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最終話(エレナ視点)
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ヨシュアは思った以上に馬鹿でした。
わたくしへの恨みをわたくしにぶつけるものかと思いきや、何とアリシア姉様にぶつけようとしたらしいのです。
しかも、ビンセントからの報告によると……アルフォンス殿下の護衛が姉様の傍らにいたときに暴力まで振るおうとしていたとのこと。
万死に値します。わたくしだけでなく、姉様にも手を上げようとしたなんて。
アルフォンス殿下に関しては姉様に護衛をきちんとつけた事に関しては評価しましょう。
アリシア姉様を大事にするつもりはあるみたいですね。
「……それで、ヨシュアは廃嫡。当然でしょうね。王族を敵に回したのですから。チャルスキー侯爵も息子を切り捨てるのに躊躇はしない」
「でもでも~~。バカ息子さんは、エレナ様に果たし状を送っていますよね~。来ないと屋敷を燃やすって~~」
廃嫡したヨシュアは今度はわたくしに対して怒りの矛先を向けます。
そして、たちの悪い連中との関わりを仄めかすような文章を添えて、わたくしを人気のない所に呼び出そうとしたのです。
まさか、家を燃やすなんて、馬鹿な脅迫をするなんて――。
「余裕がなくなっているんでしょうね。今まで自分の思いどおりにならないことがなかっただけに」
「どうでもいいです。彼には廃嫡など生ぬるいと感じるだけの罰を与えるだけですから」
「呼び出しに応じるのですか?」
「当然ですわ。わざわざ人気のない所に来てくれるのですから。望むところじゃないですか」
わたくしはビンセントの言葉を肯定します。
最初からヨシュアには然るべき罰を与えなくては気が済みませんでした。
あのまま放置していたら、アリシア姉様に平気で暴力を振るう夫になっていたかもしれないのです。
許せるはずがありません――。
「がはっ――。な、なぜ? 俺が兵隊たちを集めたことが――」
ビンセントとシーラによって一瞬で始末されたヨシュアの集めた雑兵たち。
ヨシュア自身も、ビンセントに腹を殴られて膝をついて戦意喪失しかけております。
ビンセントは怪我をして一線を退いたとはいえ、元王族の護衛。
シーラもよく分からないですが、謎の老人に鍛えられて強くなったとか言っています。
町のゴロツキなど一蹴出来るくらいの武力は持ち合わせているのです。
「これで、あなたの拠り所はなくなった。権力も失った。さて、あなたが脅迫して黙らせていた方々はどんな告白をしてくれるでしょう?」
「え、エレナ! お前さえ、お前さえ、いなければ!」
血走った目でわたくしを睨むヨシュアは立ち上がり、こちらに向かって突進してきます。
ビンセントが動こうとしましたので、わたくしは彼を手で制しました。
「――っ!?」
クルンと一回転してヨシュアはわたくしに投げられました。
普段から男性を相手取ってこんなことをしているのですから、護身術くらい覚えていますよ。
あなたくらい投げられなくてどうしますか……。
「わたくしは優しいですから。一発殴られた借りは一発投げ飛ばしたことで返したことにして差し上げます。ただ、あなたの罪が明るみに出たとき、あなたが貴族のままでいられるのかは保障しませんが」
「く、クソッ! 俺が何したって言うんだよ! へぶぁっ――!」
「あなたはアリシア姉様を傷つけようとした。わたくしがあなたに制裁を加えるのに十分すぎる理由です」
わたくしは何やらブツブツ言われているヨシュア様の腹を蹴飛ばして、彼に制裁を加える理由を話します。
これで、彼はもはや無力でしょう。これから先、罪を問われて処刑されるか、それとも……。
「い、一発で返したって言ったじゃないか……。へぐっ――」
「あら、知りませんの? 女は嘘をつくものですわ。――だからこそ、美しくあろうとするのです」
