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古城からの叫びと予言
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ラン・ヤスミカ領に隣接する領の領境付近に古びたお城が存在する。
この古城は、なんせ築年数が古城なだけに古すぎて所有権が曖昧なのだ。
ラン・ヤスミカ家の所有とする説もあれば隣の領が所有権を持っているという話もあり、両家ともに遠慮して譲り合っている。
いや、譲り合っているというより単純に要らないので押し付けあっていると言った方が正しい。
ラン・ヤスミカ領の大半は古城の存在を忘れているし、存在を知っている者は老朽化して何となく不気味なので近寄らない。
それは隣の領地の領民も同じくで立地的に外部からの侵入に対して要塞の役目も果たせず、使い道がない物件だ。
長年、面倒なので存在を両家ともに無視していた古城だが困った事態が発生した。
「領境の古城に亡霊が出ると今さら噂がたっているのだ」
相談に訪れたのは隣の領地の領主の息子シーモア・ヒース・ダリアである。
シーモアは現在20歳で嫡男で既に妻との間に3人の子供がいる。
そのシーモアの妻子が仲良く散歩中に気まぐれに普段は存在を忘れていた古城を散策しようと近づいたら不気味な気配を感じたらしい。
「妻と子供たちは古城から視線を感じたと話していた。それで怖くなり慌てて逃げたという」
相談を聴いていたユーリは兄エセルと顔を見合わせると首をひねった。
「どこからか流れ者が定住してしまったとかではないのですか?」
「それか?領民が偶然にも城のなかにいたとか?」
ラン・ヤスミカ家の兄弟はあんまり幽霊やら亡霊やら信じるタイプではない。
だが、シーモアはバリバリ幽霊とか霊感とか信じるタイプらしく、あの古城は呪われていると言い出した。
「こちらとしては祈祷をしてもらってエクソシストに悪魔払いをしてもらった後に取壊しをしたいのだが……?」
「祈祷はともかくエクソシストを領地で雇っているのか?シーモアの家では?」
ラン・ヤスミカ家としても古城に未練はないので取り壊してくれてもいいのだが根本的な問題が残っている。
「仮に本当に生きた人間が潜んでいたら保護しないとまずい。取壊し前に確認が必要だよ」
エセルの言葉にシーモアは頷いたが明らかに古城に確認に行くのを嫌がっている。
そこで、こんな交換条件が成立した。
ラン・ヤスミカ家の人間が古城に入って潜んでいる人がいないか安否確認を行う。
その結果、誰もいないのならばシーモアの家が取壊しを実行する。
取壊しの費用は隣接している場所なので折半とする。
「まあ!老朽化で崩れるのも心配だからタイミングはよかった!」
シーモアが隣の領地に帰るとユーリは早速だが古城を偵察すると兄エセルに告げた。
「明日にでも古城に行って参ります。少し様子を見て誰もいないようなら帰ってくるので」
「でも、無人の古城から視線を感じるなんて変だね?ユーリ。幽霊より武器を持った者がいるかも知れないから気をつけて。だれか護衛がいればいいんだけど~?」
エセルが悩んでいるのでユーリがそんなに心配してなくても平気だと笑おうとしたらリンが部屋に入ってきた。
「シーモア殿から聞きました!ユーリが古城を探検すると!私も一緒がいいです!」
武術ならば出来ますと張り切るリンにユーリは苦笑いすると言った。
「リン。別に無人の古城を点検するだけだ。そこまで張り切ることでもないぞ?」
「ユーリ!仮に本当にシーモア殿が仰るように亡霊だったときを考えてエドガー兄様もお連れしましょう!」
「え?簡単な古城の点検になんでエドガー義兄上にまでご足労をかけるんだ?」
「亡霊はエロ妄想や煩悩丸だしの人間がいると無力だそうです!エドガー兄様がいれば完璧ですよ!」
こんな具合でユーリはリンとエドガーを伴って領境の古城へと向かうことになった。
エドガーは対亡霊戦のために参戦するが、澄ました顔で告げたのである。
「ユーリ殿。亡霊などおらぬ。おおかた、領地の若い恋人同士が無人の古城なのをいいことにチョメチョメしているだけだ」
