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第3章 ギルド体験週間編―2日目
ギルド体験週間2日目⑧ 人形使いと俯瞰の魔眼
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「じゃあキミは『人形魔法師』で、普段のあれはキミの『魔法人形』だと言うんだな?」
「はい、そうです」
6人はオリガを先頭に移動しながら事情を聞いていた。
「動きもなめらかで、近くで接しても全く違和感が無かったが…そこまで精巧な魔法人形ができるものなのか?」
実際にその時にギルドホームで直に接したマーシャは信じられないという風に尋ねる。
「私の家は代々続く『人形師』の家系なので…私は人形師であり、人形魔法師でもあります。
さすがに触ったらわかると思いますけど、表面は特殊なゴムで覆っていますし、人間の肌の色に限りなく近づけてますから、そうそうわからないと思いますよ」
「すごいものね…じゃあ、ゲイリーの居場所がわかるのも、人形と関係があるのかしら?」
「あ、はい。ゲイリーにプレゼントした指輪には、私の魔法の糸が繋がっているんです。それをたどればゲイリーにたどり着けます。運命の赤い糸?ってやつです。えへへ」
可愛く言っても、やはりストーカーな気がしてならない。
魔法人形とは魔法具の一種で、関節部分など細部にわたる精巧な式構築によって駆動する人形のことである。どれだけ正確に式を構築できるかにもよるが、腕の良い人形師ともなれば、人間そっくりの魔法人形を作ることも可能である。
材料は色々あるが、今主流のものは木でできているものだ。木の形を変えて加工するためには、自分の魔力によって育てた木を使用しなければならない。『草木の魔法』とも呼ばれているその魔法は、魔力だけでなく触媒となる種を使わなければならないという特徴がある。とりわけ人形師の間で広く使われている、人形の材料となる種を、自らの魔力によって生み出した水によって育てる必要がある。植物が成長するためには『水』『火』『土』の3属性が必要であるが、『火』と『土』は成長には必要であるが、その後の木材加工には特に影響しない。よって、人形師になるためには、『水の魔法』が使えることが必須条件となる。
また、魔法人形の操作には糸紡ぎの妖精『ハベトロット』との契約が必要となる。ハベトロットは、使役に特定の魔力が必要なわけではないが、裁縫のスキルをハベトロットに認めてもらわなければいけないという特殊な条件が必要となる。このハベトロットとの契約に成功し、魔法人形を使って仕事をする魔法使いのことを一般に人形魔法師と呼ぶ。
ハベトロットの契約召喚によって使用できる『魔法の糸』という特殊魔法は、本人にしか見たり触ったりすることができない特殊な糸を生成する魔法である。これは人形の操作に用いれるだけでなく、服などを作ったりする時にも使用することができるので、人形魔法師以外の魔法裁縫師なども契約を行うものは多い。魔法の糸で縫った服は縫い目がなく非常に美しく、また丈夫なため人気が高い。
「そういえばあなた尋問の時も全然喋らなかったわね…ものすごい無口なのか、黙秘してるのかと思ったけど、喋れなかったのね?」
「はい…近くにいる時は私が『音の魔法』で声を変えて喋ってるんですが…あの時は言い出す前に連行されてしまったので…」
『音の魔法』は木の妖精『エコー』(木霊とも言う)を使役することで使うことができる魔法で、声を反響して大きくしたり、声色を変えたりすることができる魔法である。魔法具としても広く使われている魔法であり、木の妖精を使役するには『青の魔力』が必要である。
「何で魔法人形なんて使って正体を隠してるんですか?やっぱり人形魔法師としての腕を試すためですか?」
「いえ…あの…私ゲイリーの幼馴染なんですけど…ゲイリーから、見た目が小さくて舐められるから、変な虫が寄ってこないようにボディーガードに置いときなさいって言われて…私は大丈夫だって言うんですけど、ゲイリーってば心配性で…」
それは心配しているのではなく独占欲なのではないかと誰もが思ったが口にはしなかった。こうなってくると、オリガもゲイリーもどっちもどっちなので、もうオリガがストーカーっぽくてもどうでもよくなってくる。
だが、確かにこのオリガという女生徒は非常に可愛かった。
「同じ学年なのにあなたの事全く気付かなかったわ…」
「別に隠してるわけじゃないんですけど、オルガ(人形)の方が目立つらしくて、私記憶に残らないみたいなんです…」
その点ではゲイリーの作戦は成功していると言えるのかもしれない。
「さぁ、いよいよ学院の外に出るぞ。正門から出るのは面倒くさい。地下を通っていこう。フラン君、頼めるか?」
マーシャたちは学院の人目につかない辺りにある塀の近くに来ていた。
「わかりました」
そう言うと、フランチェスカは詠唱した。
“oPen the fiAry GATE.
