47 / 66
47.お父様の取調べ
しおりを挟む
王宮でマゼンタ様と対面した後、お父様も呼ばれることになったけれど、
私たちは屋敷へと帰るはずだった。
なのに、レイモン兄様がアドルフ様に立ち会いたいと言い出した。
「どうか、父上の取り調べに立ち会わせてもらえませんか?」
「立ち合い?レイモンが?」
「ええ、ずっと知りたかったんです。
何を思って母上を追い出したのか。
ジュリアンヌが誘拐されたことを知ってからは、
それでもあの女を庇うのか聞きたかった……。
立ち会わせてもらえませんか?」
「だめだ」
「アドルフ様!」
「レイモン、めずらしく冷静じゃないようだな。
イフリア公爵に容疑があるということは、
お前だって疑われるかもしれない立場だということだ」
「え?……ですが」
「お前がジュリアンヌの誘拐に関わっていないのも、
母親と妹が大好きだっていうのもよくわかっている。
だが、取り調べに立ち会うというのは怪しまれる行動だ。
そのくらいは考えれば理解できるだろう」
「……そうですね」
私の誘拐に関して、当時十三歳だったレイモン兄様は何も知らなかった。
それでも父親が罪に問われれば、息子も関係していたんじゃないかと、
そう疑うものが出てくることは考えられる。
アドルフ様が止めるもの仕方ないこと。
がっかりしているレイモン兄様を見て、ジェラルド兄様が手をあげる。
「アドルフ様、それでは俺が立ち会うのはダメでしょうか?」
「ジェラルドが?」
「俺はレドアル公爵家の者として、
ジュリアンヌを傷つけたものの処罰を見届けなくてはいけない。
そのうえ、当時の状況も知っている当事者です。
立ち会わせてもらえませんか?」
「……ジェラルドなら問題ないか。いいよ」
「ありがとうございます。
取調べの間、レイモンとジュリアンヌは取調室の控室にいさせてもいいですか?
口を挟まずに、ただ見ているだけなら問題ないと思います」
「そういうことか。わかった。
二人は取調べには関わらせないが見ているだけならいいだろう。
取調べが終わらなければジュリアンヌは屋敷に戻れないだろうしな。
ジェラルドを待つ間、レイモンを護衛としてつけてやろう」
「っ!ありがとうございます!」
どうやらジェラルド兄様のおかげで、
私とレイモン兄様もお父様の取り調べを見られるみたい。
「レイモン、聞きたいことがあるのなら俺に言っておけ。
代わりに聞いてやるよ」
「ありがとう。感謝する」
お父様が王宮に到着するまでの間、お茶を飲みながら待つことになる。
ジェラルド兄様とレイモン兄様はお父様のことを話しあっている。
それを私とアドルフ様は口を挟まずに黙って聞いていた。
お茶のお代わりを飲み終わった頃、ようやくお父様が王宮に到着した。
取調べが行われる部屋は貴族用なのか普通の応接間と変わりないように見えた。
だが、隣にある控室に入ると、鏡の裏側が透けて部屋がそのまま見える。
「ここにいれば会話もそのまま聞こえるはずだ。
レイモン、ジュリアンヌを頼んだよ」
「ああ、わかった。そちらもよろしく頼む」
「ああ」
ジェラルド兄様は私と離れるのが不安だったのか、
もう一度私へと確認に来る。
「聞きたくないと思ったら、廊下側のドアから外に出るんだ。
これが終わるまでは一人になることはしないように。わかったね?」
「ええ、大丈夫よ。レイモン兄様と一緒にいるわ」
「ああ」
なぜか少しだけ寂しそうな顔をした気がするけれど、
ジェラルド兄様は私の頬を撫でてドアを閉めた。
向こうの部屋にはアドルフ様とジェラルド兄様。
そして、騎士に連れられたお父様が入ってきた。
「アドルフ様、どういうことですか?
騎士に理由を聞いても何も言わず。
どうしてこんな無理やり……」
「まずは座れ。これから取調べを行う」
「は?」
「座れ。聞こえなかったのか?」
「は、はい」
アドルフ様の態度が公爵に対するものではないと気がついたのか、
お父様は青ざめた表情でソファに座る。
「さきほど、アジェ伯爵夫人の罪が確定した。
貴族籍から外し、一般牢へと入れてある」
「マゼンタが!どうしてですか!?」
「どうしてなのか、よくわかっているだろう?
