【完結】病弱な幼馴染が大事だと婚約破棄されましたが、彼女は他の方と結婚するみたいですよ

冬月光輝

文字の大きさ
8 / 32

第八話(マルサス視点)

しおりを挟む
 く、くそっ! エリナのやつ、浮気して元気になった途端に男を乗り換えるなんて酷いじゃないか。
 病弱でも仲良くしてやった恩を忘れて。
 いや、色目使って僕を誘惑したくせに、全然好きじゃなかったなんて嘘までつくなんて……。

 あいつの言い訳は実に見苦しかった。

 僕のことなど最初から好きじゃなくって、ルーメリアの辺境伯が初めて好きになった相手とか嘘まみれのエピソードで僕を傷つけて。
 
 超高級品の指輪はルティアの名前が彫られていたことを非常識だと、罵る。
 あんなもん、後から削ったり何やったり加工すれば良いだろう。それより超高級品を渡せる男としての品格を褒めろよ! 品格を!

 子爵令嬢の分際で、このマルサスに恥をかかせたんだ。いつか、復讐してやるからな。



「帰ってきたか。で? エリナさんは喜んだか? 侯爵殿には多額の慰謝料を払うことで何とか納得してもらえたよ。二度とこのようなことは御免被る」

「エリナサン、デスカ?」

「なぜ、カタコトになる?」

 し、しまったーーーーーー! ち、父上に大見得きって出ていったんだったーーーー!

 エリナの件が衝撃的すぎて忘れていたよ……。

 ど、どうしよう? 父上は慰謝料まで払って、怒られてきたというのに……。

「あ、ああ、エリナは泣いて喜んでいたよ。あはははは、余程、僕のことが好きらしい」

「ふむ。何故、震えているのか分からんが、良かったな。では、さっそく明日にでもワシも子爵家に挨拶に行こう」

「あ、明日ーーーーーーーっ!?」

「――っ!? きゅ、急に大きな声を出すな。親なのだから挨拶は当たり前だろう」

 ま、まずい。まずい。まずいぞ、それは……。
 父上がエリナの家に行ったら、僕のプロポーズが拒否されたことがバレちゃうじゃないか。
 と、とにかく、とにかくだ。一旦、それは止めておいてもらわなくては。

「あ、あの、ですね。父上……、エリナの体調が良くないんですよ。だから、込み入った話はもうちょっと後にしてほしいと言われまして」

「もうちょっと後? どのくらいだ?」

「い、一年くらい?」

「い、一年だと!? 馬鹿言うな! そんなこと体調が悪くとも常識的にあり得んだろう! プロポーズを受けておいて!」

「ま、間違いました! 一ヶ月です! 一ヶ月~~~!」

「……ふむ」

 あ、危なかったーーー! さすがに一年は無理があったか。
 で、でも、どうしよう。一ヶ月って、これどうすんの? バレたら勘当されて、好きな人とも一緒になれないなんて、間抜けな男になってしまう。

 ルティア、運命の人が君だと僕が気付かなかったばっかりにこんなことになってしまったよ。

 君は僕のことをあんなにも愛していてくれたのに、良く考えたらエリナよりもずっと美人だったのに――。
 なんで、僕は婚約破棄してしまったんだ。
 
 そ、そうだ! ルティアとよりを戻せば慰謝料も父上に戻ってくるし、僕が怒られる要素がなくなって帳消しになるんじゃ?

 そうだよ、そう。この超高級品の指輪をもう一回、ルティアにプレゼントしよう。
 格好いいプロポーズをして、泣いて喜ばせよう!

 確か、友人のハンスはフラッシュモブとかいう、新しいサプライズ形式のプロポーズが成功した、とか言っていたな。
 女はとりあえずサプライズが好きだし、そういうもんなんだろう。

 よーし、僕もフラッシュモブでもう一回、ルティアにプロポーズするぞ――。
しおりを挟む
感想 340

あなたにおすすめの小説

地味だからいらないと婚約者を捨てた友人。だけど私と付き合いだしてから素敵な男性になると今更返せと言ってきました。ええ、返すつもりはありません

亜綺羅もも
恋愛
エリーゼ・ルンフォルムにはカリーナ・エドレインという友人がいた。 そしてカリーナには、エリック・カーマインという婚約者がいた。 カリーナはエリックが地味で根暗なのが気に入らないらしく、愚痴をこぼす毎日。 そんなある日のこと、カリーナはセシル・ボルボックスという男性を連れて来て、エリックとの婚約を解消してしまう。 落ち込むエリックであったが、エリーゼの優しさに包まれ、そして彼女に好意を抱き素敵な男性に変身していく。 カリーナは変わったエリックを見て、よりを戻してあげるなどと言い出したのだが、エリックの答えはノーだった。