(開け、妖精界の門)
in-g,rE,DIeNT = yell-OW.
(食材は黄色の魔力)
re:ciPE= DO-NUT.
(調理法は穴の開いた揚げ菓子)
1 OF the ele:MenTs, GNOME.
(四大の一つ、土の精ノームよ)
pLEAse L-END Me UR POW-ER.
(我に汝の翼を貸し与えたまえ)
SOIL-OPERATION."
(土の操作魔法)
そう言って、地面に手を付けると、塀の真下に人が一人通れるくらいの抜け道ができた。
「うむ。相変わらず素晴らしい腕前だ」
「ありがとうございます。ですが、これは初歩の魔法ですので」
『操作魔法』の中でも、自分で作り出したものではなく、自然界にあるものを操作する魔法は、魔法の中でも初歩の魔法である。使用する魔力も非常に少ない。
とは言っても、これだけの量の土を、しかも先の見えない部分を推測で操作することはそう簡単なことではない。フランチェスカは謙遜にそう言ったが、やはりフランチェスカの魔法の腕前は大したものだと言える。
ちなみに先日のルーシッドの飛行魔法実験の時にルーシッドから聞いた方法で、フランチェスカも詠唱文の短縮を行うことができていたが、今はみなが詠唱を聞いている状況だったので、不審がられないように今まで通りの詠唱を行ったのだった。
ディナカレア魔法学院は外出に関しては特に厳しい決まりはない。一応簡単な許可さえ取れば、深夜の外出や外泊に関しても特に何も言われることはない。ゆえに正門から出なかったのは、人目を避けて速やかに事を進めるためだった。
「では、ルビア君、明かりを頼む」
「わかりました」
そう言うと、ルビアは詠唱する。ルビアもフランチェスカと同様に従来通りの詠唱文だ。
"oPen the fiAry GATE.
(開け、妖精界の門)
in-g,rE,DIeNT = Re:D.
(食材は赤き魔力)
re:ciPE = Co-o-KiE.
(調理法は小さな焼き菓子)
1 OF the ele:MenTs, SALA-MANDER.
(四大の一つ、火の精サラマンダーよ)
pLEAse L-END Me UR FirR.
(我に汝の火を貸し与えたまえ)
FIRE-CREATION."
