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雪那 由多

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集まれ緑風荘 3

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 お婆ちゃんの家に寄り道して帰ればまだみんなも服を脱げないままくつろいでいた。
 湿っぽさはもう終わり、その後の作業にみんな切り替えていた。
 弁護士さんも加わって財産分与の話に移り変わっている。
 49日までには全部まとめておきたいらしい。
 家の相続、別荘の相続、会社の相続。
 いろいろ受け継ぐものはあるようでお袋の子供の親父たち三兄弟は一応お婆ちゃんから分けられた相続を素直に引き取るらしい。
 まあ、この家は親父が建てたからおじさん達が口をはさむ謂れはないし、その前の家、つまり俺が相続した家は俺の物になっているらしい。
 この二点についてはおじさん達は十分納得しているようで何も口を出さなかった。
 会社は親父が既に社長として手腕を振るっているのでそこも問題なく、あとは……
「浩司、海の別荘は俺がもらうな」
「桂司兄さんが海の別荘なら山の別荘は俺がもらうよ。藤治兄さん良いよね?」
「俺は海も山も結構だ。お前たちに任せた」
 兄弟仲いいなー。
 お婆ちゃんとすでに話はまとまっていたらしく全く問題なく財産分与が終わったけど……
 ほんのちょっぴりだけどろどろとした展開を期待していた俺がいたのはこののちの酒の場でつまみに提供して反省することにする。

「後は母さんが残した宝石とかだな」
 
 苦笑する親父、叔父さん達の会話に耳を傾けていれば
「まあ、孫たちを含めて一つずつまずは欲しいものをもらってもらって……」
 なんて親父が口に出した所で
「いや、娘に持たせるにはデザインも古いし、何より分不相応だ」
 桂司叔父さんがストップをかける。
「だな。嫁さん達に配っていずれ子供に譲る、それでいいだろう。
 デザインとかはその時に自力で宝石屋に持ち込んでもらおうか」
 浩司叔父さんも桂司叔父さんの言葉に乗っかり
「こういうのも受け継ぐって言う意味だしな」
 浩司叔父さんの言葉にうんうんと頷く三兄弟。
 ほんとこんなにも兄弟って仲がいいものかと一人っ子の俺には想像はつかない。
 ちなみに俺にはこの場でネクタイピンとカフスのセットをもらった。今時カフスなんてと思うけど、叔父さん曰く人工で作れないブラックオパールの物だから。お爺ちゃんが大切に使っていたものだから持っていなさいとの事。こんな重い物嫌だよと喉まで出かかっていたけど、そんな大切な物だったら親父たちが既に受け取っているはず。
 つまりだ。
 さっき浩司叔父さんが言った言葉を思い出して、やっと受け継ぐにふさわしくなったという事だろう。いや、今フリーター状態だからはっぱかけてくれている言葉として謹んで受け取る事にした。

「あと修司」

 親父に少しだけ真剣な名前で呼ばれればそちらへと顔事向ける。叔父さん達も真剣な顔で、会社にいる時のような顔で俺を見ていて少し顔が引きつる。
「婆ちゃんがお前たち馬子にも同じだけの小遣いを残してくれたから。
 お前には旧家の面倒を見てもらうためにも多少の色を付けてあるとは言っていたが……」
 すっと差し出された通帳。
 俺は叔父さん達にも見えるように最後に記帳された欄を一瞬だけ見せてすぐに閉ざした。
 ちらりと親父は親父の弟たちの顔を見るも
「母さんが決めたのなら反対しないよ」
「寧ろ、あと数年とは言えあの家の面倒をかませるのは申し訳ないというか」
 それを考えて誰も反対しないというのは理解できた。
 俺を拘束する為の報酬なのだろう。
 二十代の一番自由な時間を奪う事になる、きっとそれが色を付けた意味なのだろう。
 外部から管理人を雇ったり、俺の引っ越し費用や家の修繕込みの値段だと頭の中ではじき出した金額に誰も文句は言わなかった。
 弁護士さんから聞いた値段から算出した金額が大体俺が贈与された金額。
 贈与税とかは時間をかけて贈与税がかからないように準備をしてくれていたらしい。
 俺に甘々なお婆ちゃんだったけどこうやって話を聞くとやっぱり会社を経営している一族の妻だと思わずにはいられない。
 
「叔父さん達の反対がなければ俺は良いんだけど」

 お婆ちゃんが言う事はいつも筋が通っていたから……
 いや、草刈りの件に関しては全く理不尽と言いたかったけど。
 思わず歪む俺の顔にお婆ちゃんの旧家への愛を苦しいほどに理解している息子たちは何かを察して

「俺達は文句はないぞ」
「むしろあの家の面倒を見てくれるなら母さんが夢枕で文句を言わない気がして安心する」
「ああ、そうだな」

 叔父さん達の言葉に親父もぶるりと体を震わして盛大に頷いてくれていた。
 どうやら俺の知らないお婆ちゃんと言う一面がある事を理解すれば
「近いうちに引っ越すから。お婆ちゃんの荷物はここに送るから、親父たちは必要な物とか処分する物とか仕分けてよ」
 言えば親父たちは何かを思い出した様で
「ああ、母さんの着物とか向こうに残していたな」
「結構いい帯留めとか置いていたとおもったけど……」
「黙ってるとうちのが持っていくけどいいのか?」
 そんな心配の言葉に別にいいよと思ったけど……

「いずれ結婚する恋人に母さんの宝石あげたいと思わないのか?」
「父さん、と言うより爺さんが結構な目利きだったからな。いずれ長男の嫁にって旅行先でいろいろ買ってきたのがそろってるはずだ」
「まあ、お前だって長男の長子だからな。
 それなりに母さんに認められたってことか」
「気にしなくていいぞ。
 うちの子たちに比べたら修司はほんと頑張ったからな」
 言いながら叔父さん達は何やら悩まし気にため息を落とす。
 まあ、うち同様それなりに裕福な家庭だからやんちゃに育ったというべきか。
 まだまだ中学生と高校生だというのにねと思いながらもきっと婆ちゃんの事だから今回の贈与の中には従弟妹達の学費分も含んであるのだろう。
 だから誰も文句はいわないのかと納得。
「じゃあ、49日まで荷物をこっちに移すから。俺が見落としたのは親父たちで勉強代ってことでみんなに分けてよ」
 なんせ女性の物なんて俺にはいらない。
 今の俺に居ない彼女の為にとっておくなんて想像もつかない。
 だけど親父たちがヒントをくれた。
 だったら変わらない価値ある物だけ残しておいて、流行りとかある鞄とかはみんなに。着物とか管理の面倒なものは母さんにお願いすればいいんじゃね?
 食器とかなら俺も使うから残すけどと俺の頭の中で分類分けをどんどんしていく。
 そんな俺におじさん達は
「これでなんで会社を引き継いでくれないんだよ」
「まあ、うちのを育ててるけどやっぱり修司みたいな真面目もやる気もかけらもないからな」
「俺達の代で会社を閉める覚悟、本気でしておかないとな」
「「ああ、そうだな」」
 なんて怪しい言葉を言っていたけど今時本当に世襲制でやって行けるわけないだろ。もっと身近な所にいる優秀な社員さんに手をかけろと心の中で突っ込みながらも俺はあの丘の上の家を受け継ぐ為の準備のに自室へと戻るのだった。



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