五年前、イフリア公爵家で何が起きたのか」
「五年前……まさか」
「あの時は王家とイフリア公爵家、レドアル公爵家で話をして、
ジュリアンヌの誘拐のことは隠すことになった。
俺はそれを聞いて、ジュリアンヌは殺されたんだと思った」
「っ!」
「だって、そうだろう。誘拐されたのに探しもしないイフリア公爵家。
姪がいなくなったのに騒ぐこともないレドアル公爵家。
誘拐以上の何かがあって、もうどうしようもない事態なんだと思うだろう。
まぁ、父上は派閥間の確執が大きくなるのを恐れて、
どちらの公爵家もそれ以上何も言わないならいいと思ったようだが」
お母様と私がイフリア公爵家から離れるために伯父様は騒がなかったのだが、
それがアドルフ様にはそう見えていたらしい。
もっとも、お父様たちは私が死んだと思っていたのだから間違いでもないけど。
「ジュリアンヌは殺されたと思っていたんだろう?
さきほどマゼンタが白状したよ。
ジュリアンヌを傷つけた夜に公爵に話したと」
「……」
私たちは屋敷へと帰るはずだった。
なのに、レイモン兄様がアドルフ様に立ち会いたいと言い出した。
「どうか、父上の取り調べに立ち会わせてもらえませんか?」
「立ち合い?レイモンが?」
「ええ、ずっと知りたかったんです。
何を思って母上を追い出したのか。
ジュリアンヌが誘拐されたことを知ってからは、
それでもあの女を庇うのか聞きたかった……。
立ち会わせてもらえませんか?」
「だめだ」
「アドルフ様!」
「レイモン、めずらしく冷静じゃないようだな。
イフリア公爵に容疑があるということは、
お前だって疑われるかもしれない立場だということだ」
「え?……ですが」
「お前がジュリアンヌの誘拐に関わっていないのも、
母親と妹が大好きだっていうのもよくわかっている。
だが、取り調べに立ち会うというのは怪しまれる行動だ。
そのくらいは考えれば理解できるだろう」
「……そうですね」
私の誘拐に関して、当時十三歳だったレイモン兄様は何も知らなかった。
それでも父親が罪に問われれば、息子も関係していたんじゃないかと、
そう疑うものが出てくることは考えられる。
アドルフ様が止めるもの仕方ないこと。
がっかりしているレイモン兄様を見て、ジェラルド兄様が手をあげる。
「アドルフ様、それでは俺が立ち会うのはダメでしょうか?」
「ジェラルドが?」
「俺はレドアル公爵家の者として、
ジュリアンヌを傷つけたものの処罰を見届けなくてはいけない。
そのうえ、当時の状況も知っている当事者です。
立ち会わせてもらえませんか?」
「……ジェラルドなら問題ないか。いいよ」
「ありがとうございます。
取調べの間、レイモンとジュリアンヌは取調室の控室にいさせてもいいですか?
口を挟まずに、ただ見ているだけなら問題ないと思います」
「そういうことか。わかった。
二人は取調べには関わらせないが見ているだけならいいだろう。
取調べが終わらなければジュリアンヌは屋敷に戻れないだろうしな。
ジェラルドを待つ間、レイモンを護衛としてつけてやろう」
「っ!ありがとうございます!」
どうやらジェラルド兄様のおかげで、
私とレイモン兄様もお父様の取り調べを見られるみたい。
「レイモン、聞きたいことがあるのなら俺に言っておけ。
代わりに聞いてやるよ」
「ありがとう。感謝する」
お父様が王宮に到着するまでの間、お茶を飲みながら待つことになる。
ジェラルド兄様とレイモン兄様はお父様のことを話しあっている。
それを私とアドルフ様は口を挟まずに黙って聞いていた。
お茶のお代わりを飲み終わった頃、ようやくお父様が王宮に到着した。
取調べが行われる部屋は貴族用なのか普通の応接間と変わりないように見えた。
だが、隣にある控室に入ると、鏡の裏側が透けて部屋がそのまま見える。
「ここにいれば会話もそのまま聞こえるはずだ。
レイモン、ジュリアンヌを頼んだよ」
「ああ、わかった。そちらもよろしく頼む」
「ああ」
ジェラルド兄様は私と離れるのが不安だったのか、
もう一度私へと確認に来る。
「聞きたくないと思ったら、廊下側のドアから外に出るんだ。
これが終わるまでは一人になることはしないように。わかったね?」
「ええ、大丈夫よ。レイモン兄様と一緒にいるわ」
「ああ」
なぜか少しだけ寂しそうな顔をした気がするけれど、
ジェラルド兄様は私の頬を撫でてドアを閉めた。
向こうの部屋にはアドルフ様とジェラルド兄様。
そして、騎士に連れられたお父様が入ってきた。
「アドルフ様、どういうことですか?