(火の生成魔法)
ルビアが火の魔法によって明かりを灯して先頭を歩き、抜け道を進む。
「さぁ、オリガ君、案内してくれ。ここから遠そうかい?」
「いえ、この糸の張り方だと歩いて数分のところにありそうです」
「そうか。よし、速やかにゲイリーを連れ戻そう」
その時だった。
『ルーシィ、キリィからコールです。繋ぎますか?』
「あ、うん。お願い」
ルーシッドは、魔法具『リムレット』から発せられる『魔力波(電波)』に反応し振動する耳につけるタイプの魔法具(いわゆるイヤホン)と、音によって振動し、その振動を式に変換する口につけるタイプの魔法具(いわゆるマイク)を開発していた。これによって、ルーシッドは手で操作することなく、エアリーと会話することができる。
「はい、キリィ?どうしたの?」
『わぁ、すごい!ホントに話せるんだね!』
「うん。何かあった?」
『実はね!私、急に魔眼が使えるようになったの!俯瞰の魔眼っていうらしいんだけど、遠く離れたところの様子が見れるようになったんだ!だから、ルーシィたちのことも見えてるよ~!』
「……へぇ…遠く離れたところが見える魔眼か…遠視の魔眼みたいな感じかな、魔眼ってそんな唐突に使えるようになるものなんだね?」
突然、予想外のことを言われて一瞬フリーズしたが、そう答えた。
『うん、なんか、アルゴスっていう妖精?なのかな?そのアルゴスっていう人がくれたんだ!』
「うーん、アルゴス…聞いたことないなぁ?」
『ほぉ、アルゴスか…アルゴスが直々に魔眼を渡すとはよほど気に入られたんじゃな』
「あ、マリーさん?アルゴス知ってるんですか?」
マリーが『アルゴス』という言葉に反応して姿を現した。
『あぁ、神位の妖精の中でもかなり力が強いやつじゃ。今世界に存在する〈魔眼〉と呼ばれるものは元々は全てこいつの能力じゃ。使役や契約に応じることはないが、適当に人に自分の能力を与えては、その様子を見て楽しんでいる変わったやつじゃ。まぁ悪いやつではないがな』
お前にだけは言われたくない、とアルゴスが言ってそうであるが、マリーは話を続ける。
『で、アルゴスは何の魔眼をくれると言っておったって?』
「『俯瞰の魔眼』らしいですよ」
『なんと…俯瞰の魔眼じゃと…そりゃまたずいぶんなものをくれたものじゃな…おい、ルーシィ、キリィに視線だけじゃなく、こっちに体ごと飛んでくるようなイメージを持てるかやってみろと言え』
「あー、キリィ?マリーさんが視線だけじゃなく、こっちに体ごと飛んでくるようなイメージをしてみろだって」
『体ごと飛んでいく?うん、やってみる!ん~~………えいっ!』
キリエが変な声を上げると、信じられないことにキリエの姿がルーシッドたちの前に表われた。しかし、それは体そのものが移動してきたわけではなく、マリーと同じような半透明の姿だった。
「えっ!?キリィ!?」
「うそっ!何で!?」
「こっ、これはどういうことだ?」
皆がキリエの姿を見て驚きをあらわにする。
『キリィ、その魔眼の能力は、ただの遠視能力ではない。〈思念体〉を作り出す能力じゃ。今の存在は私と同じような存在じゃ』
『へぇ!そうなんですね!すごいです!』
「え、なに?キリィ、魔眼使えたの?」
ルビアがマリーの説明を聞いてびっくりしてキリエに尋ねる。
『んーと、みんなと別れてから色々あって使えるようになったよ!』
「何それ、意味わかんないんだけど…」
フェリカは半ばあきれたように言った。
『キリィ、確認じゃが、私たちだけじゃなく自分本体の方の前の景色も見えているな?』
『あ、はい…確かに…不思議な感覚ですが、みんなのことも見えていますが、自分の目の前の部屋の景色も見えてます』
『それが俯瞰の魔眼と他の遠視系の魔眼との最大の違いじゃ。自分の体は動かせるな?』
『はい、動かせます』
『よし、いいぞ。キリエよ、詳しい話は後じゃ。今はこのチームの目となってやれ』
『はい、任せてください!』
「よろしくね、キリィ」
『うん、任せて!』
キリエは意気揚々と答えた。
「皆さん!あの建物です!あの建物の中に糸が入っていっています!」
オリガが立ち止まり、ある建物を指差した。それは何の変哲もない普通の建物だった。
『じゃあ、私が先に行って中の様子を見てくるよ!』
「うん、気を付けてね」
ルーシッドがそう言うと、キリエは胸を張って得意げに言う。
『大丈夫!思念体だからやられたりしないし!』
「あきれるほどに便利な能力ね…」
「何かルーシィと関わると、みんながどんどん異常になっていく気がするわ…」
「心外だなぁ…」
