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第二話
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「はぁ......」
私は途方に暮れていました。
啖呵を切って出て行ったはいいものの、今夜の宿さえとんと心当たりがありません。オッズ卿は日頃から、私にほとんど現金を与えてくれませんでした。私だって、ただ家事をこなしていただけでなく、あちこち飛び回って彼のために関係づくりに勤しんだりしていたのですがね。
「これから、どうしましょうか」
野宿を覚悟しながら、とぼとぼと街をさまよっていたその時。
突然背中から、私の名前を呼ぶ声がしました。
「リゼさん!?リゼさんじゃないか!?」
眼鏡をかけ、高級そうな服を着た青年。
こんな知り合いいましたっけ、と首をかしげながら、その顔をまじまじと見ていると。
「......まさか、王子様?」
その顔は、昔雑誌か何かで見た、この国の第三王子様の顔のように見えました。貴族の婚約者といえども、簡単に皇族にお会いすることはできないのです。
「まぁ、そうなんだけど。流石に覚えてないよね。僕です、ライル。子供のころ、よく一緒に遊んでた」
王子様は苦笑いをして、そう言いました。
ライル。一生懸命、記憶をたどります。
「......あぁ、ライル!?いっつもかくれんぼしてた!」
「そう、そう!覚えててくれたんだ、嬉しいなぁ」
私が子供のころ、学校から帰る時間になると、いつも誰かに追われているように逃げ回っている少年と出くわしました。
興味を持って話しかけてみると、友達とかくれんぼをしている、というので、とっておきの隠れ場所を教えてあげました。当時私は友達がいなかったので、暇つぶしにその場所で彼と他愛のない話をしたりしていました。
身なりはいいのに、毎日毎日かくれんぼ。変わった子だなぁ、とは思っていましたが、まさか王子様だったとは。
「ところで、どうしたの、こんなところで。買い物?」
「あー、いえ。実は......」
昔を思い出して気が緩んだのか、私はついつい、あれこれ王子様に打ち明けてしまいました。
彼は私の話を最後まで聞くと、にっこり微笑んで言いました。
「それなら、うちにいるといい。リゼさんには恩があるからね」
私は途方に暮れていました。
啖呵を切って出て行ったはいいものの、今夜の宿さえとんと心当たりがありません。オッズ卿は日頃から、私にほとんど現金を与えてくれませんでした。私だって、ただ家事をこなしていただけでなく、あちこち飛び回って彼のために関係づくりに勤しんだりしていたのですがね。
「これから、どうしましょうか」
野宿を覚悟しながら、とぼとぼと街をさまよっていたその時。
突然背中から、私の名前を呼ぶ声がしました。
「リゼさん!?リゼさんじゃないか!?」
眼鏡をかけ、高級そうな服を着た青年。
こんな知り合いいましたっけ、と首をかしげながら、その顔をまじまじと見ていると。
「......まさか、王子様?」
その顔は、昔雑誌か何かで見た、この国の第三王子様の顔のように見えました。貴族の婚約者といえども、簡単に皇族にお会いすることはできないのです。
「まぁ、そうなんだけど。流石に覚えてないよね。僕です、ライル。子供のころ、よく一緒に遊んでた」
王子様は苦笑いをして、そう言いました。
ライル。一生懸命、記憶をたどります。
「......あぁ、ライル!?いっつもかくれんぼしてた!」
「そう、そう!覚えててくれたんだ、嬉しいなぁ」
私が子供のころ、学校から帰る時間になると、いつも誰かに追われているように逃げ回っている少年と出くわしました。
興味を持って話しかけてみると、友達とかくれんぼをしている、というので、とっておきの隠れ場所を教えてあげました。当時私は友達がいなかったので、暇つぶしにその場所で彼と他愛のない話をしたりしていました。
身なりはいいのに、毎日毎日かくれんぼ。変わった子だなぁ、とは思っていましたが、まさか王子様だったとは。
「ところで、どうしたの、こんなところで。買い物?」
「あー、いえ。実は......」
昔を思い出して気が緩んだのか、私はついつい、あれこれ王子様に打ち明けてしまいました。
彼は私の話を最後まで聞くと、にっこり微笑んで言いました。
「それなら、うちにいるといい。リゼさんには恩があるからね」
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