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ラン・ヤスミカ領立学校の実態
ラン・ヤスミカ領立学校は6歳くらいから15歳までの領地の子供が通ういわゆる小中一貫校だ。
リンの異母兄ミシェルが一時期だけ先生をしていた学校である。
ユーリとその兄エセルと兄嫁フィンナも卒業生であり、領地の子供の大半はここで学んでいる。
更に学びたい場合はラン・ヤスミカ家の推薦で大学進学もできるが滅多にそんなお勉強大好きさんはいない。
15歳を過ぎればだいたいの領民は本格的に働いている。
領地の子供の過半数は家が農家など家業があるので進学する必要性がない。
領地で進学をするのは医者の家系に生まれた子供くらいだ。
あと、学校の先生になる者である。
彼らは義務教育を修了するとラン・ヤスミカ家の推薦で適当な大学に入り、医学や教育を学んで卒業したら領地に戻り家業の医者になる。
教職の勉強した者は学校で教鞭をとる。
ユーリの兄エセルは領主の嫡男なので進学しそうだが、領主としての心得などは現当主である父親の執務を手伝いながら学ぶのだ。
なので、ユーリは15歳で領地の学校を卒業後は実家の手伝いをしている。
ラン・ヤスミカ領は治安もよく食べ物も美味しいので領地の人々もわざわざ別の土地の大学に行こうとか転居する発想がない。
医術を学びに大学に進学した医者の子供も「やっぱ、ラン・ヤスミカ領には勝たん!」と言って帰ってくる。
田舎のクセに過疎とは無縁な領地である。
そんなラン・ヤスミカ領立学校で授業参観が行われた。
ユーリの甥っ子ジャンと姪っ子クレールは授業参観の科目を教えてくれた。
「今度の授業参観は自習です!」
「先生が保健体育と自習の2択ならどちらがいいか多数決をお取りになったの。圧倒的に自習だったわ」
この報告には学校通学経験がないリンでも耳を疑った。
授業参観は生徒、保護者、先生参加型のイベントではないか?
自習にしたら先生は不在であり、保護者である親はひたすらプリント解いてる我が子を見守るだけである。
先生は楽かもだが授業参観にする意味がそもそもないのでは?
あと、もうひとつの候補が保健体育なあたりが先生ガチでやる気ないのバレバレである。
リンも詳しいことはわからないが普通は音楽とか体育とか算術とかアクションが必要な科目を選ぶべきではないのか?
「あの……自習は学校の授業参観としてどうなのですか?」
遠慮がちにリンが問いかけるとユーリがキョトンとした。
「そんな珍しいか?俺がいたときも大抵は自習か保健体育か避難訓練だったぞ?俺らが避難してる姿を親は教室の後方で見てた」
「それ!親も避難訓練させないと何の意味もないです!」
「避難訓練で火災が発生する場所が100%の確率で音楽室なんだ。子供の頃から謎だった。どんな状況だと音楽室が火災になるんだって?」
ユーリが懐かしそうに笑うと聞いていたクレールが言った。
「ユーリ叔父様。今は避難訓練で火災になる場所は職員室よ。先生が職員室でウォッカを飲んでたら暖炉の炎に引火して火災が発生しましたって流れになるわ」
「マジ?何年かで変わったな!?そんなことする先生はちょっと問題だけど。それなら火災が何で発生したか腑に落ちる!」
腑には落ちるが先生が職員室でウォッカ飲んでるあたりでだいぶん学校が荒んでいる。
どこからそんなストーリーが浮かぶのかリンには疑問だが過去にウォッカ飲んでた先生がいたのかもしれない。
「自習にしてる授業参観で先生はなにをしてるのですか?」
それがやはり最大の謎でリンが質問するとジャンが笑顔で返答した。
「職員室でワインを飲んでます!授業参観後の保護者会の段階で泥酔してるみたいです」
授業参観を放棄して、生徒に自習させ、保護者を放置して先生は飲酒している!
学校そのものが腐ってないかとリンは仰天した。
兄のミシェルはなにも言わなかったが、そんな学舎で6歳から15歳まで学んでも子供がダメ人間になる。
「ユーリ。学校の方針って教育ですよね?大丈夫でしょうか?」
「大丈夫じゃね?授業参観以外の授業は厳しいから!テストで平均点以下だと先生が大説教する。こんなんじゃダメな大人になるぞって!」
「そんなこと!授業参観をサボってワイン飲んでる先生に言われたら屈辱です!」
しかし、そんなダメダメな学校を卒業しているラン・ヤスミカ領の人たちは普通に働いて生活している。
先生も基本はやる気ないが肝心なときの指導は優秀なのか?
