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第3章 ギルド体験週間編―2日目
ギルド体験週間2日目⑨ ルーン魔法師・フェリカ
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キリエはすぅっとドアを通り抜けて中へ入っていった。
中に入ると、そこは真っ暗で人影はなかった。
『うーん、人はいないみたい?でも真っ暗でよくわからないなぁ。明かりが無いと…あれ、この状況で魔法使ったらどうなるんだろ?』
キリエは『光の魔法』を唱えてみる。すると、普通に唱えた時と同じように、思念体のキリエの手に明かりが灯った。
『わぁ、すごい便利!この状態で魔法を唱えると、思念体の方でも魔法が発動できるんだね!』
明かりを照らし、建物の内部を観察するキリエ。そこは倉庫のような部屋だった。窓はなく、荷物を入れているらしき木箱が数個置かれているだけの、がらんとした部屋である。
簡単に見回し、危険が無いことを確認してから、キリエが戻ってくる。
『倉庫みたいなところで人はいませんでしたよ?』
「よし、とりあえずは大丈夫そうだ。中に入ってみんなで捜索してみよう」
「そうですね。隠し扉のようなものがあるかも知れません」
マーシャが扉を開けようとすると、扉には鍵がかかっているらしくぴくりともしない。
「ふむ…私が魔装で強化して扉をぶち破ってもいいが…」
「ダメです。大きな音を出すと相手に気づかれてしまうかもしれません」
フランチェスカが制止する。
「キリエ君、もう一度中に入って、扉の様子を確認してくれるか?」
『お安い御用です!』
キリエがもう一度中に入って確認すると、金属製の鍵がかかっていた。
『金属製の鍵がかかっていますね。すいません、思念体だと物に触ることはできないですし、金属系の魔法は使えないので…』
「いやいや。十分だよ、キリエ君。さて、金属製の鍵か…どうやって開けようか」
「金属の操作なら魔法で出来ますが、見えないと難しいですね…」
ルビアがそう答える。ルビアは武器を生成したりもするので、鉄の魔法も得意としている。鉄の魔法は鉱物を扱う魔法のため、土の魔法の上位魔法である。
「あの…私がやってみます」
フェリカがおずおずと手を上げる。
「ほう?何か策があるのかい?」
「これです」
フェリカは胸からルーン文字の書かれたカードを何枚か取り出して、目当てのカードを探す。
「それは?」
フェリカがルーン魔法師だということを知らないマーシャはそう尋ねた。
「これはルーン魔法に使うカードです」
「なんと…キミはルーン魔法が使えるのか!」
「はい。まあ完璧にではないですが。このカードに刻まれたルーン文字は『ᚦ』。意味はいくつかありますが『障壁、妨害、開かずの門』などです。これを逆位置、つまり逆の解釈にして魔法を発動すれば、扉が開くかも知れません。このルーン文字をそういう風に使ったことがないので、できるかはわかりませんが…」
「リカは本当によくルーンを研究してるね。試してみる価値はあると思う」
ルーシッドは自信がなさそうに言うフェリカを励ました。
「失敗したら次の策を考えればいいだけのこと。フェリカ君やってみてくれ!」
「はい!」
フェリカがカードを逆さにして扉に張り付け、フェリカだけが持つ特殊な魔力『ブラッドレッド』を流す。すると、カードの文字が赤く光り、ルーン魔法が発動する。
フェリカが恐る恐る扉に手をかけて押してみると、扉は開いた。
「すごいぞ、フェリカ君!ルーン魔法でこんなことができるのか!」
「やったね、リカ!」
「うん、ありがとう!」
フェリカは素直に賛辞を受け取った。
特殊な魔力を持つ自分が、ヴァンパイアのマリーと契約するまでは、唯一使えた魔法であり、今まで自分の事を何度も助けてくれた『ルーン魔法』はこの度も活躍してくれた。
フェリカは今だに会ったことのないルーン魔法の創始者と言われる偉大な神位妖精『オーディン』に感謝した。
