創造主である究極の魔王は自分が創造した異世界に再転生する~気付いた時にはハーレム状態?運命の人も勇者も神々も、俺の子を欲しがるのだが?~

たらふくごん

文字の大きさ
45 / 260

第45話 別の世界の傍観者

しおりを挟む
(地球2001年8月10日)

 「ねーちゃん、プール連れてってよー」

 セミの鳴き声がやかましい。
 動かなくてもジワリと噴き出す汗を不快に思いながら俺は姉に話しかけた。

 「栄人君に連れてってもらえば?」
 「なんか忙しいって断られた」

 隣の市にある市民プールに行くためには、この春運転免許を取得した6歳上の『夏樹』に頼むのが一番手っ取り早い。

 「ダーメ。あんたまだ宿題残ってるんでしょう?それに雪乃が夏風邪ひいてるから無理」

 姉は白いタンクトップの胸元を持ち上げうちわで扇ぎながら面倒くさそうに言い放った。
 佐山夏樹、20歳。
 隣町の看護師の専門学校に通う、我が家のカーストナンバーワンに君臨する暴君だ。

 やや茶色がかった髪をポニーテールでまとめ、きりっとした眉とやや吊り上がり気味の目は大きく、意志の強そうな瞳が気怠そうな色をたたえている。

 鼻は高く形のいい唇がバランスよく配置されている顔は見た目だけなら美しいのだろう。

 調子に乗るので絶対言わないが。

 弟の前とはいえノーブラタンクトップという姿には、思春期突入間もない光喜としては「やめていただきたい」といつも思っていた。

 目に入る、うちわを仰ぐたびに揺れるたわわなものに、思わず顔を赤らめそっぽを向いてしまい、まずいと思った時にはすでに時遅し。

 姉の表情が獲物を見つけた猫みたいに変わり突然抱き着いてきた。

 「♪おやおやー?なーに?ねーちゃんのおっぱい見て欲情してるのー?ん-?」
 「っ!ち、ちげーし。つか暑いわ!離れろー!」
 「いいよー♡かわいい弟が女の体に興味持ち始めてお姉ちゃん嬉しー。ほれ、ほーれ」

 もみくちゃにされながらも、さんざん抵抗しなんとか振りほどいた俺は自分の部屋に駆け足で逃げ込んだ。

 姉の体の柔らかさと、少しの汗の匂いと、夏みかんみたいな良い匂いにドキドキする心臓の音を聞かれたくなくて…

 そんな当たり前の日常が、あんなにあっさりなくなるなんて思わなかったんだ。

 中学2年の夏休み、姉の夏希は交通事故で亡くなった。

 少し夜更かしした俺を連れてコンビニに行く途中で、飛び出してきた猫を避けて直進してきたトラックと衝突したのだ。

※※※※※

 長い長い夢を見ていた。

 永遠とも取れる悠久の時間を過ごしもがいている、俺だけど俺じゃない男が悪戦苦闘する様を。
 徐々に浮上する意識とともに、霧散するようにその記憶は失われていくのだった…

※※※※※

 丸一日意識がなかったらしいが、俺は奇跡的に軽傷だった。
 衝突の瞬間、姉が俺を窓の方へ押してくれたからだ。

 運ばれた当初は全身ボロボロに見えたそうだが、病院に着いたら殆ど怪我をしていなかったらしく、救急隊の人がびっくりしていたらしい。

 病院のベッドの上で目が覚めた俺に、母親が泣きながら姉が亡くなったことを教えてくれた。
 時間の経過が分からなかった俺はさっきまで口げんかした姉がもういないことが信じられなかった。

 そして無意識に願った。

 姉ちゃんに会って謝りたい。

 俺がコンビニ行きたいなんて言ったから…
 姉ちゃん…姉ちゃん…ごめん、なさい…

 俺の傍らで見たことのない小さな黒い石が白銀に揺らめき消えていったことに気が付かないまま。

 その後退院した俺は、話を聞いて慌てて家に来てくれた栄人兄ちゃんに思わず抱きついて二人で大泣きした。

 栄人兄ちゃん、姉ちゃんのこと好きだったって…

 そしてそのあと俺は、心の中の何か大切なものが欠けたような感じで、どんどん他人が怖くなっていった。

 嫌なことが毎日のように起こるようにもなったんだ。

※※※※※

 上下も左右も分からない、うっすらとした柔らかい膜のようなものがどこまでも広がる場所で、仄かに光る繭のようなものが数えきれないほど浮いていた。

 それはさらに増えたり、やがて溶けるように消えていくようだ。

 その中に増えた直後の一つの繭が瞬き、漆黒の光に包まれ突然消失した。
 消失した場所にゆらめく白銀の残滓を残して。

 そんな事がありながらも、他に影響はなく同じ光景がただ繰り返されていく。

 時間の経過も分からないような中で、やがて消えるのだろう、徐々に薄くなっていくものに、残滓のように残っていた白銀のもやから漆黒のひものようなものがまるで保護するかのように優しく絡まり姿を消した。

