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第十五話(エレナ視点)
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「ヨシュア様ぁ! ヨシュア様!」
「エレナ、走らなくてもいいぞ。危ないから」
「きゃっ……!」
何もないところで転ぶ演技にも磨きがかかりましたね。
男の人の腕が届くギリギリを見定めて、飛び込む――昔は何度か失敗して膝を打ったりしたものです。
それはそれで、心配してもらえるのでアリなのですが。
「ご、ごめんなさい。わたくしったら、いつもドジで……。ヨシュア様の腕、とても逞しいですわ」
「大丈夫だよ。俺が君を守ってやる。君は何も心配しなくて良いんだ」
なんで、どの男も大抵「守る」って言うのでしょう。そう言ったら女が喜ぶってマニュアルでも出回っているのでしょうか……。
「でもぉ、アリシア姉様に悪い気もしてきましたわ。随分と落ち込んでいましたからぁ」
「ははっ、あんな詰まらない女のことなんて、君が気に病む必要はないぞ。正式に俺の婚約者になったんだ。何か文句言われたら、俺が説教してやる」
この男、本当にクズですわね。
自分が婚約破棄した相手に説教なんて――恥というものを知らないのでしょうか?
ベタベタ触らないでくださる? わたくし、そんな安い女ではありませんの。
もう限界ですわ。ちょっと早いですが終わりにしましょう……。
ビンセントたちも準備は出来ていると思いますし。
◆ ◆ ◆
会食を終えたあと、わたくしはワザと目立つ場所にハンカチを落として帰りました。
あのヨシュアという男がどれだけ鈍感でも馬車に届けに来るくらいはするでしょう。
――遅いですね。まだ気付かないのですか。
「エレナ様~~、来られましたよ~~」
こっそりと外の様子を確認していたシーラがヨシュアがこちらに来ていることを教えてくれました。
さて、大きな声を出すのは嫌なのですが――。
「ったく! 気持ち悪いんですよ! ことある毎にベタベタと触ってきて、臭い息を吹きかけてくるなんて!」
「自分のこと格好いいと、勘違いしてるのかやたらとキメ顔とか見せてきますし、笑いを堪えるこちらの身にもなって欲しいですわ! ちょっと、感じを良くすると馬鹿犬みたいに尻尾を振って! 頭の中身は空っぽのクセに性欲だけは人一倍ですのね……!」
「騙すのは簡単でしたが、ヨシュア様はハズレでしたわ。姉様のことをつまらないとか仰っていましたが、あの男の方が中身も頭も空っぽで余程つまらない男でしたから!」
九割方、本音を言ってやりました。
本当に腹が立っていましたので。
ここからの彼は傑作でしたね……。一人で激怒して、わたくしを罵り、そしてチャルスキー侯爵が外に出てくるまで間抜けな顔を晒していたのですから。
案の定、父親であるチャルスキー侯爵に怒られるヨシュア。
当然です。わたくし、侯爵にも気に入られるために顔合わせのときから色々としていたのですから。彼がわたくしの味方になってくれるのは計算済でしたわ。
「……やっぱり、ハズレ男ですね。これくらいで取り乱すんだもの」
「――この女!」
「「――っ!?」」
一発だけ、殴らせて差し上げますわ。
特別サービスですが、この一発は高くつきますよ。
あなた、わたくしの顔を叩いたのですから、無事でいられると思わないでくださいね。
「ヨシュア! 貴様というやつは! 女性に手を上げるとは何事だ! こんな短気なバカ息子だとは思わなかったぞ!」
「くっ……!」
必ず復讐してやるという顔をしていますね。
悪いですけど、復讐する側はこちらです。
そうやって、この方に意識を向けていたのですが――。
「エレナお嬢様、アルフォンス殿下がアリシアお嬢様に求婚されたようです」
警戒すべき相手が二人に増えてしまいました。
アルフォンス殿下ですか……。姉様が昔、川で溺れていたのを助けていましたっけ。
とっくに婚約していたと思っていましたからノーマークでしたわ――。
「エレナ、走らなくてもいいぞ。危ないから」
「きゃっ……!」
何もないところで転ぶ演技にも磨きがかかりましたね。
男の人の腕が届くギリギリを見定めて、飛び込む――昔は何度か失敗して膝を打ったりしたものです。
それはそれで、心配してもらえるのでアリなのですが。
「ご、ごめんなさい。わたくしったら、いつもドジで……。ヨシュア様の腕、とても逞しいですわ」
「大丈夫だよ。俺が君を守ってやる。君は何も心配しなくて良いんだ」
なんで、どの男も大抵「守る」って言うのでしょう。そう言ったら女が喜ぶってマニュアルでも出回っているのでしょうか……。
「でもぉ、アリシア姉様に悪い気もしてきましたわ。随分と落ち込んでいましたからぁ」
「ははっ、あんな詰まらない女のことなんて、君が気に病む必要はないぞ。正式に俺の婚約者になったんだ。何か文句言われたら、俺が説教してやる」
この男、本当にクズですわね。
自分が婚約破棄した相手に説教なんて――恥というものを知らないのでしょうか?
ベタベタ触らないでくださる? わたくし、そんな安い女ではありませんの。
もう限界ですわ。ちょっと早いですが終わりにしましょう……。
ビンセントたちも準備は出来ていると思いますし。
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会食を終えたあと、わたくしはワザと目立つ場所にハンカチを落として帰りました。
あのヨシュアという男がどれだけ鈍感でも馬車に届けに来るくらいはするでしょう。
――遅いですね。まだ気付かないのですか。
「エレナ様~~、来られましたよ~~」
こっそりと外の様子を確認していたシーラがヨシュアがこちらに来ていることを教えてくれました。
さて、大きな声を出すのは嫌なのですが――。
「ったく! 気持ち悪いんですよ! ことある毎にベタベタと触ってきて、臭い息を吹きかけてくるなんて!」
「自分のこと格好いいと、勘違いしてるのかやたらとキメ顔とか見せてきますし、笑いを堪えるこちらの身にもなって欲しいですわ! ちょっと、感じを良くすると馬鹿犬みたいに尻尾を振って! 頭の中身は空っぽのクセに性欲だけは人一倍ですのね……!」
「騙すのは簡単でしたが、ヨシュア様はハズレでしたわ。姉様のことをつまらないとか仰っていましたが、あの男の方が中身も頭も空っぽで余程つまらない男でしたから!」
九割方、本音を言ってやりました。
本当に腹が立っていましたので。
ここからの彼は傑作でしたね……。一人で激怒して、わたくしを罵り、そしてチャルスキー侯爵が外に出てくるまで間抜けな顔を晒していたのですから。
案の定、父親であるチャルスキー侯爵に怒られるヨシュア。
当然です。わたくし、侯爵にも気に入られるために顔合わせのときから色々としていたのですから。彼がわたくしの味方になってくれるのは計算済でしたわ。
「……やっぱり、ハズレ男ですね。これくらいで取り乱すんだもの」
「――この女!」
「「――っ!?」」
一発だけ、殴らせて差し上げますわ。
特別サービスですが、この一発は高くつきますよ。
あなた、わたくしの顔を叩いたのですから、無事でいられると思わないでくださいね。
「ヨシュア! 貴様というやつは! 女性に手を上げるとは何事だ! こんな短気なバカ息子だとは思わなかったぞ!」
「くっ……!」
必ず復讐してやるという顔をしていますね。
悪いですけど、復讐する側はこちらです。
そうやって、この方に意識を向けていたのですが――。
「エレナお嬢様、アルフォンス殿下がアリシアお嬢様に求婚されたようです」
警戒すべき相手が二人に増えてしまいました。
アルフォンス殿下ですか……。姉様が昔、川で溺れていたのを助けていましたっけ。
とっくに婚約していたと思っていましたからノーマークでしたわ――。
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