これが運命ではなかったとしても

gacchi(がっち)

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22.学園の授業

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学園の初日は担当教師からの説明で終わり、何事もなく帰る。
シンディ様に何か言われるかもと思っていたけれど、
ちらりとこちらを見ただけで先に帰ってしまった。

教室から出ると、ジルとルウイが心配そうな顔で待っていた。

「大丈夫でしたか?」

「うん、何もなかったわ。帰りましょう」

学園内を歩いている間、ずっと誰かに見られている気がするけれど、
この国に銀髪は一人もいないそうだから、目だっても仕方ないかもしれない。

次の日はジルとルウイと侍女のカリナ。
アルフレッド様の宮には六人の侍女がいるが、
今のところ学園に付き添うのはメアリーかカリナと決まった。

メアリーとカリナはどちらも学園を卒業して二年。
学園について詳しいだろうということで選ばれている。

教室に入ると、また視線が集まる。
特にシンディ様の周りにいる令嬢たちから見られているようだ。
何気なくそちらを見てみると、すぐに目をそらされる。

何か企んでいるようだが、どうしたらいいだろうか。
アルフレッド様に話したら、大ごとになりそうな気がする。

ため息をついていたら先生が教室に入って来る。
初めての授業はベルコヴァの歴史についての授業だった。

この国に来てから三年。
特に家庭教師はつけなかったけれど、
本を読んでわからないところはアズが教えてくれた。

だから、先生に聞かれた時も問題なく答えることができた。

……はずなのに、教室内が騒がしくなる。
答えは間違えていないはずだけど、どうして。

「聞いた?王女のあの話し方……」

「変な話し方ね」

「あれって、アントシュの話し方らしいわよ」

「まぁ、なまりが抜けていないのね」

くすくすと笑い声も聞こえる。
令嬢たちの中心にいるのはシンディ様。
シンディ様自身は一言も話していないけれど、
その周りで悪口を言っている令嬢たちの視線はシンディ様をうかがっている。

そういうことか……。

「先生、今のは何か間違っていましたか?」

「いいえ、正解でしたし、かなり詳しく説明もしていただきました。
 とても素晴らしい回答です」

「では、どうして笑われているのでしょうか?」

「それは……」

はっきり先生へ質問したからか、笑っていた令嬢たちが口を閉じる。
私が王女だということに今さら気がついたのだろうか、
咎められるかもしれないと顔が青ざめていくのがわかる。

「思いつく理由をはっきり言ってもらえますか?
 そうでなければ、答える度に笑われるかもしれません。
 そうなれば、お義父様に報告しなければ」

「王女様、それはっ」

「では、理由を説明してもらえますか?」

「……おそらく、王女様がアントシュ国の発音だからだと思います」

「それがおかしいと?」

「いえ、おかしいとは思いません。
 ですが、自分と違うことを笑うものはいます」

先生もこのような状況は想定していなかったようで困った顔をしている。
仕方なく、さきほどなまりが抜けていないと言っていた令嬢を指名する。

「そこの水色のリボンを髪につけている令嬢。
 私の何がおかしかったの?」

「……え、あの……」

「はっきり言ってくれる?今なら怒らないわ」

理由も言えないようなことで王女を笑いものにしたというのなら、
この令嬢を見せしめにしなければならない。

令嬢も自分が窮地に追い込まれていると感じたのか、シンディ様を見る。

だが、シンディ様は令嬢を見ようとしなかった。
助けてもらえないとわかったからか、令嬢はあきらめたように話し出した。

「……王女様は、今はベルコヴァの王女です。
 なのに、いつまでもアントシュ国の話し方でいるのはおかしいと思います」

「それだけ?」

「……このままでは婚約者である王弟殿下が恥をかいてしまいます。
 話し方を直したほうがいいのではないでしょうか」

もともと気の強い令嬢なのかもしれない。
最後は私と目を合わせてはっきりと言った。

「アントシュの話し方を直す気はないの。
 だって、アルフレッド様はこの話し方が好きだというの」

え?っという驚きの声があちこちから上がる。

「アルフレッド様は女嫌いだと勘違いされているけれど、
 本当は令嬢たちが騒がしいのが嫌いなんですって。
 でも、私の話し方はうるさくないから気にいってるそうよ」

「そんな……」

「アルフレッド様が直さなくていいと言っているのだから、
 他の誰に言われても直す気はないの。
 それに、他国の話し方を笑うのは品がないって、
 礼儀作法の授業で習わなかったの?」

「っ!……申し訳ありません」

「今回は許すわ。
 でも、王女を公の場で笑って許されるとは思わないで」

「はい……」

「他の人たちもね。聞こえていたわよ」

笑っていた令嬢たちをちらりと見ると、
全員が立ち上がって謝り始める。
その奥でシンディ様だけが呆然とした顔で座っていた。

少しやり過ぎたかもしれない。
これでもうお友達ができることはないだろうな。

「もういいわ。先生、授業を続けてください」

「は、はいっ」

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