35歳バツイチオッサン、アーティファクト(美少女)と共に宇宙(ソラ)を放浪する

エルリア

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16.再び宇宙へと飛び出して

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「こちらソルアレス。ラインコントロール出航許可を願います」

「こちらラインコントロール、ソルアレス了解しました。四番ハッチにお並びください」

 準備はできた。

 コロニーから要望を受けた物資の他、アリスが星間ネットワークから拾い上げたコロニー内の不足物資も一緒に積みこんである。

 もちろん例の薬も忘れてはいないが、メインはコロニーへの物資搬入。

 俺たちの初仕事になるわけだからしっかりと完遂しないとな。

「いよいよだな」

「緊張していますか?」

「別に緊張はしていないが不安はある」

「マスターは心配性ですね」

「そりゃそうだろう、宙族蔓延る一体を銃座一つで越えようっていうんだから。いくらアリスのハッキング技術が凄くても複数に船を同時に落とすってことはできないだろ?それにいくらシールドがあるとはいえ同時に攻撃されればいずれそれも飽和するわけだし初陣にしては中々難易度が高いなと思ってるところだ」

 今まで特にギャンブル的なこともしてこなかったし、どっちかっていうと無難無難な方を選んで生きてきた。

 多少自分が窮屈な思いをしてもそれで全て治るのなら気にしない、そんな無難な生き方が前妻にとって不満だったんだろう。

 何もない人生、それが悪いとは言わないけれど良さはどこにもない。

 そんな俺が生まれて初めてに近いレベルで自分から危険に飛び込もうってわけだ、そりゃ不安にもなる。

「大丈夫ですよ、きっと」

「そうだといいんだがな。宙族との戦闘になればイブさんの腕前が頼りだ、よろしく頼む」

「私にできることは精一杯頑張ります、期待してください!」

「今回は奴らを呼び出したりしませんので通信が来ることはないと思いますので、マスターはドンと構えてそこに座っているだけで結構です」

「ドンと構えるねぇ、まぁ俺に出ることなんて何もないしな、二人ともよろしく頼む」

 俺にできるのはただ成り行きを黙って見守ることだけ、なんとも情けない感じだけどただの掃除夫にそれ以上のことを求められても困る。

「四番ハッチ解放、奥へお進みください」

「了解しました」

「到着後180秒で出発可能です、良い旅を」

「ありがとうございました」

 ゆっくりと開くハッチに向こうに真っ黒い宇宙が広がっている。

 再びの宇宙、無事にコロニーへと到着することはできるんだろうか。

 暫くしてハッチ前方のランプが青に変わり、確認のため後ろを振り向いたアリスに向かって小さく頷いた。

「ソルアレス発進します」

 ドンという衝撃と共にGが襲いかかり、ハッチがはるか後方へと飛んでいく。

 うーん早い。

 長距離を航行している時はそこまで感じなかったが、比較対象があるとまた感覚が違うな。

 それこそ最新のエンジンを積み込んだっていうだけのことはある。

「無事出発を確認、これよりポイントx325y221宙域へ向かいます」

「了解、しばらくは平和だな」

「宙族の出現ポイント到着は11時間後、食事にしますか?」

「え、離れて大丈夫なんですか?」

「航行だけでしたら遠隔でできますので、レーダーに衝突コースの機影なし問題ありません」

「なら飯にしよう」

 別にずっとコックピットに張り付いている必要はない、適度に気を抜いてその時までのんびりしよう。

 どうせ売るんだからとここぞとばかりに食糧を買い込んだので、前のように残量を気にせず合成機を動かすことが出来る。

 あのクソまずい栄養バーと比べる訳ではないが、どれを食べても美味いのはこれもまた最新式の機会だからだろうか。

「この合成機って最新のやつなんだよな?」

「実はそうではないんです。ネットワークを探るとつい先月最新のもの出たそうなのですが、どこを探しても製造データを見つける事ができませんでした。流出を恐れてオフライン上に保存しているものと考えられます」

「そこまで秘匿にしないといけないものなのか」

「口コミを見るとどれも今までのものと比べ物にならない、コレはオーパーツだという意見も多く出ています。ぜひ手に入れたいと思っておりますが、なかなか難しいですね」

 目の前に投影された口コミをスライドさせて確認するがどれも絶賛の嵐、うーん現使用者にここまで言わせるなんてよっぽどの出来なんだろう。

「げ、300万もするのか。」

「合成機としては最上位の機種ですからこのぐらいはするかと。一般相場はおおよそ100万ぐらいです」

「それでも結構するんだな」

「長距離航行のモチベーションに関わる部分ですから当然かと」

「なるほど」

 コロニーと違って時間感覚が掴みにくい宇宙空間において、時間を認知するきっかけとなる食事は非常に重要なイベントになる。

 そこをケチって全てのモチベーションが下がるとなれば多少高くてもいいものを積みたくなるものだ。

「私はこれでも十分美味しいです」

「それは何よりです。イブ様の食べっぷりを見ていると満腹にならないはずの私もお腹が膨らんでしまいますね」

「食べ過ぎてますか!?」

「気にしなくていいぞ、しっかり食べてくれ」

 何を食べても美味しそうな顔をするイブさん、アリスが言うように見ている方が満たされてしまうような不思議な感覚になる。

 あの顔を見られるなら別にこのままでもいいかなぁとか思ってしまうよな。

「では食事が終わりましたら一時間後にトレーニングへ移りましょう」

「座っているだけでいいんじゃなかったのか?」

「それは戦闘が始まったらの話です。マスターの年齢と代謝量を考えると運動しないと半年も立たずぶくぶくになりモテなくなりますが」

「よしやろう!」

「自覚はおありなのですね」

「そりゃ35にもなればな。昔は何を食べても増えなかったのに最近はすぐコレだ」

 そう言いながら自分の腹部を触ると、硬さよりも柔らかさの方を先に感じる。

 同僚に30過ぎたら一気に変わると言われ気づけば35、仕事をしていた時は嫌でも体を動かしていたが宇宙にでてから全くと言っていいほど動かなくなった。

 多少は歩いたりしているけれど、根本的な体の動かし方が違うだけにここ数日で体が重たくなった自覚はある。

 段々と大きくなっていく腹に嘆くぐらいならしっかり動いた方が建設的、別に今すぐ女性にもてたいわけじゃないけれどいずれ来るその時の為にしっかり体を動かしておこう。

「マスター」

「なんだ?」

「別に今のままでも問題はありませんよ?」

「そりゃどうも」

 急にアリスが真面目な顔をしてフォローしてくれるけれど実際どう思っているかはわからない。

 心の中ではもっと痩せろとか色々と思われているのかもしれないけど、まぁまずは自分のために頑張るとしよう。

「あの、私もやった方が・・・」

「イブさんは大丈夫です」

「え?」

「イブさんは大丈夫です」

 俺と同じく真面目な顔で答えているけれど、明らかに食い気味の返事。

 かなり引き締まった体だし運動は必要じゃなさそうだけど、動いているところが見たいのは男の性というものだろう。

 あの二つのふくらみがいったいどう動くのか、気にならない男はいない。

 そんな邪念を感じ取ってか恐ろしい顔でにらみつけてくるアリス。

「なんだよ」

「別になんてもありません、マスターには特別メニューを用意しておきますので覚悟してくださいね」

「それ、大丈夫な奴だよな」

「もちろんです、後は座っているだけですから頑張りましょうねマスター」

 含みのある言い方に思わず寒気が走ってしまった。

 色んな意味で俺は小惑星群を抜けることができるのだろうか。
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