無人の古城の使い道など密会くらいしかないだろうとエドガーにしては珍しく一理ある発言をしたのだ。
「チョメチョメする場所くらい放置でよかろう?」
「いえ!エドガー義兄上!たとえそうでも城は古いですし事故があったら大変なので!」
ユーリが言い募るとエドガーは息を吐いて、リンが望むならば兄として付き添うと承諾してくれた。
モモとミモザ王子は最近は国境付近を視察していて留守がちである。
彼らが国境付近で何を調べようとしているかはユーリにもわからない。
とにかく明日はリンとエドガーと3人でユーリは古城に人がいるかの安否確認を実行することになった。
翌朝になりユーリたちが古城に馬を走らせるとリンは冒険するようにワクワクしているがエドガーは気乗りしない様子であった。
「エドガー義兄上。ご迷惑をおかけしてすみません」
「気にしないでくれ。それより、こんな朝方に古城に入ってもチョメチョメしている男女などいない。夜に確認した方が確実ではないか?」
「そうなのですが……。夜は周囲が真っ暗で危険です。朝でも人間が出入りしている証拠はつかめるので」
話している間に廃城となっている古城に到着したが非常に老朽化していてボロボロでなかに入るのもためらうほどに城は荒れていた。
「こりゃ、亡霊がいるって勘違いする気持ちもわかるな」
「カップルがチョメチョメするにしても近寄りがたい城ですね」
「ほう……。なかなか風情ある古城だ。今度シオンをここに連れ込みたいものだ」
エドガーだけは亡霊に勝てる発言をヴァンヴァンふかしている。
とりあえず城門を進むとなかは鍵もなくがらんとしており殺風景な城である。
「やっぱり日がのぼった時間に来ても誰もいないか?」
「人が暮らしている気配はないですね?エドガー兄様はどう思いますか?」
リンの問いかけにエドガーはしばし無言でいたが何かあるのかポツリと呟いた。
「ユーリ殿。この廃城に関わると面倒だ」
「え?どういうことです?」
ユーリが驚いて尋ねるとエドガーはキッパリ告げた。
「人の存在は確認できなかったと隣の領のシーモア殿に報告してあとは知らん顔したほうがよい」
「まあ……そうですよね。誰もいないなら取壊しで被害者も出ませんから」
特に思い入れもない古城なのでユーリも納得すると調査を打ち切ろうとした。
しかし、リンはせっかく来たなら探検がしたいと思い、城の奥に行こうと歩きかけるとエドガーが険しい顔で引き留めた。
「リン!好奇心で踏み込むな!ここは厄介な場所だ。ユーリ殿。早々に立ち去ろう」
エドガーが異常に真剣なのでユーリとリンは勢いにのまれて古城から退却した。
エドガーには亡霊でも視えていたのかは不明だが恐るべき真相が後日取壊しの指揮をしたシーモア・ヒース・ダリアによって明らかとなった。
「妻と子供たちの証言は本当だった!亡霊があの荒れた古城にいたのだよ!」
取り壊した城の隠し部屋から幽閉されていたとおぼしき白骨化して遺体が発見された。
それも2体もである。
骨格を調べたがラン・ヤスミカ家の人間でもヒース・ダリア家の血縁者でもなさそうで更に2体とも少年だったらしい。
「罪人にしても子供を幽閉など!この辺りの土地では有り得ないことだと思わないか!?」
シーモアが悼ましそうな顔で叫ぶとユーリは言うか言うまいか迷っていた事情を告げたのだ。
「俺の義兄……リンの兄エドガー様が屋敷に入った後に仰ってました。城から男の子の声が聴こえたと……」
「おお!シルバー家の御子息様が!?さすが名門ともなると亡霊の声も聴こえてしまうとは!それで亡霊の男児はなんと言っていたのか?」
シーモアにせがまれてユーリはエドガーが聴こえた内容を告げた。
「出してよ。このお城から出して。弟がお腹を空かせてる。助けて」
「骨格でまさかと思ったが兄弟の骨か……。なぜ古城に監禁されたのだ?可哀想に……」
骨の状態からしてかなり昔のものだとわかっているが兄弟がどこの誰かは皆目分からない。
ユーリとシーモアが考え込んでいるとドアが叩かれ、リンが入ってきた。
「白骨化した兄弟を調べましたが外傷はないです。無理に誘拐された子供ではないですね」
リンの報告にユーリはハッと閃くものがあった。
「シーモア殿!領地の出生届と死亡届を調べることは可能ですか?」