そして、いつかヴァンパイアのマリーのように、オーディンにも直接会ってお礼を言い、また勝手にルーン魔法を使ってきたことを謝って、願わくばルーン魔法を使用することを正式に許可してもらえればと思うフェリカだった。
中に入ると、そこは真っ暗で人影はなかった。
『うーん、人はいないみたい?でも真っ暗でよくわからないなぁ。明かりが無いと…あれ、この状況で魔法使ったらどうなるんだろ?』
キリエは『光の魔法』を唱えてみる。すると、普通に唱えた時と同じように、思念体のキリエの手に明かりが灯った。
『わぁ、すごい便利!この状態で魔法を唱えると、思念体の方でも魔法が発動できるんだね!』
明かりを照らし、建物の内部を観察するキリエ。そこは倉庫のような部屋だった。窓はなく、荷物を入れているらしき木箱が数個置かれているだけの、がらんとした部屋である。
簡単に見回し、危険が無いことを確認してから、キリエが戻ってくる。
『倉庫みたいなところで人はいませんでしたよ?』
「よし、とりあえずは大丈夫そうだ。中に入ってみんなで捜索してみよう」
「そうですね。隠し扉のようなものがあるかも知れません」
マーシャが扉を開けようとすると、扉には鍵がかかっているらしくぴくりともしない。
「ふむ…私が魔装で強化して扉をぶち破ってもいいが…」
「ダメです。大きな音を出すと相手に気づかれてしまうかもしれません」
フランチェスカが制止する。
「キリエ君、もう一度中に入って、扉の様子を確認してくれるか?」
『お安い御用です!』
キリエがもう一度中に入って確認すると、金属製の鍵がかかっていた。
『金属製の鍵がかかっていますね。すいません、思念体だと物に触ることはできないですし、金属系の魔法は使えないので…』
「いやいや。十分だよ、キリエ君。さて、金属製の鍵か…どうやって開けようか」
「金属の操作なら魔法で出来ますが、見えないと難しいですね…」
ルビアがそう答える。ルビアは武器を生成したりもするので、鉄の魔法も得意としている。鉄の魔法は鉱物を扱う魔法のため、土の魔法の上位魔法である。
「あの…私がやってみます」
フェリカがおずおずと手を上げる。
「ほう?何か策があるのかい?」
「これです」
フェリカは胸からルーン文字の書かれたカードを何枚か取り出して、目当てのカードを探す。
「それは?」
フェリカがルーン魔法師だということを知らないマーシャはそう尋ねた。
「これはルーン魔法に使うカードです」
「なんと…キミはルーン魔法が使えるのか!」
「はい。まあ完璧にではないですが。このカードに刻まれたルーン文字は『ᚦ』。意味はいくつかありますが『障壁、妨害、開かずの門』などです。これを逆位置、つまり逆の解釈にして魔法を発動すれば、扉が開くかも知れません。このルーン文字をそういう風に使ったことがないので、できるかはわかりませんが…」
「リカは本当によくルーンを研究してるね。試してみる価値はあると思う」
ルーシッドは自信がなさそうに言うフェリカを励ました。
「失敗したら次の策を考えればいいだけのこと。フェリカ君やってみてくれ!」
「はい!」
フェリカがカードを逆さにして扉に張り付け、フェリカだけが持つ特殊な魔力『ブラッドレッド』を流す。すると、カードの文字が赤く光り、ルーン魔法が発動する。
フェリカが恐る恐る扉に手をかけて押してみると、扉は開いた。
「すごいぞ、フェリカ君!ルーン魔法でこんなことができるのか!」
「やったね、リカ!」
「うん、ありがとう!」
フェリカは素直に賛辞を受け取った。
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フェリカは今だに会ったことのないルーン魔法の創始者と言われる偉大な神位妖精『オーディン』に感謝した。
そして、いつかヴァンパイアのマリーのように、オーディンにも直接会ってお礼を言い、また勝手にルーン魔法を使ってきたことを謝って、願わくばルーン魔法を使用することを正式に許可してもらえればと思うフェリカだった。
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