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第六章
第二話
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「幼い頃は年上が大人に見えるもんだからね」
「そうだね」
でもどうして、突然そんなことを聞きたがるのだろう。
「なんで、気になるの?」
「……別になんでもないよ。どんな性格の男だったの?」
「え? あー、基本的にはみんな優しくて、リーダーシップがあったり、とかかな」
「リーダーシップ……」
「そう、後イケメン」
「イケメン」
紫ノくんは鸚鵡返しして、眉を顰めた。
本当に、どうしてこんなことを突然聞いてきたのだろう。
すると紫ノくんは落ち込んだような声を出した。
「僕、何一つ持ってないけど」
「ええ、確かに紫ノくん、リーダーシップがあるかと言われれば疑問だけど、優しさはたくさんあるじゃん。後紫ノくん、顔、めちゃくちゃイケメンなの、忘れちゃダメだよ。もはや嫌味になるからね」
僕がそう言うと、紫ノくんは曖昧に頷いた。
「顔のことはいいんだよ。それに、僕が優しいのは日生くん限定ね」
「うん。でも大切な人を大切にできるだけで良いんじゃないかな?」
「……そうだね」
「やっぱり、助けてもらったりすることに弱かったね」
俺は思い出す。
高田先輩は誰にでも優しくて、俺がトランペットでうまく音を出せず、ギリギリまで練習していたら、俺にアドバイスをくれながら一緒に練習してくれたりした。俺が納得できる音を出せるまで。
そしてできたら、頭を撫でてくれたのだ。よく頑張ったな、と。
でも高田先輩には中学一年生からの彼女がいた。仲が良くて、帰り道歩いているところを見たことがあったけど、おしどり夫婦、と言った感じで、幸せそうだった。俺の恋は自覚する前に散った。
そして二人目の、生徒会会計の伊藤先輩。
あの人は、悪戯な人だった。今考えれば、多分俺と同じゲイだったのだろうと思う。優しかったり、優しくなかったり。記憶を振り返って思うのは、俺で遊んでいたのだろうというところだった。でも、決して悪いだけの人じゃなくて、俺が文化祭の用意にあっちこっち行って仕事していたら、必ず飲み物を好きなものでいいと、選ばせて飲ませてくれた。その間、なんでもない話をする時間が好きだったなと思い出す。
そして前田先輩。大学生活、友達もいない俺に、初めて優しくしてくれた人。
でも、考えてもみれば、誰を好きになっても、心には紫ノくんがいたような気がした。いつか会いたいと、ずっと思っていた。
そして、再会して、俺は幸せな恋ができた。
「紫ノくんが、俺のこと諦めないでくれてよかった」
「諦めるわけないよ。言ったでしょ、日生くんは僕の全てなんだよ」
首元に顔を埋められて、紫ノくんの吐息がかかった。くすぐったくて、俺は肩を震わせる。
「重いなあ」
「僕に沈んだらいいよ、受け止めてあげる」
俺の身体を抱きしめる力が強くなる。本当に沈んでいるような気分になった。
「それにしても、紫ノくんは高校生の時、何かなかったの?」
「何にもないね。好きになった人もいなければ、友達になった人もいない」
「前もそう言ってたね」
「うん」
「紫ノくんがそれで良いんなら、なんでも良いんだけどね」
俺がそう言えば、紫ノくんは愛おしそうに唇をなぞってくるから、俺たちは一度、キスをした。
そして視線を絡ませて、微笑み合う。
「ずっと、どうやったら日生くんにもう一度会えるかだけ考えてたよ」
「電話してくれたら良かったのに」
「引っ越しと一緒に、電話番号変わってた」
俺は目を見開いた。そう言うことか、と。
「ハガキに自分の家の番号は、書けないから」
「確かにそうだ」
「だから、本当に運任せだったんだ。だから電車で見つけた時、すごく嬉しかった。日生くんは気付いてなかったみたいだけど」
「ごめん」
「良いよ別に、会えただけ嬉しかったから。その日、ちょっと良いケーキ食べた」
「え、ほんと? ねえ、来年、再会祝いのケーキ作るよ」
「作れるの?」
「なんとかしたら」
「なんとかしたら」
俺が言えば、紫ノくんは鸚鵡返しする。
「この家、燃やさないでね」
「大丈夫、燃やさない」
俺が力強く頷けば、紫ノくんは頷く。
「ね、未来の話なんだけど」
「何」
「そうだね」
でもどうして、突然そんなことを聞きたがるのだろう。
「なんで、気になるの?」
「……別になんでもないよ。どんな性格の男だったの?」
「え? あー、基本的にはみんな優しくて、リーダーシップがあったり、とかかな」
「リーダーシップ……」
「そう、後イケメン」
「イケメン」
紫ノくんは鸚鵡返しして、眉を顰めた。
本当に、どうしてこんなことを突然聞いてきたのだろう。
すると紫ノくんは落ち込んだような声を出した。
「僕、何一つ持ってないけど」
「ええ、確かに紫ノくん、リーダーシップがあるかと言われれば疑問だけど、優しさはたくさんあるじゃん。後紫ノくん、顔、めちゃくちゃイケメンなの、忘れちゃダメだよ。もはや嫌味になるからね」
僕がそう言うと、紫ノくんは曖昧に頷いた。
「顔のことはいいんだよ。それに、僕が優しいのは日生くん限定ね」
「うん。でも大切な人を大切にできるだけで良いんじゃないかな?」
「……そうだね」
「やっぱり、助けてもらったりすることに弱かったね」
俺は思い出す。
高田先輩は誰にでも優しくて、俺がトランペットでうまく音を出せず、ギリギリまで練習していたら、俺にアドバイスをくれながら一緒に練習してくれたりした。俺が納得できる音を出せるまで。
そしてできたら、頭を撫でてくれたのだ。よく頑張ったな、と。
でも高田先輩には中学一年生からの彼女がいた。仲が良くて、帰り道歩いているところを見たことがあったけど、おしどり夫婦、と言った感じで、幸せそうだった。俺の恋は自覚する前に散った。
そして二人目の、生徒会会計の伊藤先輩。
あの人は、悪戯な人だった。今考えれば、多分俺と同じゲイだったのだろうと思う。優しかったり、優しくなかったり。記憶を振り返って思うのは、俺で遊んでいたのだろうというところだった。でも、決して悪いだけの人じゃなくて、俺が文化祭の用意にあっちこっち行って仕事していたら、必ず飲み物を好きなものでいいと、選ばせて飲ませてくれた。その間、なんでもない話をする時間が好きだったなと思い出す。
そして前田先輩。大学生活、友達もいない俺に、初めて優しくしてくれた人。
でも、考えてもみれば、誰を好きになっても、心には紫ノくんがいたような気がした。いつか会いたいと、ずっと思っていた。
そして、再会して、俺は幸せな恋ができた。
「紫ノくんが、俺のこと諦めないでくれてよかった」
「諦めるわけないよ。言ったでしょ、日生くんは僕の全てなんだよ」
首元に顔を埋められて、紫ノくんの吐息がかかった。くすぐったくて、俺は肩を震わせる。
「重いなあ」
「僕に沈んだらいいよ、受け止めてあげる」
俺の身体を抱きしめる力が強くなる。本当に沈んでいるような気分になった。
「それにしても、紫ノくんは高校生の時、何かなかったの?」
「何にもないね。好きになった人もいなければ、友達になった人もいない」
「前もそう言ってたね」
「うん」
「紫ノくんがそれで良いんなら、なんでも良いんだけどね」
俺がそう言えば、紫ノくんは愛おしそうに唇をなぞってくるから、俺たちは一度、キスをした。
そして視線を絡ませて、微笑み合う。
「ずっと、どうやったら日生くんにもう一度会えるかだけ考えてたよ」
「電話してくれたら良かったのに」
「引っ越しと一緒に、電話番号変わってた」
俺は目を見開いた。そう言うことか、と。
「ハガキに自分の家の番号は、書けないから」
「確かにそうだ」
「だから、本当に運任せだったんだ。だから電車で見つけた時、すごく嬉しかった。日生くんは気付いてなかったみたいだけど」
「ごめん」
「良いよ別に、会えただけ嬉しかったから。その日、ちょっと良いケーキ食べた」
「え、ほんと? ねえ、来年、再会祝いのケーキ作るよ」
「作れるの?」
「なんとかしたら」
「なんとかしたら」
俺が言えば、紫ノくんは鸚鵡返しする。
「この家、燃やさないでね」
「大丈夫、燃やさない」
俺が力強く頷けば、紫ノくんは頷く。
「ね、未来の話なんだけど」
「何」
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