【本編完結済み】卒業パーティーで婚約破棄をやらかした王子が『真実の愛』に辿り着くまでの話

むちこ

文字の大きさ
2 / 12

卒業パーティーまたは、断罪劇2

しおりを挟む
「ねぇ、貴女。王族には影が付いているってご存知かしら?」

いつの間にか、傍らに控えていた男がアリシアに分厚い書類の束を渡す。受け取ったアリシアはパラパラと捲って一通り眺めた後、再び、書類を男に返す。おもむろに二人の恋人たちに視線を移し、広げた扇を口許に当てゆっくり綴じる。扇の端から覗く口角がゆっくりと上がる。

「何が言いたい?」
アリシアが笑っている!!
笑ってるアリシアは本当に怖いのだ。クリストファーだって伊達に何年も婚約者として付き合っていない。愛はなくてもアリシアの事はよく知っているのだ。
雰囲気の変わったアリシアに不安なのかマーガレットも縋り付いていた腕に力が入る。

「殿下は少し黙っていて下さいませ。私確認したい事がありますの。影が着いる事はご存知でしたでしょ?」
にっこり微笑むアリシア。

「当然だ!いいだろう。影が着いていようと疚しいことなどない!」
笑ったアリシアに逆らってはいけないと本能に刷り込まれているクリストファー、でも、マーガレットが見てるからカッコつけてみる。

「まあ!そうですの?ふふっ」
虚勢を張っちゃって。横にいる者はそうでもなさそうだが、まだまだ追い詰めるのはこれからだ。

「そう、第一王子殿下にも当然影が付いているわ。勿論、学園の中でも四六時中付いて回るのよ。そしてね。王子殿下に近付く人間は徹底的に身元を洗われるの。例えば、ほら、ハニートラップとか怖いでしょ?」

「ハニートラップとか失礼な事言わないで下さい。私は純真にクリストファー様が好きなんです!」

「あら、失礼。でもそこはもうどうでもいいのよ。気の弱い男爵家の当主にも、庶子で最近まで平民として生活していた貴族社会との繋がりの薄い貴女にも裏がないことはわかっているわ。」

「当然です!ハニートラップなんてしてません。」

「ふふっ。貴女にハニートラップは無理でしょうね。ハニートラップを仕掛けるにしてはお粗末だもの。」
 
 「何が言いたいんですか?」

「貴女、随分色々な方とお付き合いされているんですってね?」

「私、友達が多いんです!」

「男性の方ばかりみたいだけど?貴女、女性のお友達いないものね。」

「ひどい!アリシア様が取り巻きを使って私を仲間外れにするから、女友達が出来ないんじゃないですか!男の子の方が優しいから、いつも一人でいる私の事を気にかけて優しくしてくれるだけです!」

「私に取り巻きなんていませんわ。私のお友達は皆様対等なお友達ですのよ。マナーも悪くて常識もない、注意すれば虐めたと騒ぐ人と誰も自分から仲良くしたりしませんわよ。」

「ひどい!いじめを正当化するんですか!」

「いじめねぇ、、、いいですわ。では、そちらの話も一緒に致しましょう。」

「2年生の途中にそれまで平民として暮らしていた貴女は男爵の当主の庶子として引き取られ、学園に編入して来た。マナーも覚束無い貴女に下級クラスの女子生徒たちは、急な生活環境の変化に戸惑う事も多いだろうと皆様気を配ってましたのよ。最初から孤立していたのではなかったでしょ?なのに、貴女は学園の決まりやマナーを教える男爵令嬢や子爵令嬢に、そんなのおかしいと、元平民だから馬鹿にしているのかとかおっしゃったそうね。そんな事ないと諌めればいじめられたと、貴女に甘い男子生徒にすり寄って、貴女を庇う男子生徒と女子生徒の間に対立まで生んだとか。」

「でも、それは…」

「下位クラスの女子生徒に相談された寄親の上位貴族の令嬢が乗り出した時には、学園は平等な筈なのに身分を笠に着て差別するのかとまでおっしゃったとか?貴女を諌めた中には平民の特待生もいましたのよ。マナーにも、ルールにも身分など関係ありませんのよ。」

「そんなの詭弁です!大勢に囲まれて、私、私、怖くて!」

「だから、いじめられたと男子生徒にすり寄ったの?婚約者のいる方に相談と言って二人きりで会っていたと?」

「婚約者がいるとか知りません!私、ただ助けてほしくて…」

上目遣いのうるうるでアピールするが、そんなのは、下心のある男子にしか通用しない。

「未婚の男女が二人で会うだけで不貞を疑われるのですよ。増して、室内でなど婚約者と一緒でも普通は二人きりにはならないものですわ。貴女、扉を閉めきった密室で男性の方と何をしてましたの?」

「相談に乗ってもらっていただけです。変な勘繰りはやめて下さい!アリシア様って、随分下衆な発想をされるんですね!」

「あら、私何も言っていませんわよ。下衆な発想って何かしら?」

「とにかく!私は相談に乗ってもらっていただけで疚しいことなんてありません!」

「本当に?疚しいことはなくって?」

「ほ、本当です!」

「ふふっ。貴女にも王家の影が付いていたと言っても同じことが言えて?貴女の事色々調べてましたのよ。貴女、殿下に近付いた後も人に言えない様な関係を続けてましたものねぇ。婚約者のいるお友達たちと!」

「マーガレット!?それはどういうことだ!」
クリストファーだってマーガレットに男友達が多いのは知っていた。でも、ただの友達だと言うから信じていたのだ。

「そんな、そんなのでっち上げです!私を陥れようとして、アリシア様が出鱈目を言っているだけです!そうよ!権力を使って私を嵌めようとしてるのよ!クリストファー様、信じて下さい!」

「マーガレット…」

信じたい!マーガレットはクリストファーにキス以上の事をさせてくれない程純情なの娘なのだ!人に言えない様な事なんてするはずない!
でも、王家の影は優秀だ。決して虚偽の報告はしない。人に言えない様な関係って何してたんだよ?なんで自分にはキスしかさせてくれなかったんだよ!しかも唇にチュッて触れるだけのキスだ!恥ずかしいって、顔を隠して見せてくれなくて、、可愛かったのだ。
悶々とするクリストファーを置きざりに二人の令嬢の攻防は続く。

「嫌だわ。冤罪を偽装して私を陥れようとした貴女じゃあるまいし、私はそんなこと致しませんわよ。」

「冤罪じゃないって言ってるじゃないですか!ひどい!そうやって私の事陥れるのね!」

「ああ!もうそういうのは結構ですわ!私もう貴女の学芸会に飽きてしまいましたの。けりをつけましょう!」

「まず、その私の罪とやらですが。なんだったかしら?確か、制服を切り裂く。教科書をすてる。暴漢に襲わせる。階段から突き落とす。だったかしら?」
控えていたさっき書類を渡した男の方を見るアリシア。

「読み上げてちょうだい。」

頷いた男が先程の書類を捲って読み上げる。

「王国歴△年○月✕日。06:00 王都フォークス男爵家マーガレット嬢の寝室にてマルタイ起床。メイドのメリーに…」

「ちょっと!!どういうことよ!自宅でまで監視されてるってこと!着替えとか全部覗かれてるの!?そんなのプライバシーの侵害よ!」

「ご安心下さい。色々考慮致しまして、フォークス嬢には女性の密偵を付けております。」

「安心する要素ないんだけど!」

「五月蝿いですわね!黙って聞いていなさい!」

何処からともなく現れたメイド服の女がマーガレットの背後から猿轡を食ませ、そのまま背後に控える。
女頷いたアリシアは再び報告書の朗読を促す。

「王族に取り入ろうしたのです。何故、調べられないと思っているのか理解に苦しみますわ!あと、貴方!長い!要点だけ読み上げなさい。」


「畏まりました。では要点をまとめて読み上げさせていただきます。
○月✕日。五時限目開始前、下位クラス女子更衣室にて。ダンスの授業の為ドレスに着替え、自身のロッカーに吊るした制服を鋏にて切り刻み、扉を開けたまま放置する。授業後、最初に入室した女子生徒たちが発見して騒ぎになる。が、騒ぎの中入室したマーガレット嬢がいじめだと大袈裟に嘆く様子に察した生徒たちに放置されので、制服を抱えたままクリストファー殿下の教室に走り、制服を切られたと訴える。クリストファー殿下に慰められ、新しい制服を買ってもらうことを約束する。」

