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39.夜会の開始
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青いドレスに着替え、鏡に映る自分を確認する。
髪はハーフアップにして黒薔薇の髪飾りで止めてもらい、
首飾りと耳飾りはおそろいの丸い黒貴石。
気に入ってもらえるだろうか……。
「そろそろ王弟殿下をお呼びしてきますね」
「ちょっと待って、まだ気持ちの準備が……」
「ふふ。大丈夫ですよ、ルーチェ様はお綺麗です。
きっと喜んでくださいますよ」
「そうかしら……」
「お呼びしてきますね」
「あ……」
リマはにっこり笑うと部屋から出て行く。
そして、それほど間もなくアルフレッド様が部屋に入って来た。
「ルーチェ、入っていいか?準備ができたのだろう?」
「……はい」
こちらに向かってきたアルフレッド様が数歩で止まる。
どうしたのだろうか?
首をかしげたら、そのまま座り込んでしまった。
「ど、どうしたのですか?」
「……なんでもない。ルーチェが綺麗すぎたんだ」
「え?」
「いつも以上に綺麗なのに、首なんてかしげたら可愛すぎるだろう」
「あ、あの……?」
アルフレッド様の耳が赤くなっている。
まさか、本気で言っている?
「あの……似合っていますか?」
「もちろんだ。装飾品だけでも俺の色にしてよかった。
似合っているよ、ものすごく綺麗だ」
「ありがとうございます」
聞いてもいないのに精霊たちが嘘じゃないよって騒いでいる。
アルフレッド様が嘘なんてつくはずないのに。
いや、違う。
私がそれでも疑ってしまったから、精霊が教えてくれたんだ。
素直に信じればいいのに、まだ少し恥ずかしい。
「では、向かおうか。大広間へ」
「はい」
アルフレッド様の手を取って向かおうとしたら、アルフレッド様が眉をひそめた。
私、何かまずいことでもした?
「どうかしました?」
「……いや、こんなに背中が開いているドレスだったか」
「デザインは一緒に選びましたよね?」
「そうだが……こんなに」
「夜会だから胸か背中を開けたほうがいいと言われて、
背中にしたのはアルフレッド様じゃないですか」
「それは胸元を開けるなんて……許せるわけないだろう」
「そんなこと言われても」
夜会のドレスは胸元か背中を大きく開けて、
足首を隠すくらい長いスカートにするのが習わし。
そう言われたからこのようなドレスになったのに。
おそらく他の出席者も似たようなものだと思われる。
私だけがはしたないわけではないのに、言われてもどうしようもない。
「……ルーチェの肌を他の男に見せたくないんだ」
「そ、そんな」
そんなこと言われても、ますます困ってしまう。
アルフレッド様をどうやって説得したらいいのかと考えていたら、
助けてくれたのはアズだった。
「アルフレッド様が隠せばいいじゃないですか」
「俺が隠す?」
「エスコートする時に、腰に手を回すようにして、
アルフレッド様が後ろにつくように歩けばいいんです」
「……こうか?」
私の左手はアルフレッド様の左手へ。
そしてアルフレッド様の右手は私の右腰へとまわされた。
……なんだか後ろから抱きしめられているみたい。
「これならそれほど気にならないでしょう?」
「……そうだな。俺が隠しておけばいいな」
「このまま歩くのですか?」
「だめか?」
「うー……わかりました」
こんなべったりとくっついてエスコートするなんて問題はないのだろうか。
だけど、アズだけでなくリマまでうなずいている。
このまま行くしかないようだ。
「じゃあ、行きましょう。もう時間になっていますよね」
「ああ、急ごう」
夜会の入場は王族が最後に入場することになっている。
本来なら、シンディ様、アルフレッド様と私、陛下と王妃様の順なのだが、
これでは一人で入場するシンディ様が目立ってしまうということで、
アルフレッド様と私、シンディ様、陛下と王妃様の順で入場することになった。
大広間の扉まで行くと、中は貴族でいっぱいなのか騒がしい。
初めての夜会で緊張する……。
「ルーチェ、心配しなくていい。俺は離れないから」
「はい」
そうだった。何も心配することはない。
ずっとアルフレッド様がそばにいてくれるのだから。
扉が開いて、アルフレッド様と私の入場が告げられる。
エスコートされて中に入ると、令嬢と夫人の悲鳴のような高い声が聞こえた。
「騒がしいな」
アルフレッド様が不快そうにつぶやいたけれど、気持ちはわかる。
あの女嫌いのアルフレッド様がエスコートしている、
しかも私にべったりくっついて。それは驚くだろう。
入場したら自由に楽しんでいていいと言われているので、
ダイアナとアラベルを探そうとする。
きょろきょろと見回していたら、ダイアナたちのほうから来てくれた。
「ダイアナ、アラベル。探していたところだったのよ」
髪はハーフアップにして黒薔薇の髪飾りで止めてもらい、
首飾りと耳飾りはおそろいの丸い黒貴石。
気に入ってもらえるだろうか……。
「そろそろ王弟殿下をお呼びしてきますね」
「ちょっと待って、まだ気持ちの準備が……」
「ふふ。大丈夫ですよ、ルーチェ様はお綺麗です。
きっと喜んでくださいますよ」
「そうかしら……」
「お呼びしてきますね」
「あ……」
リマはにっこり笑うと部屋から出て行く。
そして、それほど間もなくアルフレッド様が部屋に入って来た。
「ルーチェ、入っていいか?準備ができたのだろう?」
「……はい」
こちらに向かってきたアルフレッド様が数歩で止まる。
どうしたのだろうか?
首をかしげたら、そのまま座り込んでしまった。
「ど、どうしたのですか?」
「……なんでもない。ルーチェが綺麗すぎたんだ」
「え?」
「いつも以上に綺麗なのに、首なんてかしげたら可愛すぎるだろう」
「あ、あの……?」
アルフレッド様の耳が赤くなっている。
まさか、本気で言っている?
「あの……似合っていますか?」
「もちろんだ。装飾品だけでも俺の色にしてよかった。
似合っているよ、ものすごく綺麗だ」
「ありがとうございます」
聞いてもいないのに精霊たちが嘘じゃないよって騒いでいる。
アルフレッド様が嘘なんてつくはずないのに。
いや、違う。
私がそれでも疑ってしまったから、精霊が教えてくれたんだ。
素直に信じればいいのに、まだ少し恥ずかしい。
「では、向かおうか。大広間へ」
「はい」
アルフレッド様の手を取って向かおうとしたら、アルフレッド様が眉をひそめた。
私、何かまずいことでもした?
「どうかしました?」
「……いや、こんなに背中が開いているドレスだったか」
「デザインは一緒に選びましたよね?」
「そうだが……こんなに」
「夜会だから胸か背中を開けたほうがいいと言われて、
背中にしたのはアルフレッド様じゃないですか」
「それは胸元を開けるなんて……許せるわけないだろう」
「そんなこと言われても」
夜会のドレスは胸元か背中を大きく開けて、
足首を隠すくらい長いスカートにするのが習わし。
そう言われたからこのようなドレスになったのに。
おそらく他の出席者も似たようなものだと思われる。
私だけがはしたないわけではないのに、言われてもどうしようもない。
「……ルーチェの肌を他の男に見せたくないんだ」
「そ、そんな」
そんなこと言われても、ますます困ってしまう。
アルフレッド様をどうやって説得したらいいのかと考えていたら、
助けてくれたのはアズだった。
「アルフレッド様が隠せばいいじゃないですか」
「俺が隠す?」
「エスコートする時に、腰に手を回すようにして、
アルフレッド様が後ろにつくように歩けばいいんです」
「……こうか?」
私の左手はアルフレッド様の左手へ。
そしてアルフレッド様の右手は私の右腰へとまわされた。
……なんだか後ろから抱きしめられているみたい。
「これならそれほど気にならないでしょう?」
「……そうだな。俺が隠しておけばいいな」
「このまま歩くのですか?」
「だめか?」
「うー……わかりました」
こんなべったりとくっついてエスコートするなんて問題はないのだろうか。
だけど、アズだけでなくリマまでうなずいている。
このまま行くしかないようだ。
「じゃあ、行きましょう。もう時間になっていますよね」
「ああ、急ごう」
夜会の入場は王族が最後に入場することになっている。
本来なら、シンディ様、アルフレッド様と私、陛下と王妃様の順なのだが、
これでは一人で入場するシンディ様が目立ってしまうということで、
アルフレッド様と私、シンディ様、陛下と王妃様の順で入場することになった。
大広間の扉まで行くと、中は貴族でいっぱいなのか騒がしい。
初めての夜会で緊張する……。
「ルーチェ、心配しなくていい。俺は離れないから」
「はい」
そうだった。何も心配することはない。
ずっとアルフレッド様がそばにいてくれるのだから。
扉が開いて、アルフレッド様と私の入場が告げられる。
エスコートされて中に入ると、令嬢と夫人の悲鳴のような高い声が聞こえた。
「騒がしいな」
アルフレッド様が不快そうにつぶやいたけれど、気持ちはわかる。
あの女嫌いのアルフレッド様がエスコートしている、
しかも私にべったりくっついて。それは驚くだろう。
入場したら自由に楽しんでいていいと言われているので、
ダイアナとアラベルを探そうとする。
きょろきょろと見回していたら、ダイアナたちのほうから来てくれた。
「ダイアナ、アラベル。探していたところだったのよ」
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