花嫁と貧乏貴族

寿里~kotori ~

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王女と王子の休日~1~

「ミモザ。体調はいかがかしら?この離宮は静かでいいわね。わたくしも引きこもろうかしら?」

西の離宮に国王陛下のひとり娘で第1王位継承者であるダイアナ王女が訪ねてきた。

ミモザ王子の従姉にあたり、ミシェルがモモの様子を定期的に見に行くと知ったので便乗して付いてきたのである。

利発なダイアナ王女はモモを見てすぐにシルバー家の庶子ではないと見破っている。

「おバカな宮廷の貴族たちは騙せてもわたくしは騙せなくてよ。ミシェル。離宮に行くならわたくしも連れていきなさい」

これはミシェルが単独で離宮へ頻繁に訪れると不審がられると悟った王女の配慮である。

寛容なダイアナ王女が離宮で引きこもる従弟のミモザ王子のことを心配して頻繁に離宮を訪ねるなら誰も王女に感動こそすれ不審には思わない。

そのお供にミシェルが付き添う形ならば余計な不安感を貴族に抱かせないで済むのだ。

だから、ミシェルとしてはダイアナ王女の心遣いは嬉しいが困ったことが起きた。

離宮で静かに生活しているミモザ王子を見ているうちにダイアナ王女まで王位継承ダルいと気持ちが変わってきている。

「わたくしって国王であるお父様と王妃であるお母様から将来は女王になれと幼いころから期待されてきたわ。でも、女王にやりがいを感じませんの。国政やって、無難な殿方と子作りして、青春がありませんわ。崩御するまで働くなんて嫌よ」

それが王位を継ぐ女性の宿命だと割りきってきたがダイアナ王女だって16歳の乙女だ。

毎日毎日、王位を継ぐための勉学や礼儀作法、国内および国外の状況、そして、家臣や宮廷に出入りする貴族たちの相手など王女には学ぶべきことや知るべきこと、成すべきことが山ほどある。

即位してもそれらから解放されることはないと考えたら従弟にならって引きこもり王女になりたいと願うのもワガママとは言い切れない。

絶大な権力を手にするということは自由とは無縁の生涯を送ることと同じだ。

16歳の王女がそれを改めて自覚してアンニュイになるのは当然といえば当然である。

「もう!こんなに努力して微笑んでいるのに女系の即位なんて反対!?わたくしの日々の頑張りを見てから口になさいよ!不愉快だわ!」

ダイアナ王女……めっちゃ荒ぶってる。

居酒屋で男性部下への不満と怒りをぶちまける女性管理職みたいな状態になっている。

これには王女の即位に反対はしていない従弟のミモザ王子も引いた。

「ダイアナ姉上。ものすごくストレスフルな感じですよ?大丈夫ですか?」

「大丈夫に見える!?離宮でしか叫べないの!わたくしの即位に難癖つける貴族ども全員死ね!殺すぞ!ああ!田舎に引っ込みたいわ!エドカーがニートしてる田舎で暮らす!そこで自由に彼氏を作って生きるの!」

第1王位継承者が第2エドガー継承者になりつつある!

無言で様子を伺っていたミシェルは言葉が出なかった。

モモさえも荒ぶっているダイアナ王女の迫力を前に迂闊なことは言えない。

ミモザ王子はモモがさぐった限りでもガチで王位なんて望んでいない。

それならシルバー家の目論見どおりなのだが、本命のダイアナ王女まで王位を拒否して女王ダイアナ1世でなく女版エドカー2世に即位されたら本末転倒であり大問題であり国家の危機である。

ここはダイアナ王女になんとしても国王の後継になると気持ちを切り替えてもらわないとシルバー家としても困るのだ。

なので、モモはダメ元で提案してみた。

「ダイアナ王女。ストレス発散に宮廷を出て街を散策しませんか?1日自由に遊べば気分も晴れるのでは?」

国王陛下の愛娘を宮廷の外に連れ出すのはかなり危険な行為だ。

なにか事件や事故に巻き込まれたり、脱走がシルバー家の人間の手引きだとバレたらシルバー家全員が厳罰に処される。

聡明なダイアナ王女ならシルバー家の立場を悪くするこんな誘いなんて一笑に伏せて終わりとモモは読んでいたが、今回ばかりはモモの予想はオオハズレとなる。

「あら!それは名案ね!わたくし、街を自由に歩いて遊びたいと思ってましたの。ミモザ。貴方もご一緒にいかが?なにかあればシルバー家が罪をかぶるから大丈夫よ?」

ダイアナ王女は予想外に自由でシルバー家なんて踏みつけても構わないプリンセスだった!

これ、ミモザ王子かミシェルがうまく諌めてくれないとダイアナ王女は本気で街を散策する。

果たして2人はどう対処するかとモモが見守っていたらミモザ王子は少し口角をあげて言った。

「ダイアナ姉上。北門あたりは警備が薄いので脱出は簡単です。姉上は離宮にいると偽って街に出ても少しならば誤魔化せます」

うぉい!

ここで1番諌め力があるミモザ王子が脱走幇助するな!

この王子の思考はモモでも容易には理解できない。

野心家ではないふりして実は虎視眈々と王位を狙ってるのか?

それか、純粋にストレス爆発している従姉を気遣っての冗談を言っているだけなのか?

たしかに北門は宮廷では最も警備がユルいので服装を粗末にすれば王女は誰にもバレずに外に出られる。

「それを西の離宮で把握してるミモザ王子。やっぱ侮れない!」

この宮廷では空気にされている王子は自分より遥かに狡猾で賢いのではないかとモモは生まれて初めて脅威を感じた。

残るは頼りないがミシェルが丁重に全力で王女の休日を阻止してくれるしか道がない。

モモの発言ならミシェルが「子供の戯れ言ですから!」と流してくれたら丸く収まる。

シルバー家全員の命運がミシェルの発言にかかっている。

どう出るかとモモが固唾を呑んでいるとミシェルは笑顔で口を開いた。

「ならば、私とモモがダイアナ王女とミモザ王子を街にご案内いたします。1日遊べば我が弟エドカーの後継者にならぬと安心できるなら脱出幇助します」

「ミシェル!?王女と王子が同時に消えたら流石にバレる!シルバー家が潰れるぞ!?」

「モモ。心配しなくても平気だ。北門の番兵に賄賂渡せば便宜をはかってくれる」

王女の不在が不審がられない時間を守れば大事にはならないとミシェルは断言する。

こうしてダイアナ王女の街散策は決定事項となった。

ミモザ王子はご機嫌で帰って行ったダイアナ王女を見て呆然としているモモに笑いながら言ったのだ。

「案ずるな!ダイアナ王女もすぐに冷静になる。シルバー家を破滅させる真似はするまい!」

いっときのテンションが冷めれば「やっぱ、それするとヤバい」と聡明で模範的な王女なら思い直すとミモザ王子は断言した。

モモはその言葉に「それもそうだよな!」と安堵していたが王女が窮屈な宮廷に鬱憤が爆発して脱走はベタな展開で王道である。

数日後、ダイアナ王女はミシェルを引き連れて、微妙に地味なドレス姿で離宮にやって来た。

「さあ!今から街をお散歩よ!ミモザ!モモ!支度なさい!北門の番兵は賄賂わたしてるから楽勝よ!」

王女の休日を満喫する気満々なダイアナ王女。

多分、説得ができなかったミシェル。

「王子。これ、ガチで外に出る気です」

「そのようだな。モモ。腹をくくれ。2時間くらいなら離宮で僕と話していると従者&護衛に虚偽を言わせればなんとかなる。外に出る支度をするぞ」

幸い死なばもろともでミモザ王子も離宮から一緒に脱走してくれる。

王子はお留守番の離宮付きの従者と護衛にどんな言い訳をしても構わぬから王女と王子の脱走を偽れと厳命した。

そんな訳でミシェルとモモは国王夫妻の愛娘と養子のような従弟を街に連れ出す羽目に陥った。

離宮にお留守番の従者と護衛は相談して、どう誤魔化すか言い訳を考えて妙案を思い付いた。

「ダイアナ王女の侍女がきたらこう言おう!王女と王子はひそかに恋仲で離宮にて愛を育んでる!」

脱走と同等にヤバい言い訳を考えて納得した離宮の従者と護衛。

これが宮廷を揺るがす大騒ぎに発展するが、とりあえず王女の休日が始まる。

ついでに王子もだ。

end













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