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38.エスコート
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その日は何もなくても顔が笑っていたらしく、
ダイアナとアラベルにも会ってすぐにいつもと違うとわかられてしまった。
「ルーチェ様、何かいいことでもあったのですか?」
「もしかして、ドレスができあがったのですか?」
「あ、そうね。今日できあがってくるの」
言われてみれば、ドレスができあがってくるのが今日だった。
機嫌がいいのはドレスのせいにしてしまったが、
二人はそれを信じたようだった。
「何色にしたのですか?」
「あら、それは当日までの秘密ですわよね?ルーチェ様」
「ふふ。そうね。当日まで楽しみにしていて」
「ええ、楽しみにしていますわね」
特別秘密にしたい理由はないけれど、その方が楽しそうだ。
三人で笑い合っていたら、シンディ様に咳払いされる。
「……うるさかったかしら」
「そんなことありません。今は授業中というわけではないのですから」
「そうだけど」
少し声がうるさかったかもしれない。
反省しようと思っていたら、シンディ様が口を開いた。
「……どうせエスコートしてもらえないでしょうけど」
「え?」
「アル兄様が女性をエスコートするわけないんだから!」
「……どういうこと?」
意味がわからずに聞き返したら、シンディ様は教室から出て行く。
そのままどこかに行ってしまったようで、シンディ様の護衛が慌てて追いかけて行った。
「今のはどういう意味かしら」
「……シンディ様は夜会のエスコートを断られているんです」
「十二歳の王族のお披露目の時に」
「え?もしかしてアルフレッド様に?」
「そうです。十二歳のお披露目は王族としてだけではなく、
婚約者を探すためのお披露目でもあるので重要な行事です。
当時、シンディ様はアルフレッド様と婚約すると思われていたので、
お二人で入場されるものだと思っていました」
「ですが、シンディ様は陛下にエスコートされて入場したのです」
「まぁ……陛下に?」
「第一王女ですから、それでもおかしくはないのですが、
アルフレッド様はお一人で入場されていまして……」
「それでシンディ様が断られたようだと噂になったのです」
「そうなのね……」
十二歳……私がここに来る一年前のこと。
アルフレッド様はもうすでに女性嫌いになっていたのだろうか。
大事なお披露目のエスコートを断るくらい……。
いいえ、そのエスコートを引き受けたのなら、
シンディ様と婚約する流れになっていたのかもしれない。
だから、アルフレッド様は引き受けるわけにはいかなかった。
どちらにしてもシンディ様にはつらいことだったはず。
「今回、ルーチェ様が初めて夜会に出席されると聞いて、
アルフレッド様と一緒に出られるのかどうか皆が興味を持っているようです」
「そう……教えてくれてありがとう。
でも、大丈夫よ。ちゃんとアルフレッド様はエスコートしてくれるから」
「そうですよね!安心しました」
ダイアナとアラベルだけではなく、教室内にいる他の者も気になっていたようだ。
耳を澄ませてこちらの話を聞こうとしているのがわかる。
学園から宮に帰ると、アルフレッド様がどこかに出かけるところだった。
「ただいま帰りました。アルフレッド様はどこかに?」
「いや、違う。ルーチェがそろそろ帰る頃だと思って、
馬車まで迎えに行こうかと思っていたんだ。
思ったよりも早かったようだな」
「ええ、今日は授業が早く終わって」
アルフレッド様に手を引かれて部屋に入ると、
そこにはドレスが飾られていた。
「ドレスが届いている。試着するんだろう?」
「はい!」
できあがったばかりのドレスが輝いている。
私の目と同じ、青色。
昔、青色のドレスばかりでつまらなくないのかと聞かれたことがあった。
でも、私のことを愛してくれるお父様とお兄様が贈ってくれるドレスだから、
同じ色でもつまらないなんて思ったことはなかった。
今もそう。
私のためにアルフレッド様が贈ってくれたドレス。
昔と違うのは、デザインが大人びているところ。
胸元は見えないようになっているけれど、背中が少し大きく開いている。
このドレスを着て、アルフレッド様にエスコートされる……。
想像しただけでうれしくて倒れてしまいそう。
「……失敗したな」
「え?」
「この色のルーチェも美しいだろうが、
俺の色もどこかに入れればよかったな」
「アルフレッド様の色を?」
「ああ、さすがに黒いドレスは無理だろうから、
どこか一部でも黒をいれてもらえばよかったと思ったんだ。
このドレスを注文した時には、気持ちを受け入れてもらえるとは思わなかったから……」
話を聞けば、この国では婚約者の色を入れるのは普通のことらしい。
知っていれば入れたいとねだることもできたのに……。
二人で落ち込みそうになっていたら、アズが口を挟んだ。
「アルフレッド様、ドレスは間に合いませんが、宝石なら。
装飾品なら今からでも手に入れられるのではないですか?」
「そうか!宝石商に連絡してくれ!」
「かしこまりました」
にっこり笑ってアズは部屋から出て行った。
「ルーチェ。装飾品を俺の色に変更してもいいだろうか?」
「ええ!うれしいです!」
「俺もだ」
その日はドレスの試着だけ済ませ、装飾品は後日届けてもらうことになった。
シンディ様は次の日にも学園には現れなかったけれど、病気ではないらしい。
少しだけ心配になったけれど、私にはどうすることもできない。
