【完結】病弱な幼馴染が大事だと婚約破棄されましたが、彼女は他の方と結婚するみたいですよ

冬月光輝

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第二十一話

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「あっはっはっは、大丈夫だって、大丈夫。ルーメリア王国だって、そんな変な要求しないさ。それに今度、リュオン殿下の婚約者として結婚式に行くんだろ? ローウェル辺境伯の」

 兄のカインが実家に遊びに来たとき、彼は私の不安を聞いて……それを笑い飛ばしました。
 そんな軽い感じのお話でしょうか。まるで私が心配性みたいじゃありませんか。

「考えてもみろよ。オリビア殿下は不義理を働いているんだぞ。それを何事も無かったように許せば、我が国の沽券にも関わる。政略結婚の旨みなんて、ほとんど無くなっているんだよ」

「でも、リュオン殿下は国王陛下が乗り気だったと……」

「陛下は、なぁ。事なかれ主義というか、面倒臭がりというか、基本的に楽な方に流されてしまう御方だからな。それは俺たちで舵取りしていかなきゃならない。まー、ワンマンってタイプじゃないし、家臣の意見に我を通す方でもないから、上手くやるさ」

 陛下の人となりを説明して、「上手くやる」と言い切った兄は頼もしくもありました。
 この人はいつもそうなのです。難しいことも難しいとも言わずに、気付いた時にはそれを成し遂げている、そんな人でした。


「わたくしはマルサス様からの手紙攻撃の方が気になりますわ」

「マルサス? 手紙攻撃? なんだそりゃあ? マルサスって、自分から別れておいて、あれだよな。フラッシュモブでまたルティアにプロポーズしたっていう、バカだろ?」

「はい。そのバカですわ」

 いやいや、シェリアも何を当たり前みたいにマルサス様のことをバカと呼んでいるんですか。
 確かに少々困ったことになっていまして、テスラー伯爵にも苦情を出しているのですが、肝心のマルサス様の居所が一向に掴めないみたいでお手上げなのです。

 勘当にはしていないらしいのですが、それに近いことをしたとのこと。
 どういうことなんでしょう? 分かりません。

「実はマルサス様から毎日のように復縁を迫る手紙が来ていまして。もう読んでいないのですが、お父様が証拠として残した方が良いと捨てられもせず……」

「最近は現金も同封されていますわー。ラブレターに現金を同封なんてその発想が面白すぎませんか?」

「ちょっと、待ってください。げ、現金が同封されているのですか? というか、シェリアはマルサス様からの手紙、読んでいるのですか?」

「ファンとしては当然の行いですの」

 ですから、いつシェリアはマルサス様のファンになったのですか。
 本当にこの子は昔から変なことに興味を持つ子です。
 まさか、取っておいている手紙を勝手に読んでいるとは……。

「色々とツッコミどころは満載だけどさ。現金が同封って何かのおまじないか?」

「ええーっと、手紙には大金持ちになった、ルティアお姉様を金の力で幸せにしてやる、とのことです」

「なんだそりゃ、ロマンもへったくれもないな」

「お兄様がお義姉様に宛てたポエムもロマンもへったくれもありませんでしたけどね」

「なんだよー、あれ見たのか。あいつは喜んでくれたから良いんだよ。それで」

 大金持ちになったというマルサス様が現金と共に手紙を送っていたという事実を聞いて寒気はしたのですが、二人のやり取りを聞いているとそちらは気にしなくても良い気がしました。

 あと数日で婚約も発表されますし、エリナさんとローウェル様の結婚式にも婚約者として出席しますので、大丈夫……、ですよね?
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