「教会にすべて記録があるので可能だが?まさか……どちらかの領地に子供を城に監禁した領民がいると!?」
「はい。過去の記録なので戦争などで散逸しているかも知れませんが飢饉や凶作が発生した前後の記録を重点に!」
「う!うむ!承知した。どちらにしても2人の子供の遺体は手厚く弔い葬ってあげなくては……。もっと早くに見つけてやることもできたと思うと申し訳ない」
つらそうに言い残すとシーモアはラン・ヤスミカ家別邸から出ていった。
シーモアが馬で去るのを見送りながらリンはユーリに言ったのだ。
「シーモア殿はとてもお優しい御方ですね?身元不明の子供の死を心から悼んでいる」
「ああ……。シーモア殿の御家が穏やかだから領地やらで争いが起きなくて済んでいる。俺も早速、領地の記録を調べよう」
ユーリがそう言って教会に行こうとするとエドガーは不意に出てきた。
「必要ない。あの子達はラン・ヤスミカ領、ヒース・ダリア領。どちらの出身でもないと分かっている」
断定するようなエドガーの言い草にユーリはキョトンとしたが、うしろにいたシオンが息を吐きながら告げたのだ。
「エドガーが聴いた声……。正確には喋り方のイントネーションで分かりました。おそらく白骨化した子供は俺の祖国……隣国の子供です。隣国では飢饉や凶作の折りに子供は誘拐されたと偽って売ってしまう親が昔から多いのです」
現にシオンがまだ貴族の子弟であった頃にも顔見知りの子供がある日を境に急に姿を消したことがあったという。
「隣国では貧しい家の子供を売買する風習は昔からありました。もしかしたら売られた子供2人は逃げて古城に逃げ込んだまま餓死した可能性も……」
助けを求めれば捕まるから古城に籠るうちに病気になったのではとシオンは悲しそうに眉をひそめて憶測を述べた。
ユーリは念のために領地の記録を調べたがやはり不審な点は見つからず、シーモアのほうもおかしな消え方をした領民は該当しなかった。
そうなるとシオンが言った通り、隣国で人身売買された子供たちという結論に辿り着く。
「隣国の貧富の差は知っていたが許せぬ!そんな昔から子供を平気で売っていたのか!?」
どちらかの領地に助けを求めれば絶対に保護したものを、とシーモアは悔しそうに言って憤っている。
ユーリとしても何百年前でも子供たちが逃げ込んだと分かれば、ラン・ヤスミカ領の領主や領民だって助けただろうと切なくなった。
見捨てられた古城で亡くなった幼き兄弟の遺体はシーモアの申し出で古城跡から離れた教会の墓地に埋葬された。
子供たちの名前は分からないが、シーモアの妻が憐れんで子供たちとたびたび花をたむけている。
シオンの正体は子供の身元確認の際、シーモアにバレてしまったが問題なかった。
「シーモア殿は誓って口外しないと約束した。見知らぬ子供の亡骸を心から悼める御方だから信頼できる」
ユーリがそういうとリンは静かに頷きながら口を開いた。
「もしかしたら子供たちの亡霊もエドガー兄様だから助けを求めたのかもですね」
「そうだな。エドガー義兄上には子供たちの声が届いたんだ」
リンはミモザ王子がなんでわざわざラン・ヤスミカ領まで、モモを伴って来たのかハッキリした。
古城が取り壊された跡地をどうするかラン・ヤスミカ家、ヒース・ダリア家の両家で相談となったとき、ユーリが安全管理のための塔の設置を願うと両家ともに名案だと可決された。
これはユーリでなくミモザ王子の発案なのだがラン・ヤスミカ領とヒース・ダリア領の境に塔が建設される予定だ。
「見張りのための塔を建てる噂を知れば隣国は警戒する。そして、ボロを出すであろう」
ミモザ王子は花束を持って古城に取り残された子供の墓前で告げた。
モモは眠っている不憫な子供たちは埋葬されただけ幸運だと感じていた。
貧しくて力のない者の死なんて何とも思わない貴族や聖職者が多いなか、ラン・ヤスミカ領の周辺貴族はそうではないらしい。
墓参りが済んだところで、ミモザ王子とモモはシーモアに礼を述べて立ち去ろうとしたが鋭い声が飛んできた。
「そこの太陽のような金髪の少年!!」
大声にミモザ王子が特に動じた様子もなく振りかえると、黒衣を着た中年男性が瓶を持ちながら更に叫んだ。
「あなた様は15歳で結婚して16歳になる頃には父親になるであろう!赤子は男児!!ヒャッハー!!」
「……失礼、シーモア殿。あちらの男性は何者ですか?」
モモが尋ねるとシーモアは困った笑顔で頬をかいた。
「うちで雇っているエクソシストなのだが。元占い師から悪魔払いにジョブチェンしたのだ」
「そういうジョブチェンってありですか?」
悪魔は払った実績はないが、占いは結構当たるとシーモアが説明している間にエクソシストはまたもミモザ王子に叫ぶ。
「あなた様は11人以上13人未満の子の父親となり国父となるであろう!そして、あなた様は29歳で産褥熱で死ぬ!30歳前に死ぬ!」
「待っておくれ。10人以上13人未満って曖昧な数字だな。あと、僕はいま14歳だ。29歳までに約12児の親になるのか?余命15年でハイペース過ぎぬか?」
ミモザ王子、死因が産褥熱という根本的矛盾はスルーしている。
変な占いのような予言にモモが不安になると、エクソシストは「ヒョッホー!」と叫んで行ってしまった。
シーモアは「うちのエクソシストはたまにトランスしてあんな風になるのですよ」と笑っているが、モモとしてはあのエクソシストがまずは悪魔払いしてもらうべきではないかと強く思った。
とりあえず、エクソシストから約12児の父になり国父となり産褥熱で亡くなると告げられたミモザ王子だが、ラン・ヤスミカ領の居酒屋の女主人シュザンヌの占いはこうであった。
「坊やは五男七女の父親になるね!母子ともに健康!坊やは30歳前に死ぬけど!」
「おい!ババア!縁起でもねーこと言うな!!殺すぞ!?」
「やめよ!モモ!少なくとも12人子ができるまでは死ぬことはない!余命など15年もあれば充分だ」
それまでにできることをする、とミモザ王子は腹をくくっている。
廃城となった古城の亡霊騒ぎが発端で、ミモザ王子は勝手に享年が決定されたが定かではない。
ミモザ王子としては自分が若死することに衝撃はなく、12人の健康な子宝に恵まれる未来のほうが喜ばしかった。
引きこもる理由として病気を偽り毒を飲んでいたミモザ王子が最も心配していたことは、ダイアナ王女との間に健康体の子供が産まれるか、そしてダイアナ王女が出産後も健康体で生きられるかに尽きたのである。
古城の幼い子供たちはエドガーを呼び、そしてエクソシストのもとにミモザ王子を導いたのかもしれない。
end
この古城は、なんせ築年数が古城なだけに古すぎて所有権が曖昧なのだ。
ラン・ヤスミカ家の所有とする説もあれば隣の領が所有権を持っているという話もあり、両家ともに遠慮して譲り合っている。
いや、譲り合っているというより単純に要らないので押し付けあっていると言った方が正しい。
ラン・ヤスミカ領の大半は古城の存在を忘れているし、存在を知っている者は老朽化して何となく不気味なので近寄らない。
それは隣の領地の領民も同じくで立地的に外部からの侵入に対して要塞の役目も果たせず、使い道がない物件だ。
長年、面倒なので存在を両家ともに無視していた古城だが困った事態が発生した。
「領境の古城に亡霊が出ると今さら噂がたっているのだ」
相談に訪れたのは隣の領地の領主の息子シーモア・ヒース・ダリアである。
シーモアは現在20歳で嫡男で既に妻との間に3人の子供がいる。
そのシーモアの妻子が仲良く散歩中に気まぐれに普段は存在を忘れていた古城を散策しようと近づいたら不気味な気配を感じたらしい。
「妻と子供たちは古城から視線を感じたと話していた。それで怖くなり慌てて逃げたという」
相談を聴いていたユーリは兄エセルと顔を見合わせると首をひねった。
「どこからか流れ者が定住してしまったとかではないのですか?」
「それか?領民が偶然にも城のなかにいたとか?」
ラン・ヤスミカ家の兄弟はあんまり幽霊やら亡霊やら信じるタイプではない。
だが、シーモアはバリバリ幽霊とか霊感とか信じるタイプらしく、あの古城は呪われていると言い出した。
「こちらとしては祈祷をしてもらってエクソシストに悪魔払いをしてもらった後に取壊しをしたいのだが……?」
「祈祷はともかくエクソシストを領地で雇っているのか?シーモアの家では?」
ラン・ヤスミカ家としても古城に未練はないので取り壊してくれてもいいのだが根本的な問題が残っている。
「仮に本当に生きた人間が潜んでいたら保護しないとまずい。取壊し前に確認が必要だよ」
エセルの言葉にシーモアは頷いたが明らかに古城に確認に行くのを嫌がっている。
そこで、こんな交換条件が成立した。
ラン・ヤスミカ家の人間が古城に入って潜んでいる人がいないか安否確認を行う。
その結果、誰もいないのならばシーモアの家が取壊しを実行する。
取壊しの費用は隣接している場所なので折半とする。
「まあ!老朽化で崩れるのも心配だからタイミングはよかった!」
シーモアが隣の領地に帰るとユーリは早速だが古城を偵察すると兄エセルに告げた。
「明日にでも古城に行って参ります。少し様子を見て誰もいないようなら帰ってくるので」
「でも、無人の古城から視線を感じるなんて変だね?ユーリ。幽霊より武器を持った者がいるかも知れないから気をつけて。だれか護衛がいればいいんだけど~?」
エセルが悩んでいるのでユーリがそんなに心配してなくても平気だと笑おうとしたらリンが部屋に入ってきた。
「シーモア殿から聞きました!ユーリが古城を探検すると!私も一緒がいいです!」
武術ならば出来ますと張り切るリンにユーリは苦笑いすると言った。
「リン。別に無人の古城を点検するだけだ。そこまで張り切ることでもないぞ?」
「ユーリ!仮に本当にシーモア殿が仰るように亡霊だったときを考えてエドガー兄様もお連れしましょう!」
「え?簡単な古城の点検になんでエドガー義兄上にまでご足労をかけるんだ?」
「亡霊はエロ妄想や煩悩丸だしの人間がいると無力だそうです!エドガー兄様がいれば完璧ですよ!」
こんな具合でユーリはリンとエドガーを伴って領境の古城へと向かうことになった。
エドガーは対亡霊戦のために参戦するが、澄ました顔で告げたのである。
「ユーリ殿。亡霊などおらぬ。おおかた、領地の若い恋人同士が無人の古城なのをいいことにチョメチョメしているだけだ」
無人の古城の使い道など密会くらいしかないだろうとエドガーにしては珍しく一理ある発言をしたのだ。
「チョメチョメする場所くらい放置でよかろう?」
「いえ!エドガー義兄上!たとえそうでも城は古いですし事故があったら大変なので!」
ユーリが言い募るとエドガーは息を吐いて、リンが望むならば兄として付き添うと承諾してくれた。
モモとミモザ王子は最近は国境付近を視察していて留守がちである。
彼らが国境付近で何を調べようとしているかはユーリにもわからない。
とにかく明日はリンとエドガーと3人でユーリは古城に人がいるかの安否確認を実行することになった。
翌朝になりユーリたちが古城に馬を走らせるとリンは冒険するようにワクワクしているがエドガーは気乗りしない様子であった。
「エドガー義兄上。ご迷惑をおかけしてすみません」
「気にしないでくれ。それより、こんな朝方に古城に入ってもチョメチョメしている男女などいない。夜に確認した方が確実ではないか?」
「そうなのですが……。夜は周囲が真っ暗で危険です。朝でも人間が出入りしている証拠はつかめるので」
話している間に廃城となっている古城に到着したが非常に老朽化していてボロボロでなかに入るのもためらうほどに城は荒れていた。
「こりゃ、亡霊がいるって勘違いする気持ちもわかるな」
「カップルがチョメチョメするにしても近寄りがたい城ですね」
「ほう……。なかなか風情ある古城だ。今度シオンをここに連れ込みたいものだ」
エドガーだけは亡霊に勝てる発言をヴァンヴァンふかしている。
とりあえず城門を進むとなかは鍵もなくがらんとしており殺風景な城である。
「やっぱり日がのぼった時間に来ても誰もいないか?」
「人が暮らしている気配はないですね?エドガー兄様はどう思いますか?」
リンの問いかけにエドガーはしばし無言でいたが何かあるのかポツリと呟いた。
「ユーリ殿。この廃城に関わると面倒だ」
「え?どういうことです?」
ユーリが驚いて尋ねるとエドガーはキッパリ告げた。
「人の存在は確認できなかったと隣の領のシーモア殿に報告してあとは知らん顔したほうがよい」
「まあ……そうですよね。誰もいないなら取壊しで被害者も出ませんから」
特に思い入れもない古城なのでユーリも納得すると調査を打ち切ろうとした。
しかし、リンはせっかく来たなら探検がしたいと思い、城の奥に行こうと歩きかけるとエドガーが険しい顔で引き留めた。
「リン!好奇心で踏み込むな!ここは厄介な場所だ。ユーリ殿。早々に立ち去ろう」
エドガーが異常に真剣なのでユーリとリンは勢いにのまれて古城から退却した。
エドガーには亡霊でも視えていたのかは不明だが恐るべき真相が後日取壊しの指揮をしたシーモア・ヒース・ダリアによって明らかとなった。
「妻と子供たちの証言は本当だった!亡霊があの荒れた古城にいたのだよ!」
取り壊した城の隠し部屋から幽閉されていたとおぼしき白骨化して遺体が発見された。
それも2体もである。
骨格を調べたがラン・ヤスミカ家の人間でもヒース・ダリア家の血縁者でもなさそうで更に2体とも少年だったらしい。
「罪人にしても子供を幽閉など!この辺りの土地では有り得ないことだと思わないか!?」
シーモアが悼ましそうな顔で叫ぶとユーリは言うか言うまいか迷っていた事情を告げたのだ。
「俺の義兄……リンの兄エドガー様が屋敷に入った後に仰ってました。城から男の子の声が聴こえたと……」
「おお!シルバー家の御子息様が!?さすが名門ともなると亡霊の声も聴こえてしまうとは!それで亡霊の男児はなんと言っていたのか?」
シーモアにせがまれてユーリはエドガーが聴こえた内容を告げた。
「出してよ。このお城から出して。弟がお腹を空かせてる。助けて」
「骨格でまさかと思ったが兄弟の骨か……。なぜ古城に監禁されたのだ?可哀想に……」
骨の状態からしてかなり昔のものだとわかっているが兄弟がどこの誰かは皆目分からない。
ユーリとシーモアが考え込んでいるとドアが叩かれ、リンが入ってきた。
「白骨化した兄弟を調べましたが外傷はないです。無理に誘拐された子供ではないですね」
リンの報告にユーリはハッと閃くものがあった。
「シーモア殿!領地の出生届と死亡届を調べることは可能ですか?」
「教会にすべて記録があるので可能だが?まさか……どちらかの領地に子供を城に監禁した領民がいると!?」
「はい。過去の記録なので戦争などで散逸しているかも知れませんが飢饉や凶作が発生した前後の記録を重点に!」
「う!うむ!承知した。どちらにしても2人の子供の遺体は手厚く弔い葬ってあげなくては……。もっと早くに見つけてやることもできたと思うと申し訳ない」
つらそうに言い残すとシーモアはラン・ヤスミカ家別邸から出ていった。
シーモアが馬で去るのを見送りながらリンはユーリに言ったのだ。
「シーモア殿はとてもお優しい御方ですね?身元不明の子供の死を心から悼んでいる」
「ああ……。シーモア殿の御家が穏やかだから領地やらで争いが起きなくて済んでいる。俺も早速、領地の記録を調べよう」
ユーリがそう言って教会に行こうとするとエドガーは不意に出てきた。
「必要ない。あの子達はラン・ヤスミカ領、ヒース・ダリア領。どちらの出身でもないと分かっている」
断定するようなエドガーの言い草にユーリはキョトンとしたが、うしろにいたシオンが息を吐きながら告げたのだ。
「エドガーが聴いた声……。正確には喋り方のイントネーションで分かりました。おそらく白骨化した子供は俺の祖国……隣国の子供です。隣国では飢饉や凶作の折りに子供は誘拐されたと偽って売ってしまう親が昔から多いのです」
現にシオンがまだ貴族の子弟であった頃にも顔見知りの子供がある日を境に急に姿を消したことがあったという。
「隣国では貧しい家の子供を売買する風習は昔からありました。もしかしたら売られた子供2人は逃げて古城に逃げ込んだまま餓死した可能性も……」
助けを求めれば捕まるから古城に籠るうちに病気になったのではとシオンは悲しそうに眉をひそめて憶測を述べた。
ユーリは念のために領地の記録を調べたがやはり不審な点は見つからず、シーモアのほうもおかしな消え方をした領民は該当しなかった。
そうなるとシオンが言った通り、隣国で人身売買された子供たちという結論に辿り着く。
「隣国の貧富の差は知っていたが許せぬ!そんな昔から子供を平気で売っていたのか!?」
どちらかの領地に助けを求めれば絶対に保護したものを、とシーモアは悔しそうに言って憤っている。
ユーリとしても何百年前でも子供たちが逃げ込んだと分かれば、ラン・ヤスミカ領の領主や領民だって助けただろうと切なくなった。
見捨てられた古城で亡くなった幼き兄弟の遺体はシーモアの申し出で古城跡から離れた教会の墓地に埋葬された。
子供たちの名前は分からないが、シーモアの妻が憐れんで子供たちとたびたび花をたむけている。
シオンの正体は子供の身元確認の際、シーモアにバレてしまったが問題なかった。
「シーモア殿は誓って口外しないと約束した。見知らぬ子供の亡骸を心から悼める御方だから信頼できる」
ユーリがそういうとリンは静かに頷きながら口を開いた。
「もしかしたら子供たちの亡霊もエドガー兄様だから助けを求めたのかもですね」
「そうだな。エドガー義兄上には子供たちの声が届いたんだ」
リンはミモザ王子がなんでわざわざラン・ヤスミカ領まで、モモを伴って来たのかハッキリした。
古城が取り壊された跡地をどうするかラン・ヤスミカ家、ヒース・ダリア家の両家で相談となったとき、ユーリが安全管理のための塔の設置を願うと両家ともに名案だと可決された。
これはユーリでなくミモザ王子の発案なのだがラン・ヤスミカ領とヒース・ダリア領の境に塔が建設される予定だ。
「見張りのための塔を建てる噂を知れば隣国は警戒する。そして、ボロを出すであろう」
ミモザ王子は花束を持って古城に取り残された子供の墓前で告げた。
モモは眠っている不憫な子供たちは埋葬されただけ幸運だと感じていた。
貧しくて力のない者の死なんて何とも思わない貴族や聖職者が多いなか、ラン・ヤスミカ領の周辺貴族はそうではないらしい。
墓参りが済んだところで、ミモザ王子とモモはシーモアに礼を述べて立ち去ろうとしたが鋭い声が飛んできた。
「そこの太陽のような金髪の少年!!」
大声にミモザ王子が特に動じた様子もなく振りかえると、黒衣を着た中年男性が瓶を持ちながら更に叫んだ。
「あなた様は15歳で結婚して16歳になる頃には父親になるであろう!赤子は男児!!ヒャッハー!!」
「……失礼、シーモア殿。あちらの男性は何者ですか?」
モモが尋ねるとシーモアは困った笑顔で頬をかいた。
「うちで雇っているエクソシストなのだが。元占い師から悪魔払いにジョブチェンしたのだ」
「そういうジョブチェンってありですか?」
悪魔は払った実績はないが、占いは結構当たるとシーモアが説明している間にエクソシストはまたもミモザ王子に叫ぶ。
「あなた様は11人以上13人未満の子の父親となり国父となるであろう!そして、あなた様は29歳で産褥熱で死ぬ!30歳前に死ぬ!」
「待っておくれ。10人以上13人未満って曖昧な数字だな。あと、僕はいま14歳だ。29歳までに約12児の親になるのか?余命15年でハイペース過ぎぬか?」
ミモザ王子、死因が産褥熱という根本的矛盾はスルーしている。
変な占いのような予言にモモが不安になると、エクソシストは「ヒョッホー!」と叫んで行ってしまった。
シーモアは「うちのエクソシストはたまにトランスしてあんな風になるのですよ」と笑っているが、モモとしてはあのエクソシストがまずは悪魔払いしてもらうべきではないかと強く思った。
とりあえず、エクソシストから約12児の父になり国父となり産褥熱で亡くなると告げられたミモザ王子だが、ラン・ヤスミカ領の居酒屋の女主人シュザンヌの占いはこうであった。
「坊やは五男七女の父親になるね!母子ともに健康!坊やは30歳前に死ぬけど!」
「おい!ババア!縁起でもねーこと言うな!!殺すぞ!?」
「やめよ!モモ!少なくとも12人子ができるまでは死ぬことはない!余命など15年もあれば充分だ」
それまでにできることをする、とミモザ王子は腹をくくっている。
廃城となった古城の亡霊騒ぎが発端で、ミモザ王子は勝手に享年が決定されたが定かではない。
ミモザ王子としては自分が若死することに衝撃はなく、12人の健康な子宝に恵まれる未来のほうが喜ばしかった。
引きこもる理由として病気を偽り毒を飲んでいたミモザ王子が最も心配していたことは、ダイアナ王女との間に健康体の子供が産まれるか、そしてダイアナ王女が出産後も健康体で生きられるかに尽きたのである。
