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34.救出作戦(アルフレッド)
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隣国のアントシュがおかしいと感じたのは半年前のことだった。
兄上は留学していた関係で、アントシュの国王にはよく相談をしている。
国王になったのはまだ十九歳の時だったからか、
いろいろな助言をもらっていたらしい。
その時から兄上とアントシュの国王は月に一度手紙をやりとりしていた。
だが、急に手紙の返信がこなくなったらしい。
二か月は何か事情があったのかもしれないと待ち、
三か月が過ぎた時に使者を送ったが、使者も帰って来なかった。
何度か使者を送ったが、そのすべてが戻ってこない。
これはアントシュでよくないことが起きている。
ただの使者では何が起きたのかわからない。
そう思った兄上は、四か月が過ぎた頃になって密偵に調べさせることにした。
それから二か月。
密偵が調べて来た報告書を読んだ兄上は思わず叫んだ。
「騎士団長を呼べ!」
めったに大声を出さない兄上が怒りのこもった声で叫んだことに、
護衛騎士たちが驚いて騎士団長を呼びに行く。
「兄上、どうしたんですか?」
「……アルフレッド、これを読んでくれ」
渡された報告書を読めば、クーデターが起きたと書かれている。
アントシュの国王と王太子は奴隷として売られ、
第一王女が塔に閉じ込められている、と。
アントシュの国王と王太子が売られた?
……それでは兄上の怒りようも納得がいく。
急な呼び出しに慌てて謁見室に来た騎士団長ユッケルも、
報告書を読んで黙り込む。
この騎士団長は去年就任したばかり。
頭の固い騎士団長は亡くなるまで騎士団長をやめることはなかった。
引継ぎもなく騎士団長になったために、まだ騎士団をうまくまとめられていない。
「すぐにダニエル殿とアルマン王子を探させる。
……王女も助け出さなくては」
「アントシュ国王と王太子の行方を探すのは問題ないでしょう。
ですが、王女の救出は難しいかもしれません」
「なぜだ!」
「他国だからです。騎士団を率いてアントシュへ向かえば、
戦争を起こすつもりだと誤解されかねません」
「だが!」
騎士団長の心配はもっともなことだった。
今、何か事を起こせば、
ルーデンガ国にこの国を攻める理由を与えてしまいかねない。
俺の伯父ルーデンガ国王は、まだこの国を支配することをあきらめていない。
助けてやりたいが、どうすることもできない。
アントシュ国のことは見捨てるしかない。
そう思った時、兄上が苦しそうにつぶやいた。
「どうにかならないのか……。
何かあれば助けるとダニエル殿に約束したのだ……」
「兄上、アントシュの国王と約束したというのは?」
「もし自分に何かあれば、子どもたちを、アントシュを頼むと」
「……それは手紙ですか?」
「そうだ」
「それを探し出して来てください!
アントシュ国王からの頼みであれば、動けます!」
「なんだと!すぐに探してくる!」
兄上は今までの手紙を大事に取っておいてあった。
その手紙は三年前のもので、
自分がダメになった場合には代わりに息子の面倒をみてやってほしい、
弟ではこの国がつぶれてしまう、エッカルトに後を頼みたい、そう書かれていた。
「兄上、これなら問題ありません。
今、アントシュ国王は行方知らず。
弟には国を任せられないと、きちんと書いてあります。
お互いに何かあったら国を任せるという協定を結んでいたことにすればいい。
クーデターを止め、王女を救出しに行けます!」
「おお!助けられるのか!」
勢いずく兄上と俺を止めたのは、やはり騎士団長だった。
「……ですが、他国で騎士団を動かすというのは……」
「何が問題だというのだ!」
「私では無理です……騎士団を無駄死にさせてしまいかねません……」
騎士団をまとめられていないという不安からか、
騎士団長は情けない声を出した。
「そんなに自信がないのなら騎士団長を辞めてしまえ!」
「……申し訳ありません。辞めさせていただきます」
もともとユッケルは事務仕事を得意としていたから副団長だっただけで、
剣技が得意なわけではなかった。
それなのに他国へ遠征するのは無理だと自分でわかったのだろう。
ユッケルが肩を落として謁見室から出て行った後、
新しい騎士団長を誰にするかの話になる。
優秀な騎士は何人か頭に浮かんだが、すぐに遠征できるかというと難しい。
国王と王太子を奴隷として売った王弟が王女も売らないとは限らない。
すぐにでも助けにいかなくてはならないのに。
「どうしたものか……俺が行けばいいのか?」
「兄上が行って何かあったら、どうするんですか」
「だが……時間がない」
「……わかりました。俺が行きます」
「は?」
俺なら騎士たちにも慣れている。
王族の俺に逆らえる騎士はいない。
多少の問題があっても、なんとかなるだろう。
「アルフレッドはまだ学園があるだろう」
「もうすぐ卒業です。授業を受けなくても問題はありません」
「だが」
「時間がないのでしょう?俺が騎士団長代理になります。
王族が代理になるのはめずらしくありません」
「……そうだが。いいのか?」
「行かせてください。兄上の恩人なのでしょう?」
「……ありがとう。頼む、どうか王女を助けてきてくれ」
「すぐに騎士団に行って、遠征する者を選びます。
騎士団長に任命してください」
「わかった」
兄上は留学していた関係で、アントシュの国王にはよく相談をしている。
国王になったのはまだ十九歳の時だったからか、
いろいろな助言をもらっていたらしい。
その時から兄上とアントシュの国王は月に一度手紙をやりとりしていた。
だが、急に手紙の返信がこなくなったらしい。
二か月は何か事情があったのかもしれないと待ち、
三か月が過ぎた時に使者を送ったが、使者も帰って来なかった。
何度か使者を送ったが、そのすべてが戻ってこない。
これはアントシュでよくないことが起きている。
ただの使者では何が起きたのかわからない。
そう思った兄上は、四か月が過ぎた頃になって密偵に調べさせることにした。
それから二か月。
密偵が調べて来た報告書を読んだ兄上は思わず叫んだ。
「騎士団長を呼べ!」
めったに大声を出さない兄上が怒りのこもった声で叫んだことに、
護衛騎士たちが驚いて騎士団長を呼びに行く。
「兄上、どうしたんですか?」
「……アルフレッド、これを読んでくれ」
渡された報告書を読めば、クーデターが起きたと書かれている。
アントシュの国王と王太子は奴隷として売られ、
第一王女が塔に閉じ込められている、と。
アントシュの国王と王太子が売られた?
