2 / 237
第1章「共依存」
1話
しおりを挟む
「エリザベータ、お前もご挨拶を…。エリザベータ?」
「っ。」
父に話しかけられたことによって、世界が再び動き出す。
―いけない、こんな人目が多いところで粗相なんて出来ない。
今にも倒れそうな体を奮い立たせ、微笑の仮面を貼り付ける。有難いことに体は自然と動いてくれた。
「皇太子殿下、ご挨拶が遅れてしまい申し訳ございません。シューンベルグ公爵家の長女、エリザベータ=アシェンブレーデルと申します。」
両手でスカートの左右を摘まみ上げ、片足を後ろ側に引き、もう片方の足をまげて腰を落とした淑女の挨拶、カーテシーをとる。
教本通りの挨拶を流れるようにとってみせると、隣に立つ父から「おや?」と、少々驚く様子が伝わってきた。…まぁ、今 父が何を考えているのか何となくわかる。
私の母は私を産んですぐに亡くなってしまった。元々身体の弱い人だったらしい。
母を深く愛していた父は母の忘れ形見である私を溺愛し、ドロドロに甘やかした。そして蝶よ花よと育てられた結果、1人では何も出来ない娘となってしまった。
それが先程までの私。そんな娘が急に洗練された挨拶をとってみせるだなんて驚きだろう。
記憶が蘇った今、前世で何度も何度も練習した淑女の挨拶は魂に刻まれているかのように身体を動かしてくれた。
「どうした、エリザベータ。顔が真っ青じゃないか。」
顔色までは誤魔化せなかったようだ。私の異変に気づいた父は私の肩を抱く。
「初めての社交界に疲れてしまったのだろう。明日からは学校が始まる。今日は早く休んだ方がいい。」
「殿下、お気遣いありがとうございます。それではお言葉に甘えまして、私たちはこれで失礼致します。エリザベータ、歩けるかい?」
「えぇ。…失礼致します。」
最後は殿下の顔を見ることが出来なかった。
父に支えられながら馬車まで辿り着いた途端、身体がぐらりと傾く。緊張の糸が切れたのだろう。
遠くで私の名前を呼ぶ父の声を最後に、私は意識を手放した。
「っ。」
父に話しかけられたことによって、世界が再び動き出す。
―いけない、こんな人目が多いところで粗相なんて出来ない。
今にも倒れそうな体を奮い立たせ、微笑の仮面を貼り付ける。有難いことに体は自然と動いてくれた。
「皇太子殿下、ご挨拶が遅れてしまい申し訳ございません。シューンベルグ公爵家の長女、エリザベータ=アシェンブレーデルと申します。」
両手でスカートの左右を摘まみ上げ、片足を後ろ側に引き、もう片方の足をまげて腰を落とした淑女の挨拶、カーテシーをとる。
教本通りの挨拶を流れるようにとってみせると、隣に立つ父から「おや?」と、少々驚く様子が伝わってきた。…まぁ、今 父が何を考えているのか何となくわかる。
私の母は私を産んですぐに亡くなってしまった。元々身体の弱い人だったらしい。
母を深く愛していた父は母の忘れ形見である私を溺愛し、ドロドロに甘やかした。そして蝶よ花よと育てられた結果、1人では何も出来ない娘となってしまった。
それが先程までの私。そんな娘が急に洗練された挨拶をとってみせるだなんて驚きだろう。
記憶が蘇った今、前世で何度も何度も練習した淑女の挨拶は魂に刻まれているかのように身体を動かしてくれた。
「どうした、エリザベータ。顔が真っ青じゃないか。」
顔色までは誤魔化せなかったようだ。私の異変に気づいた父は私の肩を抱く。
「初めての社交界に疲れてしまったのだろう。明日からは学校が始まる。今日は早く休んだ方がいい。」
「殿下、お気遣いありがとうございます。それではお言葉に甘えまして、私たちはこれで失礼致します。エリザベータ、歩けるかい?」
「えぇ。…失礼致します。」
最後は殿下の顔を見ることが出来なかった。
父に支えられながら馬車まで辿り着いた途端、身体がぐらりと傾く。緊張の糸が切れたのだろう。
遠くで私の名前を呼ぶ父の声を最後に、私は意識を手放した。
233
あなたにおすすめの小説
愛される日は来ないので
豆狸
恋愛
だけど体調を崩して寝込んだ途端、女主人の部屋から物置部屋へ移され、満足に食事ももらえずに死んでいったとき、私は悟ったのです。
──なにをどんなに頑張ろうと、私がラミレス様に愛される日は来ないのだと。
前世と今世の幸せ
夕香里
恋愛
【商業化予定のため、時期未定ですが引き下げ予定があります。詳しくは近況ボードをご確認ください】
幼い頃から皇帝アルバートの「皇后」になるために妃教育を受けてきたリーティア。
しかし聖女が発見されたことでリーティアは皇后ではなく、皇妃として皇帝に嫁ぐ。
皇帝は皇妃を冷遇し、皇后を愛した。
そのうちにリーティアは病でこの世を去ってしまう。
この世を去った後に訳あってもう一度同じ人生を繰り返すことになった彼女は思う。
「今世は幸せになりたい」と
※小説家になろう様にも投稿しています
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。
その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。
そこで待っていたのは、最悪の出来事――
けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。
夫は愛人と共に好きに生きればいい。
今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。
でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。
妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。
過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――
番を辞めますさようなら
京佳
恋愛
番である婚約者に冷遇され続けた私は彼の裏切りを目撃した。心が壊れた私は彼の番で居続ける事を放棄した。私ではなく別の人と幸せになって下さい。さようなら…
愛されなかった番。後悔ざまぁ。すれ違いエンド。ゆるゆる設定。
※沢山のお気に入り&いいねをありがとうございます。感謝感謝♡
(本編完結)無表情の美形王子に婚約解消され、自由の身になりました! なのに、なんで、近づいてくるんですか?
水無月あん
恋愛
本編は完結してます。8/6より、番外編はじめました。よろしくお願いいたします。
私は、公爵令嬢のアリス。ピンク頭の女性を腕にぶら下げたルイス殿下に、婚約解消を告げられました。美形だけれど、無表情の婚約者が苦手だったので、婚約解消はありがたい! はれて自由の身になれて、うれしい! なのに、なぜ、近づいてくるんですか? 私に興味なかったですよね? 無表情すぎる、美形王子の本心は? こじらせ、ヤンデレ、執着っぽいものをつめた、ゆるゆるっとした設定です。お気軽に楽しんでいただければ、嬉しいです。
わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑
岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。
もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。
本編終了しました。
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
最初からここに私の居場所はなかった
kana
恋愛
死なないために媚びても駄目だった。
死なないために努力しても認められなかった。
死なないためにどんなに辛くても笑顔でいても無駄だった。
死なないために何をされても怒らなかったのに⋯⋯
だったら⋯⋯もう誰にも媚びる必要も、気を使う必要もないでしょう?
だから虚しい希望は捨てて生きるための準備を始めた。
二度目は、自分らしく生きると決めた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
いつも稚拙な小説を読んでいただきありがとうございます。
私ごとですが、この度レジーナブックス様より『後悔している言われても⋯⋯ねえ?今さらですよ?』が1月31日頃に書籍化されることになりました~
これも読んでくださった皆様のおかげです。m(_ _)m
これからも皆様に楽しんでいただける作品をお届けできるように頑張ってまいりますので、よろしくお願いいたします(>人<;)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる