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32.交流会
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試験結果が終われば長期の休みに入る。
王家主催の夜会を皮切りに社交シーズンが始まるからだ。
だが、その前に学園でのお茶会が開かれる。
これは一学年だけでなく、他の学年も一緒になる。
お茶会の会場は三つに分けられ、
ちょうど教室の区分と同じようだ。
私が参加するのは一番爵位が上のお茶会。
初めてのお茶会に緊張するけれど、
マリエットたちも同じ会場だから少しほっとする。
「ジュリアンヌ様、なにかあれば合図を送ってください。
体調が悪くなったふりで帰ってしまいましょう」
「そうね……どうしようもなくなったらお願いするわ」
最近のマリエットたちは兄様に何か言われているのか、
私の心配をすることが増えていた。
お茶会の途中で帰れば咎められそうなものだけど、
それ以上に問題が起こりそうなら帰ってもいいということらしい。
会場に着くと、二学年の学生がもう着席していた。
伯爵家以下しかいない学年なので、
私の顔を見て全員が立ち上がって礼をする。
「先輩がた、お座りください」
すぐに座るように声をかけたが、
私が公爵家だからか不安そうな顔をされてしまう。
そんなに横暴な真似をするつもりはないけれど、
シュゼット様がいろいろとしたことで公爵令嬢の印象がよくないらしい。
私の席を探すと、マリエットとコリンヌは同じテーブルだったが、
アリスとエリーナは隣のテーブルだった。
伯爵家の中でも階級がある。
マリエットのエンデ家は上位貴族。
コリンヌのマロール家は上位貴族の中でも真ん中あたり。
アリスのフィケ家とエリーナのゴダン家は上位貴族の中では下の方になる。
三人で席につくと、少しして三学年の学生が来たのに気づいた。
先頭にいた令嬢が金色の髪なのを見て、
その令嬢がアゼリマ侯爵家のシャルロット様だとわかる。
私の方が身分は上だが、シャルロット様のほうが先輩でもある。
席を立って迎え入れたが、礼はしなかった。
それを見て、シャルロット様の深い青目がきらりと光った気がした。
「……楽にしていいわ」
私以外の令嬢たちが礼をしているの見て、シャルロット様が声をかける。
視線があったのを確認して、私から口を開いた。
身分が上の者から声をかけなければ会は始まらない。
「レドアル公爵家のジュリアンヌです。会うのは初めてですね」
「ええ、ジュリアンヌ様のお話はジェラルド様からお聞きしていました。
アゼリマ侯爵家のシャルロットですわ。仲良くしてくださいね」
にっこり笑うシャルロット様に、それは嘘だと思った。
兄様がシャルロット様に私の話をするわけがない。
「そういえばシャルロット様と兄様は同じ学年でしたわね。
兄様からシャルロット様の話を聞いたことはありませんが」
「っ!……そうですか。
ジェラルド様はジュリアンヌ様とはあまり話をしないのですね」
「いいえ?学園にも馬車で一緒に通っていますし、
屋敷に帰ってからもずっと一緒にいますから。
学園でのことはたいてい聞いてます」
「まぁ……兄離れしていないというのは本当でしたね」
「……兄離れしていないとは、誰からの話ですか?」
「サミュエル様が言ってましたの」
あの身体の大きな王子がそんなことを……。
「サミュエル様とは挨拶すらしたこともないのに、
そんなことを言われても困りますわ」
「え?……婚約していたのではないのですか?」
「五歳の時に婚約していたようですが、
一度も会うことなく婚約は解消されています。
それ以来、関わることはありませんでしたから」
教室で会った時のことは、なかったことにしている。
挨拶をしていないのだから、貴族としては会ったことにならない。
だから、私はまだ第二王子とは関わっていないことになる。
「まぁ……てっきり、もう一度婚約し直すのだと思っていましたわ。
サミュエル様のお相手としてふさわしいのはジュリアンヌ様でしょう?」
「いいえ、王家とはもう婚約しないことが決まっています。
ですので、ふさわしいのはどちらかといえばシャルロット様ですね」
「……」
本当は後継ぎではない私とシャルロット様では婚約者候補にもならないと思う。
私が五歳の時に第二王子の婚約者だったのは、
その頃はまだ王太子になる可能性があったからだ。
アドルフ様が王太子になり、王族から外れるのがわかっている今では、
婿入り先にならない私たちでは相手にならない。
「でも、サミュエル様のお相手と言えば、シュゼット様ですよね。
今日は出席されていないようですが、何かあったのでしょうか?」
シャルロット様の隣にいた令嬢が助け舟を出す。
意味ありげに微笑んでいるのは、ここにいない理由を知っているからだ。
「シュゼット様は謹慎されているようですわ」
「まぁ!何があったのかしら」
「それは王家に確認すればいいのでは?