……それでは兄上の怒りようも納得がいく。
急な呼び出しに慌てて謁見室に来た騎士団長ユッケルも、
報告書を読んで黙り込む。
この騎士団長は去年就任したばかり。
頭の固い騎士団長は亡くなるまで騎士団長をやめることはなかった。
引継ぎもなく騎士団長になったために、まだ騎士団をうまくまとめられていない。
「すぐにダニエル殿とアルマン王子を探させる。
……王女も助け出さなくては」
「アントシュ国王と王太子の行方を探すのは問題ないでしょう。
ですが、王女の救出は難しいかもしれません」
「なぜだ!」
「他国だからです。騎士団を率いてアントシュへ向かえば、
戦争を起こすつもりだと誤解されかねません」
「だが!」
騎士団長の心配はもっともなことだった。
今、何か事を起こせば、
ルーデンガ国にこの国を攻める理由を与えてしまいかねない。
俺の伯父ルーデンガ国王は、まだこの国を支配することをあきらめていない。
助けてやりたいが、どうすることもできない。
アントシュ国のことは見捨てるしかない。
そう思った時、兄上が苦しそうにつぶやいた。
「どうにかならないのか……。
何かあれば助けるとダニエル殿に約束したのだ……」
「兄上、アントシュの国王と約束したというのは?」
「もし自分に何かあれば、子どもたちを、アントシュを頼むと」
「……それは手紙ですか?」
「そうだ」
「それを探し出して来てください!
アントシュ国王からの頼みであれば、動けます!」
「なんだと!すぐに探してくる!」
兄上は今までの手紙を大事に取っておいてあった。
その手紙は三年前のもので、
自分がダメになった場合には代わりに息子の面倒をみてやってほしい、
弟ではこの国がつぶれてしまう、エッカルトに後を頼みたい、そう書かれていた。
「兄上、これなら問題ありません。
今、アントシュ国王は行方知らず。
弟には国を任せられないと、きちんと書いてあります。
お互いに何かあったら国を任せるという協定を結んでいたことにすればいい。
クーデターを止め、王女を救出しに行けます!」
「おお!助けられるのか!」
勢いずく兄上と俺を止めたのは、やはり騎士団長だった。
「……ですが、他国で騎士団を動かすというのは……」
「何が問題だというのだ!」
「私では無理です……騎士団を無駄死にさせてしまいかねません……」
騎士団をまとめられていないという不安からか、
騎士団長は情けない声を出した。
「そんなに自信がないのなら騎士団長を辞めてしまえ!」
「……申し訳ありません。辞めさせていただきます」
もともとユッケルは事務仕事を得意としていたから副団長だっただけで、
剣技が得意なわけではなかった。
それなのに他国へ遠征するのは無理だと自分でわかったのだろう。
ユッケルが肩を落として謁見室から出て行った後、
新しい騎士団長を誰にするかの話になる。
優秀な騎士は何人か頭に浮かんだが、すぐに遠征できるかというと難しい。
国王と王太子を奴隷として売った王弟が王女も売らないとは限らない。
すぐにでも助けにいかなくてはならないのに。
「どうしたものか……俺が行けばいいのか?」
「兄上が行って何かあったら、どうするんですか」
「だが……時間がない」
「……わかりました。俺が行きます」
「は?」
俺なら騎士たちにも慣れている。
王族の俺に逆らえる騎士はいない。
多少の問題があっても、なんとかなるだろう。
「アルフレッドはまだ学園があるだろう」
「もうすぐ卒業です。授業を受けなくても問題はありません」
「だが」
「時間がないのでしょう?俺が騎士団長代理になります。
王族が代理になるのはめずらしくありません」
「……そうだが。いいのか?」
「行かせてください。兄上の恩人なのでしょう?」
「……ありがとう。頼む、どうか王女を助けてきてくれ」
「すぐに騎士団に行って、遠征する者を選びます。
騎士団長に任命してください」
「わかった」
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