「はい、そうです」
6人はオリガを先頭に移動しながら事情を聞いていた。
「動きもなめらかで、近くで接しても全く違和感が無かったが…そこまで精巧な魔法人形ができるものなのか?」
実際にその時にギルドホームで直に接したマーシャは信じられないという風に尋ねる。
「私の家は代々続く『人形師』の家系なので…私は人形師であり、人形魔法師でもあります。
さすがに触ったらわかると思いますけど、表面は特殊なゴムで覆っていますし、人間の肌の色に限りなく近づけてますから、そうそうわからないと思いますよ」
「すごいものね…じゃあ、ゲイリーの居場所がわかるのも、人形と関係があるのかしら?」
「あ、はい。ゲイリーにプレゼントした指輪には、私の魔法の糸が繋がっているんです。それをたどればゲイリーにたどり着けます。運命の赤い糸?ってやつです。えへへ」
可愛く言っても、やはりストーカーな気がしてならない。
魔法人形とは魔法具の一種で、関節部分など細部にわたる精巧な式構築によって駆動する人形のことである。どれだけ正確に式を構築できるかにもよるが、腕の良い人形師ともなれば、人間そっくりの魔法人形を作ることも可能である。
材料は色々あるが、今主流のものは木でできているものだ。木の形を変えて加工するためには、自分の魔力によって育てた木を使用しなければならない。『草木の魔法』とも呼ばれているその魔法は、魔力だけでなく触媒となる種を使わなければならないという特徴がある。とりわけ人形師の間で広く使われている、人形の材料となる種を、自らの魔力によって生み出した水によって育てる必要がある。植物が成長するためには『水』『火』『土』の3属性が必要であるが、『火』と『土』は成長には必要であるが、その後の木材加工には特に影響しない。よって、人形師になるためには、『水の魔法』が使えることが必須条件となる。
また、魔法人形の操作には糸紡ぎの妖精『ハベトロット』との契約が必要となる。ハベトロットは、使役に特定の魔力が必要なわけではないが、裁縫のスキルをハベトロットに認めてもらわなければいけないという特殊な条件が必要となる。このハベトロットとの契約に成功し、魔法人形を使って仕事をする魔法使いのことを一般に人形魔法師と呼ぶ。
ハベトロットの契約召喚によって使用できる『魔法の糸』という特殊魔法は、本人にしか見たり触ったりすることができない特殊な糸を生成する魔法である。これは人形の操作に用いれるだけでなく、服などを作ったりする時にも使用することができるので、人形魔法師以外の魔法裁縫師なども契約を行うものは多い。魔法の糸で縫った服は縫い目がなく非常に美しく、また丈夫なため人気が高い。
「そういえばあなた尋問の時も全然喋らなかったわね…ものすごい無口なのか、黙秘してるのかと思ったけど、喋れなかったのね?」
「はい…近くにいる時は私が『音の魔法』で声を変えて喋ってるんですが…あの時は言い出す前に連行されてしまったので…」
『音の魔法』は木の妖精『エコー』(木霊とも言う)を使役することで使うことができる魔法で、声を反響して大きくしたり、声色を変えたりすることができる魔法である。魔法具としても広く使われている魔法であり、木の妖精を使役するには『青の魔力』が必要である。
「何で魔法人形なんて使って正体を隠してるんですか?やっぱり人形魔法師としての腕を試すためですか?」
「いえ…あの…私ゲイリーの幼馴染なんですけど…ゲイリーから、見た目が小さくて舐められるから、変な虫が寄ってこないようにボディーガードに置いときなさいって言われて…私は大丈夫だって言うんですけど、ゲイリーってば心配性で…」
それは心配しているのではなく独占欲なのではないかと誰もが思ったが口にはしなかった。こうなってくると、オリガもゲイリーもどっちもどっちなので、もうオリガがストーカーっぽくてもどうでもよくなってくる。
だが、確かにこのオリガという女生徒は非常に可愛かった。
「同じ学年なのにあなたの事全く気付かなかったわ…」
「別に隠してるわけじゃないんですけど、オルガ(人形)の方が目立つらしくて、私記憶に残らないみたいなんです…」
その点ではゲイリーの作戦は成功していると言えるのかもしれない。
「さぁ、いよいよ学院の外に出るぞ。正門から出るのは面倒くさい。地下を通っていこう。フラン君、頼めるか?」
マーシャたちは学院の人目につかない辺りにある塀の近くに来ていた。
「わかりました」
そう言うと、フランチェスカは詠唱した。
“oPen the fiAry GATE.