もう一度、男らしくない文句を垂れるヨシュアを蹴り飛ばして、わたくしは帰りました。
最後にもう一つ仕事がありましたので――。
◆ ◆ ◆
「姉のアリシアは真面目でつまらない方ですわぁ。わたくしなら、アルフォンス殿下をきっと幸せにして差し上げます」
「ふぅ、そんなことは知っている。だから好きなのだ」
「へぇ……」
アルフォンス殿下はビンセントが届けた手紙に従って会いに来てくださいました。護衛の方を数人連れて……。
この方はわたくしが自らの魅力を十分に引き出して甘えてみても眉一つ動かしません。
……それが当然なのですが、それが新鮮に感じるとは世も末ですね。
「しかしながら殿下。姉が王子の婚約者になると嫉妬や羨望から、嫌がらせをされたりするかもしれませんし、精神的な重圧に姉が耐えられないかもしれませんわ」
「ふむ……」
「わたくしを婚約者にすれば、誰もが納得できるように振る舞ってみせるとお約束しましょう」
これは事実です。
アリシア姉様は精神的に弱いところもあります。
これから彼女は様々な嫉妬や羨望の相手をせねばならないでしょう……。
「それがどうした? そんなもの何を犠牲にしたってアリシアを守るに決まっているだろう! 君に言われるまでもない!」
それが本音なのでしたら。
その言葉に嘘がないのでしたら。
わたくしはアリシア姉様の幸せを確信することが出来ます。
信用して、いいんですね? あなたに姉様をお任せしても良いのですね……。
「ふふっ、そうですか。……殿下、合格です。しかしながら、姉を不幸にしたらわたくしはあなたを許しません」
「望むところだ。……だが、君は随分と窮屈な生き方をしているんだね」
「好きでやっていますから。窮屈なんて感じたこともありませんわ」
晴れやかな気分でした。
アリシア姉様、どうかいつまでもアルフォンス殿下とお幸せに。
ですが、万が一のことがありましたら、わたくしにお任せくださいな。
わたくしは姉様のためなら世界を手に入れることも厭わないですから――。
わたくしへの恨みをわたくしにぶつけるものかと思いきや、何とアリシア姉様にぶつけようとしたらしいのです。
しかも、ビンセントからの報告によると……アルフォンス殿下の護衛が姉様の傍らにいたときに暴力まで振るおうとしていたとのこと。
万死に値します。わたくしだけでなく、姉様にも手を上げようとしたなんて。
アルフォンス殿下に関しては姉様に護衛をきちんとつけた事に関しては評価しましょう。
アリシア姉様を大事にするつもりはあるみたいですね。
「……それで、ヨシュアは廃嫡。当然でしょうね。王族を敵に回したのですから。チャルスキー侯爵も息子を切り捨てるのに躊躇はしない」
「でもでも~~。バカ息子さんは、エレナ様に果たし状を送っていますよね~。来ないと屋敷を燃やすって~~」
廃嫡したヨシュアは今度はわたくしに対して怒りの矛先を向けます。
そして、たちの悪い連中との関わりを仄めかすような文章を添えて、わたくしを人気のない所に呼び出そうとしたのです。
まさか、家を燃やすなんて、馬鹿な脅迫をするなんて――。
「余裕がなくなっているんでしょうね。今まで自分の思いどおりにならないことがなかっただけに」
「どうでもいいです。彼には廃嫡など生ぬるいと感じるだけの罰を与えるだけですから」
「呼び出しに応じるのですか?」
「当然ですわ。わざわざ人気のない所に来てくれるのですから。望むところじゃないですか」
わたくしはビンセントの言葉を肯定します。
最初からヨシュアには然るべき罰を与えなくては気が済みませんでした。
あのまま放置していたら、アリシア姉様に平気で暴力を振るう夫になっていたかもしれないのです。
許せるはずがありません――。
「がはっ――。な、なぜ? 俺が兵隊たちを集めたことが――」
ビンセントとシーラによって一瞬で始末されたヨシュアの集めた雑兵たち。