王家がからんでいるのに、勝手なことは言えないわ」
「王家が……そうでしたか」
王家が謹慎処分を下したことをあれこれ言い出せば、
不敬なことになるかもしれない。
それに思い当たったのか、令嬢は口をつぐんだ。
また沈黙になる。
それを破ったのはにこりと笑ったシャルロット様だった。
「……私、ジュリアンヌ様とはずっとお会いしたいと思っていましたの」
「あら、なぜ私に?」
「ええ、できれば仲良くしたいと思いまして。
将来、姉妹になるかもしれないのですから」
「!?」
王家主催の夜会を皮切りに社交シーズンが始まるからだ。
だが、その前に学園でのお茶会が開かれる。
これは一学年だけでなく、他の学年も一緒になる。
お茶会の会場は三つに分けられ、
ちょうど教室の区分と同じようだ。
私が参加するのは一番爵位が上のお茶会。
初めてのお茶会に緊張するけれど、
マリエットたちも同じ会場だから少しほっとする。
「ジュリアンヌ様、なにかあれば合図を送ってください。
体調が悪くなったふりで帰ってしまいましょう」
「そうね……どうしようもなくなったらお願いするわ」
最近のマリエットたちは兄様に何か言われているのか、
私の心配をすることが増えていた。
お茶会の途中で帰れば咎められそうなものだけど、
それ以上に問題が起こりそうなら帰ってもいいということらしい。
会場に着くと、二学年の学生がもう着席していた。
伯爵家以下しかいない学年なので、
私の顔を見て全員が立ち上がって礼をする。
「先輩がた、お座りください」
すぐに座るように声をかけたが、
私が公爵家だからか不安そうな顔をされてしまう。
そんなに横暴な真似をするつもりはないけれど、
シュゼット様がいろいろとしたことで公爵令嬢の印象がよくないらしい。
私の席を探すと、マリエットとコリンヌは同じテーブルだったが、
アリスとエリーナは隣のテーブルだった。
伯爵家の中でも階級がある。
マリエットのエンデ家は上位貴族。
コリンヌのマロール家は上位貴族の中でも真ん中あたり。
アリスのフィケ家とエリーナのゴダン家は上位貴族の中では下の方になる。
三人で席につくと、少しして三学年の学生が来たのに気づいた。
先頭にいた令嬢が金色の髪なのを見て、
その令嬢がアゼリマ侯爵家のシャルロット様だとわかる。
私の方が身分は上だが、シャルロット様のほうが先輩でもある。
席を立って迎え入れたが、礼はしなかった。
それを見て、シャルロット様の深い青目がきらりと光った気がした。
「……楽にしていいわ」
私以外の令嬢たちが礼をしているの見て、シャルロット様が声をかける。
視線があったのを確認して、私から口を開いた。
身分が上の者から声をかけなければ会は始まらない。
「レドアル公爵家のジュリアンヌです。会うのは初めてですね」
「ええ、ジュリアンヌ様のお話はジェラルド様からお聞きしていました。
アゼリマ侯爵家のシャルロットですわ。仲良くしてくださいね」
にっこり笑うシャルロット様に、それは嘘だと思った。
兄様がシャルロット様に私の話をするわけがない。
「そういえばシャルロット様と兄様は同じ学年でしたわね。
兄様からシャルロット様の話を聞いたことはありませんが」
「っ!……そうですか。
ジェラルド様はジュリアンヌ様とはあまり話をしないのですね」
「いいえ?学園にも馬車で一緒に通っていますし、
屋敷に帰ってからもずっと一緒にいますから。
学園でのことはたいてい聞いてます」
「まぁ……兄離れしていないというのは本当でしたね」
「……兄離れしていないとは、誰からの話ですか?」
「サミュエル様が言ってましたの」
あの身体の大きな王子がそんなことを……。
「サミュエル様とは挨拶すらしたこともないのに、
そんなことを言われても困りますわ」
「え?……婚約していたのではないのですか?」
「五歳の時に婚約していたようですが、
一度も会うことなく婚約は解消されています。
それ以来、関わることはありませんでしたから」
教室で会った時のことは、なかったことにしている。
挨拶をしていないのだから、貴族としては会ったことにならない。
だから、私はまだ第二王子とは関わっていないことになる。
「まぁ……てっきり、もう一度婚約し直すのだと思っていましたわ。
サミュエル様のお相手としてふさわしいのはジュリアンヌ様でしょう?」
「いいえ、王家とはもう婚約しないことが決まっています。
ですので、ふさわしいのはどちらかといえばシャルロット様ですね」
「……」
本当は後継ぎではない私とシャルロット様では婚約者候補にもならないと思う。
私が五歳の時に第二王子の婚約者だったのは、
その頃はまだ王太子になる可能性があったからだ。
アドルフ様が王太子になり、王族から外れるのがわかっている今では、
婿入り先にならない私たちでは相手にならない。
「でも、サミュエル様のお相手と言えば、シュゼット様ですよね。
今日は出席されていないようですが、何かあったのでしょうか?」
シャルロット様の隣にいた令嬢が助け舟を出す。
意味ありげに微笑んでいるのは、ここにいない理由を知っているからだ。
「シュゼット様は謹慎されているようですわ」
「まぁ!何があったのかしら」
「それは王家に確認すればいいのでは?
王家がからんでいるのに、勝手なことは言えないわ」
「王家が……そうでしたか」
王家が謹慎処分を下したことをあれこれ言い出せば、
不敬なことになるかもしれない。
それに思い当たったのか、令嬢は口をつぐんだ。
また沈黙になる。
それを破ったのはにこりと笑ったシャルロット様だった。
「……私、ジュリアンヌ様とはずっとお会いしたいと思っていましたの」
「あら、なぜ私に?」
「ええ、できれば仲良くしたいと思いまして。
将来、姉妹になるかもしれないのですから」
「!?」
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