(開け、妖精界の門)
in-g,rE,DIeNT = yell-OW.
(食材は黄色の魔力)
re:ciPE= DO-NUT.
(調理法は穴の開いた揚げ菓子)
1 OF the ele:MenTs, GNOME.
(四大の一つ、土の精ノームよ)
pLEAse L-END Me UR POW-ER.
(我に汝の翼を貸し与えたまえ)
SOIL-OPERATION."
(土の操作魔法)
そう言って、地面に手を付けると、塀の真下に人が一人通れるくらいの抜け道ができた。
「うむ。相変わらず素晴らしい腕前だ」
「ありがとうございます。ですが、これは初歩の魔法ですので」
『操作魔法』の中でも、自分で作り出したものではなく、自然界にあるものを操作する魔法は、魔法の中でも初歩の魔法である。使用する魔力も非常に少ない。
とは言っても、これだけの量の土を、しかも先の見えない部分を推測で操作することはそう簡単なことではない。フランチェスカは謙遜にそう言ったが、やはりフランチェスカの魔法の腕前は大したものだと言える。
ちなみに先日のルーシッドの飛行魔法実験の時にルーシッドから聞いた方法で、フランチェスカも詠唱文の短縮を行うことができていたが、今はみなが詠唱を聞いている状況だったので、不審がられないように今まで通りの詠唱を行ったのだった。
ディナカレア魔法学院は外出に関しては特に厳しい決まりはない。一応簡単な許可さえ取れば、深夜の外出や外泊に関しても特に何も言われることはない。ゆえに正門から出なかったのは、人目を避けて速やかに事を進めるためだった。
「では、ルビア君、明かりを頼む」
「わかりました」
そう言うと、ルビアは詠唱する。ルビアもフランチェスカと同様に従来通りの詠唱文だ。
"oPen the fiAry GATE.
(開け、妖精界の門)
in-g,rE,DIeNT = Re:D.
(食材は赤き魔力)
re:ciPE = Co-o-KiE.
(調理法は小さな焼き菓子)
1 OF the ele:MenTs, SALA-MANDER.
(四大の一つ、火の精サラマンダーよ)
pLEAse L-END Me UR FirR.
(我に汝の火を貸し与えたまえ)
FIRE-CREATION."
