべきか迷っていたが、リアムの教育係として過ごすうちに、“誰かに必要とされる”温もりを思い出していく。
雪の館で共に過ごす日々は、やがてお互いにとってかけがえのない時間となり、新しい日々へと続いていく――。
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
過労死転生した悪役令息Ωは、冷徹な隣国皇帝陛下の運命の番でした~婚約破棄と断罪からのざまぁ、そして始まる激甘な溺愛生活~
水凪しおん
BL
過労死した平凡な会社員が目を覚ますと、そこは愛読していたBL小説の世界。よりにもよって、義理の家族に虐げられ、最後は婚約者に断罪される「悪役令息」リオンに転生してしまった!
「出来損ないのΩ」と罵られ、食事もろくに与えられない絶望的な日々。破滅フラグしかない運命に抗うため、前世の知識を頼りに生き延びる決意をするリオン。
そんな彼の前に現れたのは、隣国から訪れた「冷徹皇帝」カイゼル。誰もが恐れる圧倒的カリスマを持つ彼に、なぜかリオンは助けられてしまう。カイゼルに触れられた瞬間、走る甘い痺れ。それは、αとΩを引き合わせる「運命の番」の兆しだった。
「お前がいいんだ、リオン」――まっすぐな求婚、惜しみない溺愛。
孤独だった悪役令息が、運命の番である皇帝に見出され、破滅の運命を覆していく。巧妙な罠、仕組まれた断罪劇、そして華麗なるざまぁ。絶望の淵から始まる、極上の逆転シンデレラストーリー!
植物チートを持つ俺は王子に捨てられたけど、実は食いしん坊な氷の公爵様に拾われ、胃袋を掴んでとことん溺愛されています
水凪しおん
BL
日本の社畜だった俺、ミナトは過労死した末に異世界の貧乏男爵家の三男に転生した。しかも、なぜか傲慢な第二王子エリアスの婚約者にされてしまう。
「地味で男のくせに可愛らしいだけの役立たず」
王子からそう蔑まれ、冷遇される日々にうんざりした俺は、前世の知識とチート能力【植物育成】を使い、実家の領地を豊かにすることだけを生きがいにしていた。
そんなある日、王宮の夜会で王子から公衆の面前で婚約破棄を叩きつけられる。
絶望する俺の前に現れたのは、この国で最も恐れられる『氷の公爵』アレクシス・フォン・ヴァインベルク。
「王子がご不要というのなら、その方を私が貰い受けよう」
冷たく、しかし力強い声。気づけば俺は、彼の腕の中にいた。
連れてこられた公爵邸での生活は、噂とは大違いの甘すぎる日々の始まりだった。
俺の作る料理を「世界一美味い」と幸せそうに食べ、俺の能力を「素晴らしい」と褒めてくれ、「可愛い、愛らしい」と頭を撫でてくれる公爵様。
彼の不器用だけど真っ直ぐな愛情に、俺の心は次第に絆されていく。
これは、婚約破棄から始まった、不遇な俺が世界一の幸せを手に入れるまでの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる