7 / 19
第七話
しおりを挟む
兄と姉、そして義姉と義兄になる予定の人……、つまり身内に全部ニッグとジーナの事について話してしまった私は、しばらく放心状態になりました。
一番激怒したのは意外にも兄のルークでした。
いつも冷静沈着で争いごとはあまり好まないルークは妻であり第二王女のイリーナ様に振り回されているイメージだったのですが、ニッグたちを絶対に許さないと殺気を醸し出していて、逆にイリーナ様に嗜められます。
『まったく、あなたが熱くなったらまとまらないでしょう。エルザちゃんが馬鹿にされて怒っているのは分かるけど』
『私がいけなかったんだ! 父上に全部任せていたから! エルザ、今度は私がお前にとびきりの良い男を……!』
『兄様、脱線しています。今重要なのは、どうやってお二人を十分に恐怖を味合わせた後に社会的に抹殺するかです』
『アマンダ、やる気じゃないか。じゃあ、ジーナについては良い考えがあるよ。僕の国の知り合いにさ――』
ここまで聞いたところで、私は精神的な衛生上良くないと、部屋に戻されてしまいました。
兄のルークに言われたのは、「しばらく辛いかもしれないが普段どおり過ごせ」という事と、侯爵様と友人関係にある父には念のためにこの事は黙っているようにということです。
父もこの件について聞けば激怒するのは間違いないのですが、短気な性格なので一気にことを荒立ててしまうことが不都合なのだとか。
『お義父様が動いたら、ニッグたちは浮気未遂を責められて終わりになるはずよ。うちのパパが怒ってもそうでしょうね。まぁ、失うものは多いだろうけど、結局、あの二人がくっつくのも腹が立つのよね』
イリーナはニッグたちが怒られて終わりというのには納得していないみたいです。
何やら凄い計画を立てそうなのですが、それは分からないままでした。
何日か無気力な日々を過ごした私は、兼ねてから予定していた舞踏会へ参加することになります。
パートナーは当たり前ですがニッグです。
いつもどおり過ごせということなので、会いに行かなくてはならないのでしょうが――。
「ご心配されるな」
「我ら、エルザ様の護衛」
「そして、エルザ様の影」
「イリーナ様の命により」
「陰ながらこっそりと守らせてもらう」
「王族親衛隊の力をとくとご覧あれ!」
王族親衛隊の方々が目にも止まらぬスピードで私の目の前に現れました。
えっと、さっきまでどこに居たのでしょうか……。
イリーナ様、私のために自分たちの護衛まで――。
確かに安心感はありますが――。
こうして私は護衛の方々の力に頼ることにして、自分を奮い立たせて、ニッグいるの屋敷に向かったのです。
「ひぃぃぃぃ! ぼ、僕は外に出たくない! 狙われている~、誰かが僕を殺そうとしているんだ!」
出てきたニッグは人が変わったようでした。
目に隈ができてきて、寝不足だったということを示しています。
そして、その怯えきった表情――まさか兄たちがもう動いて――。
「え、エルザ。お、お前じゃあないよな?」
「えっ? 何のことですか?」
絞り出すように声を出すニッグはかつてはあの格好いい紳士だった面影はありません。
こんな私を怖がるなんて……本当に何があったのですか――。
一番激怒したのは意外にも兄のルークでした。
いつも冷静沈着で争いごとはあまり好まないルークは妻であり第二王女のイリーナ様に振り回されているイメージだったのですが、ニッグたちを絶対に許さないと殺気を醸し出していて、逆にイリーナ様に嗜められます。
『まったく、あなたが熱くなったらまとまらないでしょう。エルザちゃんが馬鹿にされて怒っているのは分かるけど』
『私がいけなかったんだ! 父上に全部任せていたから! エルザ、今度は私がお前にとびきりの良い男を……!』
『兄様、脱線しています。今重要なのは、どうやってお二人を十分に恐怖を味合わせた後に社会的に抹殺するかです』
『アマンダ、やる気じゃないか。じゃあ、ジーナについては良い考えがあるよ。僕の国の知り合いにさ――』