古城の幼い子供たちはエドガーを呼び、そしてエクソシストのもとにミモザ王子を導いたのかもしれない。
end
1
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「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
閉ざされた森の秘宝
はちのす
BL
街外れにある<閉ざされた森>に住むアルベールが拾ったのは、今にも息絶えそうな瘦せこけた子供だった。
保護することになった子供に、残酷な世を生きる手立てを教え込むうちに「師匠」として慕われることになるが、その慕情の形は次第に執着に変わっていく──
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
前世が教師だった少年は辺境で愛される
結衣可
BL
雪深い帝国北端の地で、傷つき行き倒れていた少年ミカを拾ったのは、寡黙な辺境伯ダリウスだった。妻を亡くし、幼い息子リアムと静かに暮らしていた彼は、ミカの知識と優しさに驚きつつも、次第にその穏やかな笑顔に心を癒されていく。
ミカは実は異世界からの転生者。前世の記憶を抱え、この世界でどう生きるべきか迷っていたが、リアムの教育係として過ごすうちに、“誰かに必要とされる”温もりを思い出していく。
雪の館で共に過ごす日々は、やがてお互いにとってかけがえのない時間となり、新しい日々へと続いていく――。
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
過労死転生した悪役令息Ωは、冷徹な隣国皇帝陛下の運命の番でした~婚約破棄と断罪からのざまぁ、そして始まる激甘な溺愛生活~
水凪しおん
BL
過労死した平凡な会社員が目を覚ますと、そこは愛読していたBL小説の世界。よりにもよって、義理の家族に虐げられ、最後は婚約者に断罪される「悪役令息」リオンに転生してしまった!
「出来損ないのΩ」と罵られ、食事もろくに与えられない絶望的な日々。破滅フラグしかない運命に抗うため、前世の知識を頼りに生き延びる決意をするリオン。
そんな彼の前に現れたのは、隣国から訪れた「冷徹皇帝」カイゼル。誰もが恐れる圧倒的カリスマを持つ彼に、なぜかリオンは助けられてしまう。カイゼルに触れられた瞬間、走る甘い痺れ。それは、αとΩを引き合わせる「運命の番」の兆しだった。
「お前がいいんだ、リオン」――まっすぐな求婚、惜しみない溺愛。
孤独だった悪役令息が、運命の番である皇帝に見出され、破滅の運命を覆していく。巧妙な罠、仕組まれた断罪劇、そして華麗なるざまぁ。絶望の淵から始まる、極上の逆転シンデレラストーリー!
植物チートを持つ俺は王子に捨てられたけど、実は食いしん坊な氷の公爵様に拾われ、胃袋を掴んでとことん溺愛されています
水凪しおん
BL
日本の社畜だった俺、ミナトは過労死した末に異世界の貧乏男爵家の三男に転生した。しかも、なぜか傲慢な第二王子エリアスの婚約者にされてしまう。
「地味で男のくせに可愛らしいだけの役立たず」
王子からそう蔑まれ、冷遇される日々にうんざりした俺は、前世の知識とチート能力【植物育成】を使い、実家の領地を豊かにすることだけを生きがいにしていた。
そんなある日、王宮の夜会で王子から公衆の面前で婚約破棄を叩きつけられる。
絶望する俺の前に現れたのは、この国で最も恐れられる『氷の公爵』アレクシス・フォン・ヴァインベルク。
「王子がご不要というのなら、その方を私が貰い受けよう」
冷たく、しかし力強い声。気づけば俺は、彼の腕の中にいた。
連れてこられた公爵邸での生活は、噂とは大違いの甘すぎる日々の始まりだった。
俺の作る料理を「世界一美味い」と幸せそうに食べ、俺の能力を「素晴らしい」と褒めてくれ、「可愛い、愛らしい」と頭を撫でてくれる公爵様。
彼の不器用だけど真っ直ぐな愛情に、俺の心は次第に絆されていく。
これは、婚約破棄から始まった、不遇な俺が世界一の幸せを手に入れるまでの物語。
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