 他の繭のようなものはそんなことには影響されずにただ増え、ただ溶けるように消えていく事を繰り返していくのだった。

 ずっと……ずっと。

※※※※※

(????年??月??日)

 そこは何もない場所だった。
 明るいのか暗いのか暑いのか寒いのか触れているのか触れていないのか。
 ただ、何もなかった。
 でも…

 突然中にあるどこかから声が聞こえたような気がした。

 「ねえ…ちゃん……」

 それからは感知できなくなり、存在が揺らいだこともあった。
 いつでも漆黒の魔力が守ってくれていた。

 おそらく。

 知覚出来ないのだ。 
 もしかしたらそう願っていただけなのかもしれない。

 長い時間を経てソレは徐々に思考と呼ぶべきものを認識し始め、不思議な力に守られ続け、やがて意識をつなぎ、魔王ノアーナの創造した世界とは別の次元で大いなる『運命の女神』となる『ナニカ』が誕生した。

 時間の概念がないこの摂理の中で、100万年前なのか、10万年前なのか、それとも昨日なのか。
 いつから存在していたか全く認識できていなかった『ナニカ』はついに覚醒の時を迎える。

 『ナニカ』は、佐山夏樹だったモノに、魔王ノアーナの魔力が取り付き守り、そしてついに光喜とネルによって発現した『根源魔法』により顕現する。

 動き出す運命の女神ナツキ。

 魔王ノアーナ、佐山光喜が本当に望むもの。

 傍観者として、憎らしくもかわいい不器用な弟のため。
 様々な因果に囚われたいくつかの魂を導くため。
 すべてを凌駕する、あり得ないほど強い他者へ向けられる想いを紡ぐ源泉として。

 世界の壁をまたぎ、動き続ける悪意の波動を消し去って。

 悠久の時間、前進し続けた想いの陰に隠れた『悪意の欠片』が暗躍しすべてを飲み込む直前に逆転につながる大いなる力が目覚めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万
ファンタジー
 異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。  夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。  妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。  勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。  ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。  夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。  夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。  その子を大切に育てる。  女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。  2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。  だけど子どもはどんどんと強くなって行く。    大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

『召喚ニートの異世界草原記』

KAORUwithAI
ファンタジー
ゲーム三昧の毎日を送る元ニート、佐々木二郎。  ある夜、三度目のゲームオーバーで眠りに落ちた彼が目を覚ますと、そこは見たこともない広大な草原だった。  剣と魔法が当たり前に存在する世界。だが二郎には、そのどちらの才能もない。  ――代わりに与えられていたのは、**「自分が見た・聞いた・触れたことのあるものなら“召喚”できる」**という不思議な能力だった。  面倒なことはしたくない、楽をして生きたい。  そんな彼が、偶然出会ったのは――痩せた辺境・アセトン村でひとり生きる少女、レン。  「逃げて!」と叫ぶ彼女を前に、逃げようとした二郎の足は動かなかった。  昔の記憶が疼く。いじめられていたあの日、助けを求める自分を誰も救ってくれなかったあの光景。  ……だから、今度は俺が――。  現代の知恵と召喚の力を武器に、ただの元ニートが異世界を駆け抜ける。  少女との出会いが、二郎を“召喚者”へと変えていく。  引きこもりの俺が、異世界で誰かを救う物語が始まる。 ※こんな物も召喚して欲しいなって 言うのがあればリクエストして下さい。 出せるか分かりませんがやってみます。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

転生したら遊び人だったが遊ばず修行をしていたら何故か最強の遊び人になっていた

ぐうのすけ
ファンタジー
カクヨムで先行投稿中。 遊戯遊太(25)は会社帰りにふらっとゲームセンターに入った。昔遊んだユーフォーキャッチャーを見つめながらつぶやく。 「遊んで暮らしたい」その瞬間に頭に声が響き時間が止まる。 「異世界転生に興味はありますか?」 こうして遊太は異世界転生を選択する。 異世界に転生すると最弱と言われるジョブ、遊び人に転生していた。 「最弱なんだから努力は必要だよな!」 こうして雄太は修行を開始するのだが……

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...