ヨシュア自身も、ビンセントに腹を殴られて膝をついて戦意喪失しかけております。
ビンセントは怪我をして一線を退いたとはいえ、元王族の護衛。
シーラもよく分からないですが、謎の老人に鍛えられて強くなったとか言っています。
町のゴロツキなど一蹴出来るくらいの武力は持ち合わせているのです。
「これで、あなたの拠り所はなくなった。権力も失った。さて、あなたが脅迫して黙らせていた方々はどんな告白をしてくれるでしょう?」
「え、エレナ! お前さえ、お前さえ、いなければ!」
血走った目でわたくしを睨むヨシュアは立ち上がり、こちらに向かって突進してきます。
ビンセントが動こうとしましたので、わたくしは彼を手で制しました。
「――っ!?」
クルンと一回転してヨシュアはわたくしに投げられました。
普段から男性を相手取ってこんなことをしているのですから、護身術くらい覚えていますよ。
あなたくらい投げられなくてどうしますか……。
「わたくしは優しいですから。一発殴られた借りは一発投げ飛ばしたことで返したことにして差し上げます。ただ、あなたの罪が明るみに出たとき、あなたが貴族のままでいられるのかは保障しませんが」
「く、クソッ! 俺が何したって言うんだよ! へぶぁっ――!」
「あなたはアリシア姉様を傷つけようとした。わたくしがあなたに制裁を加えるのに十分すぎる理由です」
わたくしは何やらブツブツ言われているヨシュア様の腹を蹴飛ばして、彼に制裁を加える理由を話します。
これで、彼はもはや無力でしょう。これから先、罪を問われて処刑されるか、それとも……。
「い、一発で返したって言ったじゃないか……。へぐっ――」
「あら、知りませんの? 女は嘘をつくものですわ。――だからこそ、美しくあろうとするのです」
もう一度、男らしくない文句を垂れるヨシュアを蹴り飛ばして、わたくしは帰りました。
最後にもう一つ仕事がありましたので――。
◆ ◆ ◆
「姉のアリシアは真面目でつまらない方ですわぁ。わたくしなら、アルフォンス殿下をきっと幸せにして差し上げます」
「ふぅ、そんなことは知っている。だから好きなのだ」
「へぇ……」
アルフォンス殿下はビンセントが届けた手紙に従って会いに来てくださいました。護衛の方を数人連れて……。
この方はわたくしが自らの魅力を十分に引き出して甘えてみても眉一つ動かしません。
……それが当然なのですが、それが新鮮に感じるとは世も末ですね。
「しかしながら殿下。姉が王子の婚約者になると嫉妬や羨望から、嫌がらせをされたりするかもしれませんし、精神的な重圧に姉が耐えられないかもしれませんわ」
「ふむ……」
「わたくしを婚約者にすれば、誰もが納得できるように振る舞ってみせるとお約束しましょう」
これは事実です。
アリシア姉様は精神的に弱いところもあります。
これから彼女は様々な嫉妬や羨望の相手をせねばならないでしょう……。
「それがどうした? そんなもの何を犠牲にしたってアリシアを守るに決まっているだろう! 君に言われるまでもない!」
それが本音なのでしたら。
その言葉に嘘がないのでしたら。
わたくしはアリシア姉様の幸せを確信することが出来ます。
信用して、いいんですね? あなたに姉様をお任せしても良いのですね……。
「ふふっ、そうですか。……殿下、合格です。しかしながら、姉を不幸にしたらわたくしはあなたを許しません」
「望むところだ。……だが、君は随分と窮屈な生き方をしているんだね」
「好きでやっていますから。窮屈なんて感じたこともありませんわ」
晴れやかな気分でした。
アリシア姉様、どうかいつまでもアルフォンス殿下とお幸せに。
ですが、万が一のことがありましたら、わたくしにお任せくださいな。
わたくしは姉様のためなら世界を手に入れることも厭わないですから――。
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