絶縁状をお受け取りくださいませ旦那様。~離縁の果てに私を待っていたのは初恋の人に溺愛される幸せな異国ライフでした

松ノ木るな
恋愛
 アリンガム侯爵家夫人ルシールは離婚手続きが進むさなかの夜、これから世話になる留学先の知人に手紙をしたためていた。  もう書き終えるかという頃、扉をノックする音が聞こえる。その訪ね人は、薄暗い取引で長年侯爵家に出入りしていた、美しい男性であった。

私を捨てて後悔したようですけど、もうあなたと関わりません

天宮有
恋愛
「クノレラの方が好きだから、俺との婚約を破棄して欲しい」 伯爵令嬢の私キャシーは、婚約者ラウド王子の発言が信じられなかった。 一目惚れしたと言われて私は強引に婚約が決まり、その後ラウド王子は男爵令嬢クノレラを好きになったようだ。 ラウド王子が嫌になったから、私に関わらないと約束させる。 その後ラウド王子は、私を捨てたことを後悔していた。

断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる

葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。 アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。 アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。 市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。

婚約者を奪っていった彼女は私が羨ましいそうです。こちらはあなたのことなど記憶の片隅にもございませんが。

松ノ木るな
恋愛
 ハルネス侯爵家令嬢シルヴィアは、将来を嘱望された魔道の研究員。  不運なことに、親に決められた婚約者は無類の女好きであった。  研究で忙しい彼女は、女遊びもほどほどであれば目をつむるつもりであったが……  挙式一月前というのに、婚約者が口の軽い彼女を作ってしまった。 「これは三人で、あくまで平和的に、話し合いですね。修羅場は私が制してみせます」   ※7千字の短いお話です。

失踪していた姉が財産目当てで戻ってきました。それなら私は家を出ます

天宮有
恋愛
 水を聖水に変える魔法道具を、お父様は人々の為に作ろうとしていた。  それには水魔法に長けた私達姉妹の協力が必要なのに、無理だと考えた姉エイダは失踪してしまう。  私サフィラはお父様の夢が叶って欲しいと力になって、魔法道具は完成した。  それから数年後――お父様は亡くなり、私がウォルク家の領主に決まる。   家の繁栄を知ったエイダが婚約者を連れて戻り、家を乗っ取ろうとしていた。  お父様はこうなることを予想し、生前に手続きを済ませている。  私は全てを持ち出すことができて、家を出ることにしていた。

【完結】どうぞお気遣いなく。婚約破棄はこちらから致しますので。婚約者の従姉妹がポンコツすぎて泣けてきます

との
恋愛
「一体何があったのかしら」  あったかって? ええ、ありましたとも。 婚約者のギルバートは従姉妹のサンドラと大の仲良し。 サンドラは乙女ゲームのヒロインとして、悪役令嬢の私にせっせと罪を着せようと日夜努力を重ねてる。 (えーっ、あれが噂の階段落ち?) (マジか・・超期待してたのに) 想像以上のポンコツぶりに、なんだか気分が盛り下がってきそうですわ。 最後のお楽しみは、卒業パーティーの断罪&婚約破棄。 思いっきりやらせて頂きます。 ーーーーーー

義母と義妹に虐げられていましたが、陰からじっくり復讐させていただきます〜おしとやか令嬢の裏の顔〜

有賀冬馬
ファンタジー
貴族の令嬢リディアは、父の再婚によりやってきた継母と義妹から、日々いじめと侮蔑を受けていた。 「あら、またそのみすぼらしいドレス? まるで使用人ね」 本当の母は早くに亡くなり、父も病死。残されたのは、冷たい屋敷と陰湿な支配。 けれど、リディアは泣き寝入りする女じゃなかった――。 おしとやかで無力な令嬢を演じながら、彼女はじわじわと仕返しを始める。 貴族社会の裏の裏。人の噂。人間関係。 「ふふ、気づいた時には遅いのよ」 優しげな仮面の下に、冷たい微笑みを宿すリディアの復讐劇が今、始まる。 ざまぁ×恋愛×ファンタジーの三拍子で贈る、スカッと復讐劇! 勧善懲悪が好きな方、読後感すっきりしたい方にオススメです!

処理中です...