(火の生成魔法)
ルビアが火の魔法によって明かりを灯して先頭を歩き、抜け道を進む。
「さぁ、オリガ君、案内してくれ。ここから遠そうかい?」
「いえ、この糸の張り方だと歩いて数分のところにありそうです」
「そうか。よし、速やかにゲイリーを連れ戻そう」
その時だった。
『ルーシィ、キリィからコールです。繋ぎますか?』
「あ、うん。お願い」
ルーシッドは、魔法具『リムレット』から発せられる『魔力波(電波)』に反応し振動する耳につけるタイプの魔法具(いわゆるイヤホン)と、音によって振動し、その振動を式に変換する口につけるタイプの魔法具(いわゆるマイク)を開発していた。これによって、ルーシッドは手で操作することなく、エアリーと会話することができる。
「はい、キリィ?どうしたの?」
『わぁ、すごい!ホントに話せるんだね!』
「うん。何かあった?」
『実はね!私、急に魔眼が使えるようになったの!俯瞰の魔眼っていうらしいんだけど、遠く離れたところの様子が見れるようになったんだ!だから、ルーシィたちのことも見えてるよ~!』
「……へぇ…遠く離れたところが見える魔眼か…遠視の魔眼みたいな感じかな、魔眼ってそんな唐突に使えるようになるものなんだね?」
突然、予想外のことを言われて一瞬フリーズしたが、そう答えた。
『うん、なんか、アルゴスっていう妖精?なのかな?そのアルゴスっていう人がくれたんだ!』
「うーん、アルゴス…聞いたことないなぁ?」
『ほぉ、アルゴスか…アルゴスが直々に魔眼を渡すとはよほど気に入られたんじゃな』
「あ、マリーさん?アルゴス知ってるんですか?」
マリーが『アルゴス』という言葉に反応して姿を現した。
『あぁ、神位の妖精の中でもかなり力が強いやつじゃ。今世界に存在する〈魔眼〉と呼ばれるものは元々は全てこいつの能力じゃ。使役や契約に応じることはないが、適当に人に自分の能力を与えては、その様子を見て楽しんでいる変わったやつじゃ。まぁ悪いやつではないがな』
お前にだけは言われたくない、とアルゴスが言ってそうであるが、マリーは話を続ける。
『で、アルゴスは何の魔眼をくれると言っておったって?』
「『俯瞰の魔眼』らしいですよ」
『なんと…俯瞰の魔眼じゃと…そりゃまたずいぶんなものをくれたものじゃな…おい、ルーシィ、キリィに視線だけじゃなく、こっちに体ごと飛んでくるようなイメージを持てるかやってみろと言え』
「あー、キリィ?マリーさんが視線だけじゃなく、こっちに体ごと飛んでくるようなイメージをしてみろだって」
『体ごと飛んでいく?うん、やってみる!ん~~………えいっ!』
キリエが変な声を上げると、信じられないことにキリエの姿がルーシッドたちの前に表われた。しかし、それは体そのものが移動してきたわけではなく、マリーと同じような半透明の姿だった。
「えっ!?キリィ!?」
「うそっ!何で!?」
「こっ、これはどういうことだ?」
皆がキリエの姿を見て驚きをあらわにする。
『キリィ、その魔眼の能力は、ただの遠視能力ではない。〈思念体〉を作り出す能力じゃ。今の存在は私と同じような存在じゃ』
『へぇ!そうなんですね!すごいです!』
「え、なに?キリィ、魔眼使えたの?」
ルビアがマリーの説明を聞いてびっくりしてキリエに尋ねる。
『んーと、みんなと別れてから色々あって使えるようになったよ!』
「何それ、意味わかんないんだけど…」
フェリカは半ばあきれたように言った。
『キリィ、確認じゃが、私たちだけじゃなく自分本体の方の前の景色も見えているな?』
『あ、はい…確かに…不思議な感覚ですが、みんなのことも見えていますが、自分の目の前の部屋の景色も見えてます』
『それが俯瞰の魔眼と他の遠視系の魔眼との最大の違いじゃ。自分の体は動かせるな?』
『はい、動かせます』
『よし、いいぞ。キリエよ、詳しい話は後じゃ。今はこのチームの目となってやれ』
『はい、任せてください!』
「よろしくね、キリィ」
『うん、任せて!』
キリエは意気揚々と答えた。
「皆さん!あの建物です!あの建物の中に糸が入っていっています!」
オリガが立ち止まり、ある建物を指差した。それは何の変哲もない普通の建物だった。
『じゃあ、私が先に行って中の様子を見てくるよ!』
「うん、気を付けてね」
ルーシッドがそう言うと、キリエは胸を張って得意げに言う。
『大丈夫!思念体だからやられたりしないし!』
「あきれるほどに便利な能力ね…」
「何かルーシィと関わると、みんながどんどん異常になっていく気がするわ…」
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