ここまで聞いたところで、私は精神的な衛生上良くないと、部屋に戻されてしまいました。
兄のルークに言われたのは、「しばらく辛いかもしれないが普段どおり過ごせ」という事と、侯爵様と友人関係にある父には念のためにこの事は黙っているようにということです。
父もこの件について聞けば激怒するのは間違いないのですが、短気な性格なので一気にことを荒立ててしまうことが不都合なのだとか。
『お義父様が動いたら、ニッグたちは浮気未遂を責められて終わりになるはずよ。うちのパパが怒ってもそうでしょうね。まぁ、失うものは多いだろうけど、結局、あの二人がくっつくのも腹が立つのよね』
イリーナはニッグたちが怒られて終わりというのには納得していないみたいです。
何やら凄い計画を立てそうなのですが、それは分からないままでした。
何日か無気力な日々を過ごした私は、兼ねてから予定していた舞踏会へ参加することになります。
パートナーは当たり前ですがニッグです。
いつもどおり過ごせということなので、会いに行かなくてはならないのでしょうが――。
「ご心配されるな」
「我ら、エルザ様の護衛」
「そして、エルザ様の影」
「イリーナ様の命により」
「陰ながらこっそりと守らせてもらう」
「王族親衛隊の力をとくとご覧あれ!」
王族親衛隊の方々が目にも止まらぬスピードで私の目の前に現れました。
えっと、さっきまでどこに居たのでしょうか……。
イリーナ様、私のために自分たちの護衛まで――。
確かに安心感はありますが――。
こうして私は護衛の方々の力に頼ることにして、自分を奮い立たせて、ニッグいるの屋敷に向かったのです。
「ひぃぃぃぃ! ぼ、僕は外に出たくない! 狙われている~、誰かが僕を殺そうとしているんだ!」
出てきたニッグは人が変わったようでした。
目に隈ができてきて、寝不足だったということを示しています。
そして、その怯えきった表情――まさか兄たちがもう動いて――。
「え、エルザ。お、お前じゃあないよな?」
「えっ? 何のことですか?」
絞り出すように声を出すニッグはかつてはあの格好いい紳士だった面影はありません。
こんな私を怖がるなんて……本当に何があったのですか――。
733
あなたにおすすめの小説
病弱な幼馴染と婚約者の目の前で私は攫われました。
鍋
恋愛
フィオナ・ローレラは、ローレラ伯爵家の長女。
キリアン・ライアット侯爵令息と婚約中。
けれど、夜会ではいつもキリアンは美しく儚げな女性をエスコートし、仲睦まじくダンスを踊っている。キリアンがエスコートしている女性の名はセレニティー・トマンティノ伯爵令嬢。
セレニティーとキリアンとフィオナは幼馴染。
キリアンはセレニティーが好きだったが、セレニティーは病弱で婚約出来ず、キリアンの両親は健康なフィオナを婚約者に選んだ。
『ごめん。セレニティーの身体が心配だから……。』
キリアンはそう言って、夜会ではいつもセレニティーをエスコートしていた。
そんなある日、フィオナはキリアンとセレニティーが濃厚な口づけを交わしているのを目撃してしまう。
※ゆるふわ設定
※ご都合主義
※一話の長さがバラバラになりがち。
※お人好しヒロインと俺様ヒーローです。
※感想欄ネタバレ配慮ないのでお気をつけくださいませ。
最愛の婚約者に婚約破棄されたある侯爵令嬢はその想いを大切にするために自主的に修道院へ入ります。
ひよこ麺
恋愛
ある国で、あるひとりの侯爵令嬢ヨハンナが婚約破棄された。
ヨハンナは他の誰よりも婚約者のパーシヴァルを愛していた。だから彼女はその想いを抱えたまま修道院へ入ってしまうが、元婚約者を誑かした女は悲惨な末路を辿り、元婚約者も……
※この作品には残酷な表現とホラーっぽい遠回しなヤンデレが多分に含まれます。苦手な方はご注意ください。
また、一応転生者も出ます。
あなたへの想いを終わりにします
四折 柊
恋愛
シエナは王太子アドリアンの婚約者として体の弱い彼を支えてきた。だがある日彼は視察先で倒れそこで男爵令嬢に看病される。彼女の献身的な看病で医者に見放されていた病が治りアドリアンは健康を手に入れた。男爵令嬢は殿下を治癒した聖女と呼ばれ王城に招かれることになった。いつしかアドリアンは男爵令嬢に夢中になり彼女を正妃に迎えたいと言い出す。男爵令嬢では妃としての能力に問題がある。だからシエナには側室として彼女を支えてほしいと言われた。シエナは今までの献身と恋心を踏み躙られた絶望で彼らの目の前で自身の胸を短剣で刺した…………。(全13話)
いつまでも変わらない愛情を与えてもらえるのだと思っていた
奏千歌
恋愛
[ディエム家の双子姉妹]
どうして、こんな事になってしまったのか。
妻から向けられる愛情を、どうして疎ましいと思ってしまっていたのか。
知らぬが花
鳥柄ささみ
恋愛
「ライラ・アーデ嬢。申し訳ないが、キミとの婚約は破棄させてもらう」
もう何度目かわからないやりとりにライラはショックを受けるも、その場では大人しく受け入れる。
これでもう婚約破棄と婚約解消あわせて十回目。
ライラは自分に非があるのではと自分を責めるも、「お義姉様は何も悪くありません。相手の見る目がないのです」と義弟であるディークハルトにいつも慰められ、支えられていた。
いつもライラに親身になって肯定し、そばにいてくれるディークハルト。
けれど、ある日突然ディークハルトの訃報が入ってくる。
大切な義弟を失い、泣き崩れて塞ぎ込むライラ。
そんなライラがやっと立ち直ってきて一年後、とある人物から縁談の話がやってくるのだった。
王家の面子のために私を振り回さないで下さい。
しゃーりん
恋愛
公爵令嬢ユリアナは王太子ルカリオに婚約破棄を言い渡されたが、王家によってその出来事はなかったことになり、結婚することになった。
愛する人と別れて王太子の婚約者にさせられたのに本人からは避けされ、それでも結婚させられる。
自分はどこまで王家に振り回されるのだろう。
国王にもルカリオにも呆れ果てたユリアナは、夫となるルカリオを蹴落として、自分が王太女になるために仕掛けた。
実は、ルカリオは王家の血筋ではなくユリアナの公爵家に正統性があるからである。
ユリアナとの結婚を理解していないルカリオを見限り、愛する人との結婚を企んだお話です。
婚約破棄寸前だった令嬢が殺されかけて眠り姫となり意識を取り戻したら世界が変わっていた話
ひよこ麺
恋愛
シルビア・ベアトリス侯爵令嬢は何もかも完璧なご令嬢だった。婚約者であるリベリオンとの関係を除いては。
リベリオンは公爵家の嫡男で完璧だけれどとても冷たい人だった。それでも彼の幼馴染みで病弱な男爵令嬢のリリアにはとても優しくしていた。
婚約者のシルビアには笑顔ひとつ向けてくれないのに。
どんなに尽くしても努力しても完璧な立ち振る舞いをしても振り返らないリベリオンに疲れてしまったシルビア。その日も舞踏会でエスコートだけしてリリアと居なくなってしまったリベリオンを見ているのが悲しくなりテラスでひとり夜風に当たっていたところ、いきなり何者かに後ろから押されて転落してしまう。
死は免れたが、テラスから転落した際に頭を強く打ったシルビアはそのまま意識を失い、昏睡状態となってしまう。それから3年の月日が流れ、目覚めたシルビアを取り巻く世界は変っていて……
※正常な人があまりいない話です。
(完結)その女は誰ですか?ーーあなたの婚約者はこの私ですが・・・・・・
青空一夏
恋愛
私はシーグ侯爵家のイルヤ。ビドは私の婚約者でとても真面目で純粋な人よ。でも、隣国に留学している彼に会いに行った私はそこで思いがけない光景に出くわす。
なんとそこには私を名乗る女がいたの。これってどういうこと?
婚約者の裏切りにざまぁします。コメディ風味。
※この小説は独自の世界観で書いておりますので一切史実には基づきません。
※ゆるふわ設定のご都合主義です。
※元サヤはありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる