16 / 17
第十六話(エレナ視点)
しおりを挟む
この国の第二王子、アルフォンス殿下がアリシア姉様に求婚――。
これは一体、どういう風の吹きまわしなのでょうか。
考えられることといえば、幼い頃に姉様が彼が溺れていたのを助けたことを感謝していて……ということくらいですが、それならばもっと早くに求婚していても、とは思います。
「十年後に結婚しようと約束したつもりだったみたいですよ。アリシアお嬢様は覚えていなかったとのことですが」
「なるほど。十年間も姉様を想い続けていたということですか。健気ですね、それはなんとも」
へぇ、アルフォンス殿下は一途なのですね。姉様のことを十年も。
その情熱が本物なら、姉様のことを任せても良いのですが……試してみますか。
「ビンセント……、アルフォンス殿下とお会いすることは出来ますか? 二人きりで、誰にも邪魔されず」
「難しいですが、何とかしましょう。古巣の秘密の連絡網を使い、呼び出してみます」
かつて、王族の護衛隊の一人だったビンセントはそのときのコネを使って、アルフォンス殿下に手紙を送ってみせると言ってくれました。
彼の有能さには助けられています……。
「よろしい。シーラ、わたくし、隣国のノルジーア王国に留学することにします。その準備を」
「え~~!? いきなり、留学ってどういうことですか~~? エレナ様~~!」
私はシーラに大国であるノルジーア王国への留学の準備を整えるように指示しました。
これには彼女も驚いているみたいですね。
留学する目的――そんなの決まっています。
「ノルジーア王国の王子と結婚するためですよ。姉様がもしもアルフォンス殿下と不仲になって危うい立場になったら、それくらいの権力を味方にしていないと助けられませんから」
「「…………」」
そうです。姉様が王族の方と結婚したとして、もしものことがあったら今のわたくしでは助けきれないかもしれません。
ならば、それ以上の権力をこちらも手に入れるしかないのです。
幸い、あちらの国の第三王子であるレオン殿下とは以前お会いして気に入られ、文通をしている仲ですから……わたくしが本気を出せば落とせなくもないでしょう。
……って、なぜ二人はさっきから黙っているのでしょう? 心なしか呆れたような顔をしているのですが――。
「……もしかして、エレナ様ってバカですか~~?」
「お嬢様の姉バカもここまで来ると、天晴としか言い様がないですね」
「な、な、なんですか!? 主に向かってその言い草!? わ、わたくしが姉様を守るために隣国の王子と結婚するのがそんなにもおかしいですか!?」
シーラとビンセントはやれやれという表情で首をコクンと振りました。
えっ? わたくしって変なのですか? だって、アルフォンス殿下が悪者になったら、そうでもしなきゃ守れないじゃないですか。
「ヨシュア様の件、アルフォンス殿下の件、それが片付いたら隣国へ留学……やれやれ、エレナお嬢様と居れば退屈とは無縁の生活が続きそうですね」
「ヨシュア様といえば、良くない動きをしているみたいですよ~~」
なんとでも言いなさい。
わたくしは、わたくしの好きなように生きますから。
アリシア姉様の幸せを邪魔する者は何人たりとも許せないのです――。
◇ ◇ ◇
あとがき(宣伝なので読み飛ばし可)
エレナ編も、もうすぐ終了します。最後までお付き合いして頂けると嬉しいです。
新連載を開始しました!
『妹に婚約者を奪われたって、お姉様が「田舎暮らしは嫌だ」って辺境伯との婚約を押しつけたんじゃないですか』
「性悪な妹」系が流行っているので、拙作もそうですが、妹が良い子のパターンを書いてみようかと。
「飽きちゃった」が口癖の姉のキャラが結構ヤバい感じで仕上がっていますので、ご興味ある方は是非!
目次の下の作者コンテンツ(アプリの方は作者ページ)から飛んで【お気に入り登録】して頂けると嬉しいです!
これは一体、どういう風の吹きまわしなのでょうか。
考えられることといえば、幼い頃に姉様が彼が溺れていたのを助けたことを感謝していて……ということくらいですが、それならばもっと早くに求婚していても、とは思います。
「十年後に結婚しようと約束したつもりだったみたいですよ。アリシアお嬢様は覚えていなかったとのことですが」
「なるほど。十年間も姉様を想い続けていたということですか。健気ですね、それはなんとも」
へぇ、アルフォンス殿下は一途なのですね。姉様のことを十年も。
その情熱が本物なら、姉様のことを任せても良いのですが……試してみますか。
「ビンセント……、アルフォンス殿下とお会いすることは出来ますか? 二人きりで、誰にも邪魔されず」
「難しいですが、何とかしましょう。古巣の秘密の連絡網を使い、呼び出してみます」
かつて、王族の護衛隊の一人だったビンセントはそのときのコネを使って、アルフォンス殿下に手紙を送ってみせると言ってくれました。
彼の有能さには助けられています……。
「よろしい。シーラ、わたくし、隣国のノルジーア王国に留学することにします。その準備を」
「え~~!? いきなり、留学ってどういうことですか~~? エレナ様~~!」
私はシーラに大国であるノルジーア王国への留学の準備を整えるように指示しました。
これには彼女も驚いているみたいですね。
留学する目的――そんなの決まっています。
「ノルジーア王国の王子と結婚するためですよ。姉様がもしもアルフォンス殿下と不仲になって危うい立場になったら、それくらいの権力を味方にしていないと助けられませんから」
「「…………」」
そうです。姉様が王族の方と結婚したとして、もしものことがあったら今のわたくしでは助けきれないかもしれません。
ならば、それ以上の権力をこちらも手に入れるしかないのです。
幸い、あちらの国の第三王子であるレオン殿下とは以前お会いして気に入られ、文通をしている仲ですから……わたくしが本気を出せば落とせなくもないでしょう。
……って、なぜ二人はさっきから黙っているのでしょう? 心なしか呆れたような顔をしているのですが――。
「……もしかして、エレナ様ってバカですか~~?」
「お嬢様の姉バカもここまで来ると、天晴としか言い様がないですね」
「な、な、なんですか!? 主に向かってその言い草!? わ、わたくしが姉様を守るために隣国の王子と結婚するのがそんなにもおかしいですか!?」
シーラとビンセントはやれやれという表情で首をコクンと振りました。
えっ? わたくしって変なのですか? だって、アルフォンス殿下が悪者になったら、そうでもしなきゃ守れないじゃないですか。
「ヨシュア様の件、アルフォンス殿下の件、それが片付いたら隣国へ留学……やれやれ、エレナお嬢様と居れば退屈とは無縁の生活が続きそうですね」
「ヨシュア様といえば、良くない動きをしているみたいですよ~~」
なんとでも言いなさい。
わたくしは、わたくしの好きなように生きますから。
アリシア姉様の幸せを邪魔する者は何人たりとも許せないのです――。
◇ ◇ ◇
あとがき(宣伝なので読み飛ばし可)
エレナ編も、もうすぐ終了します。最後までお付き合いして頂けると嬉しいです。
新連載を開始しました!
『妹に婚約者を奪われたって、お姉様が「田舎暮らしは嫌だ」って辺境伯との婚約を押しつけたんじゃないですか』
「性悪な妹」系が流行っているので、拙作もそうですが、妹が良い子のパターンを書いてみようかと。
「飽きちゃった」が口癖の姉のキャラが結構ヤバい感じで仕上がっていますので、ご興味ある方は是非!
目次の下の作者コンテンツ(アプリの方は作者ページ)から飛んで【お気に入り登録】して頂けると嬉しいです!
76
あなたにおすすめの小説
美形揃いの王族の中で珍しく不細工なわたしを、王子がその顔で本当に王族なのかと皮肉ってきたと思っていましたが、実は違ったようです。
ふまさ
恋愛
「──お前はその顔で、本当に王族なのか?」
そう問いかけてきたのは、この国の第一王子──サイラスだった。
真剣な顔で問いかけられたセシリーは、固まった。からかいや嫌味などではない、心からの疑問。いくら慣れたこととはいえ、流石のセシリーも、カチンときた。
「…………ぷっ」
姉のカミラが口元を押さえながら、吹き出す。それにつられて、広間にいる者たちは一斉に笑い出した。
当然、サイラスがセシリーを皮肉っていると思ったからだ。
だが、真実は違っていて──。
(完)お姉様、婚約者を取り替えて?ーあんなガリガリの幽霊みたいな男は嫌です(全10話)
青空一夏
恋愛
妹は人のものが常に羨ましく盗りたいタイプ。今回は婚約者で理由は、
「私の婚約者は幽霊みたいに青ざめた顔のガリガリのゾンビみたい! あんな人は嫌よ! いくら領地経営の手腕があって大金持ちでも絶対にいや!」
だそうだ。
一方、私の婚約者は大金持ちではないが、なかなかの美男子だった。
「あのガリガリゾンビよりお姉様の婚約者のほうが私にぴったりよ! 美男美女は大昔から皆に祝福されるのよ?」と言う妹。
両親は妹に甘く私に、
「お姉ちゃんなのだから、交換してあげなさい」と言った。
私の婚約者は「可愛い妹のほうが嬉しい」と言った。妹は私より綺麗で可愛い。
私は言われるまま妹の婚約者に嫁いだ。彼には秘密があって……
魔法ありの世界で魔女様が最初だけ出演します。
⸜🌻⸝姉の夫を羨ましがり、悪巧みをしかけようとする妹の自業自得を描いた物語。とことん、性格の悪い妹に胸くそ注意です。ざまぁ要素ありですが、残酷ではありません。
タグはあとから追加するかもしれません。
はずれのわたしで、ごめんなさい。
ふまさ
恋愛
姉のベティは、学園でも有名になるほど綺麗で聡明な当たりのマイヤー伯爵令嬢。妹のアリシアは、ガリで陰気なはずれのマイヤー伯爵令嬢。そう学園のみなが陰であだ名していることは、アリシアも承知していた。傷付きはするが、もう慣れた。いちいち泣いてもいられない。
婚約者のマイクも、アリシアのことを幽霊のようだの暗いだのと陰口をたたいている。マイクは伯爵家の令息だが、家は没落の危機だと聞く。嫁の貰い手がないと家の名に傷がつくという理由で、アリシアの父親は持参金を多めに出すという条件でマイクとの婚約を成立させた。いわば政略結婚だ。
こんなわたしと結婚なんて、気の毒に。と、逆にマイクに同情するアリシア。
そんな諦めにも似たアリシアの日常を壊し、救ってくれたのは──。
治癒魔法で恋人の傷を治したら、「化け物」と呼ばれ故郷から追放されてしまいました
山科ひさき
恋愛
ある日治癒魔法が使えるようになったジョアンは、化け物呼ばわりされて石を投げられ、町から追い出されてしまう。彼女はただ、いまにも息絶えそうな恋人を助けたかっただけなのに。
生きる希望を失った彼女は、恋人との思い出の場所で人生の終わりを迎えようと決める。
【完結】義家族に婚約者も、家も奪われたけれど幸せになります〜義妹達は華麗に笑う
鏑木 うりこ
恋愛
お姉様、お姉様の婚約者、私にくださらない?地味なお姉様より私の方がお似合いですもの!
お姉様、お姉様のお家。私にくださらない?お姉様に伯爵家の当主なんて務まらないわ
お母様が亡くなって喪も明けないうちにやってきた新しいお義母様には私より一つしか違わない双子の姉妹を連れて来られました。
とても美しい姉妹ですが、私はお義母様と義妹達に辛く当たられてしまうのです。
この話は特殊な形で進んで行きます。表(ベアトリス視点が多い)と裏(義母・義妹視点が多い)が入り乱れますので、混乱したら申し訳ないですが、書いていてとても楽しかったです。
初耳なのですが…、本当ですか?
あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た!
でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。
お姉様は嘘つきです! ~信じてくれない毒親に期待するのをやめて、私は新しい場所で生きていく! と思ったら、黒の王太子様がお呼びです?
朱音ゆうひ@11/5受賞作が発売されます
恋愛
男爵家の令嬢アリシアは、姉ルーミアに「悪魔憑き」のレッテルをはられて家を追い出されようとしていた。
何を言っても信じてくれない毒親には、もう期待しない。私は家族のいない新しい場所で生きていく!
と思ったら、黒の王太子様からの招待状が届いたのだけど?
別サイトにも投稿してます(https://ncode.syosetu.com/n0606ip/)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる