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衣装合わせ
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ユーリ・ラン・ヤスミカは完全に気後れしていた。
王家の婚礼に出席するにあたり、シルバー家本邸にて衣装合わせが行われたのだがユーリ用に誂えられた礼服が豪華すぎる。
「あの……。少し派手過ぎでは?飾りもキラキラしてますし」
ラン・ヤスミカ領ではあり得ないくらい豪奢な装いに目眩がしているユーリだが、衣装合わせに付き合ってくれたミシェルは穏やかに微笑んだ。
「これでも都の貴族の子弟ならば控え目な方だよ?サイズは丁度良いかい?キツイところは?」
「大丈夫です。ミシェル義兄上、お忙しいのに衣装合わせに付き合ってくださりありがとうございます」
「舞踏会の衣装はさらに豪華だから心して試着してくれ」
この礼服より派手なのが出てくるってどんなだとユーリは不安であったが、シルバー家の厚意であり郷に従えという言葉を信じることにした。
「リンは?リンの衣装合わせはどなたが?」
「母上とモモが担当している。母上はリンの衣装には熱を入れるからモモが必要以上に華美にならぬよう見張っているよ」
ユーリが現在試着している礼服も相当に華美だが、これ以上美々しくするとはローズ夫人は実の息子ではないにしても、リンをとにかく可愛がっているのだろう。
そんなことを考えていると先に試着をしていたシオンが入ってきた。
「ユーリ様、大変お似合いですよ。ミシェル様、俺の礼服まで用意してくださり誠にありがとうございます」
シオンの礼服は痩身の彼に良く似合う濃紺であり飾りの短いマントだけは淡い空色だ。装飾品も青が基調で爽やかな印象である。
「なんか……シオンの礼服の方が目立たなくて良いのでは?」
ユーリは必要以上に銀糸の刺繍が施された山吹色の礼服が恥ずかしくてミシェルに尋ねたがミシェルはキッパリ言い切った。
「ユーリ殿の瞳の色はグリーンだ。髪も淡い栗色だから山吹色の装束がよく似合う!自信を持ちなさい」
婚礼の儀では貴族たちが競うように派手に着飾っているから、その程度では目立たないとミシェルは断言する。
ユーリとしてもせっかくシルバー家側が用意してくれた衣装に文句をいう資格は無いし、何よりここまで気遣ってくれることが有難いので素直に山吹色の礼服を受け入れることにした。
「ミシェル義兄上、ありがとうございます。俺、こんな豪華な装束を着たの初めてで」
「気後れすることなく堂々としていてくれ。ユーリ殿はシルバー家の身内だ。臆することはないよ」
「は、はい!それにしてもリンはまだかな?衣装合わせが難航しているのか?」
ユーリが待っているとようやくモモを連れたリンが部屋に入ってきた。
「すみません。お義母様とたくさん試着をしていたら遅くなりました」
そう謝りながら登場したリンはドレス姿である。可憐なローズピンクのドレスはリンに非常に良く似合うが何故に女装とユーリが呆気に取られていたらモモが成りゆきを説明してくれた。
「最初は男物の礼服を着る予定だった!でも、ローズ夫人がどうしても薔薇色のドレスをリン様に着せたいと譲らないからこれに決定!ユーリ殿、ちゃんとエスコートしてくれよな?」
「リンは女装して婚礼に出席するのか!?自分の結婚式も女装して王家の婚礼でも女装って!」
ドレスを着たリンは少年には見えず、可憐で美しい姫君そのものだが、可愛い息子を女装させて式典に臨ませるローズ夫人は何を考えているのか?
ユーリの嫁であってもリンは男の子なのだから、自分たちと同じく礼服を着るべきだろうと主張するとリンが申し訳なさそうに告げたのである。
「これが最も地味でした。男性用の礼服はお義母様の好みで孔雀の羽が無数に飾ってあっていくらなんでも目立ち過ぎかと?」
ローズ夫人!?最愛の息子の礼服に何やってくれているのか!?
消去法でこのローズピンクのドレスが最も無難とリンが判断してモモもそれに賛成した。
そういう経緯があってリンはドレスをまとった姫君として婚礼の儀に参列する。
「まあ……そういう事情ならば仕方ないか」
ユーリが照れながらリンの手を握ると部屋の扉が開いてエドガーとローズ夫人がやって来た。
エドガーは銀糸の刺繍が施された青い礼服で整った顔立ちによく似合っている。背中に孔雀の羽を背負っている以外は。
「孔雀の羽が余ったからと母上が飾ってくださった。シオンも着けるか?」
「遠慮する。でも不思議とエドガーが孔雀の羽におおわれてても違和感がないな」
「リン!ティアラを忘れてますよ!ほら、ダイアモンドをふんだんに使ったティアラ!王妃様から頂いたの!」
ローズ夫人はリンの頭にティアラをのせると満足げに微笑んでいるが果たしてこれで良いのか?
「ミシェル義兄上?参列者がティアラは不味いのでは?」
ユーリの指摘にミシェルはなんてことなく首を振った。
「王妃様から下賜された品ならば問題ないよ」
「おい!それより、エドガー様の孔雀の羽根飾りの方がヤバいだろ!?出禁喰らうぞ?」
モモの言葉にユーリも同意したがミシェルは羽根飾りを揺らして奇妙なダンスを踊っているエドガーを眺めながら呟いた。
「シルバー家の次男が孔雀の羽根飾りをつけて求愛ダンスを踊っているくらいでは出禁にならない」
「それ!出禁にすべきだろ!シオンも笑ってないでエドガー様のキモいダンスを止めろ!」
シオンは澄ました顔で踊るエドガーを見ながら爆笑している。
「エドガー!モモがキレるから求愛ダンスはやめとけ!」
「求愛ダンスではない。これは恋ダンスだ。シオンも踊るか?」
「面白そうだな!この振り付けうける!」
珍しくノリよくダンスをしているシオンとエドガーを眺めながらユーリは山吹色の礼服なんてもう恥ずかしくなってきた。
「リン!俺たちも踊るか?」
「はい!エドガー兄様、その振り付けどこで習ったのですか?」
そんな訳でエドガーの恋ダンスに合わせてユーリたちは楽しく踊って思いっきり笑った。
ミシェルとモモも途中から加わりローズ夫人もドレスを翻してダンスをする。
衣装合わせから恋ダンスになってシルバー家本邸での日々は過ぎていく。
2人は越えて行け~♪な楽しい1日であった。
End
王家の婚礼に出席するにあたり、シルバー家本邸にて衣装合わせが行われたのだがユーリ用に誂えられた礼服が豪華すぎる。
「あの……。少し派手過ぎでは?飾りもキラキラしてますし」
ラン・ヤスミカ領ではあり得ないくらい豪奢な装いに目眩がしているユーリだが、衣装合わせに付き合ってくれたミシェルは穏やかに微笑んだ。
「これでも都の貴族の子弟ならば控え目な方だよ?サイズは丁度良いかい?キツイところは?」
「大丈夫です。ミシェル義兄上、お忙しいのに衣装合わせに付き合ってくださりありがとうございます」
「舞踏会の衣装はさらに豪華だから心して試着してくれ」
この礼服より派手なのが出てくるってどんなだとユーリは不安であったが、シルバー家の厚意であり郷に従えという言葉を信じることにした。
「リンは?リンの衣装合わせはどなたが?」
「母上とモモが担当している。母上はリンの衣装には熱を入れるからモモが必要以上に華美にならぬよう見張っているよ」
ユーリが現在試着している礼服も相当に華美だが、これ以上美々しくするとはローズ夫人は実の息子ではないにしても、リンをとにかく可愛がっているのだろう。
そんなことを考えていると先に試着をしていたシオンが入ってきた。
「ユーリ様、大変お似合いですよ。ミシェル様、俺の礼服まで用意してくださり誠にありがとうございます」
シオンの礼服は痩身の彼に良く似合う濃紺であり飾りの短いマントだけは淡い空色だ。装飾品も青が基調で爽やかな印象である。
「なんか……シオンの礼服の方が目立たなくて良いのでは?」
ユーリは必要以上に銀糸の刺繍が施された山吹色の礼服が恥ずかしくてミシェルに尋ねたがミシェルはキッパリ言い切った。
「ユーリ殿の瞳の色はグリーンだ。髪も淡い栗色だから山吹色の装束がよく似合う!自信を持ちなさい」