騎士に理由を聞いても何も言わず。
どうしてこんな無理やり……」
「まずは座れ。これから取調べを行う」
「は?」
「座れ。聞こえなかったのか?」
「は、はい」
アドルフ様の態度が公爵に対するものではないと気がついたのか、
お父様は青ざめた表情でソファに座る。
「さきほど、アジェ伯爵夫人の罪が確定した。
貴族籍から外し、一般牢へと入れてある」
「マゼンタが!どうしてですか!?」
「どうしてなのか、よくわかっているだろう?
五年前、イフリア公爵家で何が起きたのか」
「五年前……まさか」
「あの時は王家とイフリア公爵家、レドアル公爵家で話をして、
ジュリアンヌの誘拐のことは隠すことになった。
俺はそれを聞いて、ジュリアンヌは殺されたんだと思った」
「っ!」
「だって、そうだろう。誘拐されたのに探しもしないイフリア公爵家。
姪がいなくなったのに騒ぐこともないレドアル公爵家。
誘拐以上の何かがあって、もうどうしようもない事態なんだと思うだろう。
まぁ、父上は派閥間の確執が大きくなるのを恐れて、
どちらの公爵家もそれ以上何も言わないならいいと思ったようだが」
お母様と私がイフリア公爵家から離れるために伯父様は騒がなかったのだが、
それがアドルフ様にはそう見えていたらしい。
もっとも、お父様たちは私が死んだと思っていたのだから間違いでもないけど。
「ジュリアンヌは殺されたと思っていたんだろう?
さきほどマゼンタが白状したよ。
ジュリアンヌを傷つけた夜に公爵に話したと」
「……」
2,684
あなたにおすすめの小説
妹なんだから助けて? お断りします
たくわん
恋愛
美しく聡明な令嬢エリーゼ。だが、母の死後に迎えられた継母マルグリットによって、彼女の人生は一変する。実母が残した財産は継母に奪われ、華やかなドレスは義姉たちに着られ、エリーゼ自身は使用人同然の扱いを受ける。そんなある日――。
働かない令嬢は、すでに幸せです ――婚約破棄? それより紅茶の時間をください
鷹 綾
恋愛
婚約破棄された公爵令嬢、レイラ・フォン・アーデルハイド。
――しかし彼女は、泣かない。怒らない。復讐もしない。
なぜなら、前世でブラック企業に心身を削られた元OLにとって、
婚約破棄とは「面倒な縁が切れただけ」の出来事だったから。
「復讐? 見返し? そんな暇があったら紅茶を飲みますわ」
貴族の婚姻は家同士の取引。
壊れたなら、それまで。
彼女が選んだのは、何もしない自由だった。
領地運営も、政治も、評価争いも――
無理に手を出さず、必要なときだけ責任を取る。
働かない。頑張らない。目立たない。
……はずだったのに。
なぜか領地は安定し、
周囲は勝手に動き、
気づけば「模範的な公爵令嬢」として評価が独り歩きしていく。
後悔する元婚約者、
空回りする王太子、
復讐を期待していた周囲――
けれど当の本人は、今日も優雅にティータイム。
無関心こそ最大のざまぁ。
働かないからこそ、幸せになった。
これは、
「何もしない」を貫いた令嬢が、
気づけばすべてを手に入れていた物語。
私を捨てた皆様、どうぞその選択を後悔なさってください 〜婚約破棄された令嬢の、遅すぎる謝罪はお断りです〜
くろねこ
恋愛
王太子の婚約者として尽くしてきた公爵令嬢エリシアは、ある日突然、身に覚えのない罪で断罪され婚約破棄を言い渡される。
味方だと思っていた家族も友人も、誰一人として彼女を庇わなかった。
――けれど、彼らは知らなかった。
彼女こそが国を支えていた“本当の功労者”だったことを。
すべてを失ったはずの令嬢が選んだのは、
復讐ではなく「関わらない」という選択。
だがその選択こそが、彼らにとって最も残酷な“ざまぁ”の始まりだった。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ】悪妃は余暇を楽しむ
ごろごろみかん。
恋愛
「こちら、離縁届です。私と、離縁してくださいませ、陛下」
ある日、悪妃と名高いクレメンティーナが夫に渡したのは、離縁届だった。彼女はにっこりと笑って言う。
「先日、あなた方の真実の愛を拝見させていただきまして……有難いことに目が覚めましたわ。ですので、王妃、やめさせていただこうかと」
何せ、あれだけ見せつけてくれたのである。ショックついでに前世の記憶を取り戻して、千年の恋も瞬間冷凍された。
都合のいい女は本日で卒業。
今後は、余暇を楽しむとしましょう。
吹っ切れた悪妃は身辺整理を終えると早々に城を出て行ってしまった。
【完結】私が誰だか、分かってますか?
美麗
恋愛
アスターテ皇国
時の皇太子は、皇太子妃とその侍女を妾妃とし他の妃を娶ることはなかった
出産時の出血により一時病床にあったもののゆっくり回復した。
皇太子は皇帝となり、皇太子妃は皇后となった。
そして、皇后との間に産まれた男児を皇太子とした。
以降の子は妾妃との娘のみであった。
表向きは皇帝と皇后の仲は睦まじく、皇后は妾妃を受け入れていた。
ただ、皇帝と皇后より、皇后と妾妃の仲はより睦まじくあったとの話もあるようだ。
残念ながら、この妾妃は産まれも育ちも定かではなかった。
また、後ろ盾も何もないために何故皇后の侍女となったかも不明であった。
そして、この妾妃の娘マリアーナははたしてどのような娘なのか…
17話完結予定です。
完結まで書き終わっております。
よろしくお願いいたします。
【完結】旦那様、その真実の愛とお幸せに
おのまとぺ
恋愛
「真実の愛を見つけてしまった。申し訳ないが、君とは離縁したい」
結婚三年目の祝いの席で、遅れて現れた夫アントンが放った第一声。レミリアは驚きつつも笑顔を作って夫を見上げる。
「承知いたしました、旦那様。その恋全力で応援します」
「え?」
驚愕するアントンをそのままに、レミリアは宣言通りに片想いのサポートのような真似を始める。呆然とする者、訝しむ者に見守られ、迫りつつある別れの日を二人はどういった形で迎えるのか。
◇真実の愛に目覚めた夫を支える妻の話
◇元サヤではありません
◇全56話完結予定
両親に溺愛されて育った妹の顛末
葉柚
恋愛
皇太子妃になるためにと厳しく育てられた私、エミリアとは違い、本来私に与えられるはずだった両親からの愛までも注ぎ込まれて溺愛され育てられた妹のオフィーリア。
オフィーリアは両親からの過剰な愛を受けて愛らしく育ったが、過剰な愛を受けて育ったために次第に世界は自分のためにあると勘違いするようになってしまい……。
「お姉さまはずるいわ。皇太子妃になっていずれはこの国の妃になるのでしょう?」
「私も、この国の頂点に立つ女性になりたいわ。」
「ねえ、お姉さま。私の方が皇太子妃に相応しいと思うの。代わってくださらない?」
妹の要求は徐々にエスカレートしていき、最後には……。
【完結】この運命を受け入れましょうか
なか
恋愛
「君のようは妃は必要ない。ここで廃妃を宣言する」
自らの夫であるルーク陛下の言葉。
それに対して、ヴィオラ・カトレアは余裕に満ちた微笑みで答える。
「承知しました。受け入れましょう」
ヴィオラにはもう、ルークへの愛など残ってすらいない。
彼女が王妃として支えてきた献身の中で、平民生まれのリアという女性に入れ込んだルーク。
みっともなく、情けない彼に対して恋情など抱く事すら不快だ。
だが聖女の素養を持つリアを、ルークは寵愛する。
そして貴族達も、莫大な益を生み出す聖女を妃に仕立てるため……ヴィオラへと無実の罪を被せた。
あっけなく信じるルークに呆れつつも、ヴィオラに不安はなかった。
これからの顛末も、打開策も全て知っているからだ。
前世の記憶を持ち、ここが物語の世界だと知るヴィオラは……悲運な運命を受け入れて彼らに意趣返す。
ふりかかる不幸を全て覆して、幸せな人生を歩むため。
◇◇◇◇◇
設定は甘め。
不安のない、さっくり読める物語を目指してます。
良ければ読んでくだされば、嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる