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第三話
しおりを挟む「......あの頃、僕は教育係から逃げてたんだ」
王子様は私に紅茶を出しながら、笑いました。
「皆と同じように学校に行って、同じように遊んで、同じように過ごしたかった。でも僕は学校に行くことすら許されずに、狭い城の中で勉強ばっかりさせられてた。だから、毎日のように脱走しては捕まって、を繰り返してたんだ」
「そうだったんですか」
「でも、リゼさんが声をかけてくれた。リゼさんが教えてくれた隠れ場所、本当に見つからなくて助かったよ。でも本当にありがたかったのは、僕と他愛もない話をしてくれたこと。ずっと、友達のいない僕のそばにいてくれたこと。リゼさんにとっては幼少期の思い出の一つにすぎないだろうけど、僕にとって貴方は、命の恩人みたいな存在なんだ」
そうだったんですか、と私は繰り返して、紅茶をすすりました。高級そうな味がします。
「いつまでもいていいよ。この屋敷は、僕ひとりには広すぎる」
王子様の話は、何だかピンときませんでした。
記憶の中のライルと、今私の前にいる彼の姿が、どうしても一致しないのです。私が王子様の命の恩人だなんて、理解が追いつきません。
でも、彼の優しさは、紅茶の熱と一緒に、じんわりと私の胸に染み渡っていきました。
「......僕、持て余されてるんだよね」
ぽつりと、彼が呟きました。
「勉強、さぼっちゃったから。王様は優秀な兄貴たちがなるだろうし、他所の国にも出せやしない。だからこの屋敷をもらって、ほっぽり出されてるんだ、今」
彼の意図がつかめず、私は黙っていることにします。
「僕なら、リゼさんを置いて、他の女のところに行ったりしないよ。貴方だけを、ずっと見てる。ずっと、愛してる」
「......えっ?」
「ねぇ、僕と結婚しない?多分、誰も文句言わないよ」
私は困惑しました。きっと、とても狼狽して見えたことでしょう。
王子様も、言ってしまってから、後悔したように目を伏せました。
「なんてね、ごめん。まずはゆっくり、落ち着くことが先だよね。この部屋は、リゼさんが自由に使っていいから」
気を取り直したように彼は笑って、部屋を出ていきました。
残された私は、先ほど彼に言われた言葉の意味を、ぐるぐる、ぐるぐる考えていました。
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