先生が残念すぎて子供たちは自習的に勉強しているのか?
そこでリンは授業参観が自習の意味を突如理解したのだ。
「自主的に子供が勉強しているのを親御さんに見せる目的ですね!?」
「そうだ!親が見守るなか自習サボれる勇者ってそうそういないから!」
たしかに遊んでたら後で親に叱られるの確実である。
イキイキした授業風景を演出せず、あえて生徒放置して勉強させるのは合理的ともとれる。
「ちなみに授業参観の自習をサボると先生に酒瓶で頭殴られる。他の生徒や親御さんも見てる前で。エセル兄上の友達がそうだった。いまは領立学校で先生してるぞ!」
ちなみにそのエセルのヤンチャな友達がジャンとクレールの担任の先生だったりする。
1番先生を目指してはダメな奴が先生を目指してるからラン・ヤスミカ領立学校のヤバい伝統と校風は保たれている。
そして、授業参観は予定通り自習が行われた、ジャン&クレールは両親であるエセルとフィンナが見守るなか課題を解いていた。
「課題プリントが1枚なあたりで先生のやる気のなさを肌で感じるわ」
双子を見守るフィンナが笑顔で呟くとエセルが朗らかに告げた。
「でも、あのプリント1枚に難問があるかもよ?まだ授業で教えてない範囲とか?」
「それは教えてから課題プリントにすべきだけど。まあ、今さらね」
後日、ジャンとクレールから授業参観の自習プリントを見せてもらったリンは絶句した。
「ラン・ヤスミカ領立学校の今の校長先生のお名前!?これ1問!?自習プリントそのものがやる気ゼロ!」
しかし、ジャンとクレールは問題なく正解だったが過半数の生徒が「そういや?校長の名前なんだっけ?」であった。
保護者であるエセルとフィンナも「そういえば?お名前は?」となりすでに卒業してるユーリさえも「えっと~?頭皮が薄かったしか憶えてない」というありさまである。
リンには分からないが学校の校長先生の名前が咄嗟に出てこないは結構学校あるあるな気がする。
end
リンの異母兄ミシェルが一時期だけ先生をしていた学校である。
ユーリとその兄エセルと兄嫁フィンナも卒業生であり、領地の子供の大半はここで学んでいる。
更に学びたい場合はラン・ヤスミカ家の推薦で大学進学もできるが滅多にそんなお勉強大好きさんはいない。
15歳を過ぎればだいたいの領民は本格的に働いている。
領地の子供の過半数は家が農家など家業があるので進学する必要性がない。
領地で進学をするのは医者の家系に生まれた子供くらいだ。
あと、学校の先生になる者である。
彼らは義務教育を修了するとラン・ヤスミカ家の推薦で適当な大学に入り、医学や教育を学んで卒業したら領地に戻り家業の医者になる。
教職の勉強した者は学校で教鞭をとる。
ユーリの兄エセルは領主の嫡男なので進学しそうだが、領主としての心得などは現当主である父親の執務を手伝いながら学ぶのだ。
なので、ユーリは15歳で領地の学校を卒業後は実家の手伝いをしている。
ラン・ヤスミカ領は治安もよく食べ物も美味しいので領地の人々もわざわざ別の土地の大学に行こうとか転居する発想がない。
医術を学びに大学に進学した医者の子供も「やっぱ、ラン・ヤスミカ領には勝たん!」と言って帰ってくる。
田舎のクセに過疎とは無縁な領地である。
そんなラン・ヤスミカ領立学校で授業参観が行われた。
ユーリの甥っ子ジャンと姪っ子クレールは授業参観の科目を教えてくれた。
「今度の授業参観は自習です!」
「先生が保健体育と自習の2択ならどちらがいいか多数決をお取りになったの。圧倒的に自習だったわ」
この報告には学校通学経験がないリンでも耳を疑った。
授業参観は生徒、保護者、先生参加型のイベントではないか?
自習にしたら先生は不在であり、保護者である親はひたすらプリント解いてる我が子を見守るだけである。
先生は楽かもだが授業参観にする意味がそもそもないのでは?
あと、もうひとつの候補が保健体育なあたりが先生ガチでやる気ないのバレバレである。
リンも詳しいことはわからないが普通は音楽とか体育とか算術とかアクションが必要な科目を選ぶべきではないのか?
「あの……自習は学校の授業参観としてどうなのですか?」
遠慮がちにリンが問いかけるとユーリがキョトンとした。
「そんな珍しいか?俺がいたときも大抵は自習か保健体育か避難訓練だったぞ?俺らが避難してる姿を親は教室の後方で見てた」
「それ!親も避難訓練させないと何の意味もないです!」
「避難訓練で火災が発生する場所が100%の確率で音楽室なんだ。子供の頃から謎だった。どんな状況だと音楽室が火災になるんだって?」
ユーリが懐かしそうに笑うと聞いていたクレールが言った。
「ユーリ叔父様。今は避難訓練で火災になる場所は職員室よ。先生が職員室でウォッカを飲んでたら暖炉の炎に引火して火災が発生しましたって流れになるわ」
「マジ?何年かで変わったな!?そんなことする先生はちょっと問題だけど。それなら火災が何で発生したか腑に落ちる!」
腑には落ちるが先生が職員室でウォッカ飲んでるあたりでだいぶん学校が荒んでいる。
どこからそんなストーリーが浮かぶのかリンには疑問だが過去にウォッカ飲んでた先生がいたのかもしれない。
「自習にしてる授業参観で先生はなにをしてるのですか?」
それがやはり最大の謎でリンが質問するとジャンが笑顔で返答した。
「職員室でワインを飲んでます!授業参観後の保護者会の段階で泥酔してるみたいです」
授業参観を放棄して、生徒に自習させ、保護者を放置して先生は飲酒している!
学校そのものが腐ってないかとリンは仰天した。
兄のミシェルはなにも言わなかったが、そんな学舎で6歳から15歳まで学んでも子供がダメ人間になる。
「ユーリ。学校の方針って教育ですよね?大丈夫でしょうか?」
「大丈夫じゃね?授業参観以外の授業は厳しいから!テストで平均点以下だと先生が大説教する。こんなんじゃダメな大人になるぞって!」
「そんなこと!授業参観をサボってワイン飲んでる先生に言われたら屈辱です!」
しかし、そんなダメダメな学校を卒業しているラン・ヤスミカ領の人たちは普通に働いて生活している。
先生も基本はやる気ないが肝心なときの指導は優秀なのか?
先生が残念すぎて子供たちは自習的に勉強しているのか?
そこでリンは授業参観が自習の意味を突如理解したのだ。
「自主的に子供が勉強しているのを親御さんに見せる目的ですね!?」
「そうだ!親が見守るなか自習サボれる勇者ってそうそういないから!」
たしかに遊んでたら後で親に叱られるの確実である。
イキイキした授業風景を演出せず、あえて生徒放置して勉強させるのは合理的ともとれる。
「ちなみに授業参観の自習をサボると先生に酒瓶で頭殴られる。他の生徒や親御さんも見てる前で。エセル兄上の友達がそうだった。いまは領立学校で先生してるぞ!」
ちなみにそのエセルのヤンチャな友達がジャンとクレールの担任の先生だったりする。
1番先生を目指してはダメな奴が先生を目指してるからラン・ヤスミカ領立学校のヤバい伝統と校風は保たれている。
そして、授業参観は予定通り自習が行われた、ジャン&クレールは両親であるエセルとフィンナが見守るなか課題を解いていた。
「課題プリントが1枚なあたりで先生のやる気のなさを肌で感じるわ」
双子を見守るフィンナが笑顔で呟くとエセルが朗らかに告げた。
「でも、あのプリント1枚に難問があるかもよ?まだ授業で教えてない範囲とか?」
「それは教えてから課題プリントにすべきだけど。まあ、今さらね」
後日、ジャンとクレールから授業参観の自習プリントを見せてもらったリンは絶句した。
「ラン・ヤスミカ領立学校の今の校長先生のお名前!?これ1問!?自習プリントそのものがやる気ゼロ!」
しかし、ジャンとクレールは問題なく正解だったが過半数の生徒が「そういや?校長の名前なんだっけ?」であった。
保護者であるエセルとフィンナも「そういえば?お名前は?」となりすでに卒業してるユーリさえも「えっと~?頭皮が薄かったしか憶えてない」というありさまである。
リンには分からないが学校の校長先生の名前が咄嗟に出てこないは結構学校あるあるな気がする。
end
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