ただ幸せになりたかっただけと、あなたたちは言うけれど

gacchi(がっち)

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46.最後の方法(シュゼット)

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楽しみにしながらもジェラルド様に会うことができなくて、
だんだんとお母様もイライラし始める。
レドアル公爵家に出している手紙はそのまま送り返されてしまっている。
これもお姉様がしている意地悪なのかもしれない。

どうしようか困っていたら、サミュエルが訪ねてきてくれた。
サミュエルに会うのも久しぶりだけど、
なんだか元気がなくて落ち込んでいるように見える。

「どうしたの?何かあった?」

「レドアル公爵家でこれから夜会が開かれるんだが、
 一人で行くよりもシュゼットと一緒の方が心強いと思って」

「まぁ!夜会があるの?」

「俺はジュリアンヌに会いたいし、
 シュゼットはジェラルドに会いたいんだろう?」

「もちろんよ!」

レドアル公爵家で夜会が開かれるなんて!
王宮で開かれた夜会は招待してもらえなくて、
楽しみにしていた夜会デビューできなかった。

うれしくて飛び跳ねたいくらい喜んでいたら、
サミュエルはまだ暗い顔をしているのに気がついた。

「どうしてそんな顔しているの?
 夜会に行くの、楽しみじゃないの?」

「実は、俺に来ていた招待状を兄上に取り上げられたんだ」

「とりあげられた?アドルフ様に?」 

「ああ、レイモンも参加するのに、俺はダメだって言うんだ」

「ええ?お兄様が招待されたのはお姉様が呼んだのね。
 私には招待状が来ていないわ……。
 同じ兄弟なのに、どうして私だけ呼んでくれないのかしら」

何度もレドアル公爵家には手紙を出しているのに、
夜会が開かれることすら教えてくれなかった。
それなのにお兄様は招待しているなんて。

「ああ、そういえば姉妹って認められたんだったな」

「ええ、そうよ。お母様は違うけど、お父様は同じなんだもの。
 姉妹なら仲良くしようと思ってくれてもいいと思わない?
 お姉様って少し意地悪なところがあるのよね」

「ジュリアンヌはおとなしそうだからな。
 急に姉妹だと言われて驚いているのかもしれない」

「それならなおさら会って話したほうがいいでしょう?
 会わなかったらいつまでたっても仲良くなれないわ」

「それもそうだな」

「じゃあ、すぐに用意するわ」

すぐに準備しようとしたら、お母様は出かけているのかいなかった。
いないのなら後で言えばいいかと使用人にドレスを用意させて、
サミュエルの馬車でレドアル公爵家に向かった。

サミュエルと会うのも久しぶりだから、馬車の中での会話が止まらない。
お姉様に一目ぼれしたから婚約したいってサミュエルが言うので、
心配になってお姉様は誘拐されたことがあるって教えてあげた。

サミュエルとはずっと仲良しのお友達だったから、
結婚した後でお姉様が傷物だって知って傷つくのは嫌だなと思った。
でも、サミュエルは驚いていたけれど、それでもお姉様がいいって言った。
それだけ好かれたらお姉様もうれしいはず。


レドアル公爵家に着くと、王家の馬車は止められることなく敷地に入る。
イフリア公爵家よりも広いかもしれない。

サミュエルの手を借りて馬車から降りて、夜会の会場へと向かう。
やっとジェラルド様に会えると思ったのに、なぜか使用人たちが慌てて止めに来た。

「招待状がない方はご遠慮願います!」

「招待はされた。兄上が先に来ているはずだ」

「サミュエル王子は欠席だと聞いております」

「気が変わったんだ。中に入れてくれ」

「ですが……」

「案内はいい。勝手にいく」

引き留めようとする使用人を無視して会場へと入る。
イフリア公爵家よりも大広間が綺麗で華やかに見える。

奥に半個室があるのが見えたから偉い人がいる場所だと思った。
あそこにジェラルド様がいるに違いない。
その手前にお兄様とお姉様が立っているのが見えた。

私とサミュエルが来たのに気がついたお兄様とお姉様は、
まるで嫌いな虫でも見るような目をした。
どうしてそんなに私を嫌うんだろう。

私は二人の妹なのに。
兄と姉なら、よく来たわねって喜んでくれたらいいのに。

ようやく会えたジェラルド様も冷たくて、
会えたら私に笑いかけてくれるはずだとずっと思っていたのに、
嫌そうな顔をしていて、それが悔しくて仕方ない。

どうしても私のことを好きになってもらえないのなら、
手に入れてから好きになってもらえばいい。

そう思って、最後の方法を使うことにした。
それがどういうことになるかも知らないで。

言った時はジェラルド様の凍りついたような顔を見て、
ちゃんと効果があったんだと思った。

ジェラルド様もお姉様もお兄様も、
きっと私に言いふらさないようにお願いしてくるはず。
そうしたらこう言うの。

ジェラルド様と婚約したいの。
お姉様とお兄様はそれを祝福して、これからは仲良くしてねって。

それなのにお姉様のほうから十歳の時のことを聞かれた。
昔会った髪の短いドレス姿の子がお姉様だったなんて知らなかった。
ジムが連れて来たのがそうだったなんて。

お母様が誘拐してきたんだって知っていたら、
私だってあんな風にみんなの前で言わなかったのに。

王宮の貴族牢に入れられ、早くここから出してと泣いて叫んだ。
それなのに誰も来てくれない。
食事でさえ、戸棚のようなところに外から入れられるだけ。

お父様ならきっとなんとかしてくれるはずなのに、
何度お願いしてもお父様を呼んではくれない。

三日後、ようやく出してくれたと思ったら、
必要のない時は話さないようにと注意された。
話せばまたすぐに牢に戻すと。

もうあんな何もないところに入れられるのは嫌。
仕方ないから騎士たちに話しかけるのもやめた。

謁見室というところまで連れて行かれたら、
ジェラルド様とお姉様やお兄様もいる。
アドルフ様と一緒にいるおじさんは国王様だろうか。
国王様に助けてってお願いしたら許してもらえるかな。

一歩そちらに向かおうとしたら、騎士に肩を抑えつけられる。
止めてと言おうとしたら、口の周りに布を巻かれた。

動くなと冷たく言われ、うなずいたら力づくで抑えるのは止めてくれた。
どうしてこんなひどい目にあうんだろう。
これも全部お母様が悪いことをしたからなの?

すぐにお母様も同じように騎士に連れて来られるのが見えた。
夜着姿のまま化粧もしていない姿でこんな場所に来るなんて。

お母様はずっと否定していたから大丈夫なのかもと思ったけれど、
最後は誘拐したことを認めてどこかに連れて行かれた。

お母様が平民になったら私はどうなるんだろう。
お姉様とお兄様に助けを求めようとしたけれど、
何もできないまま私も騎士に連れ出される。

戻されたのはさっきまでいたのと同じ貴族牢だった。
私は一般牢というところには行かなかったことにほっとする。

だけど、いつまでここにいなければいけないんだろう。
お父様はいつになったら助けに来てくれるのかな。



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