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実話系怪談
『図工室』 提供:星尾俊彦(仮名)
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あれは、自分が五年生の頃でしたね。
自分の小学校って、地域の中では比較的新しい方だったんです。僕が在学中から改装を繰り返していて。
けど、一箇所だけ卒業するまでそのままだった教室があるんです。
それが図工室なんですけど、そこだけ極端に人の出入りが乏しいんです。そもそも周囲に物置しかないですし、対面にタイル張りのトイレはありますけど、それも誰も使わないんです。
それに、新校舎と旧区画を結ぶ連絡通路が変に狭くて細長くて、おまけに日当たりも悪いから、薄気味悪いんですよね。歩くといつも廊下の中を足音が反響して、誰か着いてきてるような気持ちになるんです。だからって言うのもあるんだけど、そこら辺、なにかしら曰くがあるんじゃないかって昔から言われていて、オカルトチックな噂が何べんも立ったんです。
で、この話もその中の一つなんですけど。自分が五年生の時に、何かのドラマで「人食いモナリザ」っていうのが流行ったんですよ。
その回が放送された翌日ですね。放課後、図工室に肝試しに行こうなんて話になりまして。
レプリカって呼び方が正しいかわからないけど、うちの図工室、モナリザの絵がかけられてたんです。
確か四時ぐらいでしたね。僕以外の友達三人と、教室の掃除居残ってするなんてもっともな口実付けて、大体で終わらせてから、図工室に向かったんです。
誰もいない連絡通路をキャーキャー言いながら渡りました。うす暗い連絡通路に、オレンジ色の浅い光が差し込んでて、四人分の足音がぐわんぐわん反響するんです。その中にさざめくように潜めた声が行きかってて……。そうこうして、図書室に付きました。
他三人は、図書室のドアを少し開けて、誰かいないか外から確認してました。その間、僕だけちょっと違うところが気になってしまっていました。対面にあるトイレです。
みんな、平気で背を向けてるんですけど、僕はどうしても目を離せませんでした。真っ暗だったんです。トイレの中。夕方になってから図工室に立ち寄ったことなんてなかったですし、トイレがどんな状態になるかなんてわかりませんでした。
ほとんど直感で、僕が目を離してしまうと、その中から何か出てくるような気がしたんです。
何にせよ、どうしても目を逸らしたくなかった。見ていても怖いは怖いけれど、それでも、全く視線をやらずにいるよりはマシでした。ほとんど直感で、僕が目を離してしまうと、その中から何か出てくるような気がしたんです。
ともあれ、僕がじっとトイレの方を見ていると、とっくに図工室に入っていた友達の一人から声をかけられました。慌てて振り返って、図工室に入ると、みんなが見上げている“モナリザ”をじっと見たんです。
まあ、別に何も起こりませんでしたよ。
手の辺りにある茶色いシミを血だとか言って騒いだだけで。早々に引き上げました。帰るときはさっきと逆で、対面にある真っ暗なトイレを、極力見ないように帰りました。
そのまた翌日、登校して朝の会が終わると、肝試しにいた友人の中の一人が、少し青ざめた顔でこちらに歩いてきました。
「どうしたの?」と聞くと、「これ見て」と、彼は右手を差し出しました。
開かれた手のひらの上には、ノートの切れ端のような紙が置かれていました。
それに、遠目から見てもわかるほど綺麗な文字でこう書かれていました。
「昨日、図工室に来た人たち。また、おいで。」
ぞっとしましたね。あの時が初めてだと思います、あの背筋がしびれるような感覚。
それを見た途端、一瞬で真顔になってしまいました。そのあとすぐに、他の友人も集めて少し話し合いました。
僕らの内の誰かの悪戯かという話になりましたが、ここまで字を上手く書ける人はいません。それに、先生にしては文が不自然に稚拙ですし。
誰かが後から来たとすれば、足音で気づきます。それでは先にいたとして、声をかけなかったのはなぜなのか。
どこで、誰が見ていたのか、なぜまた図工室に呼んでいるのか。結局我々の中でそういった疑問に、明確な答えが出ることはありませんでした。
端正な字と文の不均整さもあいまって、小さな紙切れが異様に不気味に見えました。
ひと段落つくと、みんな真顔で「モナリザの仕業だ」と騒ぎ始めました。
「あいつが夜中にやったんだ」とか、「先生に言うべきかな」とか。ごちゃごちゃ騒いでいました。
でも僕は、どうしてもモナリザの仕業だとは思えませんでした。
あの時のことを思い出すと、いまでも背筋が寒くなります。なんど思い返しても、僕の頭にはモナリザの方ではなく、あの真っ暗なトイレの光景が浮かんでいますから。
自分の小学校って、地域の中では比較的新しい方だったんです。僕が在学中から改装を繰り返していて。
けど、一箇所だけ卒業するまでそのままだった教室があるんです。
それが図工室なんですけど、そこだけ極端に人の出入りが乏しいんです。そもそも周囲に物置しかないですし、対面にタイル張りのトイレはありますけど、それも誰も使わないんです。
それに、新校舎と旧区画を結ぶ連絡通路が変に狭くて細長くて、おまけに日当たりも悪いから、薄気味悪いんですよね。歩くといつも廊下の中を足音が反響して、誰か着いてきてるような気持ちになるんです。だからって言うのもあるんだけど、そこら辺、なにかしら曰くがあるんじゃないかって昔から言われていて、オカルトチックな噂が何べんも立ったんです。
で、この話もその中の一つなんですけど。自分が五年生の時に、何かのドラマで「人食いモナリザ」っていうのが流行ったんですよ。
その回が放送された翌日ですね。放課後、図工室に肝試しに行こうなんて話になりまして。
レプリカって呼び方が正しいかわからないけど、うちの図工室、モナリザの絵がかけられてたんです。
確か四時ぐらいでしたね。僕以外の友達三人と、教室の掃除居残ってするなんてもっともな口実付けて、大体で終わらせてから、図工室に向かったんです。
誰もいない連絡通路をキャーキャー言いながら渡りました。うす暗い連絡通路に、オレンジ色の浅い光が差し込んでて、四人分の足音がぐわんぐわん反響するんです。その中にさざめくように潜めた声が行きかってて……。そうこうして、図書室に付きました。
他三人は、図書室のドアを少し開けて、誰かいないか外から確認してました。その間、僕だけちょっと違うところが気になってしまっていました。対面にあるトイレです。
みんな、平気で背を向けてるんですけど、僕はどうしても目を離せませんでした。真っ暗だったんです。トイレの中。夕方になってから図工室に立ち寄ったことなんてなかったですし、トイレがどんな状態になるかなんてわかりませんでした。
ほとんど直感で、僕が目を離してしまうと、その中から何か出てくるような気がしたんです。
何にせよ、どうしても目を逸らしたくなかった。見ていても怖いは怖いけれど、それでも、全く視線をやらずにいるよりはマシでした。ほとんど直感で、僕が目を離してしまうと、その中から何か出てくるような気がしたんです。
ともあれ、僕がじっとトイレの方を見ていると、とっくに図工室に入っていた友達の一人から声をかけられました。慌てて振り返って、図工室に入ると、みんなが見上げている“モナリザ”をじっと見たんです。
まあ、別に何も起こりませんでしたよ。
手の辺りにある茶色いシミを血だとか言って騒いだだけで。早々に引き上げました。帰るときはさっきと逆で、対面にある真っ暗なトイレを、極力見ないように帰りました。
そのまた翌日、登校して朝の会が終わると、肝試しにいた友人の中の一人が、少し青ざめた顔でこちらに歩いてきました。
「どうしたの?」と聞くと、「これ見て」と、彼は右手を差し出しました。
開かれた手のひらの上には、ノートの切れ端のような紙が置かれていました。
それに、遠目から見てもわかるほど綺麗な文字でこう書かれていました。
「昨日、図工室に来た人たち。また、おいで。」
ぞっとしましたね。あの時が初めてだと思います、あの背筋がしびれるような感覚。
それを見た途端、一瞬で真顔になってしまいました。そのあとすぐに、他の友人も集めて少し話し合いました。
僕らの内の誰かの悪戯かという話になりましたが、ここまで字を上手く書ける人はいません。それに、先生にしては文が不自然に稚拙ですし。
誰かが後から来たとすれば、足音で気づきます。それでは先にいたとして、声をかけなかったのはなぜなのか。
どこで、誰が見ていたのか、なぜまた図工室に呼んでいるのか。結局我々の中でそういった疑問に、明確な答えが出ることはありませんでした。
端正な字と文の不均整さもあいまって、小さな紙切れが異様に不気味に見えました。
ひと段落つくと、みんな真顔で「モナリザの仕業だ」と騒ぎ始めました。
「あいつが夜中にやったんだ」とか、「先生に言うべきかな」とか。ごちゃごちゃ騒いでいました。
でも僕は、どうしてもモナリザの仕業だとは思えませんでした。
あの時のことを思い出すと、いまでも背筋が寒くなります。なんど思い返しても、僕の頭にはモナリザの方ではなく、あの真っ暗なトイレの光景が浮かんでいますから。
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