「○月✕日。放課後。無人の教室に忍び込み鞄に自身の教科書を詰めて焼却炉に向かう。火の消えかけた焼却炉に教科書を投入。その後帰宅。翌朝、登校時クラスメイトの揃った教室で教科書がないと訴える。担任をクラスメイト全員と捜索。焼却炉で燃え残った教科書の残骸を発見する。泣き喚くマーガレット嬢をクラスメイトたちが慰め授業再開。」

「○月✕日。王都城下。スラム街何でも屋にて。何でも屋店主に、クリストファー殿下の前で自分を襲って欲しいと依頼するも、リスクが高過ぎると一度は断られる。交渉の結果、追いかけるだけでマーガレット嬢がクリストファー殿下に助けを求めた時点で逃げる事で依頼成立。前金を払う。」

「○月✕日。王都バザール近くの路地裏。ご友人とお忍びで街を散策中のクリストファー殿下をみとめ、スタンバイ済みの暴漢役と共に路地裏から表通りに走り出す。追いかけられている体で、大声でクリストファー殿下の名前を呼び助けを求める抱きつく。暴漢役は舌打ちをして走り去る。クリストファー殿下と一緒にいたご友人に街中でクリストファー殿下の名前を大声で叫んだ事に対して咎められる。が、クリストファー殿下がマーガレットを庇い、泣いて怯えるマーガレットをフォークス男爵家まで送る。」

「○月✕日。学園A棟中央階段。人気がないのを確認して、自ら踊り場から転がり落ちる。一階廊下まで転落してそのまま倒れる。15分後、通りがかった生徒が発見して、教員が呼ばれ保健室に運ばれる。」

「以上ご指定の案件に関する物のみを省略して読み上げさせて頂きました。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー AI比較企画作品

婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています

由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、 悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。 王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。 だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、 冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。 再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。 広場で語られる真実。 そして、無自覚に人を惹きつけてしまう リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。 これは、 悪役令嬢として断罪された少女が、 「誰かの物語の脇役」ではなく、 自分自身の人生を取り戻す物語。 過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、 彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

婚約破棄された令息の華麗なる逆転劇 ~偽りの番に捨てられたΩは、氷血公爵に愛される~

なの
BL
希少な治癒能力と、大地に生命を呼び戻す「恵みの魔法」を持つ公爵家のΩ令息、エリアス・フォン・ラティス。 傾きかけた家を救うため、彼は大国アルビオンの第二王子、ジークフリート殿下(α)との「政略的な番契約」を受け入れた。 家のため、領民のため、そして―― 少しでも自分を必要としてくれる人がいるのなら、それでいいと信じて。 だが、運命の番だと信じていた相手は、彼の想いを最初から踏みにじっていた。 「Ωの魔力さえ手に入れば、あんな奴はもう要らない」 その冷たい声が、彼の世界を壊した。 すべてを失い、偽りの罪を着せられ追放されたエリアスがたどり着いたのは、隣国ルミナスの地。 そこで出会ったのは、「氷血公爵」と呼ばれる孤高のα、アレクシス・ヴァン・レイヴンだった。 人を寄せつけないほど冷ややかな瞳の奥に、誰よりも深い孤独を抱えた男。 アレクシスは、心に傷を抱えながらも懸命に生きようとするエリアスに惹かれ、次第にその凍てついた心を溶かしていく。 失われた誇りを取り戻すため、そして真実の愛を掴むため。 今、令息の華麗なる逆転劇が始まる。

「婚約を破棄する!」から始まる話は大抵名作だと聞いたので書いてみたら現実に婚約破棄されたんだが

ivy
BL
俺の名前はユビイ・ウォーク 王弟殿下の許嫁として城に住む伯爵家の次男だ。 余談だが趣味で小説を書いている。 そんな俺に友人のセインが「皇太子的な人があざとい美人を片手で抱き寄せながら主人公を指差してお前との婚約は解消だ!から始まる小説は大抵面白い」と言うものだから書き始めて見たらなんとそれが現実になって婚約破棄されたんだが? 全8話完結

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

本当に悪役なんですか?

メカラウロ子
BL
気づいたら乙女ゲームのモブに転生していた主人公は悪役の取り巻きとしてモブらしからぬ行動を取ってしまう。 状況が掴めないまま戸惑う主人公に、悪役令息のアルフレッドが意外な行動を取ってきて… ムーンライトノベルズ にも掲載中です。

殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?

krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」 突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。 なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!? 全力すれ違いラブコメファンタジーBL! 支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。

処理中です...