ただ幸せになりたかっただけと、あなたたちは言うけれど

gacchi(がっち)

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47.お父様の取調べ

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王宮でマゼンタ様と対面した後、お父様も呼ばれることになったけれど、
私たちは屋敷へと帰るはずだった。

なのに、レイモン兄様がアドルフ様に立ち会いたいと言い出した。

「どうか、父上の取り調べに立ち会わせてもらえませんか?」

「立ち合い?レイモンが?」

「ええ、ずっと知りたかったんです。
 何を思って母上を追い出したのか。
 ジュリアンヌが誘拐されたことを知ってからは、
 それでもあの女を庇うのか聞きたかった……。
 立ち会わせてもらえませんか?」

「だめだ」

「アドルフ様!」

「レイモン、めずらしく冷静じゃないようだな。
 イフリア公爵に容疑があるということは、
 お前だって疑われるかもしれない立場だということだ」

「え?……ですが」

「お前がジュリアンヌの誘拐に関わっていないのも、
 母親と妹が大好きだっていうのもよくわかっている。
 だが、取り調べに立ち会うというのは怪しまれる行動だ。
 そのくらいは考えれば理解できるだろう」

「……そうですね」

私の誘拐に関して、当時十三歳だったレイモン兄様は何も知らなかった。
それでも父親が罪に問われれば、息子も関係していたんじゃないかと、
そう疑うものが出てくることは考えられる。

アドルフ様が止めるもの仕方ないこと。
がっかりしているレイモン兄様を見て、ジェラルド兄様が手をあげる。

「アドルフ様、それでは俺が立ち会うのはダメでしょうか?」

「ジェラルドが?」

「俺はレドアル公爵家の者として、
 ジュリアンヌを傷つけたものの処罰を見届けなくてはいけない。
 そのうえ、当時の状況も知っている当事者です。
 立ち会わせてもらえませんか?」

「……ジェラルドなら問題ないか。いいよ」

「ありがとうございます。
 取調べの間、レイモンとジュリアンヌは取調室の控室にいさせてもいいですか?
 口を挟まずに、ただ見ているだけなら問題ないと思います」

「そういうことか。わかった。
 二人は取調べには関わらせないが見ているだけならいいだろう。
 取調べが終わらなければジュリアンヌは屋敷に戻れないだろうしな。
 ジェラルドを待つ間、レイモンを護衛としてつけてやろう」

「っ!ありがとうございます!」

どうやらジェラルド兄様のおかげで、
私とレイモン兄様もお父様の取り調べを見られるみたい。

「レイモン、聞きたいことがあるのなら俺に言っておけ。
 代わりに聞いてやるよ」

「ありがとう。感謝する」

お父様が王宮に到着するまでの間、お茶を飲みながら待つことになる。
ジェラルド兄様とレイモン兄様はお父様のことを話しあっている。
それを私とアドルフ様は口を挟まずに黙って聞いていた。

お茶のお代わりを飲み終わった頃、ようやくお父様が王宮に到着した。
取調べが行われる部屋は貴族用なのか普通の応接間と変わりないように見えた。
だが、隣にある控室に入ると、鏡の裏側が透けて部屋がそのまま見える。

「ここにいれば会話もそのまま聞こえるはずだ。
 レイモン、ジュリアンヌを頼んだよ」

「ああ、わかった。そちらもよろしく頼む」

「ああ」

ジェラルド兄様は私と離れるのが不安だったのか、
もう一度私へと確認に来る。

「聞きたくないと思ったら、廊下側のドアから外に出るんだ。
 これが終わるまでは一人になることはしないように。わかったね?」

「ええ、大丈夫よ。レイモン兄様と一緒にいるわ」

「ああ」

なぜか少しだけ寂しそうな顔をした気がするけれど、
ジェラルド兄様は私の頬を撫でてドアを閉めた。

向こうの部屋にはアドルフ様とジェラルド兄様。
そして、騎士に連れられたお父様が入ってきた。

「アドルフ様、どういうことですか?
 騎士に理由を聞いても何も言わず。
 どうしてこんな無理やり……」

「まずは座れ。これから取調べを行う」

「は?」

「座れ。聞こえなかったのか?」

「は、はい」

アドルフ様の態度が公爵に対するものではないと気がついたのか、
お父様は青ざめた表情でソファに座る。

「さきほど、アジェ伯爵夫人の罪が確定した。
 貴族籍から外し、一般牢へと入れてある」

「マゼンタが!どうしてですか!?」

「どうしてなのか、よくわかっているだろう?
 五年前、イフリア公爵家で何が起きたのか」

「五年前……まさか」

「あの時は王家とイフリア公爵家、レドアル公爵家で話をして、
 ジュリアンヌの誘拐のことは隠すことになった。
 俺はそれを聞いて、ジュリアンヌは殺されたんだと思った」

「っ!」

「だって、そうだろう。誘拐されたのに探しもしないイフリア公爵家。
 姪がいなくなったのに騒ぐこともないレドアル公爵家。
 誘拐以上の何かがあって、もうどうしようもない事態なんだと思うだろう。
 まぁ、父上は派閥間の確執が大きくなるのを恐れて、
 どちらの公爵家もそれ以上何も言わないならいいと思ったようだが」

お母様と私がイフリア公爵家から離れるために伯父様は騒がなかったのだが、
それがアドルフ様にはそう見えていたらしい。
もっとも、お父様たちは私が死んだと思っていたのだから間違いでもないけど。

「ジュリアンヌは殺されたと思っていたんだろう?
 さきほどマゼンタが白状したよ。
 ジュリアンヌを傷つけた夜に公爵に話したと」

「……」




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