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第八話(マルサス視点)
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く、くそっ! エリナのやつ、浮気して元気になった途端に男を乗り換えるなんて酷いじゃないか。
病弱でも仲良くしてやった恩を忘れて。
いや、色目使って僕を誘惑したくせに、全然好きじゃなかったなんて嘘までつくなんて……。
あいつの言い訳は実に見苦しかった。
僕のことなど最初から好きじゃなくって、ルーメリアの辺境伯が初めて好きになった相手とか嘘まみれのエピソードで僕を傷つけて。
超高級品の指輪はルティアの名前が彫られていたことを非常識だと、罵る。
あんなもん、後から削ったり何やったり加工すれば良いだろう。それより超高級品を渡せる男としての品格を褒めろよ! 品格を!
子爵令嬢の分際で、このマルサスに恥をかかせたんだ。いつか、復讐してやるからな。
「帰ってきたか。で? エリナさんは喜んだか? 侯爵殿には多額の慰謝料を払うことで何とか納得してもらえたよ。二度とこのようなことは御免被る」
「エリナサン、デスカ?」
「なぜ、カタコトになる?」
し、しまったーーーーーー! ち、父上に大見得きって出ていったんだったーーーー!
エリナの件が衝撃的すぎて忘れていたよ……。
ど、どうしよう? 父上は慰謝料まで払って、怒られてきたというのに……。
「あ、ああ、エリナは泣いて喜んでいたよ。あはははは、余程、僕のことが好きらしい」
「ふむ。何故、震えているのか分からんが、良かったな。では、さっそく明日にでもワシも子爵家に挨拶に行こう」
「あ、明日ーーーーーーーっ!?」
「――っ!? きゅ、急に大きな声を出すな。親なのだから挨拶は当たり前だろう」
ま、まずい。まずい。まずいぞ、それは……。
父上がエリナの家に行ったら、僕のプロポーズが拒否されたことがバレちゃうじゃないか。
と、とにかく、とにかくだ。一旦、それは止めておいてもらわなくては。
「あ、あの、ですね。父上……、エリナの体調が良くないんですよ。だから、込み入った話はもうちょっと後にしてほしいと言われまして」
「もうちょっと後? どのくらいだ?」
「い、一年くらい?」
「い、一年だと!? 馬鹿言うな! そんなこと体調が悪くとも常識的にあり得んだろう! プロポーズを受けておいて!」
「ま、間違いました! 一ヶ月です! 一ヶ月~~~!」
「……ふむ」
あ、危なかったーーー! さすがに一年は無理があったか。
で、でも、どうしよう。一ヶ月って、これどうすんの? バレたら勘当されて、好きな人とも一緒になれないなんて、間抜けな男になってしまう。
ルティア、運命の人が君だと僕が気付かなかったばっかりにこんなことになってしまったよ。
君は僕のことをあんなにも愛していてくれたのに、良く考えたらエリナよりもずっと美人だったのに――。
なんで、僕は婚約破棄してしまったんだ。
そ、そうだ! ルティアとよりを戻せば慰謝料も父上に戻ってくるし、僕が怒られる要素がなくなって帳消しになるんじゃ?
そうだよ、そう。この超高級品の指輪をもう一回、ルティアにプレゼントしよう。
格好いいプロポーズをして、泣いて喜ばせよう!
確か、友人のハンスはフラッシュモブとかいう、新しいサプライズ形式のプロポーズが成功した、とか言っていたな。
女はとりあえずサプライズが好きだし、そういうもんなんだろう。
よーし、僕もフラッシュモブでもう一回、ルティアにプロポーズするぞ――。
病弱でも仲良くしてやった恩を忘れて。
いや、色目使って僕を誘惑したくせに、全然好きじゃなかったなんて嘘までつくなんて……。
あいつの言い訳は実に見苦しかった。
僕のことなど最初から好きじゃなくって、ルーメリアの辺境伯が初めて好きになった相手とか嘘まみれのエピソードで僕を傷つけて。
超高級品の指輪はルティアの名前が彫られていたことを非常識だと、罵る。
あんなもん、後から削ったり何やったり加工すれば良いだろう。それより超高級品を渡せる男としての品格を褒めろよ! 品格を!
子爵令嬢の分際で、このマルサスに恥をかかせたんだ。いつか、復讐してやるからな。
「帰ってきたか。で? エリナさんは喜んだか? 侯爵殿には多額の慰謝料を払うことで何とか納得してもらえたよ。二度とこのようなことは御免被る」
「エリナサン、デスカ?」
「なぜ、カタコトになる?」
し、しまったーーーーーー! ち、父上に大見得きって出ていったんだったーーーー!
エリナの件が衝撃的すぎて忘れていたよ……。
ど、どうしよう? 父上は慰謝料まで払って、怒られてきたというのに……。
「あ、ああ、エリナは泣いて喜んでいたよ。あはははは、余程、僕のことが好きらしい」
「ふむ。何故、震えているのか分からんが、良かったな。では、さっそく明日にでもワシも子爵家に挨拶に行こう」
「あ、明日ーーーーーーーっ!?」
「――っ!? きゅ、急に大きな声を出すな。親なのだから挨拶は当たり前だろう」
ま、まずい。まずい。まずいぞ、それは……。
父上がエリナの家に行ったら、僕のプロポーズが拒否されたことがバレちゃうじゃないか。
と、とにかく、とにかくだ。一旦、それは止めておいてもらわなくては。
「あ、あの、ですね。父上……、エリナの体調が良くないんですよ。だから、込み入った話はもうちょっと後にしてほしいと言われまして」
「もうちょっと後? どのくらいだ?」
「い、一年くらい?」
「い、一年だと!? 馬鹿言うな! そんなこと体調が悪くとも常識的にあり得んだろう! プロポーズを受けておいて!」
「ま、間違いました! 一ヶ月です! 一ヶ月~~~!」
「……ふむ」
あ、危なかったーーー! さすがに一年は無理があったか。
で、でも、どうしよう。一ヶ月って、これどうすんの? バレたら勘当されて、好きな人とも一緒になれないなんて、間抜けな男になってしまう。
ルティア、運命の人が君だと僕が気付かなかったばっかりにこんなことになってしまったよ。
君は僕のことをあんなにも愛していてくれたのに、良く考えたらエリナよりもずっと美人だったのに――。
なんで、僕は婚約破棄してしまったんだ。
そ、そうだ! ルティアとよりを戻せば慰謝料も父上に戻ってくるし、僕が怒られる要素がなくなって帳消しになるんじゃ?
そうだよ、そう。この超高級品の指輪をもう一回、ルティアにプレゼントしよう。
格好いいプロポーズをして、泣いて喜ばせよう!
確か、友人のハンスはフラッシュモブとかいう、新しいサプライズ形式のプロポーズが成功した、とか言っていたな。
女はとりあえずサプライズが好きだし、そういうもんなんだろう。
よーし、僕もフラッシュモブでもう一回、ルティアにプロポーズするぞ――。
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