婚礼の儀では貴族たちが競うように派手に着飾っているから、その程度では目立たないとミシェルは断言する。
ユーリとしてもせっかくシルバー家側が用意してくれた衣装に文句をいう資格は無いし、何よりここまで気遣ってくれることが有難いので素直に山吹色の礼服を受け入れることにした。
「ミシェル義兄上、ありがとうございます。俺、こんな豪華な装束を着たの初めてで」
「気後れすることなく堂々としていてくれ。ユーリ殿はシルバー家の身内だ。臆することはないよ」
「は、はい!それにしてもリンはまだかな?衣装合わせが難航しているのか?」
ユーリが待っているとようやくモモを連れたリンが部屋に入ってきた。
「すみません。お義母様とたくさん試着をしていたら遅くなりました」
そう謝りながら登場したリンはドレス姿である。可憐なローズピンクのドレスはリンに非常に良く似合うが何故に女装とユーリが呆気に取られていたらモモが成りゆきを説明してくれた。
「最初は男物の礼服を着る予定だった!でも、ローズ夫人がどうしても薔薇色のドレスをリン様に着せたいと譲らないからこれに決定!ユーリ殿、ちゃんとエスコートしてくれよな?」
「リンは女装して婚礼に出席するのか!?自分の結婚式も女装して王家の婚礼でも女装って!」
ドレスを着たリンは少年には見えず、可憐で美しい姫君そのものだが、可愛い息子を女装させて式典に臨ませるローズ夫人は何を考えているのか?
ユーリの嫁であってもリンは男の子なのだから、自分たちと同じく礼服を着るべきだろうと主張するとリンが申し訳なさそうに告げたのである。
「これが最も地味でした。男性用の礼服はお義母様の好みで孔雀の羽が無数に飾ってあっていくらなんでも目立ち過ぎかと?」
ローズ夫人!?最愛の息子の礼服に何やってくれているのか!?
消去法でこのローズピンクのドレスが最も無難とリンが判断してモモもそれに賛成した。
そういう経緯があってリンはドレスをまとった姫君として婚礼の儀に参列する。
「まあ……そういう事情ならば仕方ないか」
ユーリが照れながらリンの手を握ると部屋の扉が開いてエドガーとローズ夫人がやって来た。
エドガーは銀糸の刺繍が施された青い礼服で整った顔立ちによく似合っている。背中に孔雀の羽を背負っている以外は。
「孔雀の羽が余ったからと母上が飾ってくださった。シオンも着けるか?」
「遠慮する。でも不思議とエドガーが孔雀の羽におおわれてても違和感がないな」
「リン!ティアラを忘れてますよ!ほら、ダイアモンドをふんだんに使ったティアラ!王妃様から頂いたの!」
ローズ夫人はリンの頭にティアラをのせると満足げに微笑んでいるが果たしてこれで良いのか?
「ミシェル義兄上?参列者がティアラは不味いのでは?」
ユーリの指摘にミシェルはなんてことなく首を振った。
「王妃様から下賜された品ならば問題ないよ」
「おい!それより、エドガー様の孔雀の羽根飾りの方がヤバいだろ!?出禁喰らうぞ?」
モモの言葉にユーリも同意したがミシェルは羽根飾りを揺らして奇妙なダンスを踊っているエドガーを眺めながら呟いた。
「シルバー家の次男が孔雀の羽根飾りをつけて求愛ダンスを踊っているくらいでは出禁にならない」
「それ!出禁にすべきだろ!シオンも笑ってないでエドガー様のキモいダンスを止めろ!」
シオンは澄ました顔で踊るエドガーを見ながら爆笑している。
「エドガー!モモがキレるから求愛ダンスはやめとけ!」
「求愛ダンスではない。これは恋ダンスだ。シオンも踊るか?」
「面白そうだな!この振り付けうける!」
珍しくノリよくダンスをしているシオンとエドガーを眺めながらユーリは山吹色の礼服なんてもう恥ずかしくなってきた。
「リン!俺たちも踊るか?」
「はい!エドガー兄様、その振り付けどこで習ったのですか?」
そんな訳でエドガーの恋ダンスに合わせてユーリたちは楽しく踊って思いっきり笑った。
ミシェルとモモも途中から加わりローズ夫人もドレスを翻してダンスをする。
衣装合わせから恋ダンスになってシルバー家本邸での日々は過ぎていく。
2人は越えて行け~♪な楽しい1日であった。
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