そうこうしているうちに夜会の当日になり、私は昼から準備に追われていた。
ダイアナとアラベルにも会ってすぐにいつもと違うとわかられてしまった。
「ルーチェ様、何かいいことでもあったのですか?」
「もしかして、ドレスができあがったのですか?」
「あ、そうね。今日できあがってくるの」
言われてみれば、ドレスができあがってくるのが今日だった。
機嫌がいいのはドレスのせいにしてしまったが、
二人はそれを信じたようだった。
「何色にしたのですか?」
「あら、それは当日までの秘密ですわよね?ルーチェ様」
「ふふ。そうね。当日まで楽しみにしていて」
「ええ、楽しみにしていますわね」
特別秘密にしたい理由はないけれど、その方が楽しそうだ。
三人で笑い合っていたら、シンディ様に咳払いされる。
「……うるさかったかしら」
「そんなことありません。今は授業中というわけではないのですから」
「そうだけど」
少し声がうるさかったかもしれない。
反省しようと思っていたら、シンディ様が口を開いた。
「……どうせエスコートしてもらえないでしょうけど」
「え?」
「アル兄様が女性をエスコートするわけないんだから!」
「……どういうこと?」
意味がわからずに聞き返したら、シンディ様は教室から出て行く。
そのままどこかに行ってしまったようで、シンディ様の護衛が慌てて追いかけて行った。
「今のはどういう意味かしら」
「……シンディ様は夜会のエスコートを断られているんです」
「十二歳の王族のお披露目の時に」
「え?もしかしてアルフレッド様に?」
「そうです。十二歳のお披露目は王族としてだけではなく、
婚約者を探すためのお披露目でもあるので重要な行事です。
当時、シンディ様はアルフレッド様と婚約すると思われていたので、
お二人で入場されるものだと思っていました」
「ですが、シンディ様は陛下にエスコートされて入場したのです」
「まぁ……陛下に?」
「第一王女ですから、それでもおかしくはないのですが、
アルフレッド様はお一人で入場されていまして……」
「それでシンディ様が断られたようだと噂になったのです」
「そうなのね……」
十二歳……私がここに来る一年前のこと。
アルフレッド様はもうすでに女性嫌いになっていたのだろうか。
大事なお披露目のエスコートを断るくらい……。
いいえ、そのエスコートを引き受けたのなら、
シンディ様と婚約する流れになっていたのかもしれない。
だから、アルフレッド様は引き受けるわけにはいかなかった。
どちらにしてもシンディ様にはつらいことだったはず。
「今回、ルーチェ様が初めて夜会に出席されると聞いて、
アルフレッド様と一緒に出られるのかどうか皆が興味を持っているようです」
「そう……教えてくれてありがとう。
でも、大丈夫よ。ちゃんとアルフレッド様はエスコートしてくれるから」
「そうですよね!安心しました」
ダイアナとアラベルだけではなく、教室内にいる他の者も気になっていたようだ。
耳を澄ませてこちらの話を聞こうとしているのがわかる。
学園から宮に帰ると、アルフレッド様がどこかに出かけるところだった。
「ただいま帰りました。アルフレッド様はどこかに?」
「いや、違う。ルーチェがそろそろ帰る頃だと思って、
馬車まで迎えに行こうかと思っていたんだ。
思ったよりも早かったようだな」
「ええ、今日は授業が早く終わって」
アルフレッド様に手を引かれて部屋に入ると、
そこにはドレスが飾られていた。
「ドレスが届いている。試着するんだろう?」
「はい!」
できあがったばかりのドレスが輝いている。
私の目と同じ、青色。
昔、青色のドレスばかりでつまらなくないのかと聞かれたことがあった。
でも、私のことを愛してくれるお父様とお兄様が贈ってくれるドレスだから、
同じ色でもつまらないなんて思ったことはなかった。
今もそう。
私のためにアルフレッド様が贈ってくれたドレス。
昔と違うのは、デザインが大人びているところ。
胸元は見えないようになっているけれど、背中が少し大きく開いている。
このドレスを着て、アルフレッド様にエスコートされる……。
想像しただけでうれしくて倒れてしまいそう。
「……失敗したな」
「え?」
「この色のルーチェも美しいだろうが、
俺の色もどこかに入れればよかったな」
「アルフレッド様の色を?」
「ああ、さすがに黒いドレスは無理だろうから、
どこか一部でも黒をいれてもらえばよかったと思ったんだ。
このドレスを注文した時には、気持ちを受け入れてもらえるとは思わなかったから……」
話を聞けば、この国では婚約者の色を入れるのは普通のことらしい。
知っていれば入れたいとねだることもできたのに……。
二人で落ち込みそうになっていたら、アズが口を挟んだ。
「アルフレッド様、ドレスは間に合いませんが、宝石なら。
装飾品なら今からでも手に入れられるのではないですか?」
「そうか!宝石商に連絡してくれ!」
「かしこまりました」
にっこり笑ってアズは部屋から出て行った。
「ルーチェ。装飾品を俺の色に変更してもいいだろうか?」
「ええ!うれしいです!」
「俺もだ」
その日はドレスの試着だけ済ませ、装飾品は後日届けてもらうことになった。
シンディ様は次の日にも学園には現れなかったけれど、病気ではないらしい。
少しだけ心配になったけれど、私にはどうすることもできない。
そうこうしているうちに夜会の当日になり、私